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第五章 転生忍者吸血鬼出現編
第三百二十九話 転生忍者、その愛
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「はぁ、やってしまったか……」
「やってしまいました。父上」
父上が頭を抱えていた。それに関してはとても申し訳なく思うが、我慢しろという方が無理な話だし、俺が手を出さなくてもどうやら皆が黙ってなかったようだ。
「ジン! マガミは無事であるぞ。そして皆のものよくやったのじゃ!」
「ガウガウ!」
おお、流石姫様だ。マガミにダメージが全く残っていない。
「ま、マガミ~良かった良かったぞぉおおお!」
「が、ガウ?」
するとまっさきにミモザが飛び込んでいってマガミをモフっていた。本当動物が好きなんだな。
「無事で良かったけどよぉ。許せねぇぜあの野郎」
「何を馬鹿なことを言っているのだ貴様らは!」
デックの発言に、ビルアスに同行していた神官らしき男が叫んだ。
「おい、早くビルアス大司祭を回復するんだ!」
「泡を吹いているぞ! 早く!」
「……チッ、生きてたか」
「いや、手加減したのかと思ってたぞ」
マグが舌を鳴らして悔しがった。流石に殺すまではしなかったのだろうと思ってたんだが、マグが本気で悔しがってそうだった。
「大司祭に怪我を負わせたのは申し訳ありません。本来なら私が止めるべきでした」
「当然だ。何だここは! 盗賊の集まりか! 貴様ら自分たちが何をしたのかわかっているのか!」
「ですが失礼を承知で言わせてもらうなら。坊ちゃま達は間違ったことはしていないと思います」
「な、何だと!」
俺たちを庇うように教会の連中に一度は頭を下げたスワローだったが、謝罪とは別にスワローの気持ちもしっかり伝えたようだ。
だけどもしそのせいで彼女の立場が悪くなったら……
「エイガ男爵! これはどういうことだ。揃いも沿ってビルアス大司祭を傷つけたことを謝るどころか文句をつけるなど!」
「もうしわけありません。しかし、私としても全てが間違っているとは思いません。手を出してしまったことはもうしわけなく思いますが、うちの大事なマガミを先に傷つけたのはお前たちだろう!」
だが、今度は父上が吠えた。驚いた。あそこまで父上が感情を顕にするとは。
「な、たかが犬ころ一つとビルアス大司祭の怪我を同列に扱うつもりか!」
『素晴らしい! それはまさに愛! 愛なのですね。愛ゆえに、愛ゆえに大事な狼を癒やし治療した。なんて素晴らしい!』
その時だった。一人の神官が奇妙な言葉をつらつらと並べ立てていった。あいつ、一人だけ目の動きが妙だった神官だ――
「えっと、男性だよね?」
「あ、あぁだけど声は女のものなような?」
デトラが疑問に満ちた顔を見せて、デックも戸惑いながらもそれに答えた。
言葉を発した神官は見た目からは考えられないような声を上げている。
そして、その声を聞いた神官達も戸惑いを隠しきれないようであり。
「そ、その声は聖女メトロン様!」
『あら、気がついたのねビルアス。ふふふ――』
見るとビルアスがたちあがっていた。魔法で治療されたか。
そしてこっちは、な、何か見た目と声のギャップがありすぎてちょっと気持ち悪いぐらいだが、しかし、さっきまで偉そうにしていたビルアスも妙におどおどし始めたな。
「聖女様が同行されるとは、しかも私の従者を利用してなどと、全く聞いておりませんでしたが」
『あらあらごめんなさいね。でも、やっぱり私も気になったから。こういう形で道道させてもらったわ~』
「……さっきから気持ち悪い。一体誰?」
マグは流石遠慮がないな。まぁ俺も気になっているが。
「な、こ、この無礼者が! この御方をどなたと心得る! 七大聖教最高の七大聖女が一人博愛のメトロン様だぞ!」
ビルアスが慌てた様子で聖女とやらの紹介をした。だけど、俺には全く耳馴染みがない。
「七大聖女、まさかあの!」
だけど、スワローは違った。目を大きくさせ驚いているし、なにか知っていそうではある。
『まぁまぁ良いではありませんか。それよりもビルアス。貴方の先程の行為。とても見過ごせませんね。愛が足りませんよ愛が』
「え? あ、いや、そ、それはその――」
メトロンとやらが話し始めてからビルアスの様子がおかしい。相当恐れているようでもある。
だが妙な話だ。その神官はこいつが一緒に連れてきた神官だ。だったらどんな相手かぐらいわかっているのではないのか?
それなのにまるで知らなかったようにその聖女が来ていたことに驚きを見せていたし、今も聖女の発言に急に用心し始めている。
『ビルアス。貴方にはやはり罰が必要なようですねぇ』
「ま、待ってくれ! 私は別に、ただ吠えられて危険を感じて!」
『その言い訳、愛が足りませんね。ですから貴方は、愛を持って愛で報いるのです!』
「ひぃ、やめ!」
後ずさりを始めるビルアス。だが、その動きが急にピタリと止まった。
『うふふ。はい、これは聖なる短剣。これで貴方の愛で愛を穢した罪を償うのです』
かと思えば聖女を名乗る神官が一本のナイフをビルスに渡したわけだが。
「あ、あ、あ、あ、そう、私は、私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私はワタシはワタシハワダシハワダシハ、愛を、愛を、愛を、アイヲ、あいをぉおおぉおおおあいいいいいいいいいいいがああああぁああったああああっりいいぃいいまぁああせえぇええんでしたあああ、故に故に故に故に故に愛を怪我した愛を汚した、愛を侮辱した罰をぉおおお! 愛あるこの身で愛故に愛故にあ・い・ゆ・え・に!」
「キャッ!」
デトラが悲鳴を上げて両目を手で覆った。ビルアスが突如狂ったように愛を連呼しかと思えば自らの腹を短剣で刺し、しかもそれを何度も何度も何度も自ら腹や腕や足など刺し続けたからだ。
「あぁあああ聖女さまぁあああ、あいがああぁあああ、あいが、真っ赤な愛がぁああああふれてあふれてあふれてあふあふあふあふれれれれれえれれれっれれえせええええいいいいいいいいぃいwしふぃあいいsふぃjふぃおあsfsぁfjhんklさfひおsふぉいあ――」
そして――全身を自ら何箇所も刺したビルアスは、血塗れになって倒れた……
「やってしまいました。父上」
父上が頭を抱えていた。それに関してはとても申し訳なく思うが、我慢しろという方が無理な話だし、俺が手を出さなくてもどうやら皆が黙ってなかったようだ。
「ジン! マガミは無事であるぞ。そして皆のものよくやったのじゃ!」
「ガウガウ!」
おお、流石姫様だ。マガミにダメージが全く残っていない。
「ま、マガミ~良かった良かったぞぉおおお!」
「が、ガウ?」
するとまっさきにミモザが飛び込んでいってマガミをモフっていた。本当動物が好きなんだな。
「無事で良かったけどよぉ。許せねぇぜあの野郎」
「何を馬鹿なことを言っているのだ貴様らは!」
デックの発言に、ビルアスに同行していた神官らしき男が叫んだ。
「おい、早くビルアス大司祭を回復するんだ!」
「泡を吹いているぞ! 早く!」
「……チッ、生きてたか」
「いや、手加減したのかと思ってたぞ」
マグが舌を鳴らして悔しがった。流石に殺すまではしなかったのだろうと思ってたんだが、マグが本気で悔しがってそうだった。
「大司祭に怪我を負わせたのは申し訳ありません。本来なら私が止めるべきでした」
「当然だ。何だここは! 盗賊の集まりか! 貴様ら自分たちが何をしたのかわかっているのか!」
「ですが失礼を承知で言わせてもらうなら。坊ちゃま達は間違ったことはしていないと思います」
「な、何だと!」
俺たちを庇うように教会の連中に一度は頭を下げたスワローだったが、謝罪とは別にスワローの気持ちもしっかり伝えたようだ。
だけどもしそのせいで彼女の立場が悪くなったら……
「エイガ男爵! これはどういうことだ。揃いも沿ってビルアス大司祭を傷つけたことを謝るどころか文句をつけるなど!」
「もうしわけありません。しかし、私としても全てが間違っているとは思いません。手を出してしまったことはもうしわけなく思いますが、うちの大事なマガミを先に傷つけたのはお前たちだろう!」
だが、今度は父上が吠えた。驚いた。あそこまで父上が感情を顕にするとは。
「な、たかが犬ころ一つとビルアス大司祭の怪我を同列に扱うつもりか!」
『素晴らしい! それはまさに愛! 愛なのですね。愛ゆえに、愛ゆえに大事な狼を癒やし治療した。なんて素晴らしい!』
その時だった。一人の神官が奇妙な言葉をつらつらと並べ立てていった。あいつ、一人だけ目の動きが妙だった神官だ――
「えっと、男性だよね?」
「あ、あぁだけど声は女のものなような?」
デトラが疑問に満ちた顔を見せて、デックも戸惑いながらもそれに答えた。
言葉を発した神官は見た目からは考えられないような声を上げている。
そして、その声を聞いた神官達も戸惑いを隠しきれないようであり。
「そ、その声は聖女メトロン様!」
『あら、気がついたのねビルアス。ふふふ――』
見るとビルアスがたちあがっていた。魔法で治療されたか。
そしてこっちは、な、何か見た目と声のギャップがありすぎてちょっと気持ち悪いぐらいだが、しかし、さっきまで偉そうにしていたビルアスも妙におどおどし始めたな。
「聖女様が同行されるとは、しかも私の従者を利用してなどと、全く聞いておりませんでしたが」
『あらあらごめんなさいね。でも、やっぱり私も気になったから。こういう形で道道させてもらったわ~』
「……さっきから気持ち悪い。一体誰?」
マグは流石遠慮がないな。まぁ俺も気になっているが。
「な、こ、この無礼者が! この御方をどなたと心得る! 七大聖教最高の七大聖女が一人博愛のメトロン様だぞ!」
ビルアスが慌てた様子で聖女とやらの紹介をした。だけど、俺には全く耳馴染みがない。
「七大聖女、まさかあの!」
だけど、スワローは違った。目を大きくさせ驚いているし、なにか知っていそうではある。
『まぁまぁ良いではありませんか。それよりもビルアス。貴方の先程の行為。とても見過ごせませんね。愛が足りませんよ愛が』
「え? あ、いや、そ、それはその――」
メトロンとやらが話し始めてからビルアスの様子がおかしい。相当恐れているようでもある。
だが妙な話だ。その神官はこいつが一緒に連れてきた神官だ。だったらどんな相手かぐらいわかっているのではないのか?
それなのにまるで知らなかったようにその聖女が来ていたことに驚きを見せていたし、今も聖女の発言に急に用心し始めている。
『ビルアス。貴方にはやはり罰が必要なようですねぇ』
「ま、待ってくれ! 私は別に、ただ吠えられて危険を感じて!」
『その言い訳、愛が足りませんね。ですから貴方は、愛を持って愛で報いるのです!』
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後ずさりを始めるビルアス。だが、その動きが急にピタリと止まった。
『うふふ。はい、これは聖なる短剣。これで貴方の愛で愛を穢した罪を償うのです』
かと思えば聖女を名乗る神官が一本のナイフをビルスに渡したわけだが。
「あ、あ、あ、あ、そう、私は、私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私は、私は私は私はワタシはワタシハワダシハワダシハ、愛を、愛を、愛を、アイヲ、あいをぉおおぉおおおあいいいいいいいいいいいがああああぁああったああああっりいいぃいいまぁああせえぇええんでしたあああ、故に故に故に故に故に愛を怪我した愛を汚した、愛を侮辱した罰をぉおおお! 愛あるこの身で愛故に愛故にあ・い・ゆ・え・に!」
「キャッ!」
デトラが悲鳴を上げて両目を手で覆った。ビルアスが突如狂ったように愛を連呼しかと思えば自らの腹を短剣で刺し、しかもそれを何度も何度も何度も自ら腹や腕や足など刺し続けたからだ。
「あぁあああ聖女さまぁあああ、あいがああぁあああ、あいが、真っ赤な愛がぁああああふれてあふれてあふれてあふあふあふあふれれれれれえれれれっれれえせええええいいいいいいいいぃいwしふぃあいいsふぃjふぃおあsfsぁfjhんklさfひおsふぉいあ――」
そして――全身を自ら何箇所も刺したビルアスは、血塗れになって倒れた……
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