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第三章 冒険者となった暗殺者編

第37話 依頼は達成した

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「マジかよ……」

 ダリバが目を丸くしていた。化物が倒されたことで随分と驚いているようだな。


「うん? 何か転がっているぞ」

 化物は消失したが後には丸い石が残されていた。光沢のある綺麗な石だな。

「おお! 魔石じゃねぇか! しかもデカい! これは価値があるぞ!」
 
 ダリバが魔石とやらを見て目を輝かせた。どうやら高価な物らしいな。

「助かったぜお前! まさかお前があんな凄い奴だったとはな!」

 魔石とやらを拾い上げたダリバが俺へと声をかけてきた。俺はただ火を吐いただけなんだがな。それにしても随分喜ばれているな。

「大したことはしてないぞ」
「そんなわけねぇだろうが! あのバケモンを単独で倒しちまったんだぞ!」

 そう言ってダリバが興奮気味に俺の背中をバンバン叩いた。最初はあまり歓迎されてないようだったが、どうやら俺も冒険者として認めてもらえたようだな。

「それで依頼はこれで終わりなのか?」
「まぁこれでほぼ解決だと思うが、念の為他の場所もチェックしてから戻って報告だな」
 
 なるほど。確かに勝手に終わったと思いこんで、ギルドに戻ってから別な魔物が見つかっては元も子もないからな。
 
 この下水道も広いししっかりとチェックしておく必要はあるだろう。そこれで俺たちは下水道内を歩き回り他にも何かいないか探して回った。

 その結果、他には特に何も見つからなかった。まぁもう怪しい気配も感じられないからそんな気はしてたんだけどな。

「よし! チェック完了だ! 報告に戻るぞ!」
 
 そして俺たちは下水道を出てギルドに戻った。

「依頼片付いたぞ! 下水道にとんでもねぇ化物がいたけどよ、このリョウガのおかげで助かったぜ。大した奴だぜこいつは」

 俺の肩を引き寄せダリバが笑顔で受付嬢に報告した。俺への態度が一変していたからか受付嬢も随分と驚いているぞ。

「そ、そうですか。それは何よりです。では詳しい報告を聞きたいところですが、戻ってきたら教えてくれと言っていたのでマスターを呼びますね」

 そう言って受付嬢が二階に向かった。しばらくすると例のギルドマスターが階段を降りてきた。

「まさかもう依頼をおわらせてくるとはな。それで下水道にもう危険はないんだな?」
「あぁしっかりチェックしてきたぜ」
「そうか。なら調査班を向かわせてくれ」
「わかりました!」

 マスターに言われ受付嬢が忙しなく動き始めた。どうやら依頼がしっかり終わってるか確認するようだ。

「報酬は確認が終わってから支払うが、ダリバから見てリョウガはどうだった?」
「ギルマス。こいつはとんでもねぇぜ。俺でさえ紙一重でヤバかった化物をあっさり倒しちまうんだからな」
 
 そう前置きし、下水道で起きたことをマスターに聞かせていた。

「その化物の詳細も気になるところだな。何か手がかりになるものはあるのか?」
「魔石を落としたぜ」

 ダリバがカウンターに魔石を置いた。ほう、とマスターが魔石を手に取りマジマジと眺める。

「これは早速鑑定に回さないとな」
「おっと、当然買い取りもしてもらえるんだろうな?」
「あぁわかった。ついでにその査定もやっておいてやるよ」
「だってよ。良かったなリョウガ!」

 ダリバが親指を立てて二カッと笑ってみせた。

「魔石も含めて報酬は半々でいいな」
「いや。魔石はリョウガのおかげで手に入った物みたいなもんだからな。全部こいつにくれてやってくれ」

 ダリバが俺を親指で示して言った。まさか全額くれるとはな。

「いいのか?」
「あのバケモンはお前が倒したようなものだからな。ま、まぁちょっとでも分け前くれるっていうなら貰ってもいいが」

 ダリバが答えた。素直な男だな。

「俺は仮登録中の身だしな。魔石の取り分も半々でいい」
「お、おい! いいのかよ!」
「あぁ」

 それに何となくだがこれが普通というものな気がした。

「話はわかった。それなら支払いはリョウガとダリバで半々ということで処理しておいてやる。それとリョウガ。今日からお前は正式に冒険者だ。とりあえずE級から始めてもらうぞ」
「うん? 最低はF級じゃなかったのか?」
「ゴーガンがここまで言うんだ。実力は問題ないだろう。うちはすぐにでも戦力が欲しいからな」
「おお! すげぇじゃねぇかリョウガ! いきなりE級なんてそうはないぜ。こりゃ俺もウカウカしてられねぇな」
 
 ダリバが嬉しそうに俺に言った。冒険者がまだどんなものかわかってない俺にはこれがそこまで凄いかよくわからないがな。

「それでこれからどうする? 査定はまだだが依頼だけ受けておくことも出来るぞ」
「おいおい一仕事終えたばかりでそれはないだろう。リョウガ俺が歓迎会開いてやるからこのまま飲み食いしようぜ!」

 ダリバが食事に誘ってきた。依頼も気になるところだが先輩冒険者にあたるわけだからな。普通に暮らしていくつもりなら無下には出来ないか。

「わかった食事をしよう。だがその前に宿を見つけておきたい」
「だったら俺がおすすめを教えてやるよ」

 ダリバが言った。随分と面倒見がいいんだな。最初はあまり良く思われていなかったようだが、認められると随分と変わるものだ。それが冒険者という物なのかもな。

「じゃあ明日からしっかり頼むぞ」
「わかった」

 そして俺は先ずはダリバに案内され宿に向かった。
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