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幕間
第二百五十八話 転生忍者、マシムから色々と聞く
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「貴方には本当にお世話になったわね。街でも随分と活躍していたようだし」
下でエロイと話した後、俺達はマシムの部屋を訪れていた。そこでマシムからお礼を言われた。
あの時、街で動き回っていたのは俺の分身だけどな。まぁ敢えていうこともないか。
「それにしても、タラゼドを倒したのは貴方だと思っていたのだけど、違うのねぇ」
「あぁ。それは謎の男がやったことだ」
「う~ん、確かもんじゃとかいうのよねぇ。てっきり私、その正体は貴方だと思ったのだけど、街で貴方が動き回っているのは見られているものねぇ」
また微妙に呼び方が違うが、街で分身が動き回っていたのが効いたようだな。疑われずには済んでいる。
あの刻印を使うと言われたら面倒だがマシムはこの程度のことでそれを使ったりしないしな。
「う~ん、それにしてもその子が、あの時我を見失ってでも救いたかった奴隷というわけね。ふふっ……」
「な、なんだよその顔は」
ニヤケ顔で俺と姫様を交互に見ていた。全くマシムめ。何を勘違いしているのか。
「でも、その気持ちもわかるわね。これだけの美少女なんだもの。それに聞いた話だとかなりの治療魔法の使い手らしいじゃない」
「……その件なんだが、できれば内密には出来ないか?」
姫様の治癒の力は魔法として知られてしまっている。だが、だとしてもできればあまり広まってほしくない。
「えぇ、貴方ならそう言うと思って手は回しているわよ。それに、そんな力を持ってると知った途端、出しゃばってくるのもいそうだしね」
「でしゃばる?」
「教会よ。基本的に治療系の魔法はあそこの専売特許みたいなところがあるからね。その子はどうみても教会には属していないだろうし、知ったら目の色変えてやってきてもおかしくないわ。あいつらただでさえ吸血鬼騒動でピリピリしてるしね」
そう言ってマシムが肩をすくめた。教会か……あまり深くは考えてこなかったけど、姫様のことを考えればそっちにも気をつけた方がいいのかもな。
ちなみにその姫様はマシムが用意した紅茶と焼き菓子に手を付けてご満悦中だ。本当食べるのが好きだな。隣ではエンコウとマガミも姫様から分けてもらって食べているけど。
「ところでマシム。荷物をまとめているように見えるんだがどっかに行くのか?」
まるで旅にでも出るような様相だ。仕事で遠征にでもいくのだろうか?
「そうね。とりあえずどうしようかはこれからとは思うけど、どうしようかしらね?」
「随分と呑気だな。街もまだまだ大変だしギルドマスターとしてはここでやる仕事も多いんじゃないか?」
「あら、言ってなかったかしら? 私ねギルドマスターを解任されたの」
「は? 解任? マシムが! 一体どうしてだよ」
さらりとマシムが教えてくれたが、俺としては驚きだ。薬の件といい盗賊のアジトを突き止めたことといい評価されることはあっても解任はおかしいと思うのだが。
「仕方ないのよ。そもそもこの街であのタラゼドの事を調べたりすることを余計なことだと思っていた連中も上の方には多くてね。そういう連中はあいつがいたから懐も潤った。でも今回の件でそれもパァになると知って私を糾弾してきたのよ。建前上は私が事態を放置した結果被害が大きくなったということでね」
そんなことが――だがよく考えて見ればあいつがこれだけの利権を手にしてこられたのもある程度の根回しが出来ていたからともいえるだろう。
ただでさえこの町では多くのギルドマスターが不審死を遂げたり冤罪で捕まったりしていたそうだが、それでも大叔父が平気でやってこれたのは冒険者ギルドの上の連中とやらも含めて数多く取り込まれていたからということか。
「ま、でも丁度良かったわ。やっぱりギルドマスターなんて性に合ってないもの。流石に冒険者の資格剥奪まではされないから。また自由に冒険者として暮らしていくわ。もう仇討ちも終わったしね」
そう言ってニカッと笑う。マシムは愛していた女性を失いその仇討ちのために大叔父を調べていた。
直接的には俺が殺ってしまったが、魔薬の製造元を発見し、アジトを潰したので大叔父の権威は一気に滑落した。
大叔父の所有していた財産も没収されることになるようだ。
「街からは出るのかい?」
「そうね。ここにももう未練はないし、出ると思うわ」
「そうか……そういえばあの子どもたちはどうなるんだ?」
ふと気になった。大叔父が死にはしたが、あの子達の状況がかわったわけではない。
「ふふ、やっぱり気になるのね。でも安心して。ダリがね冒険者になりたいっていい出したの。だから私が育てることにしたわ」
マシムがダリを? 驚いたが確かにそれなら安心ではあるか。
「ダリは本当ならそのもんじゃという男に弟子入りしたかったらしいけどね。まぁ私でもいいかって、相変わらず小生意気なところあるけど」
そう言って苦笑する。しかし、そのダリの希望は無理だぞ。俺だからな。
「他の子達はどうなるんだ?」
「それも驚いたんだけど、ハダル家がまとめて面倒見てくれるってことになったわ。子どもたちを育てる施設を作るって話になっててね。なんでも大会参加者のフレイが両親を説得したらしいわ。ちなみに女の子が一人養女として迎え入れられるみたいね」
あいつ、そこまで手を打ってくれたのか。女の子というのは多分ミサのことなんだろうな。
あいつにこれ以上馬鹿なことをしてほしくないという気持ちで約束させたことだったんだが、まさかこんなにも大きく返してくるとはな。
結果的には良かったということか……少なくともこの街で暮らすよりは良い生活が待っている筈だ。
「近況としてはこんなところかしらね」
「ありがとう。懸念があったが大分解消されたよ」
「それならよかった。そういえば夕方には街を出るのだったわね。ちょっと寂しくなるけど、貴方ともまたいずれ会うことも有るかもね」
「そうかもな。まぁ冒険者として今後も頑張ってな」
「えぇ、お互いにね。とりあえず女の子をなかせないようにね。あとスワローちゃんにもよろしくね」
マシムと最後に握手して別れたが、女の子を泣かせるってどういう意味だ。勿論そんなことはしないけどさぁ。
そしてスワローか。そういえばマシムと仲が良いんだったな。
さて、下に戻るとデックやデトラも皆と別れを済ませたようだな。デックはミモザとも話していたが、その会話に俺も加わった。
「そういえばミモザは今後どうするんだ?」
「う、うむ、その――」
「あっはっは! ミモザは本格的に私の弟子として育てることにしたのだ! あっはっは!」
「あ、そうなんだ――」
ミモザは育ての親である大叔父が死んでしまったわけで今後どうするかといったところで気にしてはいた。
大叔父をやったのは俺だしな……ただミモザは母親のこともあって父でありながら恨んでもいたようで死んだことに関しては特に思うことはないらしい。政略結婚に利用されたり散々だったしな……
そしてミモザとしてはもうこれ以上、大叔父の関係者には関わりたくないらしく結果的にゼンラと一緒になる道を選んだようだな。
「ミモザ、これから大変だと思うが全裸もほどほどにな?」
「喧嘩を売ってるのか貴様!」
気を利かせて忠告したつもりだったんだが何故か切れられてしまった。解せん。
「その、なんだ。まぁ色々とあったが貴様には助けてもらったような気もしないでもないから、そこはかとなく感謝はしている」
「どんなお礼だよそれ」
そっぽを向きながらミモザがそんなことを言ってきた。本人はお礼のつもりなようだ。
すると脇から姫様が俺を突いてきて。
『お主は随分とおなごから好かれとるようじゃな。全く恐れ入ったぞ』
「は?」
姫様が白い目で俺を見てきた。いやいや! 何か勘違いしてないか!
「ガウガウ」
「ウキキィ」
エンコウとマガミも何故か楽しそうにこっちを見てるし。何なんだ一体!
「ミモザ、ゼンラさんは裸だけどいい人そうだからな。それに剣の腕は確かだし。一緒にいて損することはないと思うぞ」
「その裸というのが一番の問題なのだが、そのありがとう。デックには本当に感謝している」
そしてミモザは戸惑いながらもデックにはしっかりお礼を言っていた。まぁ相変わらず目は合わせてないけど。そして何故か頬が紅い。
さて、こうして一通り挨拶を終えた俺達はギルドを後にした。
宿に戻り昼食を取る。その場には兄貴とマグもいた。
そういえばマグの件もあったな……だけど、俺から何を言えばいいんだが、そんなことを思っていたら父上からマグに声がかかった。
「マグくんはこれからどうするかは決めているのかな?」
「……これから?」
「色々と事情は聞いていてね。帰るところはあるのかな?」
「……特に決めてない。でも、これまで一人で生きていたから大丈夫」
パンをもぐもぐと食べながらマグが答えた。やはり一人でやっていくつもりなのか……だけど。
「その、何だ。マグも一緒に来たらどうだ?」
「……一緒にって?」
「だからエイガ領にだよ。こっちは長閑で住むにはいいところだと思うんだ」
「賛成! 私もそれがいいと思います!」
「おう、一人でなんて寂しいじゃん。デトラも喜ぶしそれがいいんじゃないか?」
「ふむ、悪くないではないか。だけど参ったな私の魅力に気がつき、惚れられてしまうかもしれないな」
皆も賛成なようで後押ししてくれた。兄貴は相変わらず馬鹿なことを言っている。そしてマグは少し考える仕草を見せ、そして答えた。
「……気持ちは嬉しい。だけど、私には目的がある。一緒にはいけない」
「目的というのは仇討ちのことか?」
「……そう。私は村を襲った吸血鬼を見つけ決着をつけないといけない」
「ならばなおさらだ。一緒に来なさい。異論は認めない」
父上がピシャリと言った。マグが目を丸くさせる。
「……どういうこと?」
「今の君の考えは危うい。気持ちはわからなくもないが君はまだ幼い。今のうちからそんな感情に支配されていてはいけないよ。君に必要なのは同世代の子どもたちと一緒に過ごす時間だ。生活の心配ならしなくてもいい。私が何とかしよう」
下でエロイと話した後、俺達はマシムの部屋を訪れていた。そこでマシムからお礼を言われた。
あの時、街で動き回っていたのは俺の分身だけどな。まぁ敢えていうこともないか。
「それにしても、タラゼドを倒したのは貴方だと思っていたのだけど、違うのねぇ」
「あぁ。それは謎の男がやったことだ」
「う~ん、確かもんじゃとかいうのよねぇ。てっきり私、その正体は貴方だと思ったのだけど、街で貴方が動き回っているのは見られているものねぇ」
また微妙に呼び方が違うが、街で分身が動き回っていたのが効いたようだな。疑われずには済んでいる。
あの刻印を使うと言われたら面倒だがマシムはこの程度のことでそれを使ったりしないしな。
「う~ん、それにしてもその子が、あの時我を見失ってでも救いたかった奴隷というわけね。ふふっ……」
「な、なんだよその顔は」
ニヤケ顔で俺と姫様を交互に見ていた。全くマシムめ。何を勘違いしているのか。
「でも、その気持ちもわかるわね。これだけの美少女なんだもの。それに聞いた話だとかなりの治療魔法の使い手らしいじゃない」
「……その件なんだが、できれば内密には出来ないか?」
姫様の治癒の力は魔法として知られてしまっている。だが、だとしてもできればあまり広まってほしくない。
「えぇ、貴方ならそう言うと思って手は回しているわよ。それに、そんな力を持ってると知った途端、出しゃばってくるのもいそうだしね」
「でしゃばる?」
「教会よ。基本的に治療系の魔法はあそこの専売特許みたいなところがあるからね。その子はどうみても教会には属していないだろうし、知ったら目の色変えてやってきてもおかしくないわ。あいつらただでさえ吸血鬼騒動でピリピリしてるしね」
そう言ってマシムが肩をすくめた。教会か……あまり深くは考えてこなかったけど、姫様のことを考えればそっちにも気をつけた方がいいのかもな。
ちなみにその姫様はマシムが用意した紅茶と焼き菓子に手を付けてご満悦中だ。本当食べるのが好きだな。隣ではエンコウとマガミも姫様から分けてもらって食べているけど。
「ところでマシム。荷物をまとめているように見えるんだがどっかに行くのか?」
まるで旅にでも出るような様相だ。仕事で遠征にでもいくのだろうか?
「そうね。とりあえずどうしようかはこれからとは思うけど、どうしようかしらね?」
「随分と呑気だな。街もまだまだ大変だしギルドマスターとしてはここでやる仕事も多いんじゃないか?」
「あら、言ってなかったかしら? 私ねギルドマスターを解任されたの」
「は? 解任? マシムが! 一体どうしてだよ」
さらりとマシムが教えてくれたが、俺としては驚きだ。薬の件といい盗賊のアジトを突き止めたことといい評価されることはあっても解任はおかしいと思うのだが。
「仕方ないのよ。そもそもこの街であのタラゼドの事を調べたりすることを余計なことだと思っていた連中も上の方には多くてね。そういう連中はあいつがいたから懐も潤った。でも今回の件でそれもパァになると知って私を糾弾してきたのよ。建前上は私が事態を放置した結果被害が大きくなったということでね」
そんなことが――だがよく考えて見ればあいつがこれだけの利権を手にしてこられたのもある程度の根回しが出来ていたからともいえるだろう。
ただでさえこの町では多くのギルドマスターが不審死を遂げたり冤罪で捕まったりしていたそうだが、それでも大叔父が平気でやってこれたのは冒険者ギルドの上の連中とやらも含めて数多く取り込まれていたからということか。
「ま、でも丁度良かったわ。やっぱりギルドマスターなんて性に合ってないもの。流石に冒険者の資格剥奪まではされないから。また自由に冒険者として暮らしていくわ。もう仇討ちも終わったしね」
そう言ってニカッと笑う。マシムは愛していた女性を失いその仇討ちのために大叔父を調べていた。
直接的には俺が殺ってしまったが、魔薬の製造元を発見し、アジトを潰したので大叔父の権威は一気に滑落した。
大叔父の所有していた財産も没収されることになるようだ。
「街からは出るのかい?」
「そうね。ここにももう未練はないし、出ると思うわ」
「そうか……そういえばあの子どもたちはどうなるんだ?」
ふと気になった。大叔父が死にはしたが、あの子達の状況がかわったわけではない。
「ふふ、やっぱり気になるのね。でも安心して。ダリがね冒険者になりたいっていい出したの。だから私が育てることにしたわ」
マシムがダリを? 驚いたが確かにそれなら安心ではあるか。
「ダリは本当ならそのもんじゃという男に弟子入りしたかったらしいけどね。まぁ私でもいいかって、相変わらず小生意気なところあるけど」
そう言って苦笑する。しかし、そのダリの希望は無理だぞ。俺だからな。
「他の子達はどうなるんだ?」
「それも驚いたんだけど、ハダル家がまとめて面倒見てくれるってことになったわ。子どもたちを育てる施設を作るって話になっててね。なんでも大会参加者のフレイが両親を説得したらしいわ。ちなみに女の子が一人養女として迎え入れられるみたいね」
あいつ、そこまで手を打ってくれたのか。女の子というのは多分ミサのことなんだろうな。
あいつにこれ以上馬鹿なことをしてほしくないという気持ちで約束させたことだったんだが、まさかこんなにも大きく返してくるとはな。
結果的には良かったということか……少なくともこの街で暮らすよりは良い生活が待っている筈だ。
「近況としてはこんなところかしらね」
「ありがとう。懸念があったが大分解消されたよ」
「それならよかった。そういえば夕方には街を出るのだったわね。ちょっと寂しくなるけど、貴方ともまたいずれ会うことも有るかもね」
「そうかもな。まぁ冒険者として今後も頑張ってな」
「えぇ、お互いにね。とりあえず女の子をなかせないようにね。あとスワローちゃんにもよろしくね」
マシムと最後に握手して別れたが、女の子を泣かせるってどういう意味だ。勿論そんなことはしないけどさぁ。
そしてスワローか。そういえばマシムと仲が良いんだったな。
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「そういえばミモザは今後どうするんだ?」
「う、うむ、その――」
「あっはっは! ミモザは本格的に私の弟子として育てることにしたのだ! あっはっは!」
「あ、そうなんだ――」
ミモザは育ての親である大叔父が死んでしまったわけで今後どうするかといったところで気にしてはいた。
大叔父をやったのは俺だしな……ただミモザは母親のこともあって父でありながら恨んでもいたようで死んだことに関しては特に思うことはないらしい。政略結婚に利用されたり散々だったしな……
そしてミモザとしてはもうこれ以上、大叔父の関係者には関わりたくないらしく結果的にゼンラと一緒になる道を選んだようだな。
「ミモザ、これから大変だと思うが全裸もほどほどにな?」
「喧嘩を売ってるのか貴様!」
気を利かせて忠告したつもりだったんだが何故か切れられてしまった。解せん。
「その、なんだ。まぁ色々とあったが貴様には助けてもらったような気もしないでもないから、そこはかとなく感謝はしている」
「どんなお礼だよそれ」
そっぽを向きながらミモザがそんなことを言ってきた。本人はお礼のつもりなようだ。
すると脇から姫様が俺を突いてきて。
『お主は随分とおなごから好かれとるようじゃな。全く恐れ入ったぞ』
「は?」
姫様が白い目で俺を見てきた。いやいや! 何か勘違いしてないか!
「ガウガウ」
「ウキキィ」
エンコウとマガミも何故か楽しそうにこっちを見てるし。何なんだ一体!
「ミモザ、ゼンラさんは裸だけどいい人そうだからな。それに剣の腕は確かだし。一緒にいて損することはないと思うぞ」
「その裸というのが一番の問題なのだが、そのありがとう。デックには本当に感謝している」
そしてミモザは戸惑いながらもデックにはしっかりお礼を言っていた。まぁ相変わらず目は合わせてないけど。そして何故か頬が紅い。
さて、こうして一通り挨拶を終えた俺達はギルドを後にした。
宿に戻り昼食を取る。その場には兄貴とマグもいた。
そういえばマグの件もあったな……だけど、俺から何を言えばいいんだが、そんなことを思っていたら父上からマグに声がかかった。
「マグくんはこれからどうするかは決めているのかな?」
「……これから?」
「色々と事情は聞いていてね。帰るところはあるのかな?」
「……特に決めてない。でも、これまで一人で生きていたから大丈夫」
パンをもぐもぐと食べながらマグが答えた。やはり一人でやっていくつもりなのか……だけど。
「その、何だ。マグも一緒に来たらどうだ?」
「……一緒にって?」
「だからエイガ領にだよ。こっちは長閑で住むにはいいところだと思うんだ」
「賛成! 私もそれがいいと思います!」
「おう、一人でなんて寂しいじゃん。デトラも喜ぶしそれがいいんじゃないか?」
「ふむ、悪くないではないか。だけど参ったな私の魅力に気がつき、惚れられてしまうかもしれないな」
皆も賛成なようで後押ししてくれた。兄貴は相変わらず馬鹿なことを言っている。そしてマグは少し考える仕草を見せ、そして答えた。
「……気持ちは嬉しい。だけど、私には目的がある。一緒にはいけない」
「目的というのは仇討ちのことか?」
「……そう。私は村を襲った吸血鬼を見つけ決着をつけないといけない」
「ならばなおさらだ。一緒に来なさい。異論は認めない」
父上がピシャリと言った。マグが目を丸くさせる。
「……どういうこと?」
「今の君の考えは危うい。気持ちはわからなくもないが君はまだ幼い。今のうちからそんな感情に支配されていてはいけないよ。君に必要なのは同世代の子どもたちと一緒に過ごす時間だ。生活の心配ならしなくてもいい。私が何とかしよう」
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