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第四章 暗殺者の選択編
第151話 にじみ出る暗殺者の所作
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「一体何を勘違いしているのか知らんが、俺はしがないただの冒険者だぞ」
「そう――でもね。足音を消して移動する歩法、何かあった時にすぐに対処できるよう自然と出来ている姿勢、殺気を向けられても平然としていられる胆力。しがないただの冒険者というには無理があるわね」
「……どう思おうが勝手だが、お前らの思い通りになるつもりはない。話は以上だ。いいな?」
殺気をぶつけながら答えた。世界は違えど暗殺者として共通していることはあるのだろう。だからこそ俺の所作から察するものがあったのかもしれないが、その気もないのにしつこく言い寄られても迷惑だからな。
だからこそ再度警告の意味も込めて圧を与えたわけだが。
「……仕方ないわね。だけど気が変わったら闇鴉というギルドを尋ねると良いわ。悪いようにはしないわよ」
「――随分と警戒心が薄いな。俺がそれを誰かに明かしたらと考えないのか?」
「ないわね。これでも人を見る目はあるつもりよ」
……疑うのが本文の暗殺者のセリフとは思えないが、確かにそれを知ったところでどうこうしようという気もない。
「それと一つ、依頼者が必ずしも善人とは限らないとだけ教えてあげるわ。モンドはあの子を娘だと伝えてる様だけどそれだって――」
「どうでもいいさ」
何かを言おうとした女の言葉を切るように俺は言葉を重ねた。
「相手が善人だろうと悪人だろうと俺は与えられた仕事をこなすだけだ。ついでに言えばあの女と血がつながっていようがいまいが関係ない」
「――どうやら余計なお世話だったみたいね。まぁいいわ」
そして俺はそのまま女の横を通り過ぎたが――
「殺気が渦巻いている。精々気をつけることね」
すれ違う瞬間俺の耳元でそう囁かれ女は霧のように消え去った。比喩ではなく本当に消えたな。これもスキルや魔法の効果か――
「リョウガーーーー! いやぁ本当お前のおかげで稼がせて貰ったぜ!」
席に戻るとホクホク顔のイザベラが近づいてきた。どうやら試合でも俺に賭けていたようだな。
「約束は忘れてないよな?」
「勿論だって。ほらこれ」
イザベラが俺に革袋を渡してきた。中には金貨が詰まっていた。どうやら約束の分はわけてくれていたようだ。
「……たしかにな」
「うん? 数えなくていいのか?」
「重さでわかる」
「お前、本当とんでもないな……」
イザベラが目を点にしていた。慣れれば大したことでもないと思うがな。
「いい試合だった」
今度は鎧姿のパトリエが俺のそばまできて声を掛けてきた。
「驚いただろう? 妹も大したもんだけどリョウガはもっと凄いんだ」
パトリエに言葉を返しながらイザベラが腕を俺の首に絡ませてきた。俺はすぐに腕から抜けて見せる。
「なんだいリョウガ。私みたいないい女が褒めてるんだから、もっと素直に喜ぼうぜ」
茶化すように笑いながら言ってきたがそこは無視した。
「リョウガ。おかげでネイラにもいい勉強になったと思う。兄としてお礼を言わせてもらうよ」
「そんな必要はない。試合を受けて俺が勝った、ただそれだけだ」
「ハハッ、なるほどな。大したものだ。さて、それなら私は落ち込んでるお姫様でも励ましてくるかな」
そう言ってパトリエが手を上げてこの場から離れていった――
「そう――でもね。足音を消して移動する歩法、何かあった時にすぐに対処できるよう自然と出来ている姿勢、殺気を向けられても平然としていられる胆力。しがないただの冒険者というには無理があるわね」
「……どう思おうが勝手だが、お前らの思い通りになるつもりはない。話は以上だ。いいな?」
殺気をぶつけながら答えた。世界は違えど暗殺者として共通していることはあるのだろう。だからこそ俺の所作から察するものがあったのかもしれないが、その気もないのにしつこく言い寄られても迷惑だからな。
だからこそ再度警告の意味も込めて圧を与えたわけだが。
「……仕方ないわね。だけど気が変わったら闇鴉というギルドを尋ねると良いわ。悪いようにはしないわよ」
「――随分と警戒心が薄いな。俺がそれを誰かに明かしたらと考えないのか?」
「ないわね。これでも人を見る目はあるつもりよ」
……疑うのが本文の暗殺者のセリフとは思えないが、確かにそれを知ったところでどうこうしようという気もない。
「それと一つ、依頼者が必ずしも善人とは限らないとだけ教えてあげるわ。モンドはあの子を娘だと伝えてる様だけどそれだって――」
「どうでもいいさ」
何かを言おうとした女の言葉を切るように俺は言葉を重ねた。
「相手が善人だろうと悪人だろうと俺は与えられた仕事をこなすだけだ。ついでに言えばあの女と血がつながっていようがいまいが関係ない」
「――どうやら余計なお世話だったみたいね。まぁいいわ」
そして俺はそのまま女の横を通り過ぎたが――
「殺気が渦巻いている。精々気をつけることね」
すれ違う瞬間俺の耳元でそう囁かれ女は霧のように消え去った。比喩ではなく本当に消えたな。これもスキルや魔法の効果か――
「リョウガーーーー! いやぁ本当お前のおかげで稼がせて貰ったぜ!」
席に戻るとホクホク顔のイザベラが近づいてきた。どうやら試合でも俺に賭けていたようだな。
「約束は忘れてないよな?」
「勿論だって。ほらこれ」
イザベラが俺に革袋を渡してきた。中には金貨が詰まっていた。どうやら約束の分はわけてくれていたようだ。
「……たしかにな」
「うん? 数えなくていいのか?」
「重さでわかる」
「お前、本当とんでもないな……」
イザベラが目を点にしていた。慣れれば大したことでもないと思うがな。
「いい試合だった」
今度は鎧姿のパトリエが俺のそばまできて声を掛けてきた。
「驚いただろう? 妹も大したもんだけどリョウガはもっと凄いんだ」
パトリエに言葉を返しながらイザベラが腕を俺の首に絡ませてきた。俺はすぐに腕から抜けて見せる。
「なんだいリョウガ。私みたいないい女が褒めてるんだから、もっと素直に喜ぼうぜ」
茶化すように笑いながら言ってきたがそこは無視した。
「リョウガ。おかげでネイラにもいい勉強になったと思う。兄としてお礼を言わせてもらうよ」
「そんな必要はない。試合を受けて俺が勝った、ただそれだけだ」
「ハハッ、なるほどな。大したものだ。さて、それなら私は落ち込んでるお姫様でも励ましてくるかな」
そう言ってパトリエが手を上げてこの場から離れていった――
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