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第三章 冒険者となった暗殺者編
第79話 引退
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「ところであの盗賊団はどうなったの?」
マリスがギルドマスターに問いかけた。頭のガンギルが死んだことで件の盗賊団は壊滅状態と言っていいだろうがネイラが逃げたこともある。
だからマリスも気になったのだろう。
「とりあえず暴虐の狼としてはもう機能しないだろうな。一人逃げたとは言え主要メンバーは死んだか捕まったのだから」
それがギルドマスターの見解だった。俺も概ねそれで間違っていないと思う。
「ただ一点気になる面もある。どうやら暴虐の狼の頭はお前らを襲う直前に何者かと会っていたようだ。しかしそれが誰かはわからない。手下も会っていたことは覚えていてもその人物に関しては全く知らされていないようだからな」
なるほどな。そうなると逃げたネイラがその何者かと接触した可能性はある。
「まぁその点については引き続き捜査を続けることになるだろうな」
ギルドマスターはそう言って話を締めくくった。しかし思い返してみればあのネイラのスキルにはしてやられたか。
この世界のスキルに関してはもう少し知識をつけてもいいかもしれない。とはいえ俺たちの本来の目的は護衛の任務だった。盗賊とのいざこざは偶発的に起きたに過ぎない。
俺たちがこれ以上気にしても仕方ないだろう。後のことはギルドにまかせておけばそれで済む話だ。
話が終わり依頼料には暴虐の狼討伐の報酬も上乗せ支払われた。とりあえずダリバの分も纏めてもらった。なのでその後、再びダリバが治療中の街に向かうことになった。
スカーレッドが見舞いついでに一緒に行こうと言ってきたからだ。報酬の分け前の件もあるので俺とマリスもとりあえず同行することになった。
「よッ! どうだい調子は?」
治療院につき、スカーレッドは軽いノリでダリバが入院している部屋に入った。一見適当そうだが室内の空気が重くならないようスカーレッドなりに考えてのことかもしれないな。
「あぁ、お前たちか。悪かったな今回は迷惑をかけて」
ダリバが立ち上がり俺たちを出迎えてくれた。ベッドから起き上がれるようにはなったようだ。だが、切断された右足は木製の義足によって補われている形である。
どうやらいくら魔法でも欠損した部位を戻すのはかなり難しいらしい。腕の立つ魔法の使い手であれば出来なくもないようだが、それでも欠損後すぐに魔法に取り掛かる必要があり、時間が経てば経つほど難しくなる上そのレベルの魔法使いの数も少ないようだ。
残念ながらこの街にはそれほどの腕を持つ魔法の使い手はおらずダリバの右足が戻ることはなかったわけか――
「あんた……」
ダリバの右足が戻らないことはスカーレッドも知っていたようだがダリバの義足を目の辺りにして実感したのだろう。最初こそいつものような調子だったがそこから先の言葉が出てきていない。
「おいおい、何だよその顔は。まさか俺がこれでへこたれてるとでも思ったか? そりゃまぁ、元の足程は自由に動けないがこれでも慣れれば歩くことも出来る。日常生活を続ける程度なら問題はないさ」
そう言ってダリバが笑ってみせた。どこか諦めにも似た笑みにも見えた。
「その、冒険者の仕事は続けられそうなの?」
マリスがオソロオソロと言った様子で聞いた。触れるか迷っていたようだが、同業者として気になってしまったんだろう。
「……ま、冒険者は引退することになるだろうな」
それがダリバの答えだった。やはり右足がなくなったのがかなり響いているようだな。
「……あんたはそれでいいのかい?」
スカーレッドが確認するように聞いた。ダリバ自身が納得した上で出した決断なのか、そこが気になると言ったところか。
「いいのさ。ちょうどいい機会だ。実はずっと考えていたのさ。そろそろ潮時かもなってな」
そして寂しさの残る笑みを浮かべながらダリバが答えた――
マリスがギルドマスターに問いかけた。頭のガンギルが死んだことで件の盗賊団は壊滅状態と言っていいだろうがネイラが逃げたこともある。
だからマリスも気になったのだろう。
「とりあえず暴虐の狼としてはもう機能しないだろうな。一人逃げたとは言え主要メンバーは死んだか捕まったのだから」
それがギルドマスターの見解だった。俺も概ねそれで間違っていないと思う。
「ただ一点気になる面もある。どうやら暴虐の狼の頭はお前らを襲う直前に何者かと会っていたようだ。しかしそれが誰かはわからない。手下も会っていたことは覚えていてもその人物に関しては全く知らされていないようだからな」
なるほどな。そうなると逃げたネイラがその何者かと接触した可能性はある。
「まぁその点については引き続き捜査を続けることになるだろうな」
ギルドマスターはそう言って話を締めくくった。しかし思い返してみればあのネイラのスキルにはしてやられたか。
この世界のスキルに関してはもう少し知識をつけてもいいかもしれない。とはいえ俺たちの本来の目的は護衛の任務だった。盗賊とのいざこざは偶発的に起きたに過ぎない。
俺たちがこれ以上気にしても仕方ないだろう。後のことはギルドにまかせておけばそれで済む話だ。
話が終わり依頼料には暴虐の狼討伐の報酬も上乗せ支払われた。とりあえずダリバの分も纏めてもらった。なのでその後、再びダリバが治療中の街に向かうことになった。
スカーレッドが見舞いついでに一緒に行こうと言ってきたからだ。報酬の分け前の件もあるので俺とマリスもとりあえず同行することになった。
「よッ! どうだい調子は?」
治療院につき、スカーレッドは軽いノリでダリバが入院している部屋に入った。一見適当そうだが室内の空気が重くならないようスカーレッドなりに考えてのことかもしれないな。
「あぁ、お前たちか。悪かったな今回は迷惑をかけて」
ダリバが立ち上がり俺たちを出迎えてくれた。ベッドから起き上がれるようにはなったようだ。だが、切断された右足は木製の義足によって補われている形である。
どうやらいくら魔法でも欠損した部位を戻すのはかなり難しいらしい。腕の立つ魔法の使い手であれば出来なくもないようだが、それでも欠損後すぐに魔法に取り掛かる必要があり、時間が経てば経つほど難しくなる上そのレベルの魔法使いの数も少ないようだ。
残念ながらこの街にはそれほどの腕を持つ魔法の使い手はおらずダリバの右足が戻ることはなかったわけか――
「あんた……」
ダリバの右足が戻らないことはスカーレッドも知っていたようだがダリバの義足を目の辺りにして実感したのだろう。最初こそいつものような調子だったがそこから先の言葉が出てきていない。
「おいおい、何だよその顔は。まさか俺がこれでへこたれてるとでも思ったか? そりゃまぁ、元の足程は自由に動けないがこれでも慣れれば歩くことも出来る。日常生活を続ける程度なら問題はないさ」
そう言ってダリバが笑ってみせた。どこか諦めにも似た笑みにも見えた。
「その、冒険者の仕事は続けられそうなの?」
マリスがオソロオソロと言った様子で聞いた。触れるか迷っていたようだが、同業者として気になってしまったんだろう。
「……ま、冒険者は引退することになるだろうな」
それがダリバの答えだった。やはり右足がなくなったのがかなり響いているようだな。
「……あんたはそれでいいのかい?」
スカーレッドが確認するように聞いた。ダリバ自身が納得した上で出した決断なのか、そこが気になると言ったところか。
「いいのさ。ちょうどいい機会だ。実はずっと考えていたのさ。そろそろ潮時かもなってな」
そして寂しさの残る笑みを浮かべながらダリバが答えた――
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