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第五章 転生忍者吸血鬼出現編
第三百二十四話 転生隠者、とカイエンの遺した物
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カイエンは灰になって散った。後に残されたのは妹のカレンに渡して欲しいと頼まれた形見の剣だけだった。
誰にともなく立ち上がり、俺達はその場を後にした。帰りは何となく徒歩になり、そしてしばらく歩いていると後からやってきたミシェルや生き残った騎士、そして駆けつけてくれたマシムを含めた冒険者達と合流した。
俺たちはそこで全てが終わったこと。そしてカイエンの最期を伝えた。
「団長……」
「そんな、嘘だろう団長が……」
「団長だけじゃない。ダルクもかよ……」
「とってもイイやつだったのに……」
騎士たちが嘆き、ミシェルも涙を流した。ミシェルは恐らくある程度覚悟は出来ていただろうが、それでも僅かでも可能性を信じていたのかもしれない。
「カイエンは……最期まで誇り高き騎士でした。吸血鬼に噛まれながら、最後の最後で精神までは屈しなかった」
スワローが騎士たちにそう伝えた。スワローだってまだ心の整理がつかないだろうに、それでも気丈に振る舞っていた。
「最期に看取って頂きありがとうございます」
ミシェルが涙声でスワローに伝え、俺達に頭を下げた。他の騎士もそれに倣った。
「スワロー……よく頑張ったわね」
マシムがそうスワローに声を掛けて、頭を撫でていた。それ以上は何もいわなかったが、スワローの友人だと言っていたし言葉にしなくても通じ合うものがあるのだろう。
帰り道にはミシェルを含めた騎士たちが仲間の死を弔う曲を謳っていた。
神妙な気持ちで俺たちは帰る。今回ばかりはあのゼンラでさえ、沈黙を保っていた。それぐらいの空気は読めたようだ。
「……あの、どうしてマントを脱ぎ捨てたのですか?」
「死者を送る上で大切なことだ。全裸となりその御霊を感じることが出来る」
いや、やっぱりゼンラは全裸だった。いや全裸はゼンラだった。駄目だ、頭が回らん!
◇◆◇
「君たちも辛いだろう。気持ちが落ち着くまでうちで休んでいってくれて構わないからね」
俺たちが屋敷に戻った後は、父上がミシェル達を迎える準備をしてくれていた。カイエンの話に父上も母上も涙を流したが、いつまでもくよくよしていてもカイエンはきっと喜ばない。
ただ、ミシェル達もそうすぐ割り切れるものではないだろうと父上は判断し、王国側にも父上が書状を認め彼らにしばらく休暇を与えてはくれないか? と頼むことにしたようだ。
どちらにせよ、手紙のやり取りに時間は掛かるし、どんな返事がくるにしてもその間は屋敷で自由にしてくれ、と伝えていた。
そしてこれは姫様にとってはいい機会でもあった。
「妾に、その、光の魔法を教えてはくれぬか?」
「え? 光ですか……」
そう姫様は魔法の基礎を教わって光を照らす程度の魔法は覚えたが、底から先はメグやエロイでは専門外とのことだった。
そしてミシェルは光の魔法剣が使える。指導者としてこれほどまでに適した人材はいない。
「そうですね。こうしてエイガ様のお世話になっていることですし、わかりました私に役立てることならば」
「やったのじゃ!」
「ピィ~」
こうしてミシェルの快諾によって姫様は光の魔法を本格的に教わることになった。
そして屋敷ではそれ以外にも変化があった。
「ほう、これは流石は大会で優勝したと言うだけあるな。将来がとても期待できる」
「こちらは準優勝だったか。しかし、この世代は末恐ろしいな」
デックとミモザが騎士たちから指導を受けていた。そう、これがもう一つの変化だ。
カイエンの訃報はデックやミモザにとってもショックが大きかったようだ。
だけど、それが二人の心に火をつけたとも言えるだろう。カイエンに負けない騎士になると相当な意気込みだ。
「植物魔法・アクアボヤージ!」
「……ん」
向こうではマグがデトラの練習相手を務めていた。といってもマグもデトラとの練習は楽しそうだけどな。
デトラも魔法に関しての熱が強まっている。カイエンの死はそれぞれの意識も変えつつあった。
全くほんの短い期間一緒なだけだったのに、それだけ存在感が大きかったということか。
「ガウ」
「キキィ」
「あぁそうだな。皆一生懸命だな」
『これが青春って奴なのですな』
「ハッハッハ! 青春は全裸だ!」
うん。いや、最近なれてきたが、何で当たり前みたいに隣にゼンラがいる!
ふぅ、しかしそうだな。学園に向けて俺も準備を始めないと。といっても、何をしたらいいのかってところはある。
魔法は結局忍法でごまかすしかないもんなぁ。そうだな。とりあえず座学もあるようだし、そっち系はもう少し頑張っておくか。
「……ジン」
そんなことを考えていたらマグが声を掛けてきた。デトラとの練習は一段落ついたようだな。デトラは大の字になって倒れているけど。
マグはこう見えて体力あるからな。中々タフな子だよ。
「何かあったのか?」
さて、俺になにか用事があるようだから、俺は聞く体勢に入った。
「……大したことじゃないけどちょっと気になったことがあった」
気になったこと? 何だろう?
「……ジン。ドルドと戦っていた時ずっと妙な言葉を使って魔法を撃っていた。あれ、何?」
「へ?」
マグが俺の顔を覗き込むようにして聞いてくる。
それで、思い出した。そうだった! 俺あの時は、周りを全く気にせず忍法使ってた! ただでさえマグは俺が印を結ぶのが見えているのに!
「……ジン?」
「あぁ、いやあれはだ……」
なんてこった。凄く興味津々って感じに見えるし、どうしたもんか――
誰にともなく立ち上がり、俺達はその場を後にした。帰りは何となく徒歩になり、そしてしばらく歩いていると後からやってきたミシェルや生き残った騎士、そして駆けつけてくれたマシムを含めた冒険者達と合流した。
俺たちはそこで全てが終わったこと。そしてカイエンの最期を伝えた。
「団長……」
「そんな、嘘だろう団長が……」
「団長だけじゃない。ダルクもかよ……」
「とってもイイやつだったのに……」
騎士たちが嘆き、ミシェルも涙を流した。ミシェルは恐らくある程度覚悟は出来ていただろうが、それでも僅かでも可能性を信じていたのかもしれない。
「カイエンは……最期まで誇り高き騎士でした。吸血鬼に噛まれながら、最後の最後で精神までは屈しなかった」
スワローが騎士たちにそう伝えた。スワローだってまだ心の整理がつかないだろうに、それでも気丈に振る舞っていた。
「最期に看取って頂きありがとうございます」
ミシェルが涙声でスワローに伝え、俺達に頭を下げた。他の騎士もそれに倣った。
「スワロー……よく頑張ったわね」
マシムがそうスワローに声を掛けて、頭を撫でていた。それ以上は何もいわなかったが、スワローの友人だと言っていたし言葉にしなくても通じ合うものがあるのだろう。
帰り道にはミシェルを含めた騎士たちが仲間の死を弔う曲を謳っていた。
神妙な気持ちで俺たちは帰る。今回ばかりはあのゼンラでさえ、沈黙を保っていた。それぐらいの空気は読めたようだ。
「……あの、どうしてマントを脱ぎ捨てたのですか?」
「死者を送る上で大切なことだ。全裸となりその御霊を感じることが出来る」
いや、やっぱりゼンラは全裸だった。いや全裸はゼンラだった。駄目だ、頭が回らん!
◇◆◇
「君たちも辛いだろう。気持ちが落ち着くまでうちで休んでいってくれて構わないからね」
俺たちが屋敷に戻った後は、父上がミシェル達を迎える準備をしてくれていた。カイエンの話に父上も母上も涙を流したが、いつまでもくよくよしていてもカイエンはきっと喜ばない。
ただ、ミシェル達もそうすぐ割り切れるものではないだろうと父上は判断し、王国側にも父上が書状を認め彼らにしばらく休暇を与えてはくれないか? と頼むことにしたようだ。
どちらにせよ、手紙のやり取りに時間は掛かるし、どんな返事がくるにしてもその間は屋敷で自由にしてくれ、と伝えていた。
そしてこれは姫様にとってはいい機会でもあった。
「妾に、その、光の魔法を教えてはくれぬか?」
「え? 光ですか……」
そう姫様は魔法の基礎を教わって光を照らす程度の魔法は覚えたが、底から先はメグやエロイでは専門外とのことだった。
そしてミシェルは光の魔法剣が使える。指導者としてこれほどまでに適した人材はいない。
「そうですね。こうしてエイガ様のお世話になっていることですし、わかりました私に役立てることならば」
「やったのじゃ!」
「ピィ~」
こうしてミシェルの快諾によって姫様は光の魔法を本格的に教わることになった。
そして屋敷ではそれ以外にも変化があった。
「ほう、これは流石は大会で優勝したと言うだけあるな。将来がとても期待できる」
「こちらは準優勝だったか。しかし、この世代は末恐ろしいな」
デックとミモザが騎士たちから指導を受けていた。そう、これがもう一つの変化だ。
カイエンの訃報はデックやミモザにとってもショックが大きかったようだ。
だけど、それが二人の心に火をつけたとも言えるだろう。カイエンに負けない騎士になると相当な意気込みだ。
「植物魔法・アクアボヤージ!」
「……ん」
向こうではマグがデトラの練習相手を務めていた。といってもマグもデトラとの練習は楽しそうだけどな。
デトラも魔法に関しての熱が強まっている。カイエンの死はそれぞれの意識も変えつつあった。
全くほんの短い期間一緒なだけだったのに、それだけ存在感が大きかったということか。
「ガウ」
「キキィ」
「あぁそうだな。皆一生懸命だな」
『これが青春って奴なのですな』
「ハッハッハ! 青春は全裸だ!」
うん。いや、最近なれてきたが、何で当たり前みたいに隣にゼンラがいる!
ふぅ、しかしそうだな。学園に向けて俺も準備を始めないと。といっても、何をしたらいいのかってところはある。
魔法は結局忍法でごまかすしかないもんなぁ。そうだな。とりあえず座学もあるようだし、そっち系はもう少し頑張っておくか。
「……ジン」
そんなことを考えていたらマグが声を掛けてきた。デトラとの練習は一段落ついたようだな。デトラは大の字になって倒れているけど。
マグはこう見えて体力あるからな。中々タフな子だよ。
「何かあったのか?」
さて、俺になにか用事があるようだから、俺は聞く体勢に入った。
「……大したことじゃないけどちょっと気になったことがあった」
気になったこと? 何だろう?
「……ジン。ドルドと戦っていた時ずっと妙な言葉を使って魔法を撃っていた。あれ、何?」
「へ?」
マグが俺の顔を覗き込むようにして聞いてくる。
それで、思い出した。そうだった! 俺あの時は、周りを全く気にせず忍法使ってた! ただでさえマグは俺が印を結ぶのが見えているのに!
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