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第四章 暗殺者の選択編

第140話 ネイラへの挑戦者たち

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「いやはや流石はパトリエ選手の妹さんだねぇ」

 観戦していたゴルドーが感嘆の声を洩らした。あの大男では相手にもならなかったな。

『さぁ対戦相手はまだまだ募集中です! 我こそは思う人はどうぞご参加ください!』
「「だったら俺たちが相手しよう!」」

 司会者の言葉に反応して瓜二つの男二人が闘技場に姿を見せた。

『えっと試合は一人ずつでお願いしたいのですが……』

 司会者が戸惑っていた。それはそうか。二人でやってきて対戦したいと言われても困るだろう。

「「我々は双子! 故に二人で一つ! つまり問題ないはずだ!」」
「いや、問題大ありでしょう……」

 二人の宣言にパルコが呆れ顔で呟いた。これに関しては気持ちもわからなくもない。

『し、しかし二人では流石に……』
「「大丈夫だ!」」

 話が通じない二人に司会者もタジタジだがそこでネイラが動いた。

「構わないわ。やってあげるわよ」

 どうやらネイラは二人同時でも問題ないようだな。それだけ自信があるってことか。

『えっと本当にいいのですか?』
「だから問題ないってば」
『なんと驚きました! ここにきてネイラ選手が二人同時でも構わないとのこと!』
「「よっし! これで勝てる! 賭け金は金貨四枚だ!」」
「あいつら恥ずかしくないのかしら?」
「はは、なんだか愉快な連中だねぇ」

 ネイラの返答に観客たちがざわついている。パルコは呆れ顔だがイザベラはおかしそうに笑っていた。

『それでは早速始めたいと思います! 準備の方はいいですか?』
「問題ないわ」
「「こっちもだ! さぁ行くぞ!」」

 双子がそれぞれ短剣を手にネイラに迫った、わけだが――

『しょ、勝負あり! ネイラ選手の勝利です!』
 
 勝負は一瞬で決まった。双子はネイラを前後から挟み撃ちにしようとしたがそんなのお見通しとばかりにネイラが鞭を振るい双子が上空にふっとばされていた。

 なんともあっけない幕引きである。

『さぁ続いての挑戦者は!』
「「「「「「「「俺たちがやってやるぜ!」」」」」」」」

 今度は観客席から屈強な男たちがゾロゾロとおりてきて挑戦するといい出した。当たり前だが司会者の顔がひきつっている。

『いやいや流石にそれは駄目でしょう!』
「「「「「「「「なんでだ! さっきの二人は同時に戦かっただろう!」」」」」」」」

 司会者に詰め寄る集団。それを見てイザベラがゲラゲラと笑っていた。

「いいわよ。同時に相手してやるわよ」
『えぇ……ですがそれを認めてしまうと際限が――』
「構わないわ。十人だろうが百人同時だろうがいくらでもやってあげるわよ!」

 このネイラの発言に会場が大盛りあがりを見せた。正直内容は無茶苦茶だが娯楽としては成立しているようだな。

 そして同時に相手した男どもだが――難なくネイラにやられていた。まぁ徒党を組まないと挑めないような連中だからな。ネイラは向かってくる男どもを次々に薙ぎ払っていき全ての挑戦者を沈めてしまった。

『お、おぉう……し、勝者ネイラ選手!』

 これには司会者も驚いているようだな。ネイラにも全く疲れた様子がない。

「本当に大したものだ。見た目は可愛らしい少女なのにねぇ」

 ゴードンがネイラに関心を示していた。正式に闘技者になれば活躍できそうとでも思ってそうだ。

『では気を取り直して次の挑戦者! ただし次からは一人ずつでお願いします!』

 流石に司会者も釘をさしてきたな。いい加減ここで止めておかないと収拾がつかなくなると思ったのだろう。
 
 だが、あれだけの人数を圧倒したネイラとあって次は中々挑戦者が現れなかった。

『おや? これでおしまいですか? 賭け金の十倍が戻ってくるのですよ! こんなチャンスそうはありません。さぁどなたか』
「だったら私が相手するよ!」
 
 その声はすぐ横から聞こえてきた。見るとイザベラが立ち上がり闘技場を見下ろしていた。

 名乗りを上げたのはイザベラか。随分と挑戦的な目でネイラを睨みつけている。

『なんとここで遂に女性の挑戦者が現れました! これは一体どんな試合になるのか見ものです! さぁどうぞこちらへ!』

 そして司会者に促されイザベラが闘技場まで向かっていった――
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