151 / 177
第四章 暗殺者の選択編
第149話 暗殺者の反撃手段
しおりを挟む
『うぉっぉおおおぉおっと! これは凄まじい技がリョウガ選手を直撃! これは果たして無事なのか少々心配になるところですが果たしてどうなの――え?』
周りを盛り上げるように叫んだ司会者。だがその声が止まった。俺が無事なのを確認したからか、それともこの姿を見たからか、ま、どっちでもいいが。
「ちょ、あなた何よその体!」
ネイラが目を見開いて叫んだ。今の俺の姿は鬼の如く様相に変化していた。ネイラの技を受ける直前に解放したからだ。
「確かに威力はかなりのものだな。咄嗟だったとは言え俺もつい力を解放してしまった。ただ――」
ネイラにそう答えつつ俺は再び元の姿に戻った。
「今ので大体理解した。もうこのあたりでいいだろう」
『お、お~っとリョウガ選手! 再び元に戻りましたが果たして先程の姿は何だったのか! これは何らかのスキルの効果があったと見るべきでしょう!』
得意げに語る司会者だが見事に外れてるな。俺はこの世界のスキルを与えられていない。
「なるほどスキルってわけね。結構なスキルをもっているじゃない」
「まぁ訂正するのも面倒だからそれでいいかもう」
ここでスキルじゃないと答えるのも手だが、それならそれでさっきの状態をどうやったのか問われそうだからな。
「でもそんなにあっさり変身を解いてよかったの。それとも時間制限でもあるスキルなのかしら」
「別にそういうわけじゃない。今も言ったが既にお前の技は理解した。解放の必要はない」
俺の発言が気に障ったのかネイラがムッとした顔を見せる。
「だったら見せてみなさいよ!」
「そうするか」
蛇腹剣を振るうネイラだが俺はそこから軽くステップを踏んでいきそこから加速した。
「え? 嘘どこにいったのよ!」
『お~っとこれはリョウガ選手が忽然と消えてしまいました! ま、まさか逃げたのか!』
「いるさ」
ネイラがキョロキョロと俺を探し出し司会者は俺が逃亡したと勘違いしだしたので返事だけはしておく。
『これはリョウガ選手の声だけは聞こえる状態に、いや、タタタン、タタンっと小気味よい音も確かに聞こえています! これはリョウガ選手が鳴らしているのか!』
間違いではないな。俺は消えたわけではなく高速移動しているだけだ。だから足音は聞こえている。もっとも暗殺者の歩法を利用すればその音だって消せるが痕跡は残しておかないと逃げたと疑われるからな。
「一体どこに隠れたのよ!」
「ここだよ」
「――ッ!?」
俺はネイラの横から打撃を浴びせた。ネイラの目が驚愕に染まる。
「いつの間に攻撃を!? だけど無駄よ! 貴方だってわかってるんでしょう? 私の体にはそんな攻撃は通用しない。素手の貴方なら特にね!」
ネイラがどうだと言わんばかりに胸を張る。
「さて、それはどうかな?」
ネイラを中心に動き回りながら声を上げ、直後一気に加速しネイラに迫った。そしてネイラに攻撃を叩き込む。ただしさっきと違い加速した勢いを利用して全方位から拳を叩き込んだ。
「ガハ――ッ!?」
今度は確実に手応えがあった。ネイラの体が上空高く舞い上がり錐揉み回転しながら地面に叩きつけられた。
「ゲホッゲホッ! そんな、どうして私がダメージを?」
起き上がり片膝をついた状態で疑問の声を上げるネイラ。吐血して顎は朱色に染まってしまっている。それだけダメージが届いたということだ。
「軟体を利用して衝撃を霧散させる。その考えは良かったと思うが、それもあくまで一点への攻撃に限ってのことだ」
ネイラの疑問に答える形で話した。ネイラの目が俺に向けられる。
「だから何? 攻撃なんてそんなものでしょう?」
「そうでもないさ。現に今俺は全方位からほぼ同時にお前に拳を叩きこんだ。その結果衝撃の逃げ場がなくなりお前にダメージがいったわけだからな」
「な、何よそれ、そんなの出来るわけ無い」
ネイラの肩がわなわなと震えていた。信じられないといった様子だがただ加速するだけならこの状態でも特に問題はない。この場合一撃一撃の威力は弱まるがネイラみたいなタイプには一撃の威力よりも手数で衝撃の逃げ場を無くした方が手っ取り早い。
「うぅうこんなことで――」
ネイラが唇を噛んだ。自分の防御手段が突破されたことで衝撃を受けているのか。
「それで、また続けるのか?」
「つ、続けるわよ! ご丁寧に御高説ご苦労なことね。だったらその対策に対策するだけよ」
ネイラがいい切った。そう簡単に対策できるとは思えないがダメ押ししておくか。
「言っておくが今のはあくまで手段の一つだ。お前の防御を崩す手なら他にも色々とある。例えば――」
ストンっと俺は地面に拳を置いた。途端に地面が円状に大きく陥没した。
『なんとこれはとんでもない! ただ拳をおいただけだというのに一体何が起きたのか!』
司会者も戸惑っているな。
「インパクトの瞬間に腕を高速振動させることで衝撃を波紋のように広げる技だ。内側からの破壊に最適だからな。お前の防御も意味はない。他にもいくつか候補があるが本当にこれ以上続けるのか?」
「………………」
俺の説明にネイラはポカンっとした顔を見せた。どうやら思考が追いついてないようだな。
とは言え今言ったことも事実だ。正直格闘戦に拘らないのなら燃やすなり電撃を浴びせるなり幾らでも手はあるからな。
「う、ううぅうぅぅううぅうう! ま、ま、負けたわ! 認めるわよ!」
そしてネイラが叫んだ。負けを認めた形だ。やれやれこれで試合も本当に終わりか――
周りを盛り上げるように叫んだ司会者。だがその声が止まった。俺が無事なのを確認したからか、それともこの姿を見たからか、ま、どっちでもいいが。
「ちょ、あなた何よその体!」
ネイラが目を見開いて叫んだ。今の俺の姿は鬼の如く様相に変化していた。ネイラの技を受ける直前に解放したからだ。
「確かに威力はかなりのものだな。咄嗟だったとは言え俺もつい力を解放してしまった。ただ――」
ネイラにそう答えつつ俺は再び元の姿に戻った。
「今ので大体理解した。もうこのあたりでいいだろう」
『お、お~っとリョウガ選手! 再び元に戻りましたが果たして先程の姿は何だったのか! これは何らかのスキルの効果があったと見るべきでしょう!』
得意げに語る司会者だが見事に外れてるな。俺はこの世界のスキルを与えられていない。
「なるほどスキルってわけね。結構なスキルをもっているじゃない」
「まぁ訂正するのも面倒だからそれでいいかもう」
ここでスキルじゃないと答えるのも手だが、それならそれでさっきの状態をどうやったのか問われそうだからな。
「でもそんなにあっさり変身を解いてよかったの。それとも時間制限でもあるスキルなのかしら」
「別にそういうわけじゃない。今も言ったが既にお前の技は理解した。解放の必要はない」
俺の発言が気に障ったのかネイラがムッとした顔を見せる。
「だったら見せてみなさいよ!」
「そうするか」
蛇腹剣を振るうネイラだが俺はそこから軽くステップを踏んでいきそこから加速した。
「え? 嘘どこにいったのよ!」
『お~っとこれはリョウガ選手が忽然と消えてしまいました! ま、まさか逃げたのか!』
「いるさ」
ネイラがキョロキョロと俺を探し出し司会者は俺が逃亡したと勘違いしだしたので返事だけはしておく。
『これはリョウガ選手の声だけは聞こえる状態に、いや、タタタン、タタンっと小気味よい音も確かに聞こえています! これはリョウガ選手が鳴らしているのか!』
間違いではないな。俺は消えたわけではなく高速移動しているだけだ。だから足音は聞こえている。もっとも暗殺者の歩法を利用すればその音だって消せるが痕跡は残しておかないと逃げたと疑われるからな。
「一体どこに隠れたのよ!」
「ここだよ」
「――ッ!?」
俺はネイラの横から打撃を浴びせた。ネイラの目が驚愕に染まる。
「いつの間に攻撃を!? だけど無駄よ! 貴方だってわかってるんでしょう? 私の体にはそんな攻撃は通用しない。素手の貴方なら特にね!」
ネイラがどうだと言わんばかりに胸を張る。
「さて、それはどうかな?」
ネイラを中心に動き回りながら声を上げ、直後一気に加速しネイラに迫った。そしてネイラに攻撃を叩き込む。ただしさっきと違い加速した勢いを利用して全方位から拳を叩き込んだ。
「ガハ――ッ!?」
今度は確実に手応えがあった。ネイラの体が上空高く舞い上がり錐揉み回転しながら地面に叩きつけられた。
「ゲホッゲホッ! そんな、どうして私がダメージを?」
起き上がり片膝をついた状態で疑問の声を上げるネイラ。吐血して顎は朱色に染まってしまっている。それだけダメージが届いたということだ。
「軟体を利用して衝撃を霧散させる。その考えは良かったと思うが、それもあくまで一点への攻撃に限ってのことだ」
ネイラの疑問に答える形で話した。ネイラの目が俺に向けられる。
「だから何? 攻撃なんてそんなものでしょう?」
「そうでもないさ。現に今俺は全方位からほぼ同時にお前に拳を叩きこんだ。その結果衝撃の逃げ場がなくなりお前にダメージがいったわけだからな」
「な、何よそれ、そんなの出来るわけ無い」
ネイラの肩がわなわなと震えていた。信じられないといった様子だがただ加速するだけならこの状態でも特に問題はない。この場合一撃一撃の威力は弱まるがネイラみたいなタイプには一撃の威力よりも手数で衝撃の逃げ場を無くした方が手っ取り早い。
「うぅうこんなことで――」
ネイラが唇を噛んだ。自分の防御手段が突破されたことで衝撃を受けているのか。
「それで、また続けるのか?」
「つ、続けるわよ! ご丁寧に御高説ご苦労なことね。だったらその対策に対策するだけよ」
ネイラがいい切った。そう簡単に対策できるとは思えないがダメ押ししておくか。
「言っておくが今のはあくまで手段の一つだ。お前の防御を崩す手なら他にも色々とある。例えば――」
ストンっと俺は地面に拳を置いた。途端に地面が円状に大きく陥没した。
『なんとこれはとんでもない! ただ拳をおいただけだというのに一体何が起きたのか!』
司会者も戸惑っているな。
「インパクトの瞬間に腕を高速振動させることで衝撃を波紋のように広げる技だ。内側からの破壊に最適だからな。お前の防御も意味はない。他にもいくつか候補があるが本当にこれ以上続けるのか?」
「………………」
俺の説明にネイラはポカンっとした顔を見せた。どうやら思考が追いついてないようだな。
とは言え今言ったことも事実だ。正直格闘戦に拘らないのなら燃やすなり電撃を浴びせるなり幾らでも手はあるからな。
「う、ううぅうぅぅううぅうう! ま、ま、負けたわ! 認めるわよ!」
そしてネイラが叫んだ。負けを認めた形だ。やれやれこれで試合も本当に終わりか――
76
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる