辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃

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第五章 転生忍者吸血鬼出現編

第三百二十七話 転生忍者、七聖教会を知る

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 七聖教会……俺は詳しくは知らないが、ただ教会という響きにだけは警戒心を抱いた。

 以前、姫様のことはあまり教会に知られない方がいいという話を聞いていたからだ。

 しかも今の話を聞いていると、教会の使者は父上には全く話を通さず、不躾にここまでやってきたことになる。

 その割にファーム男爵にはしっかり伝えていたようだが、あまり印象は良くない。

「ふぅ、全くもって突然だな。わかったとにかく急ごう。ファーム卿も宜しいですかな?」
「えぇ勿論ですとも」
「では父上、僕は――」
「あぁ、そうだな」

 父上はどうやら俺の気持ちを察してくれたようだ。だから部屋を出てすぐに俺は庭に向かった。

 表に出ると、姫様だけではなくマグやそれにデックやデトラ、ミモザの姿もあった。

 遊びに来ていたのか。それは勿論構わない。今となっては皆普通に屋敷に出入りしているしな。

 ただ問題は全員がどこか緊張感のある面持ちであり同時に皆の目の前に妙な連中……いや格好からして明らかに教会の連中が立っていたことだ。

「ふん、全く狭苦しい屋敷だ。エイガ家というのは由緒ある家系だと聞いていたがこんなものか


 恰幅の良い男が皆を前にしてそんなことを口にした。全員の顔つきが変わる。勿論嫌悪の滲んだものにだ。

「……突然やってきて何だお前ら」
「あん?」

 ヤバい。いきなりマグが喧嘩腰だ! いや、目の前に立ってる肥満な男も鼻持ちならない野郎ではあるけどさ!

「何だこの無礼なガキは?」
「その子は私の友達です。ところで皆様がもしかして七聖教会からの使者でしょうか?」

 とにかく、皆に聞こえるように大きめに声を掛けて近づいていく。姫様には、まだ目がいってないか。ふぅ、なら良かった。

「誰だ貴様は?」

 目の前の男が訝しげに聞いてきた。全く初対面から貴様呼ばわりかよ。

「お初にお目にかかります。僕はジン・エイガと申します。以後お見知りおきを」

 とにかく、先ずは無難に挨拶させてもらうか。丸っこい顔をした男の前まで行き軽く頭を下げる。
 
 すると、フンッと小馬鹿にするように鼻を鳴らして肥満な男が言葉を返してきた。

「なるほど、貴様があの魔力も持たず生まれてきたという落ちこぼれか。なんでも詐欺まがいの方法で魔法大会出て、そこそこ良い結果を出したそうだな」

 うわ~もう初対面にしてすぐにわかった。というか実にわかりやすい。教会のイメージはこの時点で最悪になった。例え実は違ったとしてもこいつ一人のせいで俺はもう教会を信用できない。

「……そこそこ? ジンは準優勝。トラブルがなければきっと優勝できた。そんなの嘘偽りでどうにかできる話じゃない。お前、頭だいじむぐぅ!」

 マグの口をデトラが塞いだ。ナイスだデトラ。気持ちは実によくわかるが、そんな本音を口にしたらただただややこしいことになる予感しかしない。多分俺の表情も今めちゃめちゃ引きつってるとは思うけど。

「ここにおられましたか」

 父上の声が聞こえてきた。良かった。どうやら教会の連中がこっちに来ていることに気がついたようだ。

「ふむ。貴様がここの家長か?」
「はい。サザン・エイガでございます」
「私はお手紙を頂きましたモスタ・ファームでございます」

 父上とファーム男爵が挨拶する。だが肥えた男は特に態度を変えない。不遜な佇まいで見下すように言う。

「悪いが私は待たされるのが嫌いでな。しかし貴様の使用人は教育がなっていないな。事前にくると伝えておいたのに確認してくるから待ってろとは。七聖教会からわざわざ大司祭たるこのビルアスがやってきたというのに」

 ふんぞり返りながらビルアスとかいう小憎たらしい男が言った。随分と偉そうだな。

「……それは失礼致しました。ですがこちらには教会から使者がくることが伝わってきておらずファーム男爵を通して今しがた知ったばかりでしたので」
「言い訳とは全くこれだから地方貴族は。エイガ家などと偉そうに言っても所詮男爵止まりではその程度か。大体知らないのなら確認して然るべきだろう。報告連絡相談、こんなものは我が教会の使いっぱしりの従者でも理解し実行していることだ。そんなこともわからないとは領地だけを引き継ぎただただ無駄に年を重ね努力を怠ってきた証拠であるな。怠惰な奴だ」

 こ、こいつ、凄まじいな。大体そもそもその連絡が来ていないんだろうが。それなのに報告も相談もあるか。大体そのぶよぶよに肥え太ったお前から怠惰とか言われる筋合いじゃないぞ父上は。

「も、申し訳ありません。私がもっと早くにエイガ卿に伝えるべきだったのです」
「ふん。ま、貴様程度はそんなものだろうな。芋掘り男爵程度に何も期待などしておらんさ」
「はは……」

 ファーム男爵も苦笑いだ。
 彼も精一杯気を使っているんだろうが、しかし、何でここまで偉そうなんだこいつは。

「大司祭様。宜しければ屋敷にご案内いたします。どうぞこちらへ」

 するとスワローが教会の使者たちに向けて案内を買って出てくれた。空気の悪さを感じ取ったのだろう。

「……ふん。執事が女とはな。まともな執事すら雇えないとはやはり程度が知れる」

 スワローの額からピキッという音が聞こえてきた気がした。表情にはでていないけど、父上への態度といい、スワローの機嫌も相当悪くなっている筈だ。

「お主、さっきから一体何なのじゃ! 失礼にも程が――」
「駄目、ここは落ち着いて!」
「むごぉ、むぐぉおぉお!」

 そして案の定姫様が切れてしまった……こういうのに黙ってられないのが姫様だからな。近くにミシェルがいてくれてよかった……

 一方デックとミモザは大人しく見守ってくれている。もっとも目つきは大分鋭いな。不満は顔にも出てる。

「ふん。とにかく、見たところここには今回の問題に関わってそうな連中もいるようだからな。とりあえずここで話を進めさせて貰うぞ」
「……問題ですか? 正直私は教会の使者が起こしいただいた理由についても知らされていないのですが」
「ふん。知らされていないではなく知られると都合わるいの間違いであろう? 吸血鬼を退治したなどと嘘偽りを吹聴しているようだしな」

 すると父上の疑問点に答えるようにビルアス大司祭がいいのけた。だけど、嘘偽りだって?
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