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第2話 どうやら私は聖女らしい
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酒で酔い潰れた私――愛別璃玖は、眩しい光が目蓋に差し込み、目が覚めた。
「んん……?」
もう朝になったのだろうか。しかし、酒を飲んでた時は夜だったからカーテンを閉めたはずだし、家のカーテンは遮光性の高いものだ。一人暮らしだから誰かが開けたということもないだろう。
ひとまず目を開けて辺りを見回すと、そこは私の家ではなかった。
なんだか、例えるならギリシャの神殿みたいな、真っ白い空間。
「おお、目を覚ましたぞ」
「なんかこの聖女様、酒臭くないか?」
私の寝ていた場所には魔法陣のようなものが描かれ、僧侶のような人たちがぐるりと取り囲んでいる。
「え、な、なに……?」
状況が上手く呑み込めず固まってしまった私に、僧侶のひとりが話しかける。
「私の言葉はわかりますか?」
「え、あ、はい」
「うむ、言語統一も上手くいったようだ」別の僧侶は満足気にうなずく。
「突然召喚してしまい、混乱なさっておられるかと存じますので、ご説明致します」
言語統一……? 召喚……?
置いてけぼりの私が話についてこれるように、僧侶は説明してくれる。
「あなたは異世界からこの世界に召喚された聖女様なのです」
「せいじょ……」
「我々の言葉が通じるのは、言語統一の術式が上手くいったおかげです。少なくともこの世界であなたが言葉が通じず困ることはないでしょう」
「はあ……それはありがとうございます」
なんだろう、夢でも見てるんだろうか。それとも、酒の飲みすぎで幻覚を見てる?
「――聖女様は無事召喚できたようだな」
凛とした女の声がする。声のする方向へ視線を向けて、私は己の目を疑った。
「べ……ベルガ様!?」
「む、私の名をご存知でしたか」
その女性は、紛うことなきベルガモール・エヴァンその人だった。
……これは間違いなく夢だな。
でも、夢だとしても永遠に覚めなくていい。
「聖女様、お名前をお伺いしても?」
「り、璃玖……愛別璃玖です……」
「リク様、我々騎士団と共にこの国を救っていただきたい。……私に命運を預けていただけますか?」
「は、はいぃ……」
ベルガモールはにっこり微笑んで私の手の甲に口付けてくれた。
あぁ~、しゅきぃ……。溶けそう。
こうして私はわけも分からぬまま、聖女として担ぎあげられ、ベルガモールと行動を共にすることになるのであった。
〈続く〉
「んん……?」
もう朝になったのだろうか。しかし、酒を飲んでた時は夜だったからカーテンを閉めたはずだし、家のカーテンは遮光性の高いものだ。一人暮らしだから誰かが開けたということもないだろう。
ひとまず目を開けて辺りを見回すと、そこは私の家ではなかった。
なんだか、例えるならギリシャの神殿みたいな、真っ白い空間。
「おお、目を覚ましたぞ」
「なんかこの聖女様、酒臭くないか?」
私の寝ていた場所には魔法陣のようなものが描かれ、僧侶のような人たちがぐるりと取り囲んでいる。
「え、な、なに……?」
状況が上手く呑み込めず固まってしまった私に、僧侶のひとりが話しかける。
「私の言葉はわかりますか?」
「え、あ、はい」
「うむ、言語統一も上手くいったようだ」別の僧侶は満足気にうなずく。
「突然召喚してしまい、混乱なさっておられるかと存じますので、ご説明致します」
言語統一……? 召喚……?
置いてけぼりの私が話についてこれるように、僧侶は説明してくれる。
「あなたは異世界からこの世界に召喚された聖女様なのです」
「せいじょ……」
「我々の言葉が通じるのは、言語統一の術式が上手くいったおかげです。少なくともこの世界であなたが言葉が通じず困ることはないでしょう」
「はあ……それはありがとうございます」
なんだろう、夢でも見てるんだろうか。それとも、酒の飲みすぎで幻覚を見てる?
「――聖女様は無事召喚できたようだな」
凛とした女の声がする。声のする方向へ視線を向けて、私は己の目を疑った。
「べ……ベルガ様!?」
「む、私の名をご存知でしたか」
その女性は、紛うことなきベルガモール・エヴァンその人だった。
……これは間違いなく夢だな。
でも、夢だとしても永遠に覚めなくていい。
「聖女様、お名前をお伺いしても?」
「り、璃玖……愛別璃玖です……」
「リク様、我々騎士団と共にこの国を救っていただきたい。……私に命運を預けていただけますか?」
「は、はいぃ……」
ベルガモールはにっこり微笑んで私の手の甲に口付けてくれた。
あぁ~、しゅきぃ……。溶けそう。
こうして私はわけも分からぬまま、聖女として担ぎあげられ、ベルガモールと行動を共にすることになるのであった。
〈続く〉
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