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幕間

第二百七十六話 転生忍者、三主の依頼を受ける?

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「つまり、その主から採れる素材が欲しいってことか」
「ん~ん~? そうなるんだよちみぃ。受けてくれるかい? そうかい。なら早速」
「いや、待て待て、俺はまだ受けると言ってないぞ」

 返事を待つ前に何かもう受けた気でいるぞこいつ。

「ん~ん~? 自信がないのかいちみぃ? ドクからとんでもない少年がいると聞いていたから、ちみのことかと思ってたんだけどねぇちみぃ」
「当たり前だ馬鹿野郎! こいつに決まってんだろうこの野郎! 素材の処理まで完璧だったんだこん畜生!」
 
 ドクが褒めてくれた。怒ってる時にはそういうことらしいからな。

「ん~ん~? ならどうだい? 悪い話じゃないと思うよちみぃ」
「確かに挑戦してみたいって気はあるんだけどさ。だけど、俺は冒険者じゃない。それでもいいのか?」

 一応確認しておく。するとヤバイが眼鏡を直す仕草を見せ。

「ん~ん~? 腕さえあれば誰でも構わないんだよちみぃ」
「そうか。ただ気になるんだが何で冒険者に頼まないんだ?」

 疑問に思ったから聞いておく。この手の依頼は冒険者の領域だ。それをしないってことは何か裏がある可能性がある。

「ん~ん~? 特に理由はないんだよちみぃ。ただしこの依頼は冒険者は嫌がると思うんだよちみぃ」
「嫌がる? どういうことだ?」
「ん~ん~? 簡単なことだよちみぃ。主は殺してはいけない事になってるからだよちみぃ」
「は? 殺すなだって?」
「主を殺すと生態系を壊すからって理由よジン」

 横からマシムの声がするりと入り込んできた。聞いていたのか。

「近くを通ったら面白そうな話をしてると思ってね。それにしても貴方、もうヤバイに目をつけられたのね」
「いや、目をつけられたって……」

 マシムが嘆息していた。ということはマシムもヤバイを知っているのか。もっともいい意味ではなさそうだ。

「ヤバイは冒険者泣かせとして有名なのよ。結構無茶な依頼も多いしね」

 俺の視線で何が言いたいのか察したのかヤバイについて教えてくれた。もしかして冒険者が依頼を受けないのはそれも原因なんだろうか……

「しかし、それだと素材採取は難しいのか?」

 話を元に戻して聞き直す。倒してはいけないってことだしな。

「ん~ん~? そんなことはないよちみぃ。ミーの目的はあくまで素材だからねぇ。殺さないで素材だけ持ってくればいいんだよちみぃ」

 殺さないで素材だけ? 俺はマシムを見て確認した。

「そうね。殺さなければ問題ないわ。だけど、それが冒険者泣かせでもあるのよ。冒険者ってあらっぽいのが多くて基本的な処理すらいい加減なのが多いの」
「そうですね。少々私も弱ってしまうほどなのです」

 うわぁ、円な瞳だぁ。よっぽど辟易してるんだな。

「ドクが呆れるぐらいだしね。そんな連中が殺さないで素材だけ持ってくる依頼なんてこなせるわけがない」
「そうか。ヤバイの言う冒険者が受けてくれないというのはそういう理由があったからか」

 得心が言った。多くの冒険者にとってやりづらい依頼だから、例えギルドに出しても誰も手を付けない可能性が高いんだろう。

「それに相手が三主だからね。普通に戦っても危険な相手よ。こっちが殺しちゃいけない事情なんて向こうには関係ないし、手を出したらこっち側は死ぬ可能性は高いの」

 三主っていうのはそれだけ手強いってことか。

「ま、どうしてもっていうなら止めはしないけど、よく考えることね」

 そしてマシムが去っていった。さて、俺が受けるかどうかってことか。

「この依頼、失敗したら何かあるのか?」
「ん~ん~? 特に何もないさちみぃ。それならそれでまた他に受けてくれそうな相手を探すよちみぃ」
「そうか……」

 どっちにしろこのままじゅ魔封瓶は使いみちが限定される。大金貨百枚なんてとても用意できないしチャレンジする価値はあるか。

「なら受けるよ」
「ん~ん~? ちみならそう言ってくれると信じていたよちみぃ。ならこれを貸してあげるよちみぃ」
「これは?」
「ミーの作成した魔法の袋さちみぃ。主の素材はちみが持ってる袋じゃとても入り切らないからねぇ。だけど、それでも一回ずつ戻ることになるとは思うけどねぇちみぃ」

 三主の素材というのはそれだけ重量があるってことか。

「この野郎馬鹿野郎! 素材は一度は見せろよこの野郎!」
「あぁ。そうだなだったらドクの作業場に先ず向かうってことでいいかな?」
「ん~ん~? かまわないさちみぃ」

 よし、決まりだな。

「早速一つ目行くかな素材を手に入れに!」
「ガウガウ!」
「キキィ!」
「……ん!」
 
 よし、それじゃあ、って!

「何でマグがここに!?」





◇◆◇

「本当に一緒にくるのか? あくまで俺の個人的な目的で動いてるんだぞ?」
 
 俺の横にはマグがいた。俺が屋敷にいないから町に下りたと思って追ってきたようだ。修行に付き合うと言ったかそれでなようだ。

「……ん。ジンは私の修行に付き合うといっった。なのに自分だけ修行、ずるい」
 
 どうやらマグは俺が修行の一環でこの依頼を受けたと思ったようだ。実際は魔道具作成の為なんだが、それを説明しても諦めるつもりはないようだ。

「……強い敵と戦う。私強くなる」
「まぁ、それならそれでいいか。でも、殺しちゃ駄目だからな?」
「……ん!」

 マグが力強く頷く。少し不安ではあるんだけどなぁ。わりとやりすぎちゃうこともある子だし。

「ウキィウキィ」
「……いい子いい子」

 ただ、エンコウの機嫌はいい。今は俺じゃなくてマグの肩に乗って撫でられてデレデレしている。

「ガウガウ!」
「あぁ、マガミにも期待してるよ。ただやりすぎないようにな」
「ガウ!」
『お任せください。ボスは少々加減がわからなさそうですが、私はそんなことはありませんので』

 ちなみに今回はエンサイも一緒だ。しかし、エンサイも一応はエンコウの子分になったわけだが、ところどころ自分をアピールする節があるな。知能派と思ってるからかもしれないけど。

「……何か暑くなってきた」
「そうだな。沼が近いからだろう」

 そして森を抜けて間もなくして大きな沼にたどるりついた。俺が最初に目指したのは沼の主だが――

「……大きなカエル」
「ウキィ!」
「ガウガウ」
『これはなんとも面妖な。背中にあるあれはなんですかな?』

 三者三様の反応を見せてる。エンサイは背中に乗ってる窯に注目したようだ。

「あれが沼の主である窯ガエルだ。素材はあの大窯だな」

 目の前にいた主は巨大なカエルだ。その背中に乗ってる窯ではメラメラと火が燃えていて、窯からは湯気が立ち上っている。
 
 あの窯カエルは時期によって火の勢いが変わる。火が完全に消えてる状態の時は休眠状態となるようだ。

 そしてヤバイが欲しているのは火の勢いが最も盛んなこの時期の窯らしい。さてさて、これを倒さずに素材だけ回収か――
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