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第二章 暗殺者の異世界ライフの始まり編

第15話 盗賊たちと過ごす日々

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「リョウガ! ボージャクボアがそっちに行ったぞ」
「あぁわかってる」

 頭のゴーガン・・・・が叫び声を上げて警笛を鳴らした。

 俺の正面には興奮して突撃してくる大型の猪の姿。この世界に存在する獣の一頭で肉が美味いという話だったな。

 ただ獣と言っても俺が暮らしていた地球の獣とは異なりこの世界の獣は本能で魔力を扱い自らを強化したり場合によっては魔法や特殊な能力を発動するタイプもいるようだ。

 ちなみに俺が以前倒したブラッドベアは魔獣のくくりに入れられるんだとか。そういえばそんなことを言っていたな。

 獣の中でも特に強い力を持ったものは魔獣として扱われてるとゴーガンから教わった。

 他にも魔物と呼ばれる存在もいるようで獣とは大きく容姿が異なりそれ相応の知能を持った存在のことをさすらしい。

 盗賊たちと暮らし始めて十日程経ったがおかげで、色々なことを教わることが出来た。

「よっと」
「ブモッ!?」

 俺は突っ込んできたボージャクボアの背中に乗り手刀で首を切った。血が吹き悲鳴を上げて猪の巨体がバランスを崩し地面を滑った。

 俺は倒れる直前に飛び退いている。ボージャクボアは既に事切れていた。

「たく参ったな。強いとは思っていたがここまでとは」
「確かにこれはあんたでも勝てないわね」

 頭のゴーガンが頭を擦りながらやってきた。隣には妻のミトラ・・・の姿もある。

 二人の名前は、ミトラに文字の読み書きや発声練習など付き合って貰っている内に教わった。

 他にも国の名前も知れた。どうやら召喚されたこの国の名前はランガルド王国というらしい。

 ただ星としての名前はない、というよりも惑星という考えがなかった。まぁ魔法やスキルが当たり前にある世界だ。
 
 世界全体の常識や文化も当然地球とは異なるだろう。

「いやぁおかげで今夜もごちそうにありつけそうだぜ」

 獲物を仕留めてゴーガンは勿論他の仲間も随分と浮かれているな。

「本当あんたには驚かされてばかりさ。読み書きも言葉を話すのも数日間で完璧に覚えちゃうんだからね」
「リョウガは物覚えがいいからな。勿論お前の教え方もいかったんだろう」
「ま、まぁね」

 ゴーガンに褒められてミトラが照れくさそうにしていた。この二人夫婦仲はかなり良い。まぁ妻の尻に敷かれてそうなところは俺が暮らしていた日本と通ずるものがあるな。

 ゴーガンの言うようにミトラの教え方が良かったのは確かだ。色々習ってる内に知ったが本来この世界だと識字率が低く文字の読み書きも出来ない大人も多いんだとか。

 しかしゴーガンもミトラも今でこそ盗賊稼業に手を染めているが貴族の出で育ちは良かったようだ。

 まぁそれでもゴーガンは頭の良い方ではないと自分でも言っていたがな。だから文字の読み書きに関してはミトラに一任したわけだ。
 
 ゴーガンにしろミトラにしろ様々な要因が重なり没落し、生きていくために盗賊としてやっていくことを決めたのだとか。

 ま、俺にとってはどうでもいい身の上話でもある。一応は色々教わっている立場だったから聞いていただけだしな。

「なぁリョウガ。どうだ? 俺たちと一緒に盗賊としてやっていくってのは。お前の力があれば天下無敵だぜ!」

 やれやれまたその話か。実は俺がゴーガンからこの世界について色々教わってる時にもちょいちょい勧誘してきていた。

 ブラッドベアを倒したのが影響していたようだ。こいつらの仲間だって俺は殺しているが済んだことは気にしないようだな。

 まぁ盗賊稼業なんてやってるんだ。返り討ちに合うことも承知の上なんだろう。

 どっちにしろ俺は盗賊の仕事に興味はない。だからといって盗賊は許せないとかいうつもりないがな。

 なにせ家が暗殺一家だ。俺だって裏稼業を手伝って来たのだから盗賊行為に文句なんてつけられるわけもない。

 とは言え折角こうして異世界に召喚されたわけだ。これまでのような影でひっそりと使命を全うするみたいな生き方とは違う選択というのにも興味がある。

「前も断っただろう。盗賊の仕事には興味がない」
「はぁ。やっぱ駄目か。リョウガがいれば百人力なんだがな」

 やれやれといった様子をゴーガンが見せた。

「そういえば、お前らこそ最近盗賊行為してないようだが、前も言ったが俺のことは気にせず続けていいんだぞ?」

 これも多少は気にしていた。俺がいたから盗賊の仕事が出来なかったなんて言われたくない。

 俺は自分の命を狙うような真似さえされなければこいつらのやることに口を出すつもりはない。

「まぁそうなんだが、狩りも手伝って貰ってて今はそんなに困ってないからよ」
「……ま、お前らのやることに一々口出すつもりもないがな」

 一応俺は気にしないと何度も言ってるからな。それでもやってないのだから後は好きにしろといったところだ。

 さて、そうこうしてるうちにアジトに戻ったな。何故か盗賊連中が宴だって騒いでいて俺にもやたら話しかけてきてる。

 まぁ飯にありつけるのはいいことか――
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