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第一章 追放された召喚師編

第12話 盗賊のアジトを見つけよう

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 僕たちは盗賊の情報をギルドで確認してから、比較的多く出没している場所までやってきていた。

「マークこれからどうするにゃ? 虱潰しに探すにゃ? それならあたしの嗅覚をフル活用させるにゃ!」

 フェレスが拳を握りしめて張り切って見せる。確かに獣人族は嗅覚や聴覚が優れるアビリティを持っていると聞いたことがある。

「その力は凄く助かるけど今はあまり時間がない。だから僕の魔法に頼ることにするよ」

 頭のリストから今役立ちそうな標識を見つけ魔法を行使した。

「標識召喚・案内標識(盗賊のアジト)」

 魔法陣が現れ標識が頭上に浮かび上がってきた。これは標識そのものが空中に浮かび上がるタイプであり、青い標識に矢印が現れ盗賊のアジトまでの方向を示してくれている。

「これに従っていけば盗賊のアジトまでいけると思う」
「す、すごいにゃ!」

 この標識にもフェレスは驚いていた。本当は移動速度を速める標識も使いたいけど現状召喚できるのは一度に一つだ。

 それに標識を召喚している間は魔力が減る。あまり無駄遣いは出来ない。

 標識を確認したのだから一度消すという手も考えたけど召喚する時が一番魔力が減るみたいだから暫くは維持して進むことにした。

 ある程度進むと標識の矢印が変わる。なるほど最初は大まかな方向を示して近づくと微調整されていくわけだ。

 標識通り進んでいくと途中で赤い毛の狼が群れをなして現れた。普通の狼より手強いタイプかもしれない。

「ガルルルルゥ!」
 
 狼は口から火の玉を吐いて攻撃してきた。獣でも魔力を操って特殊な攻撃をしてくるタイプもいる。

 獣の中でもより強力な力を持ったタイプは魔獣と呼ばれる。もっとも魔獣が現れた時には大騒ぎになり冒険者ギルドも大忙しになることだろう。

「火の玉の数が多いにゃ!」
「大丈夫。標識召喚・通行止め」

 赤い斜め線の入った標識をその場に立てた。すると正面から飛んできた火の玉の動きが標識の手前でストップする。

「ど、どうなってるにゃ?」
「この標識を立てるとここから先にはやってこれないんだ」

 不思議がってるフェレスに説明した。

「さぁフェレス攻撃をお願い!」
「あ、そうだにゃ!」

 火の玉が止まったことで赤い狼が直接攻撃しようと突っ込んできたが、その動きも標識に阻まれていた。

 実は効果は正面限定なので横に回り込まれると標識の方向も変えないといけない。だけどそうすると今止まってる魔法が動き出すからね。

 気づかれる前にフェレスに反撃してもらう。

「ダブルスローにゃ!」

 フェレスがブーメランを取り出し投げた。金属製のブーメランが鋭く回転し全ての狼を薙ぎ払って行く。しかもブーメランは途中で転回し狼の群れに二回命中した後でフェレスの手元に戻ってきた。

 狼はその場に倒れピクピクと痙攣し暫くしたら動かなくなった。

「やったにゃ!」
「うん。すごいよフェレス!」

 標識召喚にも攻撃する手はあるけど動きを止めたり制限するタイプも多い。そういった標識を使う場合はフェレスの力が頼りになる。

「この狼の毛皮も素材として売れるかもしれないし持っておこう」

 標識召喚で預かり所を出して狼の死体を預かってもらった。この預かり所、どうやら預かってる間の品質は保証されてるらしい。つまり預けた物が劣化することがない。たとえ死体であっても腐敗したりしないのである。

「こんなことまで出来るのかにゃ。本当に万能すぎだにゃ」
「はは。でも召喚師としては失格扱いだったけどね」
「意味がわからないにゃ。そんなこと言い出す奴らは愚かにゃ」

 フェレスが憤慨していた。もっとも里にいた頃はまだ標識を召喚できてなかったわけだけど。

 さて狼も撃退し案内標識に従って移動すると間もなくして山に入る。

「こ、ここを進むのかにゃ?」

 フェレスが目を丸くさせていた。それもその筈だろう。案内標識のとおりだと間違いないのだがそこはかなりの急斜面だった。ほぼ崖と言っても良い。ここを登らなければ盗賊のアジトに辿り着けないのだろう。

「恐らく縄かなにかで本来なら上ってるのかも。もしくは特殊は魔法の道具を持ってるとか魔法の使い手がいるのかもだけど」
「どちらにしても何か道具がないと厳しいにゃ……」

 フェレスが腕を組み首をひねった。ここまで来てまた戻るというのも大変だ。だけど問題ない。

「大丈夫対処法はあるよ」

 一旦案内標識を消す。もうアジトまでの方向は判っているからこの場では別の標識召喚を使うことにする。

 幸いまだ魔力には余裕がある。

「標識召喚・下り勾配2%!」

 標識がほぼ崖といえる場所の地面に刺さった。途端に崖のようだった斜面がなだらかな下り斜面に変化したんだ。

「よし。これで問題なくすすめるね」

 フェレスを振り返ると目を丸くさせて立ち尽くしていた。

「えっと、フェレス?」
「あ、頭がおいつかないにゃ……」

 かなり戸惑っていたようだけどそういう魔法ってことで納得してもらった。

「これ下ったら山はどうなってるにゃ?」
「う~ん、標識の範囲内のみ限定的に坂が変化したみたいな感じ? 細かいことはあまり気にしないほうがいいよ」

 というわけで僕たちは無事坂を越え、盗賊がアジトにしている洞窟を見つけることが出来た――
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