71 / 177
第三章 冒険者となった暗殺者編
第70話 二日目の護衛依頼
しおりを挟む
昨晩は依頼人から食事を奢ってもらいマリスも随分と満足したようだ。ダリバとスカーレッドは昨晩は結構な量酒を呑んでいたからか今はまだ寝ている。
俺とマリスは昨日のダリバとスカーレッドに代わって依頼人の仕事に付き添い護衛する。それが今日の仕事だ。
「今日も護衛の程宜しくお願い致します」
朝、俺とマリスが合流しそのまま依頼人の護衛についた。依頼人は相変わらず丁重に挨拶してくれる。人柄が良いのだろうが商人として見ると良すぎな気もするか。
「今日は私とリョウガでしっかり護るからね!」
「仕事は全うさせてもらうよ」
「ハハッ。頼りにしてますよ」
そして俺たちは依頼人を護衛して街を回ることになった。話によると昨日の内に持ってきた荷は殆ど届け終わったらしい。一軒分だけ残ってるようだがそれは午後からということで午前中は仕入れと商談が主になるようだ。
「ほう。これはとても良いぶどう酒ですね」
「えぇこれほどの物は中々出てきませんよ」
「わかりましたそれでは――」
一軒目の店ではぶどう酒の仕入れを行ったようだ。樽ごと幾つか購入し定期的に購入する場合にどれぐらい値下げ出来るかなど確認中だった。
流石に商人だけあってこの手の交渉には時間を掛ける。最終的には納得の行く結果になったようで互いに満足して交渉を終えたようだ。
「では次に向かいますか」
依頼人と次の店に向かう。今のところ特に何もおきていないがおかげでマリスは少々退屈そうだな。
「何も起きないね」
「はは。勿論何も起こらないのが一番ですからね。昨日も特に問題なく進みました」
依頼人が答えた。何も起きないのが一番はもっともな感想だ。そもそもここに来るまでに危険な目にはあっていたからな。街なかぐらいは平穏に済ましたいと思うのは当然だろう。
「お、おいヤベェぞ!」
「馬が暴れてる!」
すると次の目的地に向かう途中そんな声が聞こえてきた。見ると確かに馬が暴れていた。だがここからは距離があるし危険は及ばないか。
「キャァアア! うちの子が!」
だが俺たちに危険がないからと他の人間に何も起きないわけじゃない。見ると確かに馬が暴れている先に幼児の姿があった。
「急がなきゃ!」
するとマリスが咄嗟に飛び出し子どもに向けて駆け出した。強化魔法を使っているのか馬の足が子どもを蹴り飛ばす寸前にマリスが子どもを抱きかかえその場を離れた。
「おお! やりましたね流石です!」
マリスの救出劇を見て依頼人は喜んでいたが俺たちの目的はあくまで護衛だ。対象から勝手に離れる行為は本来褒められたものじゃないんだがな。
「助かってよかったよ」
「素晴らしい! いいことをしましたね!」
依頼人はマリスを褒めたがそれは彼の人がよいからだな。依頼人によってはこの行為に不満を持つのもいるだろう。
「マリス。護衛対象から勝手に離れるのはどうかと思うぞ」
「え? だってあのままじゃあの子危なかったよね。それにリョウガがいればひとまず安心だし」
俺の指摘を受けマリスは不満そうにしていた。俺は仕事であれば依頼人を第一に考えるのが当然だと思うんだがな。
「恐らくリョウガさんの考えも間違いではないのでしょう。でも私はあぁいったときに咄嗟に人助けの為に動けるマリスさんも素晴らしいと思いますよ」
「ほら!」
マリスが得意顔になった。依頼人の言葉をとればどちらの判断も間違いではないということだろう。正直あの状況で子どもを助けるという判断は俺には出来なかっただろうがな。
「お二人はいいコンビですね。リョウガさんは冷静沈着ですが恐らくそれ故に融通がきかないのでしょう。逆にマリスさんは感情のまま直感的に動けるタイプに見えます。だからこそお互い上手く噛み合うのではないのでしょうか?」
依頼人が俺とマリスの違いを述べて来た。そんなこと俺は全く考えたことがなかったな。もしかしたら普通はマリスの用に咄嗟に動けるものなのだろうか。
自分の事となると別だが赤の他人のためにそこまで俺は考えられない。マリスはそうではないか。そこが俺とマリスの決定的な違いなのだろう。
そんなことを思いつつも俺たちは次の目的地へ向かった――
俺とマリスは昨日のダリバとスカーレッドに代わって依頼人の仕事に付き添い護衛する。それが今日の仕事だ。
「今日も護衛の程宜しくお願い致します」
朝、俺とマリスが合流しそのまま依頼人の護衛についた。依頼人は相変わらず丁重に挨拶してくれる。人柄が良いのだろうが商人として見ると良すぎな気もするか。
「今日は私とリョウガでしっかり護るからね!」
「仕事は全うさせてもらうよ」
「ハハッ。頼りにしてますよ」
そして俺たちは依頼人を護衛して街を回ることになった。話によると昨日の内に持ってきた荷は殆ど届け終わったらしい。一軒分だけ残ってるようだがそれは午後からということで午前中は仕入れと商談が主になるようだ。
「ほう。これはとても良いぶどう酒ですね」
「えぇこれほどの物は中々出てきませんよ」
「わかりましたそれでは――」
一軒目の店ではぶどう酒の仕入れを行ったようだ。樽ごと幾つか購入し定期的に購入する場合にどれぐらい値下げ出来るかなど確認中だった。
流石に商人だけあってこの手の交渉には時間を掛ける。最終的には納得の行く結果になったようで互いに満足して交渉を終えたようだ。
「では次に向かいますか」
依頼人と次の店に向かう。今のところ特に何もおきていないがおかげでマリスは少々退屈そうだな。
「何も起きないね」
「はは。勿論何も起こらないのが一番ですからね。昨日も特に問題なく進みました」
依頼人が答えた。何も起きないのが一番はもっともな感想だ。そもそもここに来るまでに危険な目にはあっていたからな。街なかぐらいは平穏に済ましたいと思うのは当然だろう。
「お、おいヤベェぞ!」
「馬が暴れてる!」
すると次の目的地に向かう途中そんな声が聞こえてきた。見ると確かに馬が暴れていた。だがここからは距離があるし危険は及ばないか。
「キャァアア! うちの子が!」
だが俺たちに危険がないからと他の人間に何も起きないわけじゃない。見ると確かに馬が暴れている先に幼児の姿があった。
「急がなきゃ!」
するとマリスが咄嗟に飛び出し子どもに向けて駆け出した。強化魔法を使っているのか馬の足が子どもを蹴り飛ばす寸前にマリスが子どもを抱きかかえその場を離れた。
「おお! やりましたね流石です!」
マリスの救出劇を見て依頼人は喜んでいたが俺たちの目的はあくまで護衛だ。対象から勝手に離れる行為は本来褒められたものじゃないんだがな。
「助かってよかったよ」
「素晴らしい! いいことをしましたね!」
依頼人はマリスを褒めたがそれは彼の人がよいからだな。依頼人によってはこの行為に不満を持つのもいるだろう。
「マリス。護衛対象から勝手に離れるのはどうかと思うぞ」
「え? だってあのままじゃあの子危なかったよね。それにリョウガがいればひとまず安心だし」
俺の指摘を受けマリスは不満そうにしていた。俺は仕事であれば依頼人を第一に考えるのが当然だと思うんだがな。
「恐らくリョウガさんの考えも間違いではないのでしょう。でも私はあぁいったときに咄嗟に人助けの為に動けるマリスさんも素晴らしいと思いますよ」
「ほら!」
マリスが得意顔になった。依頼人の言葉をとればどちらの判断も間違いではないということだろう。正直あの状況で子どもを助けるという判断は俺には出来なかっただろうがな。
「お二人はいいコンビですね。リョウガさんは冷静沈着ですが恐らくそれ故に融通がきかないのでしょう。逆にマリスさんは感情のまま直感的に動けるタイプに見えます。だからこそお互い上手く噛み合うのではないのでしょうか?」
依頼人が俺とマリスの違いを述べて来た。そんなこと俺は全く考えたことがなかったな。もしかしたら普通はマリスの用に咄嗟に動けるものなのだろうか。
自分の事となると別だが赤の他人のためにそこまで俺は考えられない。マリスはそうではないか。そこが俺とマリスの決定的な違いなのだろう。
そんなことを思いつつも俺たちは次の目的地へ向かった――
21
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる