辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃

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第四章 転生忍者魔法大会編

四-八話 転生忍者、駆けつける、が終わってた

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「おい聞いたか? また暴れてるやつがいるってよ!」
「でも何か小さな子どもが剣もって戦ってるらしいぜ。偉い強いんだとよ!」

 治療院を出てから往来でそんなことを話してる声が聞こえてきた。ふと脳裏にデックの顔が思い浮かぶ。

「俺は知ってるぜ。あいつ武術大会に出ていた少年剣士だよ。大会でも大人顔負けの活躍していたからな」
「もうデックしかありえないな!」

 話の内容だけで確信出来たぞ。

「お兄ちゃん!」
「……急ぐ」

 デトラとマグも内容からデックが誰かに襲われたと察したのだろう。マグの肩ではサラマンダーが火を吐いて危機感を表現している。

「ウキィ!」
「うむ! マガミよ頼んだのだ!」
「ガウガウ!」

 姫様はマガミの背中にのり指で走るように示した。マガミもノリノリだ。もう姫様の方がマガミの扱いに長けてる気さえする。

 俺の肩にはエンコウが乗ってるがバナナを頬張ってるし急ごうと鳴き声を上げてるが俺の顔をパチペチ叩いている。

 何だろうこの差は。くそ、それでも子猿エンコウは可愛らしいんだけどな!

 とにかく話の内容から位置を割り出し俺たちは急いだ。情報通りの場所にデックはいた。後ミモザもいた。

「デック、それにミモザ――意外と元気そうだな」
「おお、ジン来たのか」
「何だ今更。暴漢などとっくに倒したぞ」
「ほぉ――」

 確かにデックの足元には男が一人転がっていた。手に武器を持ってるし襲われたのは確かっぽいな。

「いやぁでも危なかったぜ。タフだったしな。ミモザが助けに来てくれなかったらヤバかった」
「そうなんですね! ミモザさんありがとう! 今後ともお兄ちゃんを宜しくお願いしますね」
「え! あ、いや、も、勿論、その――」

 デックから話を聞きデトラのテンションが跳ね上がった。ふむ、デトラは結構ミモザと仲良くやれてそうだな。

 ミモザがデックをチラチラみながらもじもじしてるのはよくわからないけどな。

「何だミモザ似合わない動きして。トイレか?」
「たたっ斬るぞ貴様!」
「はぁ……本当ジンさんはこういうところが……」
「ウキィ……」

 ミモザに切れられた。おまけにデトラと何故かエンコウにまで呆れ果てたような目をされた。解せん!

「あっはっは! 私が来たーーが! どうやらもう決着はついたようだな。流石我が弟子ミモザだ。ゼンラ流を引き継ぐのはお前しおらんあっはっは!」

 このハイテンションな声――見るとバーモンド達がゼンラと一緒に駆けつけてきた。

「そういえばラポム達には冒険者に助けを求めるようお願いしたんだった」
 
 デックが呟く。そうか。それにしても呼んできたのがよりによってゼンラとはな。

「後ろの二人顔が赤くないか? バーモンドも鼻血出してるし」
「そ、それは、その」
「はぁ、俺もう目に焼き付けて一生忘れないんだ。二度と目を洗わないんだ……」
「大変刺激的でしたぁ……」

 うん。バーモンド以外の二人の会話で察しはついた。

「よりによって呼ぶ相手間違いすぎだぞ。そいつは子どもが相手していい奴じゃない。むしろ子どもの教育上良くない奴だ」

 俺がゼンラの危険度をわかりやすく伝えた。こいつはお子様厳禁な冒険者だ。

「アッハッハ! そう褒めるな」
「誰も褒めてないだろう!」
「少しは節操を学びなさいよ!」

 俺とミモザが同時に突っ込んだ。わりと俺にキツくあたってくるミモザだがゼンラの扱いに関してだけは共通するものがある。

「やれやれ。どうしてこうトラブルが起こるときにはジンがついてまわるのかしらね」

 うん、この声は?

「やっぱりまシムか」
「ハッハッハ! マスターではないか。見ろ私の弟子のミモザが不届き者を成敗したのだ。未来の全裸を担う若者は着実に成長しているぞ」
「もしかして世代といいたいのでしょうかねぇ?」

 顎に指を添えバーモンドが考察した。あんなバカバカしい口ぶりからそこまで考えられる奴、そうはいないぞ。

「全裸は貴方だけで十分よ。これ以上私の苦労を増やさないで欲しいわね」
「マシムも苦労してるんだなぁ」
「やっぱギルドマスターだけあるな」

 俺とデックは何だか感心してしまった。よく考えたらゼンラ以外にも曲者ぞろいのあのギルドで上手いこと回してるんだからな。

「ふぅ。それにしても参ったわね。今日に限って何でこうも似たような事件が多いのかしら」
「ん? こいつだけじゃないのか?」
「そう。これでもう五人目。しかもまだ他にもギルドに援護を求める声が上がっててね。ビアやダガー達も動いてるわ。ここまでくると――いやそれはいいわ」

 マシムが一瞬考える素振りを見せ言葉を途中で止めた。何かいいかけたのは確かだがな。

「俺らに協力できることがあるか?」
「ガウガウ!」
「ウキィ!」
「おお! 何か出来ることがあれば手伝うぜ!」

 俺とデックが協力を申し出る。だがマシムは困った顔を見せる。

「気持ちはありがたいけどあなた達はまだ子ども。これ以上こんなことに子どもを巻き込めないわ。それにこういったトラブルを解決するのは私達冒険者の仕事よ。とにかく今は色々町でも危険が多いからあまりウロチョロしてないで宿に戻って大人しくしてなさいね」

 マシムはそういってゼンラを連れついでに暴れていた奴も担いで戻っていった。

 言われてみれば俺たちはまだまだ年的には子どもだったな。ただ――やはり気になる状況ではあるが……。
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