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第二章 新天地での活躍編

第20話 標識の組み合わせ

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「ギャギャッ!」
「ギェッ!」
「ギャーギャー!」

 飛び出した僕に気がついたゴブリンが騒ぎ出した。武器を構えやる気に満ちているのもいる。

「標識召喚・一時停止!」
 
 そのゴブリンの正面に標識を立てる。止まれと記された標識を見た途端ゴブリンの動きがピタリと止まった。

 一時的に相手の動きを止めるのがこの標識の特徴だ。そしてこの時点で既に勝負は決まっていた。

「ソーサースロー!」

 フェレスの投げたブーメランが猛烈な勢いで回転し丸鋸のようになりゴブリン三体に襲いかかった。

 動きが止まってるゴブリンはこれを避ける事が出来ず胴体が切り株状態になり倒れた。当然もう生きてはいない。

「やったにゃ。マークのおかげで楽勝だったにゃ」
「はは。さてこっちは――」
 
 僕が標識を立てるとほぼ同時に音を確認しにいっていたゴブリンが戻ってきた。

「「「ギェギェギェェエエェエエッ!」」」
 
 かと思えば落とし穴に引っかかったり飛んできた丸太にあたったりして倒された。僕が【危険】の標識を立てたからだ。

 この標識の領域に踏み入れると何かしら危険なことが発生する。

「マークは流石にゃ」
「いやいやフェレスの技も凄かったよ」

 僕は様々な技術のあるフェレスに感心するばかりである。

「捕まってる母娘を助けるにゃ!」
「うん。そうだね」

 僕たちは木に縛り付けられていた二人を解放して上げた。

「うわーんママーママー!」
「あぁ――本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げてよいか――」

 母娘からは涙ながらに感謝を述べられた。聞くところによるとやはり商人の家族だったようだ。荷を運んでいるところでゴブリンに見つかり護衛の冒険者が追い払ったかと思えば、深追いしてしまい罠に嵌ってしまったようだ。

「きっと倒せると思って油断したにゃ。ゴブリンのような魔物は倒すと報酬がもらえるから欲を出したんだと思うにゃ」

 フェレスがそう推測した。しかし報酬に目が眩んで死んでしまっては意味がない。その上護衛の任務まで失敗しているわけだし。

「あぁ、貴方……」
 
 残念ながら主人の方は手遅れだった。死体を目にして母親と娘が涙を流している。

 それを見届けた後、落ち着いた二人に少し待ってもらい僕たちはゴブリンの死体に冒険者証を翳して退治したことを登録した。その後、改めてフェレスが二人に話しかける。

「今とても悲しいのはわかるけどにゃ。ゴブリンは一匹みたらその十倍はいると思えと呼ばれるような魔物にゃ。急いでここを離れた方がいいにゃ」
「確かにそうですね。ですがどうやって……」

 母親がチラリと馬車と既に息絶えた馬を見た。当然だが馬車は馬がなければ本来役に立たない。

「――僕の魔法なら馬車があれば皆で移動できるかもしれない」
「え? それは一体――」
 
 不思議そうな顔をする母娘に先ず馬車に乗ってもらうよう伝えた。そのうえで外に散らばっていた物品を馬車に戻した。母娘の希望もあったので遺体も運ぶことにする。ただこれはそのまま荷代に乗せてもいい気分はしないだろうから荷物預かり所に預けさせてもらった。

「えっと今のは一体?」
「僕は召喚魔法師なのです。その力だと思ってください」

 この国では自分の力を隠すつもりはなかった。召喚師の里の連中も国を渡ってまでこれないからだ。

「乗りましたが一体どうやって?」
「お兄ちゃんが引くの?」
「う~ん近いかな。こうやってね標識召喚・最低時速10kmアンド標識召喚・最高時速80km!」

 二つの標識を同時召喚出来るようになりこれが可能となった。これにより最低時速と最高時速の間で速度を調整して移動できる。

 更にこれを馬車と関連付けることで馬車に乗ったままの高速移動が可能だ。御者台の上に乗り左右に標識をくっつけるようにして移動を開始する。

「す、凄い……」
「うわぁ~はっや~い」
「う~ん。こんなことも可能だなんてマークの魔法はやっぱりとんでもないにゃ」

 後ろからそんな声が聞こえてきた。僕自身まだまだ手探りなところがあるけど標識召喚は使いようによってはまだまだ可能性がありそうな気がする。

 これからも冒険者として依頼をこなしながら色々探っていこうと、そう思った――
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