99 / 158
幕間
第二百九十四話 転生忍者、カイエンと決闘
しおりを挟む
姫様の発言や、そこからの兄貴のお膳立てによって俺はカイエンと決闘することになった。
スワローのことをどちらが諦めるか、という内容で、そもそもで言えば婚約という話が嘘ではあるのだが、スワローはカイエンのしつこさに困ってるようだし、長年お世話になっている俺としては助けてあげたいという気持ちが強い。
だが、同時にカイエンの魔法剣というのにも興味が湧いてもいた。
「まさかと思ったけど、その動物たちが全て魔獣だったとはね」
「これで全てではないよ」
「うん?」
『ケーン! ケーン!』
おっと、来たか。上空からキジムナが接近して来て俺達を見下ろすようにしながら旋回した。
「ピィピィ♪」
『ケーンケーン』
「ふふ、ホウライも機嫌良さそうなのじゃ」
キジムナとは口寄せしているからこっちの意思もある程度汲み取ってくれる。だからちょうど近くを飛んでいたようだから来てもらった。
「あれはキジムナか?」
知っていたか。流石は騎士だけあるってとこか。
「驚いたな。あれも従魔なのかい?」
「まぁ、そうなるね」
俺の返事にカイエンは目をパチクリさせた。
「まだ若いのに従魔を四匹か。末恐ろしくなるね。あ、これはいい意味でね」
カイエンが朗らかに笑いながら言った。魔獣使いというのはいるが普通は一匹と契約するだけでも凄いことなようだ。エンサイを従魔にしていたのも他に従魔はいなかったようだしな。
「だが、従える魔獣の数が絶対的な差では無い、大事なのは使いこなせるかどうかだ」
「それには同意しますよ」
どんな武器でも使いこなせなければ意味がないからな。
「ところで、貴方は木製の剣でも魔法剣は使えるのかな?」
「はは、心配は不要さ。もっとも使うかどうかはまた別問題だけどね」
カイエンが答える。木刀でも使用は可能なようだが、すぐに使うつもりはないようだな。
「それではカイエンとジンによる決闘を始めたいと思う。双方準備はいいかな?」
父上が確認をとってくる。勝負の行方を見守る立会人は父上だ。
「いつでもどうぞ」
「こちらも同じく」
「では、始め!」
決闘が始まった。カイエンはまずは様子見といったとろか。俺の見た目が子どもだからというのもあるかもしれない。
だから先にこっちから仕掛ける。
「ほう、いい太刀筋だ」
「それはどうも」
暫くカンカンカンと打ち合う。すると今度はカイエンの方から反撃に転じ上下左右に剣戟を散らしてきた。
ふむ、右、フェイント、左、フェイント、からの袈裟斬り、そのまま突きに繋ぐ、と見せかけて下段か。
「むっ、これを避けるか――」
俺は体を入れ替えてカイエンの背後を取った。飛び上がり頭の上を狙って木刀を振り下ろす。
「小癪な」
腕を上げてこれは受けたか。だけど、それでは終わらない。フェイントを織り交ぜて宙空から斬撃を纏めていく。
「ぬっ――」
顔色が変わった。だけど、それでも全て捌き切ったか。そして着地際を狙って反撃に転じてきた。
だが、それは読んでいた。着地する直前に回転して迫るカイエンに蹴りを叩き込む。
「くっ!」
カイエンは片手持ちで振り下ろしてきていた。だから空いていた方の腕で俺の蹴りを防ぐ。チャクラは込めてないからそこまで効いてないか。
防がれたときの反動を利用して後方に下がる。仕切り直しだ。
「おお、ジンも全く負けてないのじゃ!」
「ピィピィ♪」
「……寧ろ押してる」
「ガウガウ!」
「ウッキィ~」
『うむ、流石は主殿であられますな!』
姫様やマグの歓声が届いた。マガミやエンコウ、そしてエンサイの念も届く。上ではキジムナが優雅に舞い続けていた。
「魔法剣はまだ必要ないと?」
カイエンに向けて問う。これは一応挑発のつもりだ。
「……はは、なるほど。剣一つとってもこれとは本当に末恐ろしい。剣術はスワローからだったか」
「えぇ、たっぷり扱かれましたから」
スワローから教わった構えを取り、そう答えた。
「なるほど。流石は私の愛した人だ」
笑みを浮かべながらそんなことを言う。しかし、すぐにすっと目を細め真顔になった。
「どうやら君が子どもだという認識は捨てたほうが良さそうだ。そして見せてあげようブレイド家の魔法剣――ウィンドブレイド」
カイエンの木刀に風が纏わりついた。これが魔法剣か。
「詠唱破棄か……」
兄貴の呟く声が聞こえた。確かに詠唱はしていなかったな。
「前線の矢面に立つ騎士がいちいち詠唱なんてしていられないからね。魔法剣は詠唱無しで使えてこそ一人前だ」
なるほど。考え方そのものが魔法士とことなるわけか。たしかに直接剣を交えている最中にいちいち詠唱なんてやってられないだろうしな。
「では、行くぞ!」
カイエンが地面を蹴った。さっきまでと速度が違う。風を纏ったことでスピードが大きく向上したか。
「ハッ!」
ズガガガガガガッと十を超える斬撃が一瞬にして放たれた。全て受け止めるが、地面に風による傷が発生していく。斬撃と同時に鋭い風も発生しているからだ。
そして横薙ぎによって突風が発生し、体が後ろに流された。
「耐えたか、だけどこれでどうかな!」
カイエンが剣を振り下ろし、風の刃が飛んできた。魔法剣があれば本来の間合いを超越した攻撃も可能ってことか。だけど、ま。
「忍法・鎌鼬」
発生させた鎌鼬がカイエンの飛ばした風の刃とぶつかり合い相殺された。
「……驚いたな。君も詠唱破棄が出来るのか?」「え? これぐらい普通じゃないの?」
「普通ではないぞジンよ……」
驚くカイエンになんてこと無いように言ってやったら父上が真顔で呟いた。
とにかく、魔法剣も見れたしここからが本番だな。
スワローのことをどちらが諦めるか、という内容で、そもそもで言えば婚約という話が嘘ではあるのだが、スワローはカイエンのしつこさに困ってるようだし、長年お世話になっている俺としては助けてあげたいという気持ちが強い。
だが、同時にカイエンの魔法剣というのにも興味が湧いてもいた。
「まさかと思ったけど、その動物たちが全て魔獣だったとはね」
「これで全てではないよ」
「うん?」
『ケーン! ケーン!』
おっと、来たか。上空からキジムナが接近して来て俺達を見下ろすようにしながら旋回した。
「ピィピィ♪」
『ケーンケーン』
「ふふ、ホウライも機嫌良さそうなのじゃ」
キジムナとは口寄せしているからこっちの意思もある程度汲み取ってくれる。だからちょうど近くを飛んでいたようだから来てもらった。
「あれはキジムナか?」
知っていたか。流石は騎士だけあるってとこか。
「驚いたな。あれも従魔なのかい?」
「まぁ、そうなるね」
俺の返事にカイエンは目をパチクリさせた。
「まだ若いのに従魔を四匹か。末恐ろしくなるね。あ、これはいい意味でね」
カイエンが朗らかに笑いながら言った。魔獣使いというのはいるが普通は一匹と契約するだけでも凄いことなようだ。エンサイを従魔にしていたのも他に従魔はいなかったようだしな。
「だが、従える魔獣の数が絶対的な差では無い、大事なのは使いこなせるかどうかだ」
「それには同意しますよ」
どんな武器でも使いこなせなければ意味がないからな。
「ところで、貴方は木製の剣でも魔法剣は使えるのかな?」
「はは、心配は不要さ。もっとも使うかどうかはまた別問題だけどね」
カイエンが答える。木刀でも使用は可能なようだが、すぐに使うつもりはないようだな。
「それではカイエンとジンによる決闘を始めたいと思う。双方準備はいいかな?」
父上が確認をとってくる。勝負の行方を見守る立会人は父上だ。
「いつでもどうぞ」
「こちらも同じく」
「では、始め!」
決闘が始まった。カイエンはまずは様子見といったとろか。俺の見た目が子どもだからというのもあるかもしれない。
だから先にこっちから仕掛ける。
「ほう、いい太刀筋だ」
「それはどうも」
暫くカンカンカンと打ち合う。すると今度はカイエンの方から反撃に転じ上下左右に剣戟を散らしてきた。
ふむ、右、フェイント、左、フェイント、からの袈裟斬り、そのまま突きに繋ぐ、と見せかけて下段か。
「むっ、これを避けるか――」
俺は体を入れ替えてカイエンの背後を取った。飛び上がり頭の上を狙って木刀を振り下ろす。
「小癪な」
腕を上げてこれは受けたか。だけど、それでは終わらない。フェイントを織り交ぜて宙空から斬撃を纏めていく。
「ぬっ――」
顔色が変わった。だけど、それでも全て捌き切ったか。そして着地際を狙って反撃に転じてきた。
だが、それは読んでいた。着地する直前に回転して迫るカイエンに蹴りを叩き込む。
「くっ!」
カイエンは片手持ちで振り下ろしてきていた。だから空いていた方の腕で俺の蹴りを防ぐ。チャクラは込めてないからそこまで効いてないか。
防がれたときの反動を利用して後方に下がる。仕切り直しだ。
「おお、ジンも全く負けてないのじゃ!」
「ピィピィ♪」
「……寧ろ押してる」
「ガウガウ!」
「ウッキィ~」
『うむ、流石は主殿であられますな!』
姫様やマグの歓声が届いた。マガミやエンコウ、そしてエンサイの念も届く。上ではキジムナが優雅に舞い続けていた。
「魔法剣はまだ必要ないと?」
カイエンに向けて問う。これは一応挑発のつもりだ。
「……はは、なるほど。剣一つとってもこれとは本当に末恐ろしい。剣術はスワローからだったか」
「えぇ、たっぷり扱かれましたから」
スワローから教わった構えを取り、そう答えた。
「なるほど。流石は私の愛した人だ」
笑みを浮かべながらそんなことを言う。しかし、すぐにすっと目を細め真顔になった。
「どうやら君が子どもだという認識は捨てたほうが良さそうだ。そして見せてあげようブレイド家の魔法剣――ウィンドブレイド」
カイエンの木刀に風が纏わりついた。これが魔法剣か。
「詠唱破棄か……」
兄貴の呟く声が聞こえた。確かに詠唱はしていなかったな。
「前線の矢面に立つ騎士がいちいち詠唱なんてしていられないからね。魔法剣は詠唱無しで使えてこそ一人前だ」
なるほど。考え方そのものが魔法士とことなるわけか。たしかに直接剣を交えている最中にいちいち詠唱なんてやってられないだろうしな。
「では、行くぞ!」
カイエンが地面を蹴った。さっきまでと速度が違う。風を纏ったことでスピードが大きく向上したか。
「ハッ!」
ズガガガガガガッと十を超える斬撃が一瞬にして放たれた。全て受け止めるが、地面に風による傷が発生していく。斬撃と同時に鋭い風も発生しているからだ。
そして横薙ぎによって突風が発生し、体が後ろに流された。
「耐えたか、だけどこれでどうかな!」
カイエンが剣を振り下ろし、風の刃が飛んできた。魔法剣があれば本来の間合いを超越した攻撃も可能ってことか。だけど、ま。
「忍法・鎌鼬」
発生させた鎌鼬がカイエンの飛ばした風の刃とぶつかり合い相殺された。
「……驚いたな。君も詠唱破棄が出来るのか?」「え? これぐらい普通じゃないの?」
「普通ではないぞジンよ……」
驚くカイエンになんてこと無いように言ってやったら父上が真顔で呟いた。
とにかく、魔法剣も見れたしここからが本番だな。
0
お気に入りに追加
5,968
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。