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第2章 入団までの1年間(1)、新たな攻略対象との出会い
17:冒険者
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乙女ゲーム「皇国のファジーランド」攻略キャラクター:
アルフォンス・レイ(アルフレッド・ブラッドレイ)。
現国王の腹違いの弟。
前国王と高位冒険者との間に出来た子供だが、母親が妾ですらなく、誕生時には前国王も逝去していたため、その存在を知られず、10歳になるまで市井で育つ。
しかし、10歳のときに受けた庶民向けの魔力検査で王族・高位貴族並みの魔力量と、稀に見る2属性(火・闇)持ちであることが発覚。状況は一変する。
顔立ち・髪色から前国王の遺児であることが国にばれ、かくして、アルフォンスは正式に王族として迎え入れられることになるのだ。
準成人(14歳)以降は、魔法騎士として騎士団に所属。
その実力から早々に副騎士団長まで上り詰める。
だが、ある日「飽きた」と言い放ち、騎士団を辞して出奔。
以降は身分を隠して、市井で冒険者をしている設定のキャラクターだ。
いわゆる隠れ攻略対象キャラクターで、ゲームに出てこないこともあるのだが、彼以外の攻略対象キャラクターが、レティシアを断頭台に送るのに対し、彼は自らの手でレティシアを殺害する。
(正直、ゲームの攻略対象キャラクターの中でも特に関わりたくないんだが・・・・・・・まぁ1年だけだし、仕方ないか)
私がそう心の中で諦めていると、目の前を歩いているアルフォンスが、急に私を振り返った。
どうやら目的地に着いたようだ。
「ここが、この南の領地、最大都市<サリム>にある冒険者ギルドだ。入るぞ」
そう言って、人通りの多い往来に立つ大きな建物の豪奢な扉を雑に開ける。
この世界には、あまたのファンタジー世界と同様に、冒険者ギルドがあり、登録している者を「冒険者」と呼ぶ。
「冒険者」は依頼を受け、雑用から魔物退治、従軍までありとあらゆる雑務をこなしている。
その冒険者ギルドに、なぜ鍛錬開始初日に来たかというと、まぁ一言でいえば「アルフォンスの気まぐれ」だ。
----------------------
約1時間前。城の鍛錬場。
アルフォンスは、器用に剣を一回転させて鞘に仕舞いながら、不敵に私に笑いかけた。
「よしっ!まずは最初の命令だ。お前、冒険者になれ」
「はぁ!?」
この講師による鍛錬を、ただ魔法や剣術について教えてもらうだけのものだと思っていた私は、出会って数分後に行われたアルフォンスの突飛な命令に思わず、素っ頓狂な声を出していた。
「ア・・・アルフレッド様!
フレリック様は先日の襲撃事件で頭を打った影響で記憶の一部が欠けております。
そのため、魔法や剣術を基礎からみっちり教えてほしいと、公爵様が依頼していたかと思いますが・・・・・・」
メアリもアルフォンスの言葉に心底驚いたようで、私を援護してくれる。
また、メアリの言葉で、父・コドックが、私がまともに魔法や剣術の知識がないであろうことを予想してすでに手を打っていたことにも、私は驚いた。
(確かに<一部>記憶喪失なら、私がフレデリックらしい言動をしていなくても・・・魔法の知識が欠けていても、フォローになるものな)
父・コドックの能吏としての一面に触れた私は、感心した眼差しで、メアリを見つめる。
するとメアリはさっと頬を染め、下を向いてしまった。
「基礎ってこいつに今更、基礎が必要かぁ?
騎士団でも上手く使える者があまりいない身体強化魔法を、俺が今まで見た誰よりも使いこなしてるだろうが。こいつに必要なのは実践だけだ」
「えっ!ええっ!??」
アルフォンスは「何バカ言ってんだ」という顔をして、私を指差す。
私の令嬢教育をずっと見守っていたメアリは「レティシア様は元々ご令嬢。そんなはずはない・・・」と心の中で思いつつも、アルフォンスの勢いに押され、私とアルフォンスを見比べ、オロオロしている。
(ロッド元騎士団長、代役間違えたな・・・。折角、この世界の魔法と剣術について詳しく知れるかと思ったのに、この男、教える気ないだろ・・・)
フレデリックと入れ替わっているせいか、心の中まで男口調になりつつ、私は肩をすくめる。
「メアリ、ゆっくり息を吐いてみて。そんなに慌てたら、君の可愛い顔が台無しだよ?」
「フ・・・フレデリック様・・・・・・」
メアリの顔を覗き込み、ひとまず彼女を落ち着かせようと公爵子息教育で得た成果を発揮していると、肩をぐっと掴まれた。
上を見上げると、少しイラついた様子のアメジストの瞳があった。
「おいっ。上官命令だ、早くギルドに行くぞ。ついて来い」
こうして、私は訓練初日にも関わらず、すぐにアルフォンスに城の外に連れていかれ、<冒険者登録>をするべく冒険者ギルドに向かうことになったのだった。
アルフォンス・レイ(アルフレッド・ブラッドレイ)。
現国王の腹違いの弟。
前国王と高位冒険者との間に出来た子供だが、母親が妾ですらなく、誕生時には前国王も逝去していたため、その存在を知られず、10歳になるまで市井で育つ。
しかし、10歳のときに受けた庶民向けの魔力検査で王族・高位貴族並みの魔力量と、稀に見る2属性(火・闇)持ちであることが発覚。状況は一変する。
顔立ち・髪色から前国王の遺児であることが国にばれ、かくして、アルフォンスは正式に王族として迎え入れられることになるのだ。
準成人(14歳)以降は、魔法騎士として騎士団に所属。
その実力から早々に副騎士団長まで上り詰める。
だが、ある日「飽きた」と言い放ち、騎士団を辞して出奔。
以降は身分を隠して、市井で冒険者をしている設定のキャラクターだ。
いわゆる隠れ攻略対象キャラクターで、ゲームに出てこないこともあるのだが、彼以外の攻略対象キャラクターが、レティシアを断頭台に送るのに対し、彼は自らの手でレティシアを殺害する。
(正直、ゲームの攻略対象キャラクターの中でも特に関わりたくないんだが・・・・・・・まぁ1年だけだし、仕方ないか)
私がそう心の中で諦めていると、目の前を歩いているアルフォンスが、急に私を振り返った。
どうやら目的地に着いたようだ。
「ここが、この南の領地、最大都市<サリム>にある冒険者ギルドだ。入るぞ」
そう言って、人通りの多い往来に立つ大きな建物の豪奢な扉を雑に開ける。
この世界には、あまたのファンタジー世界と同様に、冒険者ギルドがあり、登録している者を「冒険者」と呼ぶ。
「冒険者」は依頼を受け、雑用から魔物退治、従軍までありとあらゆる雑務をこなしている。
その冒険者ギルドに、なぜ鍛錬開始初日に来たかというと、まぁ一言でいえば「アルフォンスの気まぐれ」だ。
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約1時間前。城の鍛錬場。
アルフォンスは、器用に剣を一回転させて鞘に仕舞いながら、不敵に私に笑いかけた。
「よしっ!まずは最初の命令だ。お前、冒険者になれ」
「はぁ!?」
この講師による鍛錬を、ただ魔法や剣術について教えてもらうだけのものだと思っていた私は、出会って数分後に行われたアルフォンスの突飛な命令に思わず、素っ頓狂な声を出していた。
「ア・・・アルフレッド様!
フレリック様は先日の襲撃事件で頭を打った影響で記憶の一部が欠けております。
そのため、魔法や剣術を基礎からみっちり教えてほしいと、公爵様が依頼していたかと思いますが・・・・・・」
メアリもアルフォンスの言葉に心底驚いたようで、私を援護してくれる。
また、メアリの言葉で、父・コドックが、私がまともに魔法や剣術の知識がないであろうことを予想してすでに手を打っていたことにも、私は驚いた。
(確かに<一部>記憶喪失なら、私がフレデリックらしい言動をしていなくても・・・魔法の知識が欠けていても、フォローになるものな)
父・コドックの能吏としての一面に触れた私は、感心した眼差しで、メアリを見つめる。
するとメアリはさっと頬を染め、下を向いてしまった。
「基礎ってこいつに今更、基礎が必要かぁ?
騎士団でも上手く使える者があまりいない身体強化魔法を、俺が今まで見た誰よりも使いこなしてるだろうが。こいつに必要なのは実践だけだ」
「えっ!ええっ!??」
アルフォンスは「何バカ言ってんだ」という顔をして、私を指差す。
私の令嬢教育をずっと見守っていたメアリは「レティシア様は元々ご令嬢。そんなはずはない・・・」と心の中で思いつつも、アルフォンスの勢いに押され、私とアルフォンスを見比べ、オロオロしている。
(ロッド元騎士団長、代役間違えたな・・・。折角、この世界の魔法と剣術について詳しく知れるかと思ったのに、この男、教える気ないだろ・・・)
フレデリックと入れ替わっているせいか、心の中まで男口調になりつつ、私は肩をすくめる。
「メアリ、ゆっくり息を吐いてみて。そんなに慌てたら、君の可愛い顔が台無しだよ?」
「フ・・・フレデリック様・・・・・・」
メアリの顔を覗き込み、ひとまず彼女を落ち着かせようと公爵子息教育で得た成果を発揮していると、肩をぐっと掴まれた。
上を見上げると、少しイラついた様子のアメジストの瞳があった。
「おいっ。上官命令だ、早くギルドに行くぞ。ついて来い」
こうして、私は訓練初日にも関わらず、すぐにアルフォンスに城の外に連れていかれ、<冒険者登録>をするべく冒険者ギルドに向かうことになったのだった。
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