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第三章 冒険者となった暗殺者編
第59話 隙だらけだったからつい
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「行くぜ!」
ゴーガンが大剣を構えて相手との距離を詰めに入った。ダリバは見た目通りの戦士タイプだ。遠距離攻撃の手段も持っていない為、先ずは相手に近づかなければ話にならない。
「ヒャハッ! 近づけるもんかよ――真空刃!」
相手の盗賊が声を上げて右手を振った。すると距離を詰めようとするダリバの肩の肉が裂けた。
「グッ!」
ダリバがうめき声を上げる。腕を振れなくなる程深い傷ではないが出血はそれなりにある。
「こんな程度で俺が止められるかよ!」
だがダリバは足を止めること無く前に突き進んでいった。
「ヒャハハ! 強がるなって!」
更に男が両手を交互に振っていく。その度にダリバの全身に切り傷が増えていった。
「お、おいダリバは大丈夫かよ!」
スカーレッドが緊迫した声を上げた。意気揚々と飛び出したゴーガンだったが動きに鈍りが見えた。
その間も相手は手を振るのを止めずなます切り状態だ。
「リョウガ! あいつ敢えて切り刻んで楽しんでいるようだよ!」
マリスが顔を歪め嫌悪感を顕にした。確かにダリバを甚振って楽しんでいる気配があるな。
「もう見てられないね!」
スカーレッドが火に包まれたナイフを投擲した。援護のつもりだったようだがしかし投げたナイフは全て弾き飛ばされてしまった。
「ヒャハハッ! 無駄だ! このウァイズ様の真空刃があれば近づけさせる前に全てを終わらせる事が出来るのさ!」
ウァイズがあの男の名前のようだな。しかし近づく前にか――
「ヒャハッ! 後悔するなら暴虐の狼の邪魔をした自分の愚かさを恨むんだな!」
「ぼ、暴虐の狼だと?」
ダリバが疑問の籠もった声を上げた。どうやらそれが盗賊団の名前になるようだな。
「さぁこのまま細切れにしてやるぜヒャハッ!」
「なんだ近づくのは簡単じゃないか」
「ふぇ?」
ウァイズが間の抜けた声を上げて後ろに回り込んだ俺を振り返った。その瞬間にはきっとウァイズは上空から自分の胴体を見下ろす形になっていたことだろう。
「へ? どうして俺の体が見え、え? 俺、頭だけ? しょ、しょんな、この俺が――」
そこで言葉は途切れ自由落下した頭部が地面にボトンっと落ちた。
「悪いな。隙だらけだったからつい」
俺はそう呟きつつ地面に転がったウァイズの頭部を見下ろした。そうして事切れているのを確認した後で元の位置に戻った。
「ダリバさん大丈夫ですか?」
盗賊の脅威が去った後は依頼人がダリバの傷を見てくれた。どうやら薬も運んでいたようなので傷によく薬を傷跡に塗布していた。
「問題ねぇさ。だが結局いいところなかったな」
弱ったなと言わんばかりに頭部を擦るダリバだ。
「まぁ今回は相手が悪かったな。遠距離から攻撃出来るあいつとダリバは相性が良くないだろうからな」
「そういうリョウガは余裕そうだったけどな。たく」
ため息混じりにダリバが言う。まぁ俺はどんな距離でもある程度対応出来るからな。
「しかし相手が暴虐の狼とは驚きました。まさかそんな連中に狙われるなんて」
「知ってるのかい?」
依頼人の様子を見てスカーレッドが聞いていた。確かに今の口ぶりだと有名な連中なようだがな――
ゴーガンが大剣を構えて相手との距離を詰めに入った。ダリバは見た目通りの戦士タイプだ。遠距離攻撃の手段も持っていない為、先ずは相手に近づかなければ話にならない。
「ヒャハッ! 近づけるもんかよ――真空刃!」
相手の盗賊が声を上げて右手を振った。すると距離を詰めようとするダリバの肩の肉が裂けた。
「グッ!」
ダリバがうめき声を上げる。腕を振れなくなる程深い傷ではないが出血はそれなりにある。
「こんな程度で俺が止められるかよ!」
だがダリバは足を止めること無く前に突き進んでいった。
「ヒャハハ! 強がるなって!」
更に男が両手を交互に振っていく。その度にダリバの全身に切り傷が増えていった。
「お、おいダリバは大丈夫かよ!」
スカーレッドが緊迫した声を上げた。意気揚々と飛び出したゴーガンだったが動きに鈍りが見えた。
その間も相手は手を振るのを止めずなます切り状態だ。
「リョウガ! あいつ敢えて切り刻んで楽しんでいるようだよ!」
マリスが顔を歪め嫌悪感を顕にした。確かにダリバを甚振って楽しんでいる気配があるな。
「もう見てられないね!」
スカーレッドが火に包まれたナイフを投擲した。援護のつもりだったようだがしかし投げたナイフは全て弾き飛ばされてしまった。
「ヒャハハッ! 無駄だ! このウァイズ様の真空刃があれば近づけさせる前に全てを終わらせる事が出来るのさ!」
ウァイズがあの男の名前のようだな。しかし近づく前にか――
「ヒャハッ! 後悔するなら暴虐の狼の邪魔をした自分の愚かさを恨むんだな!」
「ぼ、暴虐の狼だと?」
ダリバが疑問の籠もった声を上げた。どうやらそれが盗賊団の名前になるようだな。
「さぁこのまま細切れにしてやるぜヒャハッ!」
「なんだ近づくのは簡単じゃないか」
「ふぇ?」
ウァイズが間の抜けた声を上げて後ろに回り込んだ俺を振り返った。その瞬間にはきっとウァイズは上空から自分の胴体を見下ろす形になっていたことだろう。
「へ? どうして俺の体が見え、え? 俺、頭だけ? しょ、しょんな、この俺が――」
そこで言葉は途切れ自由落下した頭部が地面にボトンっと落ちた。
「悪いな。隙だらけだったからつい」
俺はそう呟きつつ地面に転がったウァイズの頭部を見下ろした。そうして事切れているのを確認した後で元の位置に戻った。
「ダリバさん大丈夫ですか?」
盗賊の脅威が去った後は依頼人がダリバの傷を見てくれた。どうやら薬も運んでいたようなので傷によく薬を傷跡に塗布していた。
「問題ねぇさ。だが結局いいところなかったな」
弱ったなと言わんばかりに頭部を擦るダリバだ。
「まぁ今回は相手が悪かったな。遠距離から攻撃出来るあいつとダリバは相性が良くないだろうからな」
「そういうリョウガは余裕そうだったけどな。たく」
ため息混じりにダリバが言う。まぁ俺はどんな距離でもある程度対応出来るからな。
「しかし相手が暴虐の狼とは驚きました。まさかそんな連中に狙われるなんて」
「知ってるのかい?」
依頼人の様子を見てスカーレッドが聞いていた。確かに今の口ぶりだと有名な連中なようだがな――
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