ラブ米書いてみた

永久保セツナ

文字の大きさ
上 下
7 / 11
ラブ米書いてみた~セカンドシーズン~

第7話 雪華以上の男嫌い

しおりを挟む
昼休み。

俺は二年の教室に一応向かってみたが、前来た時と同じく、雪華ゆきかはいなかった。どこにいるんだ、あいつ。
学校中をさまよってみる。
食堂にも中庭にもいない。
あ、そうだ、ケータイ…………
…………雪華の番号知らない。
彼氏が彼女の番号を知らないのはおかしい。今度会ったら聞いておかないと。
あ、そうだ、屋上。
こんな天気のいい日だ、きっとあいつ、ひなたぼっこしながら弁当を食ってるに違いない。
待ってろ、今行くぞ☆
俺は、屋上への階段を上った。
屋上に出ると、誰かの話し声が聞こえる。
黒いストレートの長髪の女と、艶のある黒い短髪の雪華がいた。
長髪の女は和服の似合いそうな、雪華と日本情緒的な雰囲気が似ている美人だ。確か、学校内でも一、二位を争う男子人気の……名前なんだっけ。
「……下田狗郎先輩と付き合ってるって本当なの? 雪華……」
夜貴子よきこ、誰から聞いたんだ、そんな話……」
「みんな知ってるわよ。あの男が学校中に自慢して回ってるから」
「っ……あの、ド阿呆が……。付き合ってはいない。ただの友達だ」
「友達? 男が……友達? 雪華……どうして? 中学の時、男は女の敵だって、十分思い知ったでしょう?」
「夜貴子……?」
「男は、女の下僕よ。友達など、論外。男なんかに、雪華は渡さない……」
……
……えー……?
何、この危ない会話。
「あの~……雪華?」
「あ、先輩」
雪華に声をかけると、雪華が気づいた。
長髪の女も、こちらを睨む。
下田しもだ……狗郎くろう……」
「あの……一緒に弁当……無理、ですよ、ね」
「天誅!!」
長髪の女が持っていた箸を投げつけた。
「ギャ――ッ!!」
箸が俺の顔をかすめて壁に刺さる。
何この人やばい!
「こらっ、夜貴子! 壁に穴開けちゃダメだろ」
雪華が夜貴子とかいう女をたしなめる。
「やだ、私ったら……穴が開くなんて……」
「俺の心配をしろ! もう少しで俺に穴が開くところだよ!」
「貴方なんか、どうなっても構わないわよ」
夜貴子が言い捨てた。
「よくも、私の雪華をたぶらかしたわね! 下田狗郎……赦さない……!」
「雪華、通訳してくれ。この子、多分日本語をよく知らないだけだろ? 帰国子女なんだよな?」
「通訳しますと、『よくも、私の雪華をたぶらかしたわね! 下田狗郎……赦さない……!』になりますけど」雪華は相変わらずの無表情で言った。
「そのまんま言ってるだけじゃねーか!」
「すいません、私、女の子にもてるもので」
と、雪華は自分で言った。「ちなみにこの子は中学からの友人で、御門みかど夜貴子よきこと言います」
「敵に名乗る必要はないわ、雪華」
夜貴子は雪華を守るようにしながら、俺を睨みつける。
「敵、って……雪華、この子……」
「ええ、私と同じ、いや、それ以上の男嫌いです」
「雪華を呼び捨てしないで。呼び捨てていいのは私だけよ!」
「男嫌いとかそれ以前に何かアブノーマルな感じがするんだが……」
なんか、この夜貴子って子と雪華を一緒にしてはいけない気がする。美人なのに俺でもひくな、夜貴子ちゃん。
「夜貴子、落ち着け。友達になると最終的に決めたのは私だ。こんなアホ面した男ふぜいに、この私がたぶらかされるわけないだろう?」
「失礼にもホドがあると思うんだけど!」
あれ? 俺、なんか泣きそう。
「それもそうだけど……」
夜貴子が納得しているようだ。激しく無念。
「下田狗郎……これだけは言っておくわ。納得いかないけど、何故か雪華と貴方はお友達。あくまでお友達」
何回も言わないで。くじけそう……。
「もし友達の範囲を超えた行動をしたら……『この世には女以外いらないと思わないか同盟』の会長として、貴方を粛清するわ!」
「何その反社会的同盟!?」
「略して『男死ね同盟』です」
雪華が補足説明した。
「略って言えるのソレ!?」
「とりあえず、立ち話していても仕方ないので、さっさとお昼食べませんか?」
言いながら、既に雪華は弁当を広げ始めている。絶対こいつ、自分が腹減ってるだけだ。
「男と一緒に昼ごはん? 変な病気うつされそう。狂犬病とか」夜貴子が顔をしかめた。
「犬扱い!?」
「それもそうだな。じゃあ、先輩帰って下さい」
「チクショー! あんまりだ!」
結局その日の昼は、狼路ろうじと食べた。

〈続く〉
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕(じゃない人)が幸せにします。

暇魷フミユキ
恋愛
【副題に☆が付いている話だけでだいたい分かります!】 ・第1章  彼、〈君島奏向〉の悩み。それはもし将来、恋人が、妻ができたとしても、彼女を不幸にすることだった。  そんな彼を想う二人。  席が隣でもありよく立ち寄る喫茶店のバイトでもある〈草壁美頼〉。  所属する部の部長でたまに一緒に帰る仲の〈西沖幸恵〉。  そして彼は幸せにする方法を考えつく―――― 「僕よりもっと相応しい人にその好意が向くようにしたいんだ」  本当にそんなこと上手くいくのか!?  それで本当に幸せなのか!?  そもそも幸せにするってなんだ!? ・第2章  草壁・西沖の二人にそれぞれの相応しいと考える人物を近付けるところまでは進んだ夏休み前。君島のもとにさらに二人の女子、〈深町冴羅〉と〈深町凛紗〉の双子姉妹が別々にやってくる。  その目的は―――― 「付き合ってほしいの!!」 「付き合ってほしいんです!!」  なぜこうなったのか!?  二人の本当の想いは!?  それを叶えるにはどうすれば良いのか!? ・第3章  文化祭に向け、君島と西沖は映像部として広報動画を撮影・編集することになっていた。  君島は西沖の劇への参加だけでも心配だったのだが……  深町と付き合おうとする別府!  ぼーっとする深町冴羅!  心配事が重なる中無事に文化祭を成功することはできるのか!? ・第4章  二年生は修学旅行と進路調査票の提出を控えていた。  期待と不安の間で揺れ動く中で、君島奏向は決意する―― 「僕のこれまでの行動を二人に明かそうと思う」  二人は何を思い何をするのか!?  修学旅行がそこにもたらすものとは!?  彼ら彼女らの行く先は!? ・第5章  冬休みが過ぎ、受験に向けた勉強が始まる二年生の三学期。  そんな中、深町凛紗が行動を起こす――  君島の草津・西沖に対するこれまでの行動の調査!  映像部への入部!  全ては幸せのために!  ――これは誰かが誰かを幸せにする物語。 ここでは毎日1話ずつ投稿してまいります。 作者ページの「僕(じゃない人)が幸せにします。(「小説家になろう」投稿済み全話版)」から全話読むこともできます!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

処理中です...