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第四章 暗殺者の選択編
第98話 勝手に期待して勝手に失望されたところで知らん
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「……お前、つまりこいつを見捨てると言うことかい?」
俺の返事を聞いた後、ラミアが念を押すように聞いてきた。表情からは戸惑いが感じられる。
「見捨てるも何も元々俺には関係のない話だ。依頼にも別にそいつを助けろなんてないからな」
「ちょ、りょ、リョウガ本気?」
倒れていたマリスも困惑した様子を見せていた。全く揃いも揃って俺に何を期待しているんだ。
「依頼はそこのラミアを退治することだ。勝手に自滅した奴を助けるなんて目的に入ってない」
「くそ! やっぱりそうだ! 冒険者なんて信じた俺が馬鹿だったんだ!」
俺の意志を伝えたところで捕まってるナツがわめき出した。
「冒険者はすぐにそうやって人を見捨てるんだ! マリスを見て少しは期待した俺が馬鹿だったんだ!」
「そうか。まぁ勝手に期待されて勝手に失望されたところで知ったことじゃないがな」
俺が答えるとナツがぐぎぎと歯ぎしりしてみせた。
「全く、いちいちうるさいガキだよ! 自分の状況もわからず騒ぐんじゃないよ!」
ラミアがナツの頭を掴んだ。そこでようやくナツにも危機感が出てきたのか黙った。
「リョウガ。ほ、本当に助けないの?」
マリスがしつこく聞いてくる。くどいな。
「助ける理由がないからな。身勝手な行動で勝手に捕まっておいて人に助けてもらおうなんてそもそもが甘い」
「な! そ、そんなの、お前が自分で動けっていったんだろう!」
ナツが反論してきた。確かにそんなことは言ったが、闇雲に動けばいいってものでもない。
「考えなしに動けなんて言っちゃいない。見たところ槍を片手に寝込みを襲ったといったところだろうが、まだ子どものお前がそんな手を使ったところで倒せるわけないだろう。少し考えればわかることだ」
「う、ぐぅ――」
ナツは俺の言葉で押し黙った。どうやら自分の行動が無茶だったことは自覚しているようだな。
「…お前、本当にこいつを助ける気がないのかい?」
「くどい」
こいつも同じ質問を何度繰り返すつもりだ。
「そうかい。だったらもうこいつは喰っちまおうかね」
するとラミアが尻尾で巻き付けた後ナツを持ち上げ大口を開いた。ヘビだけあって口がよく開くな。
「そんな、リョウガ本当に助けないの?」
「お前もしつこい奴だな。俺は勝手に自滅したような奴の尻拭いをする気はない。どうしても助かりたいならナツがなんとかすればいい。意外と捕まってる|内側
《・・》からの方が上手くいくこともあるかもしれないぞ」
「――ッ!? ちょ、ちょっとまってくれよ! ラミア話を聞いて!」
ナツが今まさにラミアに呑み込まれそうになっていたとき、ナツ自身が待ったをかけた。
「何だい。命乞いかい。だったらお前を見捨てたアイツを恨むんだね」
「そ、そんなの期待してない! あんなロクでもない冒険者一生恨んでやる!」
恨み節のこもった声でナツが言った。やれやれ嫌われたもんだ。
「だけど喰われるならせめて最後に俺も好きなものを口にしたいんだ!」
「は? お前この状況わかっているのかい?」
「わかっているよ。でもいいだろう? 俺の腰に掛かってる瓶があるだろう? この中身がものすごく旨いんだ! だからせめて最後にそれを飲みたいんだよ!」
ナツがラミアに懇願した。ラミアの目がナツの腰に吊るされている瓶に向く。
「ふ~ん。この中身がねぇ」
「そうなんだ! 世界一旨い飲み物だと俺は思ってるんだよ。だから頼むよぉ」
「へぇ、そうかいそうかい」
ナツに言われラミアがニヤリと口角を吊り上げた。するとラミアがナツの腰にか掛かっていた瓶を取り上げフタを開けて口まで持っていった。
「あ! 何するんだよ!」
「ははは。馬鹿な人間だねぇ。私がそんな望み聞いてやるわけないだろう。逆にこの私が飲み干してやるよ!」
ラミアがそう言い放ち一気に飲み干した。まぁ魔獣が人間の言う事を聞く道理はないだろうが――逆に利用したか。
「ぷはぁ。で、これが旨いだって? 言うほどのもんじゃ、が、グガアァアアァアアァア!」
瓶の中身を飲み干した後、少し遅れてラミアが喉を押さえ苦しみだした。ナツへの締めつけも緩む。
「あ、あれってもしかして?」
マリスが起き上がり思い出したように声を上げた。自分がやられたことはしっかり覚えていたようだな。
そして尻尾の力が緩んだことでナツが上手いこと這い出した。
「やった! どうだ俺の特製ジュースは! ザマァみろ!」
ナツが走りながら挑発めいた言葉を投げつけた。ラミアが喉を押さえながらナツを睨んでいる。頃合いか。
「このガキ! もう許さないよ!」
ラミアが怒りの形相で叫び尻尾がナツに向けて伸びた。怒りでもう周りが見えてないな。
「う、うわ! ヤバ――」
「やれば出来るじゃないか」
慌てるナツの横をすり抜けそう声を掛けた後、俺はラミアの首目掛けて手刀を振った。
「――ッ!?」
驚愕した表情を貼り付けたままラミアの頭が宙を待った。結果的にナツに向かっていた尻尾も力を失い途中で地面に落ちた。
後ろを振り返ると勢い余ったナツが躓きマリスの側まで転がっていった。全く格好のつかない奴だな。
「痛てて……」
「大丈夫?」
起き上がり後頭部をさするナツにマリスが声を掛けていた。ポーションの効果でマリスも大分回復したようだな。
「……兄ちゃん。俺を助けてくれたのか?」
ナツの顔が俺に向けられ、そんな見当違いなことを聞いてきた。
「助けたつもりはない。ただお前が飲ませたジュースのおかげで丁度いい隙が出来たからな。俺はそれを活かしただけだ」
俺が答えると何故かマリスが嬉しそうにしていた。全くよくわからない奴だ。
「この私が人間なんかに畜生がぁあああぁああ!」
ラミアの叫び声がした。見ると頭だけになったラミアが鬼の形相でこっちを睨んでいた。
「う、嘘だろ。まだ生きてるのかよ」
「さ、流石にしぶといみたいだね」
ナツもマリスも困惑した顔を見せていた。確かにしぶといが時間の問題だな。俺は転がってるラミアの頭に向けて足を進めた。
「もう終わりだ」
「クッ! おいエボ! 聞いてるか! お前の望み通りにしてやるからなんとかしてみせろ!」
何だ? 突如ラミアが何者かの名前を叫んだ。仲間がいるということか? だが周囲からそれらしき気配は感じられない、いや――違和感を覚え振り返ると地面から飛び出た触手がラミアの首から体内に入っていった。
ほぼ同時に俺はラミアの頭を踏み潰した。だが触手が入り込んだことで胴体が狂ったように蠢き出し、かと思えば胴体から追加の腕が飛び出してきた。そして首からはニョキッと新しい頭が生え俺を睨めつけてくる――
俺の返事を聞いた後、ラミアが念を押すように聞いてきた。表情からは戸惑いが感じられる。
「見捨てるも何も元々俺には関係のない話だ。依頼にも別にそいつを助けろなんてないからな」
「ちょ、りょ、リョウガ本気?」
倒れていたマリスも困惑した様子を見せていた。全く揃いも揃って俺に何を期待しているんだ。
「依頼はそこのラミアを退治することだ。勝手に自滅した奴を助けるなんて目的に入ってない」
「くそ! やっぱりそうだ! 冒険者なんて信じた俺が馬鹿だったんだ!」
俺の意志を伝えたところで捕まってるナツがわめき出した。
「冒険者はすぐにそうやって人を見捨てるんだ! マリスを見て少しは期待した俺が馬鹿だったんだ!」
「そうか。まぁ勝手に期待されて勝手に失望されたところで知ったことじゃないがな」
俺が答えるとナツがぐぎぎと歯ぎしりしてみせた。
「全く、いちいちうるさいガキだよ! 自分の状況もわからず騒ぐんじゃないよ!」
ラミアがナツの頭を掴んだ。そこでようやくナツにも危機感が出てきたのか黙った。
「リョウガ。ほ、本当に助けないの?」
マリスがしつこく聞いてくる。くどいな。
「助ける理由がないからな。身勝手な行動で勝手に捕まっておいて人に助けてもらおうなんてそもそもが甘い」
「な! そ、そんなの、お前が自分で動けっていったんだろう!」
ナツが反論してきた。確かにそんなことは言ったが、闇雲に動けばいいってものでもない。
「考えなしに動けなんて言っちゃいない。見たところ槍を片手に寝込みを襲ったといったところだろうが、まだ子どものお前がそんな手を使ったところで倒せるわけないだろう。少し考えればわかることだ」
「う、ぐぅ――」
ナツは俺の言葉で押し黙った。どうやら自分の行動が無茶だったことは自覚しているようだな。
「…お前、本当にこいつを助ける気がないのかい?」
「くどい」
こいつも同じ質問を何度繰り返すつもりだ。
「そうかい。だったらもうこいつは喰っちまおうかね」
するとラミアが尻尾で巻き付けた後ナツを持ち上げ大口を開いた。ヘビだけあって口がよく開くな。
「そんな、リョウガ本当に助けないの?」
「お前もしつこい奴だな。俺は勝手に自滅したような奴の尻拭いをする気はない。どうしても助かりたいならナツがなんとかすればいい。意外と捕まってる|内側
《・・》からの方が上手くいくこともあるかもしれないぞ」
「――ッ!? ちょ、ちょっとまってくれよ! ラミア話を聞いて!」
ナツが今まさにラミアに呑み込まれそうになっていたとき、ナツ自身が待ったをかけた。
「何だい。命乞いかい。だったらお前を見捨てたアイツを恨むんだね」
「そ、そんなの期待してない! あんなロクでもない冒険者一生恨んでやる!」
恨み節のこもった声でナツが言った。やれやれ嫌われたもんだ。
「だけど喰われるならせめて最後に俺も好きなものを口にしたいんだ!」
「は? お前この状況わかっているのかい?」
「わかっているよ。でもいいだろう? 俺の腰に掛かってる瓶があるだろう? この中身がものすごく旨いんだ! だからせめて最後にそれを飲みたいんだよ!」
ナツがラミアに懇願した。ラミアの目がナツの腰に吊るされている瓶に向く。
「ふ~ん。この中身がねぇ」
「そうなんだ! 世界一旨い飲み物だと俺は思ってるんだよ。だから頼むよぉ」
「へぇ、そうかいそうかい」
ナツに言われラミアがニヤリと口角を吊り上げた。するとラミアがナツの腰にか掛かっていた瓶を取り上げフタを開けて口まで持っていった。
「あ! 何するんだよ!」
「ははは。馬鹿な人間だねぇ。私がそんな望み聞いてやるわけないだろう。逆にこの私が飲み干してやるよ!」
ラミアがそう言い放ち一気に飲み干した。まぁ魔獣が人間の言う事を聞く道理はないだろうが――逆に利用したか。
「ぷはぁ。で、これが旨いだって? 言うほどのもんじゃ、が、グガアァアアァアアァア!」
瓶の中身を飲み干した後、少し遅れてラミアが喉を押さえ苦しみだした。ナツへの締めつけも緩む。
「あ、あれってもしかして?」
マリスが起き上がり思い出したように声を上げた。自分がやられたことはしっかり覚えていたようだな。
そして尻尾の力が緩んだことでナツが上手いこと這い出した。
「やった! どうだ俺の特製ジュースは! ザマァみろ!」
ナツが走りながら挑発めいた言葉を投げつけた。ラミアが喉を押さえながらナツを睨んでいる。頃合いか。
「このガキ! もう許さないよ!」
ラミアが怒りの形相で叫び尻尾がナツに向けて伸びた。怒りでもう周りが見えてないな。
「う、うわ! ヤバ――」
「やれば出来るじゃないか」
慌てるナツの横をすり抜けそう声を掛けた後、俺はラミアの首目掛けて手刀を振った。
「――ッ!?」
驚愕した表情を貼り付けたままラミアの頭が宙を待った。結果的にナツに向かっていた尻尾も力を失い途中で地面に落ちた。
後ろを振り返ると勢い余ったナツが躓きマリスの側まで転がっていった。全く格好のつかない奴だな。
「痛てて……」
「大丈夫?」
起き上がり後頭部をさするナツにマリスが声を掛けていた。ポーションの効果でマリスも大分回復したようだな。
「……兄ちゃん。俺を助けてくれたのか?」
ナツの顔が俺に向けられ、そんな見当違いなことを聞いてきた。
「助けたつもりはない。ただお前が飲ませたジュースのおかげで丁度いい隙が出来たからな。俺はそれを活かしただけだ」
俺が答えると何故かマリスが嬉しそうにしていた。全くよくわからない奴だ。
「この私が人間なんかに畜生がぁあああぁああ!」
ラミアの叫び声がした。見ると頭だけになったラミアが鬼の形相でこっちを睨んでいた。
「う、嘘だろ。まだ生きてるのかよ」
「さ、流石にしぶといみたいだね」
ナツもマリスも困惑した顔を見せていた。確かにしぶといが時間の問題だな。俺は転がってるラミアの頭に向けて足を進めた。
「もう終わりだ」
「クッ! おいエボ! 聞いてるか! お前の望み通りにしてやるからなんとかしてみせろ!」
何だ? 突如ラミアが何者かの名前を叫んだ。仲間がいるということか? だが周囲からそれらしき気配は感じられない、いや――違和感を覚え振り返ると地面から飛び出た触手がラミアの首から体内に入っていった。
ほぼ同時に俺はラミアの頭を踏み潰した。だが触手が入り込んだことで胴体が狂ったように蠢き出し、かと思えば胴体から追加の腕が飛び出してきた。そして首からはニョキッと新しい頭が生え俺を睨めつけてくる――
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