2 / 9
第2話 どうやら私は聖女らしい
しおりを挟む
酒で酔い潰れた私――愛別璃玖は、眩しい光が目蓋に差し込み、目が覚めた。
「んん……?」
もう朝になったのだろうか。しかし、酒を飲んでた時は夜だったからカーテンを閉めたはずだし、家のカーテンは遮光性の高いものだ。一人暮らしだから誰かが開けたということもないだろう。
ひとまず目を開けて辺りを見回すと、そこは私の家ではなかった。
なんだか、例えるならギリシャの神殿みたいな、真っ白い空間。
「おお、目を覚ましたぞ」
「なんかこの聖女様、酒臭くないか?」
私の寝ていた場所には魔法陣のようなものが描かれ、僧侶のような人たちがぐるりと取り囲んでいる。
「え、な、なに……?」
状況が上手く呑み込めず固まってしまった私に、僧侶のひとりが話しかける。
「私の言葉はわかりますか?」
「え、あ、はい」
「うむ、言語統一も上手くいったようだ」別の僧侶は満足気にうなずく。
「突然召喚してしまい、混乱なさっておられるかと存じますので、ご説明致します」
言語統一……? 召喚……?
置いてけぼりの私が話についてこれるように、僧侶は説明してくれる。
「あなたは異世界からこの世界に召喚された聖女様なのです」
「せいじょ……」
「我々の言葉が通じるのは、言語統一の術式が上手くいったおかげです。少なくともこの世界であなたが言葉が通じず困ることはないでしょう」
「はあ……それはありがとうございます」
なんだろう、夢でも見てるんだろうか。それとも、酒の飲みすぎで幻覚を見てる?
「――聖女様は無事召喚できたようだな」
凛とした女の声がする。声のする方向へ視線を向けて、私は己の目を疑った。
「べ……ベルガ様!?」
「む、私の名をご存知でしたか」
その女性は、紛うことなきベルガモール・エヴァンその人だった。
……これは間違いなく夢だな。
でも、夢だとしても永遠に覚めなくていい。
「聖女様、お名前をお伺いしても?」
「り、璃玖……愛別璃玖です……」
「リク様、我々騎士団と共にこの国を救っていただきたい。……私に命運を預けていただけますか?」
「は、はいぃ……」
ベルガモールはにっこり微笑んで私の手の甲に口付けてくれた。
あぁ~、しゅきぃ……。溶けそう。
こうして私はわけも分からぬまま、聖女として担ぎあげられ、ベルガモールと行動を共にすることになるのであった。
〈続く〉
「んん……?」
もう朝になったのだろうか。しかし、酒を飲んでた時は夜だったからカーテンを閉めたはずだし、家のカーテンは遮光性の高いものだ。一人暮らしだから誰かが開けたということもないだろう。
ひとまず目を開けて辺りを見回すと、そこは私の家ではなかった。
なんだか、例えるならギリシャの神殿みたいな、真っ白い空間。
「おお、目を覚ましたぞ」
「なんかこの聖女様、酒臭くないか?」
私の寝ていた場所には魔法陣のようなものが描かれ、僧侶のような人たちがぐるりと取り囲んでいる。
「え、な、なに……?」
状況が上手く呑み込めず固まってしまった私に、僧侶のひとりが話しかける。
「私の言葉はわかりますか?」
「え、あ、はい」
「うむ、言語統一も上手くいったようだ」別の僧侶は満足気にうなずく。
「突然召喚してしまい、混乱なさっておられるかと存じますので、ご説明致します」
言語統一……? 召喚……?
置いてけぼりの私が話についてこれるように、僧侶は説明してくれる。
「あなたは異世界からこの世界に召喚された聖女様なのです」
「せいじょ……」
「我々の言葉が通じるのは、言語統一の術式が上手くいったおかげです。少なくともこの世界であなたが言葉が通じず困ることはないでしょう」
「はあ……それはありがとうございます」
なんだろう、夢でも見てるんだろうか。それとも、酒の飲みすぎで幻覚を見てる?
「――聖女様は無事召喚できたようだな」
凛とした女の声がする。声のする方向へ視線を向けて、私は己の目を疑った。
「べ……ベルガ様!?」
「む、私の名をご存知でしたか」
その女性は、紛うことなきベルガモール・エヴァンその人だった。
……これは間違いなく夢だな。
でも、夢だとしても永遠に覚めなくていい。
「聖女様、お名前をお伺いしても?」
「り、璃玖……愛別璃玖です……」
「リク様、我々騎士団と共にこの国を救っていただきたい。……私に命運を預けていただけますか?」
「は、はいぃ……」
ベルガモールはにっこり微笑んで私の手の甲に口付けてくれた。
あぁ~、しゅきぃ……。溶けそう。
こうして私はわけも分からぬまま、聖女として担ぎあげられ、ベルガモールと行動を共にすることになるのであった。
〈続く〉
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

ハナノカオリ
桜庭かなめ
恋愛
女子高に進学した坂井遥香は入学式当日、校舎の中で迷っているところをクラスメイトの原田絢に助けられ一目惚れをする。ただ、絢は「王子様」と称されるほどの人気者であり、彼女に恋をする生徒は数知れず。
そんな絢とまずはどうにか接したいと思った遥香は、絢に入学式の日に助けてくれたお礼のクッキーを渡す。絢が人気者であるため、遥香は2人きりの場で絢との交流を深めていく。そして、遥香は絢からの誘いで初めてのデートをすることに。
しかし、デートの直前、遥香の元に絢が「悪魔」であると告発する手紙と見知らぬ女の子の写真が届く。
絢が「悪魔」と称されてしまう理由は何なのか。写真の女の子とは誰か。そして、遥香の想いは成就するのか。
女子高に通う女の子達を中心に繰り広げられる青春ガールズラブストーリーシリーズ! 泣いたり。笑ったり。そして、恋をしたり。彼女達の物語をお楽しみください。
※全話公開しました(2020.12.21)
※Fragranceは本編で、Short Fragranceは短編です。Short Fragranceについては読まなくても本編を読むのに支障を来さないようにしています。
※Fragrance 8-タビノカオリ-は『ルピナス』という作品の主要キャラクターが登場しております。
※お気に入り登録や感想お待ちしています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる