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正義のミカタ第1章~電脳生存者(サイバーサバイバー)~
第2話 捜査一課の仲間たち
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「別に、かまわねえよ」
おやっさん――日暮針生は簡単に許可してくれた。
四十八歳男性だが、もっと年をとっているように見える。なんというか、覇気のない、気の抜けた炭酸飲料みたいな人だ。あまり、やる気がないように見える。……この人も、なんで殺人課にいるのかな。
「もしかして、いつも言ってる、お嬢って子?」
「あ、崇皇先輩」
横で話を聞いていたらしい。二歳年上の先輩――崇皇深雪さんが声をかけてきた。
「ええ、まあ。すいません、しばらく仕事から抜けちゃいますけど――」
「それは、困ったねえ……」
ううう……、この声は……。
「おやっさん、いいんですか? 勝手に許可してしまって」
この人も二歳年上の先輩、亀追飛雄矢さんだ。
なぜか、ぼくに突っかかってくるから、ちょっと苦手だ。キャリア組だし。
「あん? いいじゃねえか、今事件なくて暇だし」
「もしも、事件が発生したらどうするんです? 刑事が持ち場を離れていたと知れたら……」
「刑事は今、腐るくらい余ってんだぜ? そんな、刑事が足りなくなるような大事件、滅多に起こるかよ」
「し、しかし……」
「月下~、客が来てるぞ」
同僚の刑事がぼくを呼んだ。
「客? すいません、ちょっと行ってき――」
「おーい、つっきしったくーん!」
セーラー服の少女が手を振りながら走ってきて、ぼくに飛びついた。
「うわっ!?」
勢いで、ぼくは尻もちをついた。
捜査一課の刑事たちの視線が、いっせいにこちらを向く。
「……お、お嬢!? なんでここに……」
「あ、おやっさん、おひさだね!」
「よお、六花ちゃん。久しぶりだなあ」
お嬢は、ぼくの質問をガン無視して、さっさと立ち上がっておやっさんに挨拶している。おやっさんも普通に挨拶している。
「月下君、あの子がお嬢?」
「あ、はい」
「へえ、かわいいじゃない」
「はあ……」
貴女も十分可愛いですがね。
崇皇先輩は、お嬢が気に入ったようだ。
とりあえず、誰も手を貸してくれないので、自分で起き上がった。
「月下君、何だ、この子は? 君の援交相手じゃないだろうね」
亀追さんが、ぼくを睨みながら言い放った。
「援交って……」
普通それ、四十代のオッサンとかがすることだろ……。ぼくをなんだと思ってるんだ、この人……。
「亀追君、発想がゲスい」
崇皇先輩が言ってくれた。ナイス先輩。
「げ、ゲス……」
「なんだ、亀追。お前、キャリア組のくせにこの子を知らないのか」と、おやっさん。
「女子高生に知り合いはいませんよ。誰なんです?」
「この子はな、
現警視総監の娘さんだよ」
捜査一課の刑事たちが、いっせいにざわざわしだした。
「あ、そっか。だから『お嬢』なのね」
崇皇先輩、やたら落ち着いてるな。
「俺はあいつの昔っからの友達でな。六花ちゃん、凍牙のヤツは元気かい」
「すこぶる元気だとも! おやっさんと今度飲みに行きたいだとさ!」
「じゃあ、あとで都合のいい日を教えてくれって伝えといてくれよ」
「いいとも」
お、おやっさん、人脈すごいな……。
――角柱寺凍牙。現警視総監にして、お嬢のお父さん。警視庁で一番偉い人だ。
何故、ヒラ刑事のぼくが、そんなド偉い人の娘さんと知り合いなのかはともかくとして……。
「じゃあ、おやっさん。月下君を借りてくよ」
「おう、好きにこき使ってやってくれ」
「じゃあね、お姉さん。今度一緒に買い物行こうね」
「捜査頑張ってね♪」
いつの間に仲良くなったんだ、この二人。
「ほら、行くよ、月下君」
「はいはい……。んで、どこ行くんだい?」
「コンピュータ系の犯罪を扱ってるのは、確か捜査二課だよね? そこに行ってみようか」
〈続く〉
おやっさん――日暮針生は簡単に許可してくれた。
四十八歳男性だが、もっと年をとっているように見える。なんというか、覇気のない、気の抜けた炭酸飲料みたいな人だ。あまり、やる気がないように見える。……この人も、なんで殺人課にいるのかな。
「もしかして、いつも言ってる、お嬢って子?」
「あ、崇皇先輩」
横で話を聞いていたらしい。二歳年上の先輩――崇皇深雪さんが声をかけてきた。
「ええ、まあ。すいません、しばらく仕事から抜けちゃいますけど――」
「それは、困ったねえ……」
ううう……、この声は……。
「おやっさん、いいんですか? 勝手に許可してしまって」
この人も二歳年上の先輩、亀追飛雄矢さんだ。
なぜか、ぼくに突っかかってくるから、ちょっと苦手だ。キャリア組だし。
「あん? いいじゃねえか、今事件なくて暇だし」
「もしも、事件が発生したらどうするんです? 刑事が持ち場を離れていたと知れたら……」
「刑事は今、腐るくらい余ってんだぜ? そんな、刑事が足りなくなるような大事件、滅多に起こるかよ」
「し、しかし……」
「月下~、客が来てるぞ」
同僚の刑事がぼくを呼んだ。
「客? すいません、ちょっと行ってき――」
「おーい、つっきしったくーん!」
セーラー服の少女が手を振りながら走ってきて、ぼくに飛びついた。
「うわっ!?」
勢いで、ぼくは尻もちをついた。
捜査一課の刑事たちの視線が、いっせいにこちらを向く。
「……お、お嬢!? なんでここに……」
「あ、おやっさん、おひさだね!」
「よお、六花ちゃん。久しぶりだなあ」
お嬢は、ぼくの質問をガン無視して、さっさと立ち上がっておやっさんに挨拶している。おやっさんも普通に挨拶している。
「月下君、あの子がお嬢?」
「あ、はい」
「へえ、かわいいじゃない」
「はあ……」
貴女も十分可愛いですがね。
崇皇先輩は、お嬢が気に入ったようだ。
とりあえず、誰も手を貸してくれないので、自分で起き上がった。
「月下君、何だ、この子は? 君の援交相手じゃないだろうね」
亀追さんが、ぼくを睨みながら言い放った。
「援交って……」
普通それ、四十代のオッサンとかがすることだろ……。ぼくをなんだと思ってるんだ、この人……。
「亀追君、発想がゲスい」
崇皇先輩が言ってくれた。ナイス先輩。
「げ、ゲス……」
「なんだ、亀追。お前、キャリア組のくせにこの子を知らないのか」と、おやっさん。
「女子高生に知り合いはいませんよ。誰なんです?」
「この子はな、
現警視総監の娘さんだよ」
捜査一課の刑事たちが、いっせいにざわざわしだした。
「あ、そっか。だから『お嬢』なのね」
崇皇先輩、やたら落ち着いてるな。
「俺はあいつの昔っからの友達でな。六花ちゃん、凍牙のヤツは元気かい」
「すこぶる元気だとも! おやっさんと今度飲みに行きたいだとさ!」
「じゃあ、あとで都合のいい日を教えてくれって伝えといてくれよ」
「いいとも」
お、おやっさん、人脈すごいな……。
――角柱寺凍牙。現警視総監にして、お嬢のお父さん。警視庁で一番偉い人だ。
何故、ヒラ刑事のぼくが、そんなド偉い人の娘さんと知り合いなのかはともかくとして……。
「じゃあ、おやっさん。月下君を借りてくよ」
「おう、好きにこき使ってやってくれ」
「じゃあね、お姉さん。今度一緒に買い物行こうね」
「捜査頑張ってね♪」
いつの間に仲良くなったんだ、この二人。
「ほら、行くよ、月下君」
「はいはい……。んで、どこ行くんだい?」
「コンピュータ系の犯罪を扱ってるのは、確か捜査二課だよね? そこに行ってみようか」
〈続く〉
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