14 / 47
第一章 追放された召喚師編
第13話 盗賊のアジトに入る
しおりを挟む
「あそこが盗賊のアジトなようだね」
標識の案内通りだとすればだけど恐らく間違いはないと思う。
「何だかそれっぽい雰囲気があるにゃ。それにしてもこんなところよく見つけられたにゃ」
フェレスが感心していた。山にある洞窟がアジトというのは別に珍しい話ではない。ただしここは道もなく途中にあんな坂、というより崖があったから見つけるのは難しいだろう。
「慎重に進んでいこう」
「うん!」
洞窟の入り口で先ず中の様子を探る。ここはフェレスが任せてと言って壁に耳を当てたり鼻をひくひくさせた上で、ゆっくりと中を覗き込んだ。
「少し薄暗いにゃ。でも任せてにゃ! あたし猫の獣人だから暗いところでもよく見えるし、視力にも自信があるにゃ」
フェレスが特技をアピールしてくれた。それも猫の獣人特有のアビリティなのだろう。
「うん。それならお願いするよ。だけど危険が近づいてきたら言ってね。すぐに召喚魔法を使うから」
「わかったにゃ」
フェレスを先頭に洞窟を進む。中は確かに薄暗い。これは恐らく敢えてだろう。松明など下手に明かりを付けたら自分たちが潜んでると宣伝してるようなものだ。
わざわざ急な崖の上をアジトにしているぐらいだ。わざわざ自分たちの居場所が知られるような真似はしないだろう。
「あれ? 誰もいないにゃ」
暫く直進の道を進むと壁に突き当たった。他に道はない。
「狭い洞窟にゃ。もしかしてここじゃなかったかにゃ?」
「う~ん……」
僕は試しに案内標識を再召喚したけど真ん中に盗賊のアジトと表記されていた。やはり場所は間違っていないようだった。
「これはもしかしたら隠し通路があるのかもしれない」
「あ、なるほどにゃ!」
僕が推測を語るとフェレスも納得したように声を上げた。そして壁に耳を当てコンコンっと叩き出す。
「――ここにゃ。この先何もない空間だと思うにゃ」
フェレスが壁の一部を指差して教えてくれた。やはり獣人族は感覚が人より優れている。
「でも、どう開けるかわからないにゃ……隠し扉は魔法で作られていて暗号で開く場合もあると聞くにゃ」
フェレスが頭を悩ませる。暗号系の扉などはよく使われる手だ。厄介なのは暗号を間違った場合に何らかの罠が発動したり中にいる者に知らせることになる場合だ。
恐らくどれかか両方が仕掛けられているだろう。暗号を試すのにはリスクがある。
僕は何か良い標識がないか頭の中のリストを洗ってみた。そこにちょうど良さそうなのを見つけた。
「いいのがあった! 標識召喚・非常口!」
魔法を行使。召喚された標識はフェレスが言っていた壁の上に貼り付いた。緑色の標識で向こうの世界ではピクトグラムと言われていた人型で表現され非常口と書かれている。
「扉が出てきたにゃ……」
「うん。非常口だからね」
両開きの扉だった。押して開けると確かに扉の先に壁はなく通路が続いていた。
「確かに隠し通路があったようだね。フェレスのおかげで見つけられたよ」
「で、でも凄いのはマークにゃ。マークの魔法がなければここは開かなかったにゃ」
「そうなるとチームワークの勝利だね」
フェレスに笑顔を見せつつ答えた。フェレスもどことなく嬉しそうにニッコリと微笑む。
「そうにゃ。あたし達、結構いいコンビにゃ」
「うん。そうだね。さて、ここからは盗賊の本拠地だ。気を引き締めないと」
「先頭は任せるにゃ」
そして再びフェレスが僕の前を歩き通路を進んでいく。隠し通路では壁にランプが設置されていた。隠し通路から先ではしっかり盗賊も灯りを確保していたらしい。
「待つにゃ――」
フェレスが何かを感じ取ったようだ。スリングショットを構え地面目掛けて玉を撃つ。
するとプツンっという音がして横壁から矢が発射された。気づかずに進んでいたら矢にやられていた。
「細い糸が張ってあったにゃ」
「凄い。僕には気づけなかったよ」
それから先もところどころに仕掛けられた罠をフェレスが見破り安全に進むことが出来たわけだけど――
「暫く暇だな」
「三日前に馬車を襲ったばかりだろう?」
「三日何もなければ腕が訛っちまうぜ」
通路がL字に曲がってる地点で声が聞こえてきた。会話のやり取りを聞いていても間違いなく盗賊だろう。相手は二人組なようだがさてどうしようか――
標識の案内通りだとすればだけど恐らく間違いはないと思う。
「何だかそれっぽい雰囲気があるにゃ。それにしてもこんなところよく見つけられたにゃ」
フェレスが感心していた。山にある洞窟がアジトというのは別に珍しい話ではない。ただしここは道もなく途中にあんな坂、というより崖があったから見つけるのは難しいだろう。
「慎重に進んでいこう」
「うん!」
洞窟の入り口で先ず中の様子を探る。ここはフェレスが任せてと言って壁に耳を当てたり鼻をひくひくさせた上で、ゆっくりと中を覗き込んだ。
「少し薄暗いにゃ。でも任せてにゃ! あたし猫の獣人だから暗いところでもよく見えるし、視力にも自信があるにゃ」
フェレスが特技をアピールしてくれた。それも猫の獣人特有のアビリティなのだろう。
「うん。それならお願いするよ。だけど危険が近づいてきたら言ってね。すぐに召喚魔法を使うから」
「わかったにゃ」
フェレスを先頭に洞窟を進む。中は確かに薄暗い。これは恐らく敢えてだろう。松明など下手に明かりを付けたら自分たちが潜んでると宣伝してるようなものだ。
わざわざ急な崖の上をアジトにしているぐらいだ。わざわざ自分たちの居場所が知られるような真似はしないだろう。
「あれ? 誰もいないにゃ」
暫く直進の道を進むと壁に突き当たった。他に道はない。
「狭い洞窟にゃ。もしかしてここじゃなかったかにゃ?」
「う~ん……」
僕は試しに案内標識を再召喚したけど真ん中に盗賊のアジトと表記されていた。やはり場所は間違っていないようだった。
「これはもしかしたら隠し通路があるのかもしれない」
「あ、なるほどにゃ!」
僕が推測を語るとフェレスも納得したように声を上げた。そして壁に耳を当てコンコンっと叩き出す。
「――ここにゃ。この先何もない空間だと思うにゃ」
フェレスが壁の一部を指差して教えてくれた。やはり獣人族は感覚が人より優れている。
「でも、どう開けるかわからないにゃ……隠し扉は魔法で作られていて暗号で開く場合もあると聞くにゃ」
フェレスが頭を悩ませる。暗号系の扉などはよく使われる手だ。厄介なのは暗号を間違った場合に何らかの罠が発動したり中にいる者に知らせることになる場合だ。
恐らくどれかか両方が仕掛けられているだろう。暗号を試すのにはリスクがある。
僕は何か良い標識がないか頭の中のリストを洗ってみた。そこにちょうど良さそうなのを見つけた。
「いいのがあった! 標識召喚・非常口!」
魔法を行使。召喚された標識はフェレスが言っていた壁の上に貼り付いた。緑色の標識で向こうの世界ではピクトグラムと言われていた人型で表現され非常口と書かれている。
「扉が出てきたにゃ……」
「うん。非常口だからね」
両開きの扉だった。押して開けると確かに扉の先に壁はなく通路が続いていた。
「確かに隠し通路があったようだね。フェレスのおかげで見つけられたよ」
「で、でも凄いのはマークにゃ。マークの魔法がなければここは開かなかったにゃ」
「そうなるとチームワークの勝利だね」
フェレスに笑顔を見せつつ答えた。フェレスもどことなく嬉しそうにニッコリと微笑む。
「そうにゃ。あたし達、結構いいコンビにゃ」
「うん。そうだね。さて、ここからは盗賊の本拠地だ。気を引き締めないと」
「先頭は任せるにゃ」
そして再びフェレスが僕の前を歩き通路を進んでいく。隠し通路では壁にランプが設置されていた。隠し通路から先ではしっかり盗賊も灯りを確保していたらしい。
「待つにゃ――」
フェレスが何かを感じ取ったようだ。スリングショットを構え地面目掛けて玉を撃つ。
するとプツンっという音がして横壁から矢が発射された。気づかずに進んでいたら矢にやられていた。
「細い糸が張ってあったにゃ」
「凄い。僕には気づけなかったよ」
それから先もところどころに仕掛けられた罠をフェレスが見破り安全に進むことが出来たわけだけど――
「暫く暇だな」
「三日前に馬車を襲ったばかりだろう?」
「三日何もなければ腕が訛っちまうぜ」
通路がL字に曲がってる地点で声が聞こえてきた。会話のやり取りを聞いていても間違いなく盗賊だろう。相手は二人組なようだがさてどうしようか――
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる