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第二章 新天地での活躍編

第19話 ゴブリン

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 ゴブリンはとても醜悪な顔をした魔物だ。魔物というのは知能を持った邪悪な存在でそれなりの知能を有す。

 人間に対しては敵対的で故に討伐対象にされている。ゴブリンは魔物の中で言えば単体の能力は低い。

 しかし繁殖力が強く放っておくと数がみるみる内に増えていく。それにゴブリンは変異種が生まれやすいと言われている。

 より強力なホブゴブリン。魔法が使えるというゴブリンシャーマン。更にもっと強力な存在に変異することだってある。

 だから見つけたら早くに排除しないといけない、というのは召喚師の里でも言われていたことだ。

 もっともゴブリンを直接見たのは初めてだ。だけど噂通り凶悪な奴らなのは今の食事の様子を見ればわかる。

「――人を喰ってるにゃ。馬車から見て商人あたりが襲われたにゃ」
「やっぱりそうなんだね……」
  
 フェレスの言う通り馬車が置かれていてゴブリンは犠牲になった人間を食べていた。それに鎧や剣を持って喜んでる様子もある。ゴブリンは襲った人間の持ち物を奪って利用するぐらいの知識はあるようだ。

 ゴブリンそのものは人間の子どもより少し大きいぐらいの存在だ。だから鎧なんかはそのままじゃ着れないが武器なら使えるのもあるのだろう。

 ゴブリンは馬も食べていた。勿論馬以外も食べていた。別の国に来ていきなり凄惨な現場に遭遇してしまった。

「馬車が何でこんな森の中に?」
「森から狙われたのかも知れないにゃ。冒険者が護衛だったと思うけどやられてるにゃ。ゴブリンは悪知恵が働くにゃ」

 確かに能力的には弱いとされるゴブリンだけど悪知恵はその分働くとか。相手を陥れようと罠を仕掛けたりすると里でも聞いていたからね。

「うまく誘い込んで先ず冒険者を殺して次に商人を襲ったと思うにゃ。その後馬車は森まで引っ張ってきたんだと思うにゃ」

 馬車はゴブリンが運んだということか。全部で六体いるし馬車一台ぐらいなら可能なのだろう。

 その上で荷をあさったわけか。さて、問題はこのゴブリンをどうするかだ。事が全て終わった後ならこのまま放置して先ず町に向かった方が得策なのだろうが――

「ヒックヒック……」
「あぁ、貴方。うぅ……」

 ゴブリンが食事をしている奥の幹に母娘が縛り付けられていた。

「あそこに二人捕まってるね」
「――ゴブリンは雄しか存在しないにゃ。その代わり他種族の雌を繁殖の為利用するにゃ。だから女はそう簡単に殺したりしないにゃ。今食事を摂ってるのもこれから繁殖する為に体力をつけているとみるにゃ」
 
 フェレスが淡々と説明してくれた。フェレスも女の子なのだが全く躊躇がない説明だ。このあたりはやはり冒険者として肝が座ってるのだろう。

 知識はあってもゴブリンを見たのもこういった光景を見るのも初めてな僕は正直動揺している。本当は喉から込み上げてくるものもあったのだけど何とか堪えている。

「このまま放ってはおけないね」
「でも数が多いにゃ。正直二人だけで相手するのは本来なら無謀にゃ。マークがただの初心者冒険者なら可哀想だけど諦めるところにゃ」

 フェレスは冷静だった。ただし僕に関しては別な見方をしてくれたようだ。

「でも、マークは普通とは違うにゃ。だからここはマークの判断に従うにゃ。勿論あたしも見捨てるのは不本意だにゃ」

 助けられるものなら助けたいってことか。だけどそれは当然だろう。僕たちは冒険者だ。目の前で今にも犠牲になりそうな人がいるのに見過ごせはしない。

 力がないなら無謀だろう。だけど僕には標識の力がある。

「なら行こう。大丈夫。ゴブリンはずる賢いけど思考は単純だって話だ。それなら先ずはこの手が役立つ。標識召喚・警笛――」

 僕は位置を指定してこの標識を召喚した。丸い標識であり青い背景の中にもう一つの世界で言う警笛のマークが記されている。

 それを召喚した結果――

『プァプァプァプァアアアアアァン!』

 そんな激しい音が鳴り響いた。

「ギャギャッ!」
「グギェッ!」
「ギェェエエギェッ!」

 当然ゴブリン達が騒ぎ出し音の鳴っている方へ見に行った。そして僕が召喚したのは当然今いる場所とは違う明後日の方向。

 六体の内、三体は残ったがこれぐらいなら問題はない。僕たちは行動に移った――
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