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第四章 暗殺者の選択編

第88話 ラミアの実力

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 ラミアは単純に胴体が蛇になったということではなく、全体的にスケールアップしていた。尻尾が生えているだけの状態なら体格も人間と変わらなかったが、今は倍以上の大きさになっている。

 これは変身というよりは本来の姿に戻ったということか。口からはチョロチョロと細長い蛇の舌が飛び出ている。

「そらよ!」
 
 ラミアが体を捻って尻尾を振り回した。サイズが大きくなった分当然尻尾の影響範囲も広がる。勿論威力もだ。

「キャッ!」
「うわッ!」

 ラミアが尻尾を振り回した際に生じた衝撃で見ていた村人も悲鳴を上げバランスを崩していた。突風が起きたようなものだからな。

 ただマリスにはあたっていない。飛んで避けていたからだ。

「ハァアアァアアァアアア!」

 空中からマリスがラミアに近づき拳を放った。胴体に命中するがさっきとは違いラミアの表情には余裕がある。本来の姿に戻ったことで防御力も上がってるようだ。

「こんなものだったかい? 脆弱だねぇ」
「クッ!」

 ラミアの目が光り同時に口を大きく開いた。

「マリス油断するな!」

 思わず声を上げていた。おかしいな特に口を出すつもりもなかったんだが。


 直後ラミアの口から毒の息が吐き出された。狙いは勿論マリスだ。

「クッ! たぁああああぁッ!」

 だがマリスは跳躍し空中で身をひねり毒を躱していた。今度はマリスの目が鋭い輝きを見せる。

「今度こそ!」

 空中で更に体を捻って回転させ、そこから拳を放った。だが、その先には何も存在しない。

「え? どうして?」
「惜しかったねぇ――」

 ラミアの振り回した尻尾がマリスを捉えた。マリスの身がふっとばされ地面に叩きつけられた。

「な、なんだ? 一体何が?」
「……そういうことか」

 さっきラミアの目が光った時、あの時にマリスは幻術に掛かっていたと見るべきか。だからこそ毒を避けた後で何も無いところを攻撃し隙を晒した。

「全く人間にしてはよくやったけどねぇ、私の敵じゃなかったってことさ」
「うぐっ……」

 倒れているマリスに近づきラミアが尻尾を叩きつけその身を地面に押し付けた。

「さてどうしようかねぇ。先ずあんたを喰ってから生贄を貰う――ッ!?」

 すると、マリスに対して優位に立っていたラミアが大きく飛び退いた。キョロキョロとあたりを見回している。

 それにしても俺も焼きが回ったものだ。こんなことで圧を高めてしまうなんてな。

「気のせいかい……だけど、チッ」

 一人ごちた直後ラミアが舌打ちし脇腹のあたりを押さえた。さっきマリスが拳を当てたあたりか。当たった直後は平気そうだったが意外と効いていたのかもな。

「まぁいいさ。人間! 今日のところは一旦退いてあげるよ。ただし! 次の生贄は倍だよ! 四人の生贄を用意しておくんだね!」
 
 ラミアはそう言い残し去っていった。本来この状況で退く必要はなさそうだが、野生の勘が働いたのかもな。
 
 もっとも、たとえラミアが退かなかったとして俺は動く気になれなかったので村としては首の皮一枚つながったといったところか――
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