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第二章 暗殺者の異世界ライフの始まり編
第13話 交換条件
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「あんた! 一体なんのつもりさ!」
いきなり謝罪されるとは思わなかったが、そこに女性の声が叩きつけられた。
「そいつはあたいらの仲間を殺したんだよ! それなのに偉そうに任せろと言っておいてなんだいその体たらくは」
「うるせぇ! お前はそこに吊られてる獲物が見えねえんか!」
この二人ただの仲間って感じじゃないな。夫婦かもしれない。
盗賊の頭は文句を言ってきた女に反応し俺が仕留めた熊の肉を指さしていた。
どうやらこの熊について知ってるようだな。
「随分と大きいね。あれ? そこに干してるの、赤い毛皮……それにその顔、熊、まさか!?」
「そのとおりだ。こいつはこの森の主ブラッドベアだ」
「「「「「ぶ、ブラッドベアだってぇえええぇえ!?」」」」」
後ろで聞いていた仲間たちも驚いていた。ブラッドベアという名前はわかりやすいからわかったが、そこまで驚くほどの相手だったか。
「ブラッドベアに出くわしたらとにかく逃げろ。そうお前らにも言っていたな。俺でさえブラッドベア相手だと倒せるかどうか五分五分ってところだ」
別に聞いていないが頭が語りだしたぞ。
「しかも例え倒せたとしても無事じゃいられねぇ。腕の一本や足の一本は覚悟しないといけねぇ相手だ。だがそれを倒した上涼しい顔で休んでいるんだ。そんなの相手にして勝てるわけねぇだろうが!」
頭が仲間を怒鳴りつけた。しかしこの熊がそこまでの相手扱いか。
確かにこれを倒せないような連中なら俺の敵ではないな。秒で殺せると思う。
「と、いうわけでさぁ。俺らはあんたに逆らうつもりはない。仲間もあんたの実力もわからず襲いかかっちまったんだろう? その事は俺から詫びる! だから!」
なるほどね。この頭は彼我の力の差を見抜ける程度の頭は持っていたわけか。
とは言え後ろの連中は不満そうでもある。後顧の憂いを断つという意味ではここで始末しておいた方がいいのかもしれないが、頭は戦意が消失している。
それに――俺はふと思いついた事を頭に話して見ることにした。
「――許して、もいい。殺さ、ない。ただ、条件、ある。呑める、か?」
辿々しい感じになってしまうのは仕方ないか。とは言え条件があることは伝わった筈だ。
「条件ですかい? それで助けて貰えるならなんでもしますぜ!」
「ちょ、あんた本気なのかい?」
「本気だ。お前らも死にたくないなら頭下げろ!」
頭が再び怒鳴りつけた。やはり仲間は不満そうだが、かといって俺にあからさまな殺意は向けてきていない。
あの吊るしたブラッドベアが利いているのかもな。
さて、それなら、と俺は頭に条件を伝えたわけだが――
「え? それが条件ですかい?」
「……呑めない、か?」
「いやいやとんでもない! 勿論受けますぜ! むしろそういうことなら任せてくだせい!」
どうやら問題ないようだな。そして俺は条件通り頭についていき盗賊のアジトに向かった。
「え~諸事情で今日から暫くここで過ごすことになった、えっとそういえば名前は?」
アジトにつき、頭が俺に名前を聞いてきた。そういえば名乗っていなかったことに気がつく。
名前はまぁこっちではどっちにしろ知られていないからそのままでいいか。
とりあえず何とか伝わるよう猟と牙を組み合わせる旨を伝えてみた。
「この御方の名前はリョウガというそうだ。宜しく頼む」
頭が俺の肩を叩いて皆にそう自己紹介した。とは言え急に余所者がやってきたわけだ。周囲の連中も戸惑っている。
「頭! そんなことよりうちの母ちゃんを殺した相手捕まえてきたのかい!」
立ち上がった少女が強い口調で頭に問いかけた。年齢は十二か十三歳ってところか。橙色した短い髪の活発そうな少女だ。
「えっと、なんだ。その件だが――」
途端に頭がしどろもどろになった。なるほど俺が殺した賊の連中に女が一人いたがそれがこの子の母親だったか。
「だからあたいは反対だったんだ。こんなの誰も納得しないよ」
頭の妻がひと睨みして言った。これが頭の妻というのは道中で直接聞いて確定した。
「いや、お前そんなこと言ったってよぉ」
「どうして答えないのさ! まさか――そいつじゃないだろうね!」
答えあぐねる頭に娘が追求した。まぁそうだな。
「――俺が仲間を殺した。お前の母親も、だ」
俺は直球で答えた。まだまだ片言っぽい喋りだがまぁ通じるだろう――
いきなり謝罪されるとは思わなかったが、そこに女性の声が叩きつけられた。
「そいつはあたいらの仲間を殺したんだよ! それなのに偉そうに任せろと言っておいてなんだいその体たらくは」
「うるせぇ! お前はそこに吊られてる獲物が見えねえんか!」
この二人ただの仲間って感じじゃないな。夫婦かもしれない。
盗賊の頭は文句を言ってきた女に反応し俺が仕留めた熊の肉を指さしていた。
どうやらこの熊について知ってるようだな。
「随分と大きいね。あれ? そこに干してるの、赤い毛皮……それにその顔、熊、まさか!?」
「そのとおりだ。こいつはこの森の主ブラッドベアだ」
「「「「「ぶ、ブラッドベアだってぇえええぇえ!?」」」」」
後ろで聞いていた仲間たちも驚いていた。ブラッドベアという名前はわかりやすいからわかったが、そこまで驚くほどの相手だったか。
「ブラッドベアに出くわしたらとにかく逃げろ。そうお前らにも言っていたな。俺でさえブラッドベア相手だと倒せるかどうか五分五分ってところだ」
別に聞いていないが頭が語りだしたぞ。
「しかも例え倒せたとしても無事じゃいられねぇ。腕の一本や足の一本は覚悟しないといけねぇ相手だ。だがそれを倒した上涼しい顔で休んでいるんだ。そんなの相手にして勝てるわけねぇだろうが!」
頭が仲間を怒鳴りつけた。しかしこの熊がそこまでの相手扱いか。
確かにこれを倒せないような連中なら俺の敵ではないな。秒で殺せると思う。
「と、いうわけでさぁ。俺らはあんたに逆らうつもりはない。仲間もあんたの実力もわからず襲いかかっちまったんだろう? その事は俺から詫びる! だから!」
なるほどね。この頭は彼我の力の差を見抜ける程度の頭は持っていたわけか。
とは言え後ろの連中は不満そうでもある。後顧の憂いを断つという意味ではここで始末しておいた方がいいのかもしれないが、頭は戦意が消失している。
それに――俺はふと思いついた事を頭に話して見ることにした。
「――許して、もいい。殺さ、ない。ただ、条件、ある。呑める、か?」
辿々しい感じになってしまうのは仕方ないか。とは言え条件があることは伝わった筈だ。
「条件ですかい? それで助けて貰えるならなんでもしますぜ!」
「ちょ、あんた本気なのかい?」
「本気だ。お前らも死にたくないなら頭下げろ!」
頭が再び怒鳴りつけた。やはり仲間は不満そうだが、かといって俺にあからさまな殺意は向けてきていない。
あの吊るしたブラッドベアが利いているのかもな。
さて、それなら、と俺は頭に条件を伝えたわけだが――
「え? それが条件ですかい?」
「……呑めない、か?」
「いやいやとんでもない! 勿論受けますぜ! むしろそういうことなら任せてくだせい!」
どうやら問題ないようだな。そして俺は条件通り頭についていき盗賊のアジトに向かった。
「え~諸事情で今日から暫くここで過ごすことになった、えっとそういえば名前は?」
アジトにつき、頭が俺に名前を聞いてきた。そういえば名乗っていなかったことに気がつく。
名前はまぁこっちではどっちにしろ知られていないからそのままでいいか。
とりあえず何とか伝わるよう猟と牙を組み合わせる旨を伝えてみた。
「この御方の名前はリョウガというそうだ。宜しく頼む」
頭が俺の肩を叩いて皆にそう自己紹介した。とは言え急に余所者がやってきたわけだ。周囲の連中も戸惑っている。
「頭! そんなことよりうちの母ちゃんを殺した相手捕まえてきたのかい!」
立ち上がった少女が強い口調で頭に問いかけた。年齢は十二か十三歳ってところか。橙色した短い髪の活発そうな少女だ。
「えっと、なんだ。その件だが――」
途端に頭がしどろもどろになった。なるほど俺が殺した賊の連中に女が一人いたがそれがこの子の母親だったか。
「だからあたいは反対だったんだ。こんなの誰も納得しないよ」
頭の妻がひと睨みして言った。これが頭の妻というのは道中で直接聞いて確定した。
「いや、お前そんなこと言ったってよぉ」
「どうして答えないのさ! まさか――そいつじゃないだろうね!」
答えあぐねる頭に娘が追求した。まぁそうだな。
「――俺が仲間を殺した。お前の母親も、だ」
俺は直球で答えた。まだまだ片言っぽい喋りだがまぁ通じるだろう――
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