辺境貴族の転生忍者は今日もひっそり暮らします。

空地大乃

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幕間

第二百六十一話 転生忍者、の周りが騒がしく

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 デックやデトラに会うために町におりたら、何故かそこにはマシムやゼンラ、他にもタラードの町で知り合った冒険者が勢揃いしていた。

「もう向こうの町にいても仕方ないしね。それにちょっとのんびりしたくなってどこがいいかなと思ってたら、スワローから手紙を通してここはいいとこだって聞いていたのを思い出したのよ」

 だからここまでやってきたってことか。それにしても――

「ぷは~! この町の酒もなかなかうめぇじゃないか」

 ビアが昼間から酒を煽って酩酊状態だった。

「ナイフ投げてぇなぁ。なぁジンどっかにいい的ないか?」

 ダガーはナイフを弄びながらそんな危ない発言をする。

「うふふ、マグちゃんにデトラちゃん、どう女磨きしてる? あぁでもいいわここは、美味しそうな子が一杯」

 エロイが周囲の子どもたちに目をつけて涎を拭っていた。

「爆破したいなぁ、爆破したいなぁ」

 メグは既にとんでもないことを言いながらキョロキョロしている。

 て、おい! 平和な村が一瞬にしてカオスになった気分だぞ。おいおい門番どうなってんだ。なぜ入れた。

 あいつはもっとちゃんと仕事しろ! 特に爆破したいとか言ってる女と全裸は入れちゃ駄目な奴だろ! ナイフも大概だけど!

「街を破壊しに来たなら大人しく帰ってくれ」
「いやねぇ、そんなことしないわよ」

 思わず俺が言うと笑みを浮かべながらマシムが答えた。一緒に連れてきた連中をもっとしっかり管理してから言ってくれ。

「しかし、本当にダリはマシムと一緒だったんだな」
「ふん。仕方なくだよ。仕方なく」

 マシムの隣にはダリがいた。相変わらず素直じゃない奴だ。そしてそういう意味ではもう一人。

「ミモザも久しぶり、でもないか。わりとすぐだったな」
「あ、あぁそうだな」
「はは、確かにな。お別れを言ったのが馬鹿みたいだ」

 そうゼンラも来ているということはミモザも来ているということだ。まぁあんな別れをした後だからか、俺が話しかけると罰が悪そうな顔をしていたけど。

 そしてデックが笑う。一方でミモザは相変わらず顔が紅い。何かデックが近くにいる時は紅い時が多いな。

「何か街が賑やかになってうれしいな。メグさんやエロイさんからも魔法について色々聞きたいし」
「デトラ、その、エロイは止めたほうが良くないか?」
「あら失礼ね。私に任せておけば魔法から男を落とす方法まで幅広く教えるわよ」

 それが心配なんだよ。

「是非宜しくお願いします!」

 だけど、何故かデトラが前のめりだ。ま、魔法のことだよな?

「それにしてもこんなに一気に移動してきて大丈夫なのか?」

 俺が問う。全員言動はともかく腕はあったはずだし。

「問題ないわよ。前にも言ったと思うけど、元々があの男を追い詰めるために集まったメンバーだしね」

 マシムが答えてくれた。あぁ、そういえばそんなことを言っていたっけな。

「そう言えば、二人ほど足りないな」
「モテナイとナンパね。あの二人は元々情報収集がメインだから、自分のスキルが活かせそうな現場に向かったわ」
 
 なるほど。情報収集メインなら他にも色々と仕事がありそうなものか。

「はっはっは! しかしいい街ではないか。ここであれば全裸を堪能できそうだ」
「や、やめろ! 絶対にそれ取ったら駄目だぞ!」
「何故だ? 一緒に全裸になろうではないか!」
「ふざけるな!」
「ぜん、ら、ぜん、ら、へん、た、い」
「キキィ!」
「ガウ……」

 姫様がたどたどしくも適切な言葉を選んだ! エンコウはいいぞもっとやれ! とでも言ってそうなはしゃぎようだ。マガミは明らかに呆れてる。

「全くあいつは……」
「はは、ミモザも大変そうだな」
「う、うむ……」

 デックが苦笑交じりに言うと、ミモザも腕を組み唸った。デトラも微苦笑を浮かべている。

「でもお兄ちゃん良かったね。ミモザさんもしばらくは街に?」
「そうだな。ゼンラ次第だが」

 デトラが問いミモザが答えた。ミモザは大叔父も死に今はゼンラのお世話になっている。ゼンラが街をでるとなったら一緒についていくことになるのだろう。もっとも見る限りすぐにどうということもなさそうだが。

「マグちゃんも一緒だし賑やかになるね」
「……一気に騒がしくなった」

 デトラの言葉にマグが目を細める。確かにこいつら揃いも揃って濃いからな――

「あ、いたいた。いやいや本当この街に来て頂き助かりましたよ!」

 すると一人の男が近づいてきてマシムに例を述べる。中年で髪の毛が少し寂しい男だ。確かこの町の冒険者ギルドのマスターだったはず。

「最近はうちも結構忙しくて。腕利きの皆さまが活動してくれるのは実にありがたい。そこで早速お願いしたいことがあるのですがいいですか?」
「構わないわ。さ、皆もいくでしょう」
「おう。俺のナイフが火を吹くぜ!」

 ダガーはやる気満々だな。実際にナイフが火を吹いたら大したもんだが。

「爆破していい? 爆破していい?」

 メグは取り扱い注意すぎだろう……薬草採取でも爆破しそうだぞ。

「ヒック、ま、酔い醒ましに丁度いいかな」
「ビアも飲みすぎに注意しないと」
「ふん、ガキのお前に心配されるようじゃおしめぇよ」

 デックがちょっと心配そうにしているが、ビアは肩を竦めつつ酒瓶を傾けた。本当酒が好きなんだな。

「もう依頼? まだこの町のショタを堪能してないのに。ねぇジン?」
「俺を見るな俺を」
「じーーーー」

 エロイが熱を持った目を向けてきて困る。そして姫様の視線が痛い。

「あっはっは! ではいくとするか。ミモザは皆と好きに全裸を堪能しておくといい」
「するか!」

 ミモザが顔を真っ赤にさせて叫んだ。一体普段どう接しているのか……

「あの、ゼンラ様、お願いですからギルド内でもマントをつけていてくださいね?」
「うむ? 何故だ。ギルドは全裸になるところだろう?」
「そんな考え持ってるの貴方だけよ」
「ギルドの皆もそういうのに慣れていないので……」
「はっはっは! おかしなことを言う。人は皆、生まれ落ちた時には全裸なのだ! つまりそれが自然なのだ!」
「はいはい。わかったからいきなり追い出されないようマントはしてなさいって」

 う~ん、この会話よ。ギルドマスター……喜んでいたけどあいつら相手でこれから大変そうだな。特にゼンラの扱いが。

 しかし、確かに賑やかになったな。大叔父の関係でしばらく落ち着かなかったけど、ようやく元の日常に戻れそうだ――
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