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第4話 エフとお買い物
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「さて、買い物に行こうと思うんだけど」
「お供します」
お供。
ああ、そうだよね。携帯なんだから一緒に連れていかないと……。
「それが問題なんだよね」
「何ですか?」
「エフは携帯になれるんだよね?」
「ええ、まあ、もともとが携帯電話ですから」
「しかしイケメンともなると、隣に連れて歩きたいのもまた事実」
「……半日ほど会話していて思いましたが、ご主人は面食いなんですね」
「まあ、他人に迷惑をかけない程度には面食いだよ」
顔の良い男はそりゃ大好きだよ。眼福だもの。
「いや、しかし実益も兼ねているよ。買い物の荷物を半分持ってもらえると助かるしね」
「わかりました。では参りましょうか」
「その前に」
「はい」
「エフ……着替えようか」
そう、半日エフと家で過ごしていて、うっかり慣れてしまっていたが、エフの格好は、あまり一般人とは言えない。
携帯の色と同じ、真っ青なスーツ。少し目立つ(ちなみに顔の仮面は外せないらしい。人間時でも携帯と分かるようにとのFQ社の配慮だそうだ)。
せめてもうちょっと何か……スーパーに行くのにふさわしい(?)服とか……。
「申し訳ありませんが、私の服の着替えはこのスーツと全く同じ予備しかなくて……着せ替えは別売りとなります」
「おのれFQ社……!」
どんだけ商売上手なんだ。
もちろん一人暮らしの女子大生の家に、男物の服などあるはずもなく。
仕方なくエフの服はそのままで、近くのスーパーに一緒に買い物に出かけた。
タイムセールの激戦区を遠巻きに見ながら、ガラ空きになっている他の安売りされている食材をカゴに詰める。いっぱいになったカゴはエフに持ってもらった。
エフの格好のことで後ろ指を指されやしないかと心配していたのだが、スーパーの中で何度かFQシリーズと思われる片割れ仮面をつけた男性と、それを伴った女性の二人組とすれ違った。……みんな持ってるんだな、FQシリーズ。
エフは「生まれて初めてスーパーに入りました」と、目を輝かせながら辺りをキョロキョロ見回していた。エフは、見た目の割に時々無垢な子供のようなところがあって微笑ましい。
会計を済ませて、荷物を半分持とうとすると、「重いので駄目です」とエフが譲らないので、全部持ってもらって家に帰った。
「いやー、荷物を持ってもらって助かったよ。悪いね」
「お気になさらず。これで夕食にオムレツが作れますね」
「オムレツ? あー、すっかり忘れてたや」
「あはは……あ、その前にご主人、充電させていただいてもよろしいでしょうか」
エフは、少し疲れているようだった。
「あ、そうか、朝からずっと動いてたもんね。じゃあ、一旦携帯に戻ろうか。……どうやって戻すの?」
「ああ、戻し方を教えていませんでしたね。では、手を」
エフが促すままに、その手を握る。
ボウ……とエフの体が淡く発光した。
エフの体が光に包まれて、だんだん小さくなっていき、手の中に光がおさまる。
発光が終わると、手の中に青い携帯が握られていた。
「おおー……!」
『私に携帯に戻す旨を伝えて、手を握っていただければ戻ります。では、充電お願いします』
携帯の形になっても、会話はできるらしい。
「あいよー」
私はエフを充電スタンドに立てた。
充電が終わるまで、授業の予習でもしておこう。
そう思いながら、私は冷蔵庫に買った食材を詰めていった。
〈続く〉
「お供します」
お供。
ああ、そうだよね。携帯なんだから一緒に連れていかないと……。
「それが問題なんだよね」
「何ですか?」
「エフは携帯になれるんだよね?」
「ええ、まあ、もともとが携帯電話ですから」
「しかしイケメンともなると、隣に連れて歩きたいのもまた事実」
「……半日ほど会話していて思いましたが、ご主人は面食いなんですね」
「まあ、他人に迷惑をかけない程度には面食いだよ」
顔の良い男はそりゃ大好きだよ。眼福だもの。
「いや、しかし実益も兼ねているよ。買い物の荷物を半分持ってもらえると助かるしね」
「わかりました。では参りましょうか」
「その前に」
「はい」
「エフ……着替えようか」
そう、半日エフと家で過ごしていて、うっかり慣れてしまっていたが、エフの格好は、あまり一般人とは言えない。
携帯の色と同じ、真っ青なスーツ。少し目立つ(ちなみに顔の仮面は外せないらしい。人間時でも携帯と分かるようにとのFQ社の配慮だそうだ)。
せめてもうちょっと何か……スーパーに行くのにふさわしい(?)服とか……。
「申し訳ありませんが、私の服の着替えはこのスーツと全く同じ予備しかなくて……着せ替えは別売りとなります」
「おのれFQ社……!」
どんだけ商売上手なんだ。
もちろん一人暮らしの女子大生の家に、男物の服などあるはずもなく。
仕方なくエフの服はそのままで、近くのスーパーに一緒に買い物に出かけた。
タイムセールの激戦区を遠巻きに見ながら、ガラ空きになっている他の安売りされている食材をカゴに詰める。いっぱいになったカゴはエフに持ってもらった。
エフの格好のことで後ろ指を指されやしないかと心配していたのだが、スーパーの中で何度かFQシリーズと思われる片割れ仮面をつけた男性と、それを伴った女性の二人組とすれ違った。……みんな持ってるんだな、FQシリーズ。
エフは「生まれて初めてスーパーに入りました」と、目を輝かせながら辺りをキョロキョロ見回していた。エフは、見た目の割に時々無垢な子供のようなところがあって微笑ましい。
会計を済ませて、荷物を半分持とうとすると、「重いので駄目です」とエフが譲らないので、全部持ってもらって家に帰った。
「いやー、荷物を持ってもらって助かったよ。悪いね」
「お気になさらず。これで夕食にオムレツが作れますね」
「オムレツ? あー、すっかり忘れてたや」
「あはは……あ、その前にご主人、充電させていただいてもよろしいでしょうか」
エフは、少し疲れているようだった。
「あ、そうか、朝からずっと動いてたもんね。じゃあ、一旦携帯に戻ろうか。……どうやって戻すの?」
「ああ、戻し方を教えていませんでしたね。では、手を」
エフが促すままに、その手を握る。
ボウ……とエフの体が淡く発光した。
エフの体が光に包まれて、だんだん小さくなっていき、手の中に光がおさまる。
発光が終わると、手の中に青い携帯が握られていた。
「おおー……!」
『私に携帯に戻す旨を伝えて、手を握っていただければ戻ります。では、充電お願いします』
携帯の形になっても、会話はできるらしい。
「あいよー」
私はエフを充電スタンドに立てた。
充電が終わるまで、授業の予習でもしておこう。
そう思いながら、私は冷蔵庫に買った食材を詰めていった。
〈続く〉
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