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第三章 冒険者となった暗殺者編
第57話 夜に護る
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「ふぅ。野宿でこれだけ食べて呑めたら満足だねぇ」
それがスカーレッドの感想だった。腹も満たされたようで表情も笑顔だ。酒を呑んだからか顔もほんのり朱色に染まっているが仕事に影響が出るほど呑んだわけではないだろう。
その辺りはしっかり意識できているということか。ダリバは一滴も呑んでいない。マリスと俺もだな。
「護衛の順番を決めないとな。基本的には二人一組になって順番に寝る。それでいいか?」
「ま、それが妥当だろうね」
ダリバの提案にスカーレッドが同意した。俺としても特に文句はない。
「それでいいぞ」
「私もそれでいいけど組み合わせは?」
「このままでいいだろう。それぞれのパーティーで交代してけばいい」
「う、うん! それなら納得だね!」
マリスが俺の顔を見ながら嬉しそうにしていた。何がそんなに楽しいのかさっぱりわからんが。
「ダリバあんた大丈夫なんだろうね?」
「それはこっちのセリフだ。全く護衛なのに酒なんて呑んで大丈夫かよ」
「馬鹿にしないでくれよ。傭兵時代だって酒を呑んでても呑まれることはなかったんだからねぇ」
スカーレッドがドヤ顔で答えた。まぁ見てても自分なりに調整している感じはあったな。
「それで順番はどうする?」
「俺とマリスが先でいいだろう。平気と言ってもスカーレッドは呑んでるしな」
調整していると言っても多少でも寝ておけばより頭もスッキリするだろう。そう考えれば俺たちが先のほうが合理的だ。
ダリバもこの意見には賛成なようで夜の版は俺たちが先ということで決まった。
「では後はお願いしますね」
「何か悪いわね」
「何か出たが遠慮なく起こしてくれよ」
依頼者は御者台で毛布にくるまって眠りにつくようだ。ダリバとスカーレッドは地面にそのまま横になる形だな。普段から野宿に慣れているのかそれでも十分寝れるようだ。
残った俺とマリアは火の番をしつつ周囲の気配を探る。夜は魔物や魔獣なんかもそうだろうが盗賊にとっても狙い目だからな。
ある意味で一番気の抜けない時間帯とも言える。
「夜は静かだね」
周囲に目を向けながらマリスが言った。確かに静寂が辺りを支配しているな。
このあたりはやはり俺の暮らしていた現代とは異なるところだ。ただ、だからといって何も起きないとはかぎらないか。
「静かだが気配を探っておけ。来てるぞ」
「え?」
俺の発言にマリスが眉を狭めた。気がついていなかったか。だが確かにここに迫っている気配がある。
しかもそれなりの数でな。十中八九この気配は人のものだ。やはり盗賊が狙ってきたか。
その時だった。闇の中からヒュンッと風を切り飛んでくる気配がした。俺は即座にそれを防ぐ。
「矢か」
飛んできたのは矢だった。それもかなり細いもので黒く染められている。刺激臭も感じられる。おそらくは毒が塗られているはずだ。
「ほら返すぞ」
俺は飛んできた方向に矢を投げた。するとギャッと悲鳴が聞こえた。どうやら狙った相手には当たったようだな。
すると二つの気配が疾駆して迫ってきた。矢で倒せないとわかり作戦を変えてきたか。
「死ねッ!」
「お前が死ね」
俺に迫ってきた一人はすれ違い様に手刀で両断しておいた。縦に割れた死体が地面に転がる。
「いい女だな捕まえて持ち帰ってやる」
「もうそんなのごめんよ!」
「グボッ!」
もう一人の盗賊はマリスに興味を持ったようだが、あっさり殴り飛ばされていた。女だと油断でもしたのかあいつは。
「おい、何がおきてる!」
ダリバの声が聞こえた。今ので気がついたようだな。さて、次は相手がどう出るか――
それがスカーレッドの感想だった。腹も満たされたようで表情も笑顔だ。酒を呑んだからか顔もほんのり朱色に染まっているが仕事に影響が出るほど呑んだわけではないだろう。
その辺りはしっかり意識できているということか。ダリバは一滴も呑んでいない。マリスと俺もだな。
「護衛の順番を決めないとな。基本的には二人一組になって順番に寝る。それでいいか?」
「ま、それが妥当だろうね」
ダリバの提案にスカーレッドが同意した。俺としても特に文句はない。
「それでいいぞ」
「私もそれでいいけど組み合わせは?」
「このままでいいだろう。それぞれのパーティーで交代してけばいい」
「う、うん! それなら納得だね!」
マリスが俺の顔を見ながら嬉しそうにしていた。何がそんなに楽しいのかさっぱりわからんが。
「ダリバあんた大丈夫なんだろうね?」
「それはこっちのセリフだ。全く護衛なのに酒なんて呑んで大丈夫かよ」
「馬鹿にしないでくれよ。傭兵時代だって酒を呑んでても呑まれることはなかったんだからねぇ」
スカーレッドがドヤ顔で答えた。まぁ見てても自分なりに調整している感じはあったな。
「それで順番はどうする?」
「俺とマリスが先でいいだろう。平気と言ってもスカーレッドは呑んでるしな」
調整していると言っても多少でも寝ておけばより頭もスッキリするだろう。そう考えれば俺たちが先のほうが合理的だ。
ダリバもこの意見には賛成なようで夜の版は俺たちが先ということで決まった。
「では後はお願いしますね」
「何か悪いわね」
「何か出たが遠慮なく起こしてくれよ」
依頼者は御者台で毛布にくるまって眠りにつくようだ。ダリバとスカーレッドは地面にそのまま横になる形だな。普段から野宿に慣れているのかそれでも十分寝れるようだ。
残った俺とマリアは火の番をしつつ周囲の気配を探る。夜は魔物や魔獣なんかもそうだろうが盗賊にとっても狙い目だからな。
ある意味で一番気の抜けない時間帯とも言える。
「夜は静かだね」
周囲に目を向けながらマリスが言った。確かに静寂が辺りを支配しているな。
このあたりはやはり俺の暮らしていた現代とは異なるところだ。ただ、だからといって何も起きないとはかぎらないか。
「静かだが気配を探っておけ。来てるぞ」
「え?」
俺の発言にマリスが眉を狭めた。気がついていなかったか。だが確かにここに迫っている気配がある。
しかもそれなりの数でな。十中八九この気配は人のものだ。やはり盗賊が狙ってきたか。
その時だった。闇の中からヒュンッと風を切り飛んでくる気配がした。俺は即座にそれを防ぐ。
「矢か」
飛んできたのは矢だった。それもかなり細いもので黒く染められている。刺激臭も感じられる。おそらくは毒が塗られているはずだ。
「ほら返すぞ」
俺は飛んできた方向に矢を投げた。するとギャッと悲鳴が聞こえた。どうやら狙った相手には当たったようだな。
すると二つの気配が疾駆して迫ってきた。矢で倒せないとわかり作戦を変えてきたか。
「死ねッ!」
「お前が死ね」
俺に迫ってきた一人はすれ違い様に手刀で両断しておいた。縦に割れた死体が地面に転がる。
「いい女だな捕まえて持ち帰ってやる」
「もうそんなのごめんよ!」
「グボッ!」
もう一人の盗賊はマリスに興味を持ったようだが、あっさり殴り飛ばされていた。女だと油断でもしたのかあいつは。
「おい、何がおきてる!」
ダリバの声が聞こえた。今ので気がついたようだな。さて、次は相手がどう出るか――
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