19 / 47
第二章 新天地での活躍編
第18話 新天地にて
しおりを挟む
プロスクリ王国の砦を越えたが当然だがカシオン共和国の国境にも入るわけだからもう一つ砦を越えることになる。
もっとも紹介状はカシオン共和国向けのもある。砦の門を抜ける際にも紹介状を手渡せば話はすぐに通った。
「冒険者の方ですね。今はとても助かります」
「何かあったのですか?」
話は通ったが僕たちが冒険者だと知った時の兵士の顔つきが気になった。何か困り事がありそうな様子だったからだ。
「ここを出て道なりに進むと辺境の街リビアがありますのでそこまで行けば自然とわかると思いますよ」
リビア――プロスクリ王国側のギルドマスターが言っていた街だ。そういえばギルドマスターが何か困ってるようなことを言っていた。
どうやら隣国に来てすぐそのお願いが達成できそうだ。
「それと君たちリビアにつくまでは街道から外れないこと。冒険者といえいつ危険に見舞われるかわからないからね」
「はい。わかりましたご忠告ありがとうございます」
僕たちは兵士にお礼を告げ砦を抜けてカシオン共和国の大地に足を踏み入れた。
「あたし他の国まで来たの初めてにゃ~」
「僕もだよ。一応話では差別のない平等な国だと聞いているけどね」
その話の通りならフェレスが偏見の目で見られることもないのかなと思える。
「この街道を進んで行くにゃ?」
「そうだね。とりあえず暫くは歩いてみようか」
標識の力に頼ってもいいけどまだ見ぬ国にやってきたのだから自分たちの足で移動して多少なりとも情報を掴んでおくのもいいと思う。
「賛成にゃ。折角だから景色を楽しむにゃ」
フェレスが鼻歌交じりにスキップしながら進みだした。少し浮かれてるようにも思えるけど、この国に来るまではいつ奴隷に堕とされるかという不安を抱えながらやってきたのだ。
多少は気が緩んでも仕方ない。その分僕が注意をしておかないと――
「ストップにゃ!」
そう思っていた矢先、フェレスの様子が一変した。真剣な目で耳を小刻みに動かし四つん這いになって何かをチェックしている。
「どうかしたの?」
「血の匂いがするにゃ。まだそう時間は経ってないにゃ。それによく見ると草に血が付いてるにゃ。ここで何かあって飛び散ったと考えるにゃ」
前言撤回。フェレスはやはり冒険者だ。浮かれているようで全く気が緩んでなかったのだろう。
「スンスン、こっちにゃ!」
フェレスが指さした方向には森が広がっていた。確か門番をしていた兵士からは街道を外れないよう言われていたけどフェレスは匂いが気になるようだ。
「……注意されてはいたけど行ってみようか」
「あたしたちは冒険者にゃ! 危険と判っていてもやらなければいけないときもあるにゃ!」
鼻息を荒くしてフェレスが訴えてきた。僕は首肯しフェレスと一緒に森に入っていく。
「スンスン、こっちにゃ」
鼻をひくひくさせるフェレスが何だか可愛い。この状況でそんなことを思うのは不謹慎かなと思わず口元が緩んだ。
「――ギェ」
だが、そんな考えも潰れた喉で無理矢理発したような不気味な声が耳に届いたことで消え去った。自然と緊張が高まる。
声は明らかに人ではなかった。
「出来るだけ音を立てないようにするにゃ」
言ってる本人はとっくに実演出来ていた。足音が一切感じられない。恐らく気配も自然と抑えているのだろう。これらは全て獣人特有のアビリティによるものだと思う。
僕もできるだけ息を殺して進もうと思うけどフェレスほどうまくは出来ない。そこで標識に何かいいのが無いか探してみたけどあった!
「標識召喚・静寂――」
魔法を唱えると『静かに』と書かれた標識が立った。これで音を伝わらなくさせることが出来る。標識の効果範囲は設定出来るようになっていた。最大では半径50メートルに限定されるが最小なら幾らでも縮められる。
標識の範囲を僕だけが対象になるようギリギリに狭めた。フェレスは自分の力でなんとかなっている。当然だけど範囲を広げれば魔力がそれだけ多く減ることになる。
標識は対象を僕に設定することで勝手に付いてくることにも気がついた。これでフェレスに迷惑を掛けることもない。
「また新しい標識にゃ」
「うん。これで相手が誰でも気づかれることはないよ」
「本当に便利だにゃ」
そして僕たちは更に奥へと向かう。
「これが匂いの正体にゃ……」
「ギャギャッ!」
「ギャッ!」
「グギャ~」
フェレスと一緒にそっと木から顔を出して覗き見るとそこには複数の生物。人間ではない。緑色の皮膚が特徴で小さな角を持つ化け物――ゴブリンだ。
もっとも紹介状はカシオン共和国向けのもある。砦の門を抜ける際にも紹介状を手渡せば話はすぐに通った。
「冒険者の方ですね。今はとても助かります」
「何かあったのですか?」
話は通ったが僕たちが冒険者だと知った時の兵士の顔つきが気になった。何か困り事がありそうな様子だったからだ。
「ここを出て道なりに進むと辺境の街リビアがありますのでそこまで行けば自然とわかると思いますよ」
リビア――プロスクリ王国側のギルドマスターが言っていた街だ。そういえばギルドマスターが何か困ってるようなことを言っていた。
どうやら隣国に来てすぐそのお願いが達成できそうだ。
「それと君たちリビアにつくまでは街道から外れないこと。冒険者といえいつ危険に見舞われるかわからないからね」
「はい。わかりましたご忠告ありがとうございます」
僕たちは兵士にお礼を告げ砦を抜けてカシオン共和国の大地に足を踏み入れた。
「あたし他の国まで来たの初めてにゃ~」
「僕もだよ。一応話では差別のない平等な国だと聞いているけどね」
その話の通りならフェレスが偏見の目で見られることもないのかなと思える。
「この街道を進んで行くにゃ?」
「そうだね。とりあえず暫くは歩いてみようか」
標識の力に頼ってもいいけどまだ見ぬ国にやってきたのだから自分たちの足で移動して多少なりとも情報を掴んでおくのもいいと思う。
「賛成にゃ。折角だから景色を楽しむにゃ」
フェレスが鼻歌交じりにスキップしながら進みだした。少し浮かれてるようにも思えるけど、この国に来るまではいつ奴隷に堕とされるかという不安を抱えながらやってきたのだ。
多少は気が緩んでも仕方ない。その分僕が注意をしておかないと――
「ストップにゃ!」
そう思っていた矢先、フェレスの様子が一変した。真剣な目で耳を小刻みに動かし四つん這いになって何かをチェックしている。
「どうかしたの?」
「血の匂いがするにゃ。まだそう時間は経ってないにゃ。それによく見ると草に血が付いてるにゃ。ここで何かあって飛び散ったと考えるにゃ」
前言撤回。フェレスはやはり冒険者だ。浮かれているようで全く気が緩んでなかったのだろう。
「スンスン、こっちにゃ!」
フェレスが指さした方向には森が広がっていた。確か門番をしていた兵士からは街道を外れないよう言われていたけどフェレスは匂いが気になるようだ。
「……注意されてはいたけど行ってみようか」
「あたしたちは冒険者にゃ! 危険と判っていてもやらなければいけないときもあるにゃ!」
鼻息を荒くしてフェレスが訴えてきた。僕は首肯しフェレスと一緒に森に入っていく。
「スンスン、こっちにゃ」
鼻をひくひくさせるフェレスが何だか可愛い。この状況でそんなことを思うのは不謹慎かなと思わず口元が緩んだ。
「――ギェ」
だが、そんな考えも潰れた喉で無理矢理発したような不気味な声が耳に届いたことで消え去った。自然と緊張が高まる。
声は明らかに人ではなかった。
「出来るだけ音を立てないようにするにゃ」
言ってる本人はとっくに実演出来ていた。足音が一切感じられない。恐らく気配も自然と抑えているのだろう。これらは全て獣人特有のアビリティによるものだと思う。
僕もできるだけ息を殺して進もうと思うけどフェレスほどうまくは出来ない。そこで標識に何かいいのが無いか探してみたけどあった!
「標識召喚・静寂――」
魔法を唱えると『静かに』と書かれた標識が立った。これで音を伝わらなくさせることが出来る。標識の効果範囲は設定出来るようになっていた。最大では半径50メートルに限定されるが最小なら幾らでも縮められる。
標識の範囲を僕だけが対象になるようギリギリに狭めた。フェレスは自分の力でなんとかなっている。当然だけど範囲を広げれば魔力がそれだけ多く減ることになる。
標識は対象を僕に設定することで勝手に付いてくることにも気がついた。これでフェレスに迷惑を掛けることもない。
「また新しい標識にゃ」
「うん。これで相手が誰でも気づかれることはないよ」
「本当に便利だにゃ」
そして僕たちは更に奥へと向かう。
「これが匂いの正体にゃ……」
「ギャギャッ!」
「ギャッ!」
「グギャ~」
フェレスと一緒にそっと木から顔を出して覗き見るとそこには複数の生物。人間ではない。緑色の皮膚が特徴で小さな角を持つ化け物――ゴブリンだ。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる