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第20話(最終話)魔寄せの娘、幸せな結末
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純白のウェディングドレスに身を包んだソフィアと、真っ黒なタキシード姿のナハト。
ソフィアの冒険と愛の結末が、この教会でひとつの終焉を迎えようとしていた。
勇者モルゲンの死によって一時は混乱に陥っていた王国モルゲナだったが、ソフィアや王国騎士団から報告を受け、事情を知った国王は、「長年信仰してきた勇者がただの化け物だったなんて」と嘆いていた。
ソフィアは国王から直々に「王魔親善大使」の称号を得た。要するに王国と魔国の橋渡しとして、二国間の関係改善に奔走する役職だ。
彼女の魔国への交渉により、魔族は二度と人間を襲わないと約束し、王国から魔物を連れて引き上げ、すべての魔族と魔物が魔国へと戻った。
その交渉での交換条件となったのが、魔王ナハトとの婚姻である。
ソフィアはナハトと正式な夫婦になるため、婚姻の儀を改めて開くことになった。
魔王は今や王国を救った英雄だ。
国王は顔の整った魔王に王女を差し出そうとしたが、魔王は謹んで固辞した。彼には既に、ソフィアという運命の伴侶がいたのだから。
魔国式の婚姻の儀では、お互いの恋愛感情を打ち明け合う風習がある。
互いの気持ちを再確認し、それをお互いに了承した上で、夫婦となるのだ。
「ソフィア、俺は嫉妬深いし強欲で傲慢だ。今まで俺はお前の気持ちを考えず、無理やりデートに連れ出したり、手紙を送り付けたりもしたが……これからはお前の気持ちにも、きちんと向き合いたい。俺はニンゲンと魔族の立場を超えて、支え合うために尽力する。どうか、これを受け取ってくれないか」
ナハトが差し出したのは、彼が丹精込めて育てた薔薇を使ったブーケだ。彼がソフィアを想って手作りしたのが伺える。
ソフィアもナハトに向かって、唇を開く。
「私の冒険は、お前を討ち倒すためのものだった。『魔寄せの力』のせいで、村を追放され、長い長い旅をして……この力が、本当に嫌だった。ナハトが魔王だと知ったときも、連れ去られたときも、私の心は憎しみに染まっていた。けれど、お前と一緒に過ごすうちに、本当に私を想ってくれていることを知って、戸惑って……いつの間にか、私もお前が好きになっていた。これから先は、王国と魔国を往復することになる。大変な生活になるだろうけど、私はお前と一緒に歩んでいきたい」
そうして、ソフィアはナハトの薔薇のブーケを受け取った。
教会には、村から招待され、遠路はるばるやってきてくれた両親がソフィアを見守っている。
ナハトがそっとソフィアの顔を覆っているヴェールを指で持ち上げて、顔を近づける。
ソフィアは目を閉じて、ナハトの唇を受け入れたのであった。
――こうして、『魔寄せの娘』ソフィアは、魔王と結ばれ、幸せな生活への一歩を踏み出したのである。
〈了〉
ソフィアの冒険と愛の結末が、この教会でひとつの終焉を迎えようとしていた。
勇者モルゲンの死によって一時は混乱に陥っていた王国モルゲナだったが、ソフィアや王国騎士団から報告を受け、事情を知った国王は、「長年信仰してきた勇者がただの化け物だったなんて」と嘆いていた。
ソフィアは国王から直々に「王魔親善大使」の称号を得た。要するに王国と魔国の橋渡しとして、二国間の関係改善に奔走する役職だ。
彼女の魔国への交渉により、魔族は二度と人間を襲わないと約束し、王国から魔物を連れて引き上げ、すべての魔族と魔物が魔国へと戻った。
その交渉での交換条件となったのが、魔王ナハトとの婚姻である。
ソフィアはナハトと正式な夫婦になるため、婚姻の儀を改めて開くことになった。
魔王は今や王国を救った英雄だ。
国王は顔の整った魔王に王女を差し出そうとしたが、魔王は謹んで固辞した。彼には既に、ソフィアという運命の伴侶がいたのだから。
魔国式の婚姻の儀では、お互いの恋愛感情を打ち明け合う風習がある。
互いの気持ちを再確認し、それをお互いに了承した上で、夫婦となるのだ。
「ソフィア、俺は嫉妬深いし強欲で傲慢だ。今まで俺はお前の気持ちを考えず、無理やりデートに連れ出したり、手紙を送り付けたりもしたが……これからはお前の気持ちにも、きちんと向き合いたい。俺はニンゲンと魔族の立場を超えて、支え合うために尽力する。どうか、これを受け取ってくれないか」
ナハトが差し出したのは、彼が丹精込めて育てた薔薇を使ったブーケだ。彼がソフィアを想って手作りしたのが伺える。
ソフィアもナハトに向かって、唇を開く。
「私の冒険は、お前を討ち倒すためのものだった。『魔寄せの力』のせいで、村を追放され、長い長い旅をして……この力が、本当に嫌だった。ナハトが魔王だと知ったときも、連れ去られたときも、私の心は憎しみに染まっていた。けれど、お前と一緒に過ごすうちに、本当に私を想ってくれていることを知って、戸惑って……いつの間にか、私もお前が好きになっていた。これから先は、王国と魔国を往復することになる。大変な生活になるだろうけど、私はお前と一緒に歩んでいきたい」
そうして、ソフィアはナハトの薔薇のブーケを受け取った。
教会には、村から招待され、遠路はるばるやってきてくれた両親がソフィアを見守っている。
ナハトがそっとソフィアの顔を覆っているヴェールを指で持ち上げて、顔を近づける。
ソフィアは目を閉じて、ナハトの唇を受け入れたのであった。
――こうして、『魔寄せの娘』ソフィアは、魔王と結ばれ、幸せな生活への一歩を踏み出したのである。
〈了〉
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