156 / 177
第四章 暗殺者の選択編
第154話 親切の裏側
しおりを挟む
「ふぅ、やっと終わったな」
「思ったより手続きに手間取りましたね」
首をコキコキ鳴らすゴングを見ながらクルスも疲れた顔で同調した。スカーレッドの案内で無事ギルドにたどり着いた一行はそこで道中に出くわした盗賊の件を話した。
その際に切り取った耳も渡したのだが、なまじ懸賞金の懸かっている上に巷を騒がせていた盗賊団だったのが話をややこしくさせた。
どうやらあまりに懸賞金が高額な賞金首だっただけに、虚偽報告も多かったらしくゴング一行も疑われてしまったのである。
「でも結果的に認めてもらってよかったじゃない」
「まぁそうなんだが、だったらさっさと鑑定出来るの準備しろって話だ」
マリスの言うように最終的には認められた。ギルドの鑑定士の鑑定結果で耳が本物と判明したからだ。しかしタイミング悪く鑑定士の仕事が忙しかった事もあり結構な時間待たされたというわけである。
「少しはこの街も見て回れるかと思ってたが、もうそれどころじゃねぇな」
「そうですね。せいぜい食事を摂るぐらいでしょうか」
「食事! だよね私もお腹が空いてたんだ~」
食事と聞いて喜ぶマリス。その流れでどこか探そうかと話す三人だったわけだが――
「お前らこれから食事なのか? だったら俺等が案内してやるよ」
ふと声が掛かり一行が振り返るとそこには四人の男女が立っていた。
「……誰だ?」
ゴングが訝しげに四人に問いかけた。話しかけてきた四人はにこやかな表情を崩さず答える。
「突然で驚いたかい? 実は俺たちも冒険者でね。この都市では長いこと活動しているからここにも随分と詳しくなったのさ」
「そうそう。だから隠れ家的な店も知ってるわよ」
「トルネイルは飲食店も多いからな。その分当たり外れも大きいんだ」
「だから折角だから私たちが案内してあげようと思ったんだよね」
四人の男女がそう答えるとマリスが顔を明るくさせた。
「丁度良かったよね。折角だから案内してもらおうよ」
「……いや断らせてもらう。折角だから自分たちの足で探してみたいからな」
「そうですね。親切心には感謝しますがこちらはこちらで探しますよ」
四人の申し出に好意的なマリスと違いゴングとクルスはあっさりとその申し出を断った。なんで? と疑問のマリスだったが次の瞬間、四人の表情が変化した。
「おいおいこっちは親切心でわざわざ案内してやるって言ってるんだぜ?」
「私たちはここでは先輩よ。ならもっと顔を立てるべきじゃない?」
「全く礼儀のなってない奴らだ。これは迷惑料を貰わないとな」
「そうそう。さっき懸賞金を受け取ってて随分と懐も温かそうだもんね♪」
口調も変化しどう考えても親切心で声を掛けてきたわけじゃないのは明白だった。四人の意図を察したマリスも表情を曇らせる。
「思った通りか。しかしまたあっさり本性を見せたな」
「悪いですがそんな邪な考えを持った連中に払うものなどありませんね」
「親切かと思ったのに騙されたかけたわよ。本当最低!」
声を掛けてきた四人の冒険者に対して拒否感を示す一行。すると四人がそれぞれ武器や杖を構えだした。
「どうやら色々と教育が必要そうだな」
「お前らこんな人通りの多い往来で本気か?」
ゴングが眉を顰めた。彼が言うように現状それなりに人通りが激しい。四人が武器を取り出したのを見て足を止めて注目し始めているのもいるぐらいだが――
「全く依頼が被ったぐらいで勘弁してよ。みんな落ち着きなって」
杖を持った女が大声でそんなことをいい出した。
「うるせぇこっちにも意地があんだよ」
「あの依頼はこっちが先に目をつけてたんだからな」
「本当やめなって~」
白々しくなるような四人のやり取りだったが、それを耳にした通行人は途端に興味を無くしたようであり。
「何だ冒険者連中の喧嘩か」
「全くよくやるわね」
そんなことを口にしながら何事も無いように素通りしていく人々。マリスも目を白黒させた。
「驚いたか? トルネイルはデカい街だ。それだけに冒険者も多いしいざこざも絶えないんだよ」
「良くも悪くも街の人間はそれに慣れちゃってるってわけ」
「武器を取り出そうがそこまで興味はわかないってことだ」
「そういうこと。謝って金を支払うなら今のうちだよ♪」
一向にニヤニヤしながらそう告げる四人であった。どうやら人の多い往来であってもここでは関係ないようである――
「思ったより手続きに手間取りましたね」
首をコキコキ鳴らすゴングを見ながらクルスも疲れた顔で同調した。スカーレッドの案内で無事ギルドにたどり着いた一行はそこで道中に出くわした盗賊の件を話した。
その際に切り取った耳も渡したのだが、なまじ懸賞金の懸かっている上に巷を騒がせていた盗賊団だったのが話をややこしくさせた。
どうやらあまりに懸賞金が高額な賞金首だっただけに、虚偽報告も多かったらしくゴング一行も疑われてしまったのである。
「でも結果的に認めてもらってよかったじゃない」
「まぁそうなんだが、だったらさっさと鑑定出来るの準備しろって話だ」
マリスの言うように最終的には認められた。ギルドの鑑定士の鑑定結果で耳が本物と判明したからだ。しかしタイミング悪く鑑定士の仕事が忙しかった事もあり結構な時間待たされたというわけである。
「少しはこの街も見て回れるかと思ってたが、もうそれどころじゃねぇな」
「そうですね。せいぜい食事を摂るぐらいでしょうか」
「食事! だよね私もお腹が空いてたんだ~」
食事と聞いて喜ぶマリス。その流れでどこか探そうかと話す三人だったわけだが――
「お前らこれから食事なのか? だったら俺等が案内してやるよ」
ふと声が掛かり一行が振り返るとそこには四人の男女が立っていた。
「……誰だ?」
ゴングが訝しげに四人に問いかけた。話しかけてきた四人はにこやかな表情を崩さず答える。
「突然で驚いたかい? 実は俺たちも冒険者でね。この都市では長いこと活動しているからここにも随分と詳しくなったのさ」
「そうそう。だから隠れ家的な店も知ってるわよ」
「トルネイルは飲食店も多いからな。その分当たり外れも大きいんだ」
「だから折角だから私たちが案内してあげようと思ったんだよね」
四人の男女がそう答えるとマリスが顔を明るくさせた。
「丁度良かったよね。折角だから案内してもらおうよ」
「……いや断らせてもらう。折角だから自分たちの足で探してみたいからな」
「そうですね。親切心には感謝しますがこちらはこちらで探しますよ」
四人の申し出に好意的なマリスと違いゴングとクルスはあっさりとその申し出を断った。なんで? と疑問のマリスだったが次の瞬間、四人の表情が変化した。
「おいおいこっちは親切心でわざわざ案内してやるって言ってるんだぜ?」
「私たちはここでは先輩よ。ならもっと顔を立てるべきじゃない?」
「全く礼儀のなってない奴らだ。これは迷惑料を貰わないとな」
「そうそう。さっき懸賞金を受け取ってて随分と懐も温かそうだもんね♪」
口調も変化しどう考えても親切心で声を掛けてきたわけじゃないのは明白だった。四人の意図を察したマリスも表情を曇らせる。
「思った通りか。しかしまたあっさり本性を見せたな」
「悪いですがそんな邪な考えを持った連中に払うものなどありませんね」
「親切かと思ったのに騙されたかけたわよ。本当最低!」
声を掛けてきた四人の冒険者に対して拒否感を示す一行。すると四人がそれぞれ武器や杖を構えだした。
「どうやら色々と教育が必要そうだな」
「お前らこんな人通りの多い往来で本気か?」
ゴングが眉を顰めた。彼が言うように現状それなりに人通りが激しい。四人が武器を取り出したのを見て足を止めて注目し始めているのもいるぐらいだが――
「全く依頼が被ったぐらいで勘弁してよ。みんな落ち着きなって」
杖を持った女が大声でそんなことをいい出した。
「うるせぇこっちにも意地があんだよ」
「あの依頼はこっちが先に目をつけてたんだからな」
「本当やめなって~」
白々しくなるような四人のやり取りだったが、それを耳にした通行人は途端に興味を無くしたようであり。
「何だ冒険者連中の喧嘩か」
「全くよくやるわね」
そんなことを口にしながら何事も無いように素通りしていく人々。マリスも目を白黒させた。
「驚いたか? トルネイルはデカい街だ。それだけに冒険者も多いしいざこざも絶えないんだよ」
「良くも悪くも街の人間はそれに慣れちゃってるってわけ」
「武器を取り出そうがそこまで興味はわかないってことだ」
「そういうこと。謝って金を支払うなら今のうちだよ♪」
一向にニヤニヤしながらそう告げる四人であった。どうやら人の多い往来であってもここでは関係ないようである――
75
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
クズスキル、〈タネ生成〉で創ったタネが実はユグドラシルだった件
Ryoha
ファンタジー
この木、デカくなるの早過ぎじゃね?
リクルス・アストリアは15歳の時、スキル授与の儀で〈タネ生成〉という誰も聞いたことのないスキルを授与された。侯爵家の三男として期待を一身に背負っていた彼にとって、それは失望と嘲笑を招くものでしかなかった。
「庭師にでもなるつもりか?」
「いや、庭師にすら向いてないだろうな!」
家族からも家臣からも見限られ、リクルスは荒れ果てた不毛の地「デザレイン」へと追放される。
その後リクルスはタネ生成を使ってなんとかデザレインの地で生き延びようとする。そこで手に入ったのは黒い色をした大きな種だった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる