辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃

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幕間

第二百七十五話 転生忍者、ヤバイにアレを見せる

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 目の前にいる魔道具師とやらからはヤバい匂いがぷんぷんと漂ってきていた。いきなりマガミとエンコウから素材を取ろうとするとか、大丈夫かこいつ!

「ヤバイは相変わらずですね。もう少し社交性というものを身に付けた方がいいと思いますよ」
 
 そしてドクの目が円になった! 怒ってるのか? 呆れてるのか? そもそもドクが連れてきた相手なんだが。

「ん~ん~? これは失礼。どうも職業柄、いい素材を見つけると我を忘れてしまうんだよちみぃ」
 
 ヤバイが弁解してきた。いくら我を忘れたからって勝手にマガミやエンコウを狩られても困るぞ。

「こいつはこういうやつだが腕はいいんだこの野郎! この街で店を開くって言ってるから宜しく頼むってんだクソ野郎!」
「あ、あぁ。まぁそういうことなら」

 妙な奴だしすすんで関わり合いになりたいとは思えないけどな。ただ、この町に魔道具師というのはいない。

 ここでは魔道具は商人が仕入れてきたりするのが殆どだからだ。

「でも、どうしてここに?」
「ん~ここは良い魔石が採れると評判だからねぇちみぃ」

 あぁ、そうか。すっかり忘れていたけど、エイガ領の名産は魔石だ。そして魔石は魔道具の素材としてもよく使われる。

「ん~ん~そういうわけだからちみぃ。今度から宜しくねぇ。何ならオープン記念で安くしておくし素材は高く買うよぉちみぃ」
「ガ、ガウ!」
「キキィ!」

 ヤバイがマガミをエンコウを見た途端、また俺の後ろに隠れた。両方ともこいつに負けるとは思えないが、滲んでる空気というか、雰囲気が怖いのだろう。

「素材は売らないぞ」
「ん~とても残念だよちみぃ」

 しかしこいつも変わったやつだな。喋り方も独特で妙に声が高いから耳に残る。

「なんなら魔道具のオーダーメイドも受け付けてるんだよちみぃ」

 ヤバイは俺に更にアピールしてきた。しかし、オーダーメイド? つまり希望した物を作ってくれるってことか。

 でも、わざわざ作って欲しいものなんて……いや待てよ? 塩漬けになっていた道具がそういえばあったな。

「だったらちょっと見てもらいたいものがあるんだけどいいかな?」
「勿論構わないさちみぃ」
 
 ならばと俺は以前兄貴がマガミを連れ去った時に使用していた魔封瓶を取り出して見せた。

「――ほぉ、これはこれは」

 俺から瓶を受け取り、興味深そうにまじまじと眺める。

「この野郎ヤバイ! わかるのかこの野郎!」
「ん~ドク」
「なんだこのや、ぐぉ!」
「お、おい!」

 ヤバイが魔封瓶の蓋を外してドクを呼んだぞ! 当然返事したドクは瓶の中に吸い込まれる。これはそういう魔道具だからだ。

「ん~ん~これは魔封瓶だねぇちみぃ」
「いや、そうだけど、今ドクが吸い込まれたぞ!」
「ん~ん~? 吸い込まれたんじゃないよちみぃ。吸い込んだのさちみぃ」

 いや、余計悪いだろうそれ。

「ドクをどうするつもりだよ」
「ん~ん~? 勿論出すさぁちみぃ」

 そして蓋を外すと瓶からドクが飛び出してきた。ドクは地面に膝を付けたまま円な瞳でヤバイを見た。

「突然何なさるのですかあなたは。非常識にも程があると思いませんか?」

 敬語になったぞ。怒ってるということか。いきなりあんな目に合わせられたらそうもなる。

「ん~ん~? ちょっと魔封瓶の効果を試してみたくてねぇちみぃ」
「だったら自分でやればいいじゃないですか。何故私なんですか」
「ん~ん~? 私が自分で試して出れなくなったら大変だろうちみぃ?」

 こいつ出れなくなるかも知れないと思った道具を確認なしに使ったのかよ! いや、俺が見せたものだけど、それでもやっぱヤバい奴だなこいつ!

「中々面白いものを見せてくれたねぇちみぃ。これはくれるのかい?」
「いや、やらないぞ。てか、なんでもうしまおうとしてるんだよ!」
「ん~ん~? いやいや済まないね。魔道具師という職業柄ついというものだよちみぃ」

 魔道具師というのは許可もないのに、手にした物を持っていくような連中なのか?

「一応断っておきますがそんな魔道具師はヤバイだけなのです」
「あ、やっぱり?」

 円な瞳でドクが答えてくれた。そうだろうと思った。

「馬鹿野郎この野郎! おかしな奴だが腕だけは確かでやがるんだこの野郎は殺すぞ!」

 うん。つまりこのヤバイの腕だけは買ってるってことだな。それ以外に問題ありすぎな気もしないでもないけど。

「ん~ん~? ところでちみぃ、くれないと言うなら、何が希望なんだいちみぃ」
「あぁ、そうだった。それは今見ての通り名前を呼んだ相手を中に閉じ込めるだろう? それだと物を入れることが出来ない。だから物を自由に出し入れ出来るようにならないかなと思ってさ」
「ん~ん~? つまり魔法袋や鞄みたいにしたいということだねぇちみぃ」
「あぁ、出来るかな?」

 ようはそういうことだ。以前マシムから魔法の袋を譲ってもらったが容量は多くない。

 だけどこれを利用すればかなりの量が入る魔道具になりそうだと思ったんだが。

「てやんでぃべらんめぃ! できそうかこの野郎!」
「ん~ん~? 可能かどうかで言えば可能だねちみぃ」
「おお! 出来るんだな!」
「ん~ん~? ミーにかかればどうということはないさぁちみぃ」

 流石は腕だけは良いという魔道具師だな。そういう面ではたよりになるということか。

「それなら頼むことは出来るかな? 格安と言っていたけどいくらぐらいだ?」

 これは俺としてはほしい所だ。ただ、値段が重要だ。

「ん~ん~? そうだねちみぃ、本来なら大金貨百二十枚といいたいところだけどオープン記念に百枚にしておくよちみぃ」
「大金貨百枚ーーーーーー!」
「ガウゥウウウウ!」
「ウキイィイィイィイ!?」

 俺は背筋をピンっと伸ばしたまま叫んでしまった。マガミとエンコウも驚愕している。

「ん~ん~? 無理なのかいちみぃ?」
「無理に決まってるだろ! 父上でもおいそれと出せない金額だぞそれ!」
「こいつは腕がいいから値はそれなりに張るんだこの野郎!」
 
 ドクが言うが、いや、張り過ぎだろう……勿論それだけの道具にはなるということなんだろうけど。

「はぁ、それならとても無理か」
「ん~ん~? ちみぃ、それならその銀狼と猿の素材で手を売ってもいいよちみぃ」
「断固断る!」
「ガウガウガウガウ(ガクガク)」
「ウキキキキィ(ブルブル)」

 マガミとエンコウが怖がってるぞ。頼むからその気味の悪い笑顔を止めてやってくれ。

「ん~ん~? 残念だねぇちみぃ。なら、妥協案だねちみぃ。ミーの欲しい素材を持ってきてくれるなら望みの魔道具を作成して上げてもいいよちみぃ」

 ん? つまりマガミとエンコウ関係なしに素材を集めたら俺の希望の道具を作ってくれるってことか?

「本当に? だけど、この辺りで手に入る素材でそんな価値があるのか?」
「ん~ん~? 知らないのかいちみぃ。この周辺には沼の主、山の主、森の主の三主がいるんだよちみぃ。それぞれの素材を採って来てくれるなら君の望む魔道具を作成して上げるんだよちみぃ」
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第四章大会編の一部を幕間という章に移動する作業を行ってます。ご不便をおかけしますができるだけ急ぐように致します。書籍の3巻は12月17日から出荷される予定です。書籍発売と同時にレンタルに移行する話もあります。詳しくは近況ボードにて書かせて頂いておりますので一読頂けると嬉しく思いますm(_ _)m
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