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第二章 新天地での活躍編

第30話 統率されたゴブリン

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 最初のゴブリン三体は倒した。だけどこれで解決ではない。寧ろ本番はこれからだ。

「――不味いにゃ」
「グルルルルゥ」

 三体のゴブリンを片付けた後、フェレスがその場で伏せて地面に耳を当てて呟いた。

 ウルも唸り声を上げ周囲を警戒するように頭を巡らせている。

「……どうかしたのか?」

 フェレスにキリンが聞いた。ウルの様子といい不穏な空気を感じ取ったのだろう。

「ゴブリンが一斉に動き出したにゃ。さっきの三体が倒されたことに気がついたと思うにゃ」
「何だって? おいおい近くにゴブリンの仲間がいたってことか?」

 ナックルが眉を顰めフェレスに問い返した。フェレスとウルの腕に疑問でも抱いたのだろうか。

 だが、話を聞くにゴブリン側に特殊な事情があったと見るべきだと思う。

「少なくともあたしの察せられる範囲にはいなかったにゃ」
「ガルゥ」
「ウルもそうだと言ってます」

 フェレスが疑問に答えウルも追随するように唸った。アニンはウルの気持ちを言葉にして伝えてくれている。

「ゴブリンの方が気配を察する力に長けていたって事か」
「ゴブリンにそこまで高い索敵能力があるなんて信じられないけど……」

 ユニーとマジュが怪訝そうに呟いた。ただ二人の考えと僕の考えは違う。

「こちらの気配を察したというよりも仲間の死が伝わるようになっていたんじゃないかな」
「あたしもそう思うにゃ。それにそもそもそこまで高い察知能力があったならあたし達の接近にはとっくに気づいていた筈にゃ」

 僕が考えを示すとフェレスも同意してくれて理由も説明してくれた。僕は漠然とそう思っただけだが流石フェレスはしっかりしている。

「そうか。それが無いということはこちらの動きに気づいたのではなく仲間のゴブリンが死んだ事が引き金となって動き出したと見るのが自然だな」

 ブレブも後者の考えに納得してくれたようだ。

「もう一つ可能性があるぜ。どこかの誰かが何らかの例えば召喚魔法を使って敢えて呼び寄せたとかな」

 あからさまに僕を指した発言だ。だけどもう誰も聞く耳を持ってないようでまたかといった表情を見せている。

「とにかく急いで対処しなければいけません」

 エベが真剣な目つきで言った。さっきより多くのゴブリンが近づいてきているならグズグズしている余裕はない。

「そうだな。それで数はどれぐらいなんだ?」

 ブレブがフェレスに確認した。相手の数次第で配置や作戦も変化するはずだ。

「――十や二十じゃきかないにゃ。四十、いえ、五十以上は覚悟した方がいいにゃん」
「それは、流石に多いね……」

 弓の点検をしながらユニーが呟いた。口調と表情には緊張感が漂っている。

「それだけの数に囲まれると厄介だ。ゴブリンがどう来るかわかるか?」

 ブレブがフェレスに問いかけた。気配からゴブリンの動きが予測出来れば有利に働く。

「ゴブリンを倒した場所に集まってるのは確かだと思うにゃ。ただ気配から察するに一塊で動いているわけじゃないにゃ。幾つかのグループに分かれて網を放るみたいにやってきてるにゃ」
「ゴブリンにしては知識があるようだな」

 フェレスの答えにキリンが頷いた。

「ある程度統率されてる印象もあるわね。やっぱりゴブリンロードが現れたと見るべきかしら」
「だとしたらここでやられてる場合でもないな」

 マジュがロードについて言及しブレブも真剣な顔を見せる。確かに後の戦いを考えたらここでの被害は食い止めたい。

 そこで僕は改めて今自分が使える標識を確認した。

「あ、これなら――」
「何かあったにゃん?」

 リストを確認し一つの手を思いついて僕にフェレスが声を掛けてきた。

 僕の表情とつぶやきから察してくれたのかもしれない。

「僕の魔法なら今やってきてるゴブリンに対処出来るかもしれない」
「――ほう。それなら是非どんな手か聞かせてもらいたいな」

 キリンが興味深そうに聞いてきた。ただ説明は難しいか――

「信じてもらえるなら今から実践して見せますが任せてもらえますか?」

 なのでその場のみんなから確認を取るように聞いてみた。気になるとしたらアグレイだけどどういう態度に出てくるか――
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