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第四章 転生忍者魔法大会編
四-四話 転生忍者、りんご
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「ウキッ♪」
「え? くれるの? でも――」
エンコウがデトラにリンゴの一切れを差し出した。ただ一応バーモンドが手土産に持ってきたものだからか、デトラが遠慮がちな顔を見せている。
「ど、どうぞどうぞ! 折角だから食べて貰ったほうが拙も嬉しいですから!」
「……私も貰った」
「俺もだ」
「妾にもくれたのじゃエンコウめんこいのう」
「ウキィ♪」
「ガウガウ」
「悪いなバーモンド」
何かエンコウが皆に配ってくれたし折角だから頂くか。あいつ食わないみたいだし。
「これは美味なのじゃ」
「やっぱ商人の家だけあっていいの選ぶな」
「瑞々しいね」
「…………」
皆リンゴに満足げだ。マグも黙々と食べてる。何かリスみたいだ。しかし確かに中々イケるな。
「お前ら一体何しに来たんだ!」
あ、兄貴がキレた。
「お前が食わないから貰ったんだろう。大隊食べ物粗末にするなよ」
「そんなことを言うために来たのか貴様は!」
全くすぐに癇癪起こすなこいつは。そういうところだぞ。
「ロイス様落ち着いて。傷に触りますよ」
「黙れ! 大体お前は何だ! こんな俺を惨めだと笑いに来たのか!」
ロイスがバーモンドを睨み言い放つ。
「そんな拙はただお見舞いに……」
「そんな筈があるわけないだろうが。そうか魂胆が読めたぞ。私が弱ってると思って音を売ろうってことだな。だが残念だったな。大叔父様も失い今の私にはもう何もない。取り入ったところで無駄さ」
ロイスが投げやり気味に言った。何だあいついじけてるのか。そういうところだぞロイス。
「ロイス様そんな事をおっしゃらず。たかが大会一つのことではありませんか」
「たかがだと? この大会に一体私がどれだけ心血注いだかわかるか! 私が将来のためにどれだけ大叔父様に気に入られようと頑張ったかわかるか! それが全て台無しだ。ふん、その点そっちのデックは上手くやったものだな。結果的に取り入る相手に正解した」
「おい、俺は別にそんなつもりでジンの友だちになったわけじゃないぞ。それにバーモンドだってな本気でお前のことを心配してるんだ」
「ふん。そんな筈がないだろうが。私には判る。こいつは私に付き合うことで自分に利益があると思って従っていたんだ。もっともそれは私も一緒だがな。側においておけば何かに役立つと思ってただけだ。順々な犬と一緒にしか思ってないんだよ」
「テメェ――」
デックが腕まくりして兄貴に近づいていった。だがバーモンドが割って入る。
「いいんですよデック」
「ラポム……だけどお前」
「本当にいいのですよ。確かにロイス様の言ってることが間違いとは言えませんから」
「ハッ、ほらみたことか」
バーモンドが伏し目がちに答えると馬鹿兄貴がどうだと言わんばかりに唇を曲げた。
「ふん。そうとわかったらもう貴様など無用だ。大体私は貴様のその顔が嫌いだったのだ。見ているだけでイライラしてくる! さっさと出ていけ!」
兄貴が叫ぶ。今俺はお前を見てると苛々してくるけどな。
「……えへへ、そ、そうですよね。可愛らしい女の子ならともかく拙なんかにいられても余計に気分を悪くさせるだけなのですから――」
そう言ってバーモンドがトボトボと部屋から出ていった。
「バーモンドさん……酷いです! 友だちにあんな言い方!」
「ウキィ!」
「ガウガウ!」
「うむ。こんな美味いりんごを持ってきてくれたと言うのに!」
「…………」
デトラがロイスに文句を言った。流石にあの姿を見てバーモンドに同情したのだろう。続けてエンコウとマガミも抗議するように吠えた。
カグヤも不機嫌だがデトラとは怒りのポイントが違う気もしないでもない。
マグの肩の上ではサラマンダーがぼうぼうと火を吐いている。そしてマグは――まだリンゴを食べていた。マイペースだな……
「ふん。聞いてなかったのか? 私もあいつもお互い友だちだなんて思ってなかった。打算だけの関係でしかなか、おわっ!」
冷めた表情で語るロイスだがデックが近づいて襟首を掴んだ。途端に兄貴が狼狽する。
「な、なんだ? 殴るのか? ハッ確かに今ならいくら殴ったところで父様だって何も言わないだろうさ。どうせ貴様もそう思って手を出そうというのだろう?」
「……チッ、お前なんか殴る価値もない」
喚く兄貴の襟首を放し呆れたようにデックが言い捨てた。
「価値もない、か。はは、そうだろうさ。どうせ私なんて」
「勘違いするなよ。価値がないってのは肩書きとかそういうことじゃねぇよ。それ以前の問題だ」
「……フンッ」
デックに言われ兄貴が剥れたようにそっぽを向いた。
「……ラポムとは最近はつるむことは減っていたがそれでも俺はまだ友だちだと思ってる。だからはっきり言えるさ。あいつはお前と、確かに打算で付き合っていたのだろうよ」
そしてデックから出た言葉――いや、そこは認めるんだな。
「なんとそう来たか! うむむしかしこっちの果物もも美味いのう(モグモグ)」
「ウッキィ~」
「ガウガウ」
いや、わりと大事な話をしてそうなんだがカグヤといいマガミとエンコウといいいつの間にバナナを剥いて食ってるんだよ――
「え? くれるの? でも――」
エンコウがデトラにリンゴの一切れを差し出した。ただ一応バーモンドが手土産に持ってきたものだからか、デトラが遠慮がちな顔を見せている。
「ど、どうぞどうぞ! 折角だから食べて貰ったほうが拙も嬉しいですから!」
「……私も貰った」
「俺もだ」
「妾にもくれたのじゃエンコウめんこいのう」
「ウキィ♪」
「ガウガウ」
「悪いなバーモンド」
何かエンコウが皆に配ってくれたし折角だから頂くか。あいつ食わないみたいだし。
「これは美味なのじゃ」
「やっぱ商人の家だけあっていいの選ぶな」
「瑞々しいね」
「…………」
皆リンゴに満足げだ。マグも黙々と食べてる。何かリスみたいだ。しかし確かに中々イケるな。
「お前ら一体何しに来たんだ!」
あ、兄貴がキレた。
「お前が食わないから貰ったんだろう。大隊食べ物粗末にするなよ」
「そんなことを言うために来たのか貴様は!」
全くすぐに癇癪起こすなこいつは。そういうところだぞ。
「ロイス様落ち着いて。傷に触りますよ」
「黙れ! 大体お前は何だ! こんな俺を惨めだと笑いに来たのか!」
ロイスがバーモンドを睨み言い放つ。
「そんな拙はただお見舞いに……」
「そんな筈があるわけないだろうが。そうか魂胆が読めたぞ。私が弱ってると思って音を売ろうってことだな。だが残念だったな。大叔父様も失い今の私にはもう何もない。取り入ったところで無駄さ」
ロイスが投げやり気味に言った。何だあいついじけてるのか。そういうところだぞロイス。
「ロイス様そんな事をおっしゃらず。たかが大会一つのことではありませんか」
「たかがだと? この大会に一体私がどれだけ心血注いだかわかるか! 私が将来のためにどれだけ大叔父様に気に入られようと頑張ったかわかるか! それが全て台無しだ。ふん、その点そっちのデックは上手くやったものだな。結果的に取り入る相手に正解した」
「おい、俺は別にそんなつもりでジンの友だちになったわけじゃないぞ。それにバーモンドだってな本気でお前のことを心配してるんだ」
「ふん。そんな筈がないだろうが。私には判る。こいつは私に付き合うことで自分に利益があると思って従っていたんだ。もっともそれは私も一緒だがな。側においておけば何かに役立つと思ってただけだ。順々な犬と一緒にしか思ってないんだよ」
「テメェ――」
デックが腕まくりして兄貴に近づいていった。だがバーモンドが割って入る。
「いいんですよデック」
「ラポム……だけどお前」
「本当にいいのですよ。確かにロイス様の言ってることが間違いとは言えませんから」
「ハッ、ほらみたことか」
バーモンドが伏し目がちに答えると馬鹿兄貴がどうだと言わんばかりに唇を曲げた。
「ふん。そうとわかったらもう貴様など無用だ。大体私は貴様のその顔が嫌いだったのだ。見ているだけでイライラしてくる! さっさと出ていけ!」
兄貴が叫ぶ。今俺はお前を見てると苛々してくるけどな。
「……えへへ、そ、そうですよね。可愛らしい女の子ならともかく拙なんかにいられても余計に気分を悪くさせるだけなのですから――」
そう言ってバーモンドがトボトボと部屋から出ていった。
「バーモンドさん……酷いです! 友だちにあんな言い方!」
「ウキィ!」
「ガウガウ!」
「うむ。こんな美味いりんごを持ってきてくれたと言うのに!」
「…………」
デトラがロイスに文句を言った。流石にあの姿を見てバーモンドに同情したのだろう。続けてエンコウとマガミも抗議するように吠えた。
カグヤも不機嫌だがデトラとは怒りのポイントが違う気もしないでもない。
マグの肩の上ではサラマンダーがぼうぼうと火を吐いている。そしてマグは――まだリンゴを食べていた。マイペースだな……
「ふん。聞いてなかったのか? 私もあいつもお互い友だちだなんて思ってなかった。打算だけの関係でしかなか、おわっ!」
冷めた表情で語るロイスだがデックが近づいて襟首を掴んだ。途端に兄貴が狼狽する。
「な、なんだ? 殴るのか? ハッ確かに今ならいくら殴ったところで父様だって何も言わないだろうさ。どうせ貴様もそう思って手を出そうというのだろう?」
「……チッ、お前なんか殴る価値もない」
喚く兄貴の襟首を放し呆れたようにデックが言い捨てた。
「価値もない、か。はは、そうだろうさ。どうせ私なんて」
「勘違いするなよ。価値がないってのは肩書きとかそういうことじゃねぇよ。それ以前の問題だ」
「……フンッ」
デックに言われ兄貴が剥れたようにそっぽを向いた。
「……ラポムとは最近はつるむことは減っていたがそれでも俺はまだ友だちだと思ってる。だからはっきり言えるさ。あいつはお前と、確かに打算で付き合っていたのだろうよ」
そしてデックから出た言葉――いや、そこは認めるんだな。
「なんとそう来たか! うむむしかしこっちの果物もも美味いのう(モグモグ)」
「ウッキィ~」
「ガウガウ」
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