上 下
44 / 177
第三章 冒険者となった暗殺者編

第43話 暗殺者にとっては鬱陶しいだけ

しおりを挟む
 途中で蜘蛛みたいなのに寄生された連中は倒した。死体から冒険者証だけ回収し更に先に進む。

 その間もデカいカブトムシやら巨大蝙蝠やらゾンビみたいな冒険者の成れの果てやら倒している内に目的の薬草が生えている場所を見つけた。

「そういえば他に冒険者はいないんだな」

 この依頼を受けてるのは別に俺だけじゃないと思うが、あまりかち合わないな。その代わりやたら骨やら死体やらは見つけたが。

「まぁいいか。とりあえず採取しよう」

 薬草の側にいき採取を始めた。すると地面から口付きの触手が生えてきて俺に襲いかかってくる。

「うっとうしいな」

 そんな触手どもを排除しながら薬草採取を続けた。依頼書によると三十束必要とあったが、ここだけど十束が限界か。

 とりあえず次のスポットを目指す。ガサゴソと音がしたかと思えば動き回る樹木の群れが姿を見せた。

 これも魔物の一種か。樹木の中には人間が取り込まれていた。まぁもう完全に樹木と一体化しているようだから手遅れだろうな。

「燃やしとくか」

 口から吐いた炎で燃やし尽くした。山火事にはならないよう調整はさせてもらった。

 しかし随分と邪魔する魔物が多いんだな。危険だとは思わないが実に鬱陶しい。

「ひぃ! 助けてくれぇぇえぇえ!」
「いやぁ誰か! 誰かぁ!」

 上空から声が聞こえた。見ると怪鳥に捕まった男女がいた。冒険者だろう。

「間に合わないな」

 俺はすぐに無理だと悟った。更に巨大な怪鳥がやってきて男女を捕まえた怪鳥ごと喰らったからだ。
 
「しっかり食物連鎖が出来上がってるな」

 どうやら魔物の間でも弱肉強食が成り立っているようだ。まぁそりゃそうか。

 犠牲になった二人は気の毒だがそういう覚悟を持って依頼に挑んでるだろうから仕方ないな。

 そんなことを考えていたら巨大な怪鳥が俺に気がついて急降下してきた。

「やれやれ」

 腕を解放し跳躍した後、怪鳥の背中に乗り胴体を貫いた。怪鳥はそのまま森に落下。木々をなぎ倒しながら地面を滑っていった。

「お、丁度よかったな」
 
 デカい怪鳥が止まった先に目的の薬草の群生地があった。これだけあれば依頼に必要な量は足りるな。
 
 俺はついでに怪鳥を解体し貴重そうな羽や肉を魔法の袋に詰め込んだ。薬草も手に入れたしこれでとりあえず一つ依頼は達成だな――

 さてと森の外に向かうか。と言ってもこのまま引き換えしても面倒な魔物の相手をしていかないといけない。別に来た道を引き返さないと行けないというルールもないからな。

 だから俺はとりあえず森から出ることを優先して帰路についた――




◇◆◇

「全く。最近になって監視の目が厳しくなってきた。実にやりにくい」

 街道からそれた場所で一人の商人が愚痴っていた。お腹の出た肥えた商人であり、頭にはターバンが巻かれていた。

 体には高価そうな生地で仕立てたローブを羽織っている。

「だから今運んでる奴隷が一匹だけなのか?」

 商人の側で控えていた男女の内、男の方が声を掛けた。厳つい顔で屈強な戦士といった見た目をしていた。男は脇にハルバートを立て掛けていた。

「それもあるが、今回の奴隷は特別なのさ」
「特別? 言われてみれば角が生えてたねぇ」

 もう一人の女が今度は奴隷について口にした。赤毛の女だった。手には鞭、腰にはベルトが巻かれナイフが何本も装着されていた。

「そうだ。今回の奴隷は魔族と人間との間に生まれた亜人。半魔だからな。しかもかなりの上玉のメスだ。これは高値で売れるぞ」

 そう言って下卑た笑みを浮かべる商人。その様子を呆れたような目で女が見ていた。

「チッ。奴隷が一人じゃこっちにお溢れはなしか」

 男の方が愚痴るように言った。

「そう言うな。上玉のメスを捕まえられたのは運が良かったんだ。それに魔族と人間の血を引く半魔なんて滅多にいないし、私も初めてだぞ」
「ふ~ん――」
 
 気のない返事をしつつ女が馬車の中を覗き込んだ。手枷足枷に加え奴隷の首輪を嵌められた少女がギラついた目で女を睨んでた。

(おぉ、こわ――)

 奴隷として捕らえられた女の瞳は獲物というより狩人のソレだった。こんな状況でも虎視眈々とここから逃げる手段を、いや、なんなら奴隷商を含めて全員を殺す方法を考えているかも知れない――
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手

Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。 俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。 そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。 理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。 ※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。 カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...