ラブ米書いてみた

永久保セツナ

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ラブ米書いてみた~スリーアウト~

第11話(最終話)ふたりの早すぎるバレンタイン

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放課後。
俺はいつものように二年の雪華の教室に来ている。
雪華ゆきか、バレンタインのチョコくれよ」
「先輩の体内時計はどこまで狂ってるんですか。今、春から夏になるところなんですけど」
「だってさー、二月になったら俺受験じゃん。チョコもらうどころじゃないから、今もらっとこうかな~って思ってさ」
「そういうことですか。でも、急に言われてもチョコなんて……ありました」
「あったの!?」
雪華は鞄の中を見て言った。俺は顔を上げる。
「チ●ルチョコと板チョコ、どっちがいいですか」
「あ、やっぱその程度ですよね……って、チ●ルチョコで済ます気か! 先輩に向かって恐ろしい子! ……あ、そうだ。板チョコを加工してハート型にして、俺にくれればいいじゃん」
今日は料理部の活動日じゃないから、生徒は誰でも家庭科室を使えるはずだ。女の子らしく目の前で料理してる雪華が見たい。
「加工……ですか。わかりました」
と言いながら、何故か筆箱を取り出す雪華。
「ハート型は難しそうですが、善処してみましょう」
と言いながら、筆箱からカッターを取り出す雪華。
「ストップ!!」
思わず俺は叫んだ。
「何ですか」
遅かった。
雪華は既に板チョコにカッターを差し込んで、ザクザク切っていた。
「できました。さあ、どうぞお召し上がりください」
ハート型の板チョコを俺に差し出す雪華。
「…………食えるかあああああ! そんな筆箱の中に入れっぱなしのカッターで切ったチョコなんて食えるかああああああ!」
「人に加工しろと言っておいて、何ですかそれ」
言いながら、雪華は余ったチョコをモリモリ食べている。……よく食えるな、この子。
「もういいよ! どうせ俺のこと嫌いなんだろ!? まともなチョコも食わせたくないほど俺が嫌いなんだろおおおお!? だったら友達になるとか言うんじゃねえよアホおおおおお!」
俺は泣きながら机に突っ伏した。
「……誰が嫌いなんて言いましたか……」
雪華は静かにボソッと言った。
「……ふえ?」
俺は涙と鼻水ダダ漏れの顔を上げて雪華を見た。
「汚い顔ですね」
雪華はティッシュでそっと俺の顔を拭く。
「チロ●チョコで良ければ食べますか」
「え、……あ、うん。そんで、今何か言ってた?」
「……別に何も」
チョコはミルクが入って甘かった。

〈了〉

おまけ

狗郎くろう「ホワイトデーは五十倍返しするからなっ♪」
雪華ゆきか「●ロルチョコ五十個もいりません」
狗郎「……そういう発想か。そうじゃなくて、ブランドバッグとかさ」
雪華「五百円じゃバッグは買えないでしょう。それに私、ブランド物には興味ないので、普通にクッキーでお願いします」
狗郎「よっし! じゃあ、手作りクッキー御馳走してやるぜ!」
雪華「すいません、やっぱ今のなしで」
狗郎「なんでだよ!」
雪華「先輩、クッキーに変な薬物混入させそうな気がします」
狗郎「………………いや、そ、そんなことないよ?(滝汗)」
雪華「……図星ですか」

おわれ。
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