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第四章 暗殺者の選択編
第157話 ホテルで合流
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「かぁ~最初は調子いいと思ったのになぁ!」
コロシアムを出た後、イザベラが髪の毛を掻き毟りながらボヤいた。最初こそ随分と調子良かったわけだが俺の試合が終わった直後から雲行きが怪しくなっていた。
俺からすれば負けこんだ時点でやめておけばいいものをと思ってしまうが、イザベラは熱くなるとなかなか冷静にはなれない性分だったようだ。
結局負け分を取り戻そうと更に多く賭けていき結局そのまま負け越してしまった。運営からすれば良い鴨だな。
「それで結局幾らになったのよ?」
「……リョウガに渡した分を差し引いたらトントンだよ」
「ハハッ。それは残念でしたな。ですがまだ負けで終わらなかっただけ良かったではないですか」
話を聞いていたモンドが笑って言った。確かにマイナスにならなかったならそれで十分だろう。
「はぁ。結局リョウガの一人勝ちかよ」
「リョウガはそもそも賭けてないわけだしねぇ」
俺を羨ましそうに見るイザベラだがパルコの言う通り俺は別に賭けて儲けたわけじゃない。まぁ想定外の稼ぎでもあるけどな。
「ま、遊べたと思って満足しておくかね」
結局イザベラも負けてはいないと自分に言い聞かせ納得したようだ。
コロシアムを出た頃には日も傾き薄暗くなって来ていたので馬車に乗り込みホテルに戻ることになった。
この時間になると往来を歩く人々の数も減ってきた。ただ大きい都市だけあってか通りにはランプが設置されておりそれなりに明かりは確保されている。あれも魔導の設備なのだろう。明るさとしては俺のいた世界のガス灯程度か。
ガス灯に照らされた馬車道をカタカタと音を鳴らしながら馬車は進んでいく。ホテルに向かうまでの時間はどこか落ち着いた雰囲気があった。
「あ、リョウガ!」
ホテルに着き馬車から降りるとほぼ同じタイミングで俺を呼ぶ声が聞こえてきた。落ち着いた空気が一瞬にして破られた瞬間だった。
「リョウガ。お疲れ様だね! そっちはどうだったの?」
「別に普通に仕事をこなしただけだ」
ホテルについたタイミングでマリスたちとも合流した。人数が揃うと随分と賑やかに感じるな。
「丁度よかったぜ。ホテルに戻ってから暫く待つかと思ったからな」
「確かにいいタイミングでしたね」
後ろからゴングとクルスがやってきて言った。別に待っていなくても先に部屋に戻ることも出来ただろうが護衛の任務で受けている手前、依頼者より先に戻るわけにはいかないと考えたのだろうな。
「あんたらは結局今日は何してたんだい?」
「まぁこっちはこっちで大変ではあったぜ。先ずはマリスがな」
ホテルに入りモンドがカウンターに向かっている間にゴングが話してくれたが、マリスがまたやらかしたようだな。
「全くおかげでまた妙な連中に絡まれることになったぜ」
「ハハッ、お互いただでは済まないってわけだ」
「やれやれ。相変わらず考えなしだなお前は」
「うぅ、あ、でもリョウガ! おかげでこっちでスカーレッドと再会出来たんだよ!」
マリスが嬉しそうに言った。何が、おかげで、なのかよくわからないが、どうやらスカーレッドもオークションの仕事でこのトルネイルに乗り込んでいるらしい。
「それで、スカーレッドはダリバの為に義足を買いに来たんだって。いいところあるよね」
「そうか」
別に聞いてもいないのに勝手に情報が入ってくるな。しかしダリバの義足か――スカーレッドも罪悪感があったのかもな。もっともそれ以外の感情も入っているのかもしれないが俺にはどうでもいいことだ。
「皆、お疲れだろうからな。食事時間まで部屋で休むなり大浴場でくつろぐなりしておくとよいだろう。明日はいよいよオークションも始まりますからな。しっかり英気を養うといい」
鍵をそれぞれの代表に渡しながらモンドが言った。食事は全員揃って摂るようだが、それまでは自由なようだな。
そして俺たちは再びホテルのエレベーターに乗り込んだわけだが。
「相変わらずだらしないねぇ」
「う、うるせぇ!」
「やれやれ見かけは強面なのに根性ないわねぇ」
「グッ!」
エレベーターではゴングが目を瞑って決してあけようとしなかった。そんなゴングをからかうイザベラと呆れるパルコ。最初はゴングみたいに怖がっていたイザベラも完全になれてしまっているな。
そして部屋に戻りとりあえず着替えを済ませた。長丁場だからな俺も着替えぐらいは持ってきている。
「ところでそっちは今日はどうだったんだ? イザベラの話しぶりからすると何かあったようだが」
「別に。モンドに付き添ってコロシアムに行っただけだ」
「コロシアムですか。私には縁のない場所ですね」
クルスが苦笑まじりに言った。聖職者に近い立ち位置のようだからな血なまぐさい場所は好まないのだろう。
「なんだ。結局試合を見ていただけか」
「まぁ、試合に出ることにはなったがな」
「ふ~ん。て、お前! コロシアムで試合したのかよ!」
「そんな気はなかったが流れでな」
「マジかよ。本当お前もタダでは終わらねぇ奴だな」
そう言ってゴングが肩を竦めた。
「ふぅ、しかし今日も疲れたからな。折角だから大浴場ってのに行ってみようぜ」
「そうですね。私も体を清めたい気分ですからリョウガも行きますよね?」
二人が風呂に誘ってきた。これから食事に行くのもあるから流石に汗臭いままとはいかないか。
「あぁ、行くよ」
そして俺たちは大浴場に向かうことになった――
コロシアムを出た後、イザベラが髪の毛を掻き毟りながらボヤいた。最初こそ随分と調子良かったわけだが俺の試合が終わった直後から雲行きが怪しくなっていた。
俺からすれば負けこんだ時点でやめておけばいいものをと思ってしまうが、イザベラは熱くなるとなかなか冷静にはなれない性分だったようだ。
結局負け分を取り戻そうと更に多く賭けていき結局そのまま負け越してしまった。運営からすれば良い鴨だな。
「それで結局幾らになったのよ?」
「……リョウガに渡した分を差し引いたらトントンだよ」
「ハハッ。それは残念でしたな。ですがまだ負けで終わらなかっただけ良かったではないですか」
話を聞いていたモンドが笑って言った。確かにマイナスにならなかったならそれで十分だろう。
「はぁ。結局リョウガの一人勝ちかよ」
「リョウガはそもそも賭けてないわけだしねぇ」
俺を羨ましそうに見るイザベラだがパルコの言う通り俺は別に賭けて儲けたわけじゃない。まぁ想定外の稼ぎでもあるけどな。
「ま、遊べたと思って満足しておくかね」
結局イザベラも負けてはいないと自分に言い聞かせ納得したようだ。
コロシアムを出た頃には日も傾き薄暗くなって来ていたので馬車に乗り込みホテルに戻ることになった。
この時間になると往来を歩く人々の数も減ってきた。ただ大きい都市だけあってか通りにはランプが設置されておりそれなりに明かりは確保されている。あれも魔導の設備なのだろう。明るさとしては俺のいた世界のガス灯程度か。
ガス灯に照らされた馬車道をカタカタと音を鳴らしながら馬車は進んでいく。ホテルに向かうまでの時間はどこか落ち着いた雰囲気があった。
「あ、リョウガ!」
ホテルに着き馬車から降りるとほぼ同じタイミングで俺を呼ぶ声が聞こえてきた。落ち着いた空気が一瞬にして破られた瞬間だった。
「リョウガ。お疲れ様だね! そっちはどうだったの?」
「別に普通に仕事をこなしただけだ」
ホテルについたタイミングでマリスたちとも合流した。人数が揃うと随分と賑やかに感じるな。
「丁度よかったぜ。ホテルに戻ってから暫く待つかと思ったからな」
「確かにいいタイミングでしたね」
後ろからゴングとクルスがやってきて言った。別に待っていなくても先に部屋に戻ることも出来ただろうが護衛の任務で受けている手前、依頼者より先に戻るわけにはいかないと考えたのだろうな。
「あんたらは結局今日は何してたんだい?」
「まぁこっちはこっちで大変ではあったぜ。先ずはマリスがな」
ホテルに入りモンドがカウンターに向かっている間にゴングが話してくれたが、マリスがまたやらかしたようだな。
「全くおかげでまた妙な連中に絡まれることになったぜ」
「ハハッ、お互いただでは済まないってわけだ」
「やれやれ。相変わらず考えなしだなお前は」
「うぅ、あ、でもリョウガ! おかげでこっちでスカーレッドと再会出来たんだよ!」
マリスが嬉しそうに言った。何が、おかげで、なのかよくわからないが、どうやらスカーレッドもオークションの仕事でこのトルネイルに乗り込んでいるらしい。
「それで、スカーレッドはダリバの為に義足を買いに来たんだって。いいところあるよね」
「そうか」
別に聞いてもいないのに勝手に情報が入ってくるな。しかしダリバの義足か――スカーレッドも罪悪感があったのかもな。もっともそれ以外の感情も入っているのかもしれないが俺にはどうでもいいことだ。
「皆、お疲れだろうからな。食事時間まで部屋で休むなり大浴場でくつろぐなりしておくとよいだろう。明日はいよいよオークションも始まりますからな。しっかり英気を養うといい」
鍵をそれぞれの代表に渡しながらモンドが言った。食事は全員揃って摂るようだが、それまでは自由なようだな。
そして俺たちは再びホテルのエレベーターに乗り込んだわけだが。
「相変わらずだらしないねぇ」
「う、うるせぇ!」
「やれやれ見かけは強面なのに根性ないわねぇ」
「グッ!」
エレベーターではゴングが目を瞑って決してあけようとしなかった。そんなゴングをからかうイザベラと呆れるパルコ。最初はゴングみたいに怖がっていたイザベラも完全になれてしまっているな。
そして部屋に戻りとりあえず着替えを済ませた。長丁場だからな俺も着替えぐらいは持ってきている。
「ところでそっちは今日はどうだったんだ? イザベラの話しぶりからすると何かあったようだが」
「別に。モンドに付き添ってコロシアムに行っただけだ」
「コロシアムですか。私には縁のない場所ですね」
クルスが苦笑まじりに言った。聖職者に近い立ち位置のようだからな血なまぐさい場所は好まないのだろう。
「なんだ。結局試合を見ていただけか」
「まぁ、試合に出ることにはなったがな」
「ふ~ん。て、お前! コロシアムで試合したのかよ!」
「そんな気はなかったが流れでな」
「マジかよ。本当お前もタダでは終わらねぇ奴だな」
そう言ってゴングが肩を竦めた。
「ふぅ、しかし今日も疲れたからな。折角だから大浴場ってのに行ってみようぜ」
「そうですね。私も体を清めたい気分ですからリョウガも行きますよね?」
二人が風呂に誘ってきた。これから食事に行くのもあるから流石に汗臭いままとはいかないか。
「あぁ、行くよ」
そして俺たちは大浴場に向かうことになった――
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