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第三章 冒険者となった暗殺者編
第65話 昇華者
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「悪いが俺はその昇華者について知らないんだが」
「そうか。その実力ならありえるかと思ったんだけどな」
どうやらガロウは俺とウドンの戦いを見て俺がその昇華者だと思ったようだな。
「その昇華者ってそもそもなんなの?」
「昇華――聞いたことがあるぞ!」
マリスもガロウの言っている昇華というワードに興味を持ったようだが、その時見ていた観客の一人が声を上げた。
「知っているのかカイデン!」
「あぁ。昇華者とはスキルを昇華させた者の事を言うんだ」
どうやら二人組のようでカイデンと呼ばれた方が説明を続ける。
「スキルは目覚めた時点でそれ相応の効果があるが、それを研鑽し続けスキルを極め手足のように完璧に使いこなせるようになった人間だけが辿り着ける領域だって話だ」
「マジか! けどそれが昇華するとどうなるんだ?」
「何でもスキルの効果が飛躍的に向上するらしい。ただその領域に達せた物はスキル持ちの中でも一握りの人間だけらしいぞ」
カイデンの説明が終わったようだ。相方がすげぇすげぇ言ってるがどうやらスキル持ちの中でも特に強い力を持った人間の事を言うようだ。
「どうやら向こうで説明してくれたみたいだがそういうことだ」
「そうか。だがそれはありえないな。何せ俺はスキルなんて持っていない」
「……何だって?」
俺の答えを聞いたガロウが疑問混じりにの声を上げじっとこちらを見てきた。
「何だ? スキルなしがそんなに珍しいか?」
「いや。百人に一人ぐらいはスキルを得られないのがいるらしいからな。だがスキルを持たずしてそこまで出来る人間となると話は別だ」
ガロウが答えた。細い目の男だが、俺を見る目がわずかに見開かれた気がした。
「――少し興味が湧いた。リョウガだったな。どうだい? 次はその賞金を賭けてこの俺と戦ってみないか? さっきまでと違い純粋な勝負だ。先に一本取った方が勝ち。あんたが勝ったら賭けた賞金の倍額を支払おう」
「なに?」
「兄貴!」
ガロウが挑発めいたことを言いだした。そしてそれにウドンも驚きの声を上げる。
「本気ですが倍額なんて!」
「あぁ本気だ」
「ですが兄貴……」
「何だウドン俺が負けるとでも思っているのか?」
「そ、そんなこと思ってるわけありませんぜ! 兄貴は最強でさぁ!」
何かガロウとウドンの間で勝手に盛り上がっているが、俺は受けるとはいってないんだがな。
「別に金には困っていないし、俺にメリットがないな」
だから俺は断ろうとしたのだが――
「いいじゃんリョウガやろうよ! ここまで言われて逃げるなんて悔しいじゃん!」
マリスから横槍が入った。いや、逃げるも何も向こうから勝手に挑んできているだけだからな。
「その子の言うとおりだぜ兄ちゃん!」
「勝ち逃げなんてダセェぜ! ここはやはり受けるしか無いだろう!」
「俺たちをもっと楽しませてくれよ」
「貴方のカッコいいところ見てみたいわ~」
するとマリスの言葉に触発されるように周囲も騒ぎだした。やれやれどうしてこうも周りは他人に干渉してくるのか。
「どうやらあんたがやめたくても周りが許してくれないみたいだな」
「別に周りなんか気にしないがな」
「だが、俺は気になるだろう? 俺にはわかる。お前は本質的には俺側の人間だ。先に行っておくが俺は強いぞ」
強いね。随分と自信があるようだ。確かにこっちに来て危険と言われる冒険者にもなったが手応えは感じていなかった。普通に生きていきたいと考える俺にとっては敢えて危険に身を投じることもないのだが、これまで暗殺者として生きてたおかげか物足りなさを覚えるのも事実だ。
「……俺が勝ったら倍額支払うんだな」
「あぁ、それは約束する」
「なら賞金の金貨四十枚全額賭けてやるよ。それでいいか?」
俺がそう聞くとガロウがニヤリと笑みを浮かべた。結局勝負に乗る形になってしまったがそれだけ自信あるこの男の実力が、果たしてどれほどのものなのか――
「そうか。その実力ならありえるかと思ったんだけどな」
どうやらガロウは俺とウドンの戦いを見て俺がその昇華者だと思ったようだな。
「その昇華者ってそもそもなんなの?」
「昇華――聞いたことがあるぞ!」
マリスもガロウの言っている昇華というワードに興味を持ったようだが、その時見ていた観客の一人が声を上げた。
「知っているのかカイデン!」
「あぁ。昇華者とはスキルを昇華させた者の事を言うんだ」
どうやら二人組のようでカイデンと呼ばれた方が説明を続ける。
「スキルは目覚めた時点でそれ相応の効果があるが、それを研鑽し続けスキルを極め手足のように完璧に使いこなせるようになった人間だけが辿り着ける領域だって話だ」
「マジか! けどそれが昇華するとどうなるんだ?」
「何でもスキルの効果が飛躍的に向上するらしい。ただその領域に達せた物はスキル持ちの中でも一握りの人間だけらしいぞ」
カイデンの説明が終わったようだ。相方がすげぇすげぇ言ってるがどうやらスキル持ちの中でも特に強い力を持った人間の事を言うようだ。
「どうやら向こうで説明してくれたみたいだがそういうことだ」
「そうか。だがそれはありえないな。何せ俺はスキルなんて持っていない」
「……何だって?」
俺の答えを聞いたガロウが疑問混じりにの声を上げじっとこちらを見てきた。
「何だ? スキルなしがそんなに珍しいか?」
「いや。百人に一人ぐらいはスキルを得られないのがいるらしいからな。だがスキルを持たずしてそこまで出来る人間となると話は別だ」
ガロウが答えた。細い目の男だが、俺を見る目がわずかに見開かれた気がした。
「――少し興味が湧いた。リョウガだったな。どうだい? 次はその賞金を賭けてこの俺と戦ってみないか? さっきまでと違い純粋な勝負だ。先に一本取った方が勝ち。あんたが勝ったら賭けた賞金の倍額を支払おう」
「なに?」
「兄貴!」
ガロウが挑発めいたことを言いだした。そしてそれにウドンも驚きの声を上げる。
「本気ですが倍額なんて!」
「あぁ本気だ」
「ですが兄貴……」
「何だウドン俺が負けるとでも思っているのか?」
「そ、そんなこと思ってるわけありませんぜ! 兄貴は最強でさぁ!」
何かガロウとウドンの間で勝手に盛り上がっているが、俺は受けるとはいってないんだがな。
「別に金には困っていないし、俺にメリットがないな」
だから俺は断ろうとしたのだが――
「いいじゃんリョウガやろうよ! ここまで言われて逃げるなんて悔しいじゃん!」
マリスから横槍が入った。いや、逃げるも何も向こうから勝手に挑んできているだけだからな。
「その子の言うとおりだぜ兄ちゃん!」
「勝ち逃げなんてダセェぜ! ここはやはり受けるしか無いだろう!」
「俺たちをもっと楽しませてくれよ」
「貴方のカッコいいところ見てみたいわ~」
するとマリスの言葉に触発されるように周囲も騒ぎだした。やれやれどうしてこうも周りは他人に干渉してくるのか。
「どうやらあんたがやめたくても周りが許してくれないみたいだな」
「別に周りなんか気にしないがな」
「だが、俺は気になるだろう? 俺にはわかる。お前は本質的には俺側の人間だ。先に行っておくが俺は強いぞ」
強いね。随分と自信があるようだ。確かにこっちに来て危険と言われる冒険者にもなったが手応えは感じていなかった。普通に生きていきたいと考える俺にとっては敢えて危険に身を投じることもないのだが、これまで暗殺者として生きてたおかげか物足りなさを覚えるのも事実だ。
「……俺が勝ったら倍額支払うんだな」
「あぁ、それは約束する」
「なら賞金の金貨四十枚全額賭けてやるよ。それでいいか?」
俺がそう聞くとガロウがニヤリと笑みを浮かべた。結局勝負に乗る形になってしまったがそれだけ自信あるこの男の実力が、果たしてどれほどのものなのか――
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