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第四章 暗殺者の選択編
第84話 ナツの事情
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「とにかく立ち話もなんですから先ずはこちらへ」
村長に促され俺たちは村の奥にある家屋に案内された。二階建ての木造家屋でありこの村の中では作りは一番立派だろう。
中に入り居間に通された。四人がけの木製のテーブルで俺とマリスが隣り合って座った。テーブルを挟んで村長が座りハルトが水を運んできた。
「はぁ喉が潤う~」
出された水をマリスはゴクゴクと飲み干した。一方で俺は少し観察してから一口飲むにとどめた。暗殺者の家系で育った俺は修行で毒の効かない体質になったが、だからといって警戒心を持っていないわけじゃない。
寧ろ暗殺者として育ったからこそ出されたものを疑うのは癖になっていた。そういう意味では疑いなくガブガブ飲めるマリスが羨ましくもある。
「そういえばさっきの子ども、何か騙されたって言ってなかった?」
マリスがナツという少年が口にしていたことに言及した。村長とハルトがバツの悪そうな顔を見せる。
「さっきは本当に済まなかった。ナツはまだ子どもだからどうしても事実を受け止められ無いんだ」
「事実?」
「……母親、つまりハルトの嫁は蛇の化物に殺されたのだ。それも依頼を引き受けた冒険者が逃げ出した事でな。それからナツは冒険者に疑いの目を向けるようになった」
なるほど。父親の姿があっても母親の姿がないのはそういった事情からか。
「そう、だったんだ……」
マリスが悲しそうな顔で呟いた。確かマリスも父親が病気だったな。事情は違えど両親が危険な目にあっているという意味でナツに共感を覚えているのかもしれない。
「とにかくあの蛇のせいで村は大変な目にあっているのだ。どうか我々を助けてください」
村長が改めて頭を下げ俺たちに懇願してきた。この依頼には色々と思うところはあるが先ずは相手を見て見る必要があるだろう。
「わかった予定取り引き受けるが、討伐する必要のあるその蛇はどこにいるんだ?」
「奴はおそらく今夜には現れるはずだ。あのメス蛇が図々しくも生贄を――」
「そ、そうなのだ! 今夜あの蛇は村に現れる筈だ! それをなんとか退治してくだされ!」
ハルトの言葉を遮るように村長が話し出した。
「お二人が休める場所は離れの家屋に用意させてもらった。夜まではどうかそこで休んでいてくだされ。ではそういうことで、おいハルト――」
そこまで言って村長は半ば強制的に話を打ち切った。どうやら村長はハルトと話があるようだな。
とりあえず俺たちは村長が言っていた離れの家屋に移動することにした。
「夜に来るんだってね。腕がなるねリョウガ」
俺たちはとりあえず用意された家屋で休憩をとることにした。
そして部屋の中心でマリスが体を解しながら俺に話しかけてきた。
「……この依頼、少し用心した方がいいかもな」
「え? それってどういうこと?」
俺の言葉にマリスがキョトンとした顔を見せた。しかし警戒するに越したことはないだろうな。
「依頼人の態度が少し気になる。俺たちに言いたくないことがありそうだ」
「そうなの? でもどうしてそんなこと?」
「さっきの話を聞くと逃げた冒険者と何か関係あるのかもな」
そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
「俺だよナツ。さっきのこと謝りたくて、入っていい?」
外から聞こえていたのは村長の孫のナツの声だった。急に態度を変えてきたな。一体どういうつもりなのか――
村長に促され俺たちは村の奥にある家屋に案内された。二階建ての木造家屋でありこの村の中では作りは一番立派だろう。
中に入り居間に通された。四人がけの木製のテーブルで俺とマリスが隣り合って座った。テーブルを挟んで村長が座りハルトが水を運んできた。
「はぁ喉が潤う~」
出された水をマリスはゴクゴクと飲み干した。一方で俺は少し観察してから一口飲むにとどめた。暗殺者の家系で育った俺は修行で毒の効かない体質になったが、だからといって警戒心を持っていないわけじゃない。
寧ろ暗殺者として育ったからこそ出されたものを疑うのは癖になっていた。そういう意味では疑いなくガブガブ飲めるマリスが羨ましくもある。
「そういえばさっきの子ども、何か騙されたって言ってなかった?」
マリスがナツという少年が口にしていたことに言及した。村長とハルトがバツの悪そうな顔を見せる。
「さっきは本当に済まなかった。ナツはまだ子どもだからどうしても事実を受け止められ無いんだ」
「事実?」
「……母親、つまりハルトの嫁は蛇の化物に殺されたのだ。それも依頼を引き受けた冒険者が逃げ出した事でな。それからナツは冒険者に疑いの目を向けるようになった」
なるほど。父親の姿があっても母親の姿がないのはそういった事情からか。
「そう、だったんだ……」
マリスが悲しそうな顔で呟いた。確かマリスも父親が病気だったな。事情は違えど両親が危険な目にあっているという意味でナツに共感を覚えているのかもしれない。
「とにかくあの蛇のせいで村は大変な目にあっているのだ。どうか我々を助けてください」
村長が改めて頭を下げ俺たちに懇願してきた。この依頼には色々と思うところはあるが先ずは相手を見て見る必要があるだろう。
「わかった予定取り引き受けるが、討伐する必要のあるその蛇はどこにいるんだ?」
「奴はおそらく今夜には現れるはずだ。あのメス蛇が図々しくも生贄を――」
「そ、そうなのだ! 今夜あの蛇は村に現れる筈だ! それをなんとか退治してくだされ!」
ハルトの言葉を遮るように村長が話し出した。
「お二人が休める場所は離れの家屋に用意させてもらった。夜まではどうかそこで休んでいてくだされ。ではそういうことで、おいハルト――」
そこまで言って村長は半ば強制的に話を打ち切った。どうやら村長はハルトと話があるようだな。
とりあえず俺たちは村長が言っていた離れの家屋に移動することにした。
「夜に来るんだってね。腕がなるねリョウガ」
俺たちはとりあえず用意された家屋で休憩をとることにした。
そして部屋の中心でマリスが体を解しながら俺に話しかけてきた。
「……この依頼、少し用心した方がいいかもな」
「え? それってどういうこと?」
俺の言葉にマリスがキョトンとした顔を見せた。しかし警戒するに越したことはないだろうな。
「依頼人の態度が少し気になる。俺たちに言いたくないことがありそうだ」
「そうなの? でもどうしてそんなこと?」
「さっきの話を聞くと逃げた冒険者と何か関係あるのかもな」
そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
「俺だよナツ。さっきのこと謝りたくて、入っていい?」
外から聞こえていたのは村長の孫のナツの声だった。急に態度を変えてきたな。一体どういうつもりなのか――
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