55 / 68
第55話 仮面の男の毒
しおりを挟む
前回は逃げられたが今回は倒し切る必要があるとヒットは考えていた。連戦になるが、クララに回復されたし、彼女も魔力は薬で回復している。
ヒット達の調子は悪くなかった。連中が何故猿酒などを狙っているか謎ではあるが、邪教と呼ばれる組織から来ているのだから、持っていかれても碌なことにならないのは間違いなさそうだ。
「まずはこれを喰らえ! 毒霧!」
「何?」
すると毒使いの男が口から霧を吐き出した。仮面といっても口元は開いている。この狭い空間で毒をばらまかれては厄介であり。
「キャンセル」
当然ヒットは直様霧をキャンセルする。だが直後仲間の2人が左右から迫る。
「テメェのわけのわからねぇスキルはわかってんだよ!」
毒使いの男が叫んでいた。どうやら最初の毒霧はキャンセルされることが前提であり、本当の目的は仲間の挟撃だったようだ。
「させません!」
メリッサの声が届く。矢が駆け抜け、迫る2人に一本ずつ命中するが、それはパリンっという音とともに弾かれた。
「支援魔法! ワンガードです!」
クララが叫んだ。ワンガード、一度だけどんな攻撃でも弾いてしまう障壁を張る魔法だ。どうやらクララのような回復や支援系魔法の使い手がいるようだ。
邪教なのに笑えない冗談だ、と顔を歪めるヒットだが――ヒットに迫った仮面2人が突如ピタリと動きを止めた。
「悪いなこっちにも切り札はある」
ヒットは念の為、自分の左右に設置キャンセルを展開しておいた。ヒットのスキルにある程度当たりをつけているにしては毒霧の行使がストレートすぎたからだ。
もしヒットを厄介な相手と捉えているなら何があっても先ずヒットの排除を考えるはず。そうなると霧とは別に何かある筈と考えていたのである。
「これで2人死んだ」
ナイフを投擲し1人の首を貫き、鋼の剣で残った1人を切り飛ばした。チッという男の声が聞こえる。
「ブレイズキャノン!」
だがその時、もう1人の仲間が魔法を行使。この魔法は中級の火魔法だ。威力も高い。しかも洞窟内だ。猿酒が狙いのくせになんてものを使う気だ、と心で毒突きつつ、ヒットはキャンセルを試みるが――発動しなかった。それで気がつく、相手はただ魔法名を叫んだだけだと。
「お前はそれに頼り過ぎなんだよ!」
仮面の男が迫る。毒使いだ。右手にナイフを構え腕に紫色の蛇を模したオーラが纏わりついていた。
「行くぜ!」
キャンセルは間に合わない。そう判断したヒットは盾を滑り込ませた。相手のナイフは盾で防ぐことが出来た。この男パワーはさほどでもない。
だが、盾の表面を這うようにして毒蛇が蠢き、ヒットの喉に噛み付いた。
「クッ!」
「ヒット!」
噛み付いてすぐ毒蛇は消えたが、ヒットの首に毒々しい色の痣が生じる。首がジンジンと傷んだ。全身がダルくなる。毒に掛かったことは間違いなかった。
「動きが鈍ったな。せっかくだ仲間も毒に掛かっておきな――」
男が何本ものナイフを指に挟めて構えた。以前見た毒の塗布されたナイフを扇状に投げる武技に違いないとヒットは判断しキャンセル狙うが、目端に杖を構えた仲間の姿も見えた。
さっきのフェイントがちらつくが、今度は本当に魔法を行使するつもりかもしれない。どうしようかと一瞬迷うも何本もの魔法の矢が杖を構えた男に迫った。一発は魔法の障壁で阻まれるも続く矢には対応できず矢を受けた男は崩れ落ちた。
メリッサの連射だ。これで残った仲間は1人、恐らくはそいつが支援魔法を使っていたのだろう。メリッサをナイスと心のなかで称えつつ、男の武技をキャンセル。
「チッ」
「挟双剣!」
挟み込むような斬撃。だがそれは障壁に阻まれた。
「甘いんだよ!」
「お前がな」
直様カウンターを仕掛けてきた男だがあっさりとそれを回避。キャンセルは自分にも使える。障壁に阻まれ攻撃は跳ね返されたがその隙はキャンセル出来るのだ。
「昇天剣!」
ヒットは相手を浮かせる為に武技を放つ。当たれば洞窟の天井にも当たりそこに飛翔剣で追撃すればかなりのダメージが期待できる、筈だったのだが、昇天剣が当たった直後男の体から飛び散った出血がヒットの顔に掛かり、思わず呻き声を上げた。
「ぐぅうぅうう! これは!」
「はは、俺はスキルで体液を毒化出来るのさ馬鹿め!」
これで2回目の毒だ。より効果は上がるし状態異常はキャンセル出来ない。
しかもその間に男の傷は回復してしまっている。残った1人は回復魔法も使えたようだ――
ヒット達の調子は悪くなかった。連中が何故猿酒などを狙っているか謎ではあるが、邪教と呼ばれる組織から来ているのだから、持っていかれても碌なことにならないのは間違いなさそうだ。
「まずはこれを喰らえ! 毒霧!」
「何?」
すると毒使いの男が口から霧を吐き出した。仮面といっても口元は開いている。この狭い空間で毒をばらまかれては厄介であり。
「キャンセル」
当然ヒットは直様霧をキャンセルする。だが直後仲間の2人が左右から迫る。
「テメェのわけのわからねぇスキルはわかってんだよ!」
毒使いの男が叫んでいた。どうやら最初の毒霧はキャンセルされることが前提であり、本当の目的は仲間の挟撃だったようだ。
「させません!」
メリッサの声が届く。矢が駆け抜け、迫る2人に一本ずつ命中するが、それはパリンっという音とともに弾かれた。
「支援魔法! ワンガードです!」
クララが叫んだ。ワンガード、一度だけどんな攻撃でも弾いてしまう障壁を張る魔法だ。どうやらクララのような回復や支援系魔法の使い手がいるようだ。
邪教なのに笑えない冗談だ、と顔を歪めるヒットだが――ヒットに迫った仮面2人が突如ピタリと動きを止めた。
「悪いなこっちにも切り札はある」
ヒットは念の為、自分の左右に設置キャンセルを展開しておいた。ヒットのスキルにある程度当たりをつけているにしては毒霧の行使がストレートすぎたからだ。
もしヒットを厄介な相手と捉えているなら何があっても先ずヒットの排除を考えるはず。そうなると霧とは別に何かある筈と考えていたのである。
「これで2人死んだ」
ナイフを投擲し1人の首を貫き、鋼の剣で残った1人を切り飛ばした。チッという男の声が聞こえる。
「ブレイズキャノン!」
だがその時、もう1人の仲間が魔法を行使。この魔法は中級の火魔法だ。威力も高い。しかも洞窟内だ。猿酒が狙いのくせになんてものを使う気だ、と心で毒突きつつ、ヒットはキャンセルを試みるが――発動しなかった。それで気がつく、相手はただ魔法名を叫んだだけだと。
「お前はそれに頼り過ぎなんだよ!」
仮面の男が迫る。毒使いだ。右手にナイフを構え腕に紫色の蛇を模したオーラが纏わりついていた。
「行くぜ!」
キャンセルは間に合わない。そう判断したヒットは盾を滑り込ませた。相手のナイフは盾で防ぐことが出来た。この男パワーはさほどでもない。
だが、盾の表面を這うようにして毒蛇が蠢き、ヒットの喉に噛み付いた。
「クッ!」
「ヒット!」
噛み付いてすぐ毒蛇は消えたが、ヒットの首に毒々しい色の痣が生じる。首がジンジンと傷んだ。全身がダルくなる。毒に掛かったことは間違いなかった。
「動きが鈍ったな。せっかくだ仲間も毒に掛かっておきな――」
男が何本ものナイフを指に挟めて構えた。以前見た毒の塗布されたナイフを扇状に投げる武技に違いないとヒットは判断しキャンセル狙うが、目端に杖を構えた仲間の姿も見えた。
さっきのフェイントがちらつくが、今度は本当に魔法を行使するつもりかもしれない。どうしようかと一瞬迷うも何本もの魔法の矢が杖を構えた男に迫った。一発は魔法の障壁で阻まれるも続く矢には対応できず矢を受けた男は崩れ落ちた。
メリッサの連射だ。これで残った仲間は1人、恐らくはそいつが支援魔法を使っていたのだろう。メリッサをナイスと心のなかで称えつつ、男の武技をキャンセル。
「チッ」
「挟双剣!」
挟み込むような斬撃。だがそれは障壁に阻まれた。
「甘いんだよ!」
「お前がな」
直様カウンターを仕掛けてきた男だがあっさりとそれを回避。キャンセルは自分にも使える。障壁に阻まれ攻撃は跳ね返されたがその隙はキャンセル出来るのだ。
「昇天剣!」
ヒットは相手を浮かせる為に武技を放つ。当たれば洞窟の天井にも当たりそこに飛翔剣で追撃すればかなりのダメージが期待できる、筈だったのだが、昇天剣が当たった直後男の体から飛び散った出血がヒットの顔に掛かり、思わず呻き声を上げた。
「ぐぅうぅうう! これは!」
「はは、俺はスキルで体液を毒化出来るのさ馬鹿め!」
これで2回目の毒だ。より効果は上がるし状態異常はキャンセル出来ない。
しかもその間に男の傷は回復してしまっている。残った1人は回復魔法も使えたようだ――
0
お気に入りに追加
1,007
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる