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第26話 ユニーク
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ユニーク種――ゲームにも登場した特異型の魔物だ。これらは基本となる魔物をベースに能力値が劇的に向上した存在だ。それゆえ見た目にも色が違ったりネームが与えられていたりする。
ベースが一緒といってもステータスだけでなくスキルさえも変化するので正直ほぼ別物とみて良いだろう。
今姿を見せたユニーク種のワーウルフも本来の茶色い毛並みのとことなりその毛並みは青い。体格などは変わらないが妙な威圧感がある。
『ウオォオオオォオオォオオオン!』
ワーウルフが吠えた。遠吠えか! とヒットは周囲から別のワーウルフが現れないか警戒する。だが、何かが違った。
「闘吠えです! 自らの戦闘力を上げるユニークのスキルです!」
緊迫した声をメリッサが発した。どうやら遠吠えとはスキルそのものが違うようだ。
ユニークのワーウルフが距離を詰め、その爪を振った。この距離なら躱せると、ヒットは大きく飛び退く。
だが、ワーウルフの振るった爪の一撃は空間を裂くように伸び、ヒットの体を抉った。革の胸当てごと肉が削げる。
「ぐっ!」
「ヒット!」
苦痛に顔が歪んだ。メリッサの悲痛な叫び。
ここにきて、初めてダメージらしいダメージを受けたと言えるか。ステータスを確認すると生命力が70%まで減っていった。一撃で20%も減ったのだ。
「今ポーションを!」
「それなら俺も持ってるから大丈夫だ。それに見た目ほど大したことはない! それよりメリッサは出来るだけ下がって射程ギリギリから援護を頼む」
「は、はい! ならこれを!」
メリッサが折りたたんだ紙をヒットに投げてよこした。キャッチしたヒットが広げて見ると、メリッサが鑑定した結果が書かれていた。
ワーウルフ
ネーム:ワールフ
生命力100%体力100%魔力100%精神力100%
攻B+防C敏B++器C++魔E護D
武術
戦狼術(4)
武技
狼爪牙拳(4)狂狼裂爪(3)月光天破(1)
スキル
闘吠え(2)月下自癒(3)月ノ狂狼(4)
称号
月下の狩人、一匹狼
「マジかよ……」
思わず口に出た。ユニークだけに名前までついているが、それ以上に能力が元のワーウルフと違いすぎた。それぞれのランクがC以上になると+がつくことがあり、当然+がつくと通常の値よりも強く+は最大2つまでつく。
この+も1つつくごとに一段階上だと思った方が良い。つまり攻撃にしても動きの速さにしてもただのワーウルフとは格が違う。青いくせに3倍ぐらい差があるかもしれない。
その上、ワーウルフにあった銀に怯える狼が消え、代わりに一匹狼が増えていた。前者がない為、銀という弱点がなくなり、更に一匹狼の効果で単体の戦闘力は更に向上している。
武技も新しいのが増えている上、自然治癒力の増す月下自癒と月光の下で強化される月ノ狂狼も熟練度が上がっている。眼の前の相手は最悪な敵に近かった。
(だが、やるしかない!)
覚悟を決める他なかった。それにヒットとてワーウルフとの戦いでステータスは変化している。
だが――
「速い!」
ワールフが疾駆した瞬間、ヒットの視界から姿が消えた。いや、目で追うことが出来なかった。それほどまでに速い。
「ヒット後ろ!」
メリッサが叫ぶが反応する暇も与えず、ワールフの爪と牙が高速でヒットの身をズタボロにした。キャンセルすることも叶わずヒットが吹っ飛ぶ。ゴロゴロと転がりながらもなんとかステータスの確認とポーションの取り出しを同時に行った。
攻撃を喰らった後、生命力は20%まで減っていた。ポーションを飲んで70%まで回復するが、次の攻撃を喰らえばまた一気に生命力を持っていかれるだろう。
「くそ!」
急いで立ち上がる。ワールフとの距離が離れたことで多少は視界に収めやすくなった。魔法の袋からナイフや投擲用に取っておいた長剣を取り出し、相手の動線を妨げるように投げる。だがどれもその爪で破壊されていった。とは言え曲投も駆使したことで1つは命中したが、刺さった1本も破壊され、傷はすぐに塞がった。
治癒力が高すぎる。生半可なダメージでは回復されるだけだ。メリッサが弓を引いているのが見えたが、動きが早すぎて捉えきれていない。
唯一の救いは敵の意識がヒットに向いていることだ。下がってもらっておいて良かったようだ。とはいえキャンセルは相手をしっかり捉えられないと意味がない。
だがこの動きを捉えるのは至難の業だ。ワールフが迫り、更に攻撃が続く。少しでもダメージを軽減するため、盾を正面に構え後ろに下がりながらやり過ごすヒットだがふと背中に固いものを感じた。
木の幹だった。後ろに下がりすぎていつの間にか幹を背にしてしまっていたのだ。完全に追い詰められた状態。ワールフの長い口が歪んだ気がした。
トドメと言わんばかりにその爪が振り上げられたが。
「掛かったな、キャンセル!」
「――!?」
ワールフの表情に変化が見られた。ここにきて初めての焦り。ヒットは追いつめられたのではなかった。敢えて幹を背にしたのだ。
ヒットにとって厄介だったのはワールフが素早すぎて視界に捉えきれないことだった。だが、何かを背にした状態なら自然と敵の行動は正面に限定される。そうすれば相手をしっかり視ることが出来て、キャンセルが使える!
一瞬でも動きが止められたならそれで良かった。寧ろそこに全てをそそぐ必要があった。中途半端なダメージでは意味がない。ここで決めねば。
ヒットの剣がワールフの身に斜めの線を刻む。その顔が苦悶に歪んだ。だが、それで終わらない。今の一撃は中断切りによるものだった。
これで更に0.1秒相手の動きが止まる。続けざまに挟双剣を決めた。中断切りの効果でカウンターヒットが確定し思わず相手が仰け反った。
「今だキャンセル!」
だが、重要なのはここからであった。そうカウンターヒットが決まった直後にキャンセルを決める。これは元のゲームでもヒットだけが見つけることが出来た裏技。
カウンターヒットが決まった直後にキャンセルを合わせるとカウンターヒットが決まったという判定もキャンセルされる。
するとどうなるか――ヒットの挟双剣が再び降り注ぎ、カウンターヒットによってワールフが仰け反った。
「キャンセル」
「――!?」
ワールフにとっては意味がわからないことだろう。何せ全く自分のターンが回ってこないのだ。
「挟双剣!」
「――ウォオオォオオオン!」
ワールフの鳴き声が森に響く。悔しさと怒りのこもった叫びだった。
このまま永久にヒットのターンが続くのであれば、これで勝利は確定だ。だが、残念ながらキャンセルも際限なく使えるわけではない。
残りの精神力が限界に近かった。だからコンボの締めにヒットは昇天剣を決めてワールフを満月に向けて打ち上げた。カウンターヒットでより高くその身が浮かび上がる。
「メリッサ!」
そこで満を持してメリッサが空中漂うワールフを狙い撃ち、そこから今度は新しく覚えが連射を決める。
ワールフの目から光が消えたように思えた。これだけ決めればいくら自然治癒力が上がっていても耐えられない。
ワールフがそのまま地面に落下する、そう思えた時。
「ヒット気をつけて! 残り5%」
メリッサが警告するのと、カッ! と目を見開きくるりと回転して地面に着地し、ヒットに向けワールフが飛びかかってきた。
その右手には集束する光。ヒットが反応するより早く、目の前まで迫ったワールフが手に集まった光を地面に叩きつけ、かと思えばヒットの足下から天に向けて光が突き抜け、ヒットの体も大きく浮かび上がった。
「そんな、ヒット! だめぇええええ!」
涙を流しながら叫ぶメリッサ。ヒットのダメージは大きい。今度は逆にヒットの目から光が失われつつあった。
そして、ワールフのターゲットがメリッサに変わった。かなりのダメージを受けていたワールフだが、スキルによる回復で立ち直りつつある。
そして、ワールフが地面を蹴るが。
「きゃ、キャンセル!」
途端にワールフの動きが止まりバランスが崩れた。そうメリッサに意識が向いた為、ヒットにまだ意識が残っていたことに気が付かなかった。
そして落下中のヒットからはワールフの動きがよく見えた。だからキャンセルし――
「メリッサ、う、打て!」
「は、はい!」
風を切り、メリッサの連射で放たれた2本の矢がワールフの急所を捉えた。
『ウォオオォオオォオオォオオン!』
断末魔の悲鳴が夜空にこだました。ヒットが地面に落下するのと、ワールフが地面に倒れたのはほぼ同時だった。
「……ワールフ、生命力0%、勝った、勝ったよヒット!」
メリッサがヒットに駆け寄る。だがヒットは力なく笑うのが精一杯だった。残り生命力が3%しかない。本当にギリギリだった。最後にワールフが見せたのが月光天破だったのだろう。
しかし熟練度1でこの威力だ。あと1つでも上だったら間違いなく死んでいたことだろう。
メリッサが自分のポーションを取り出しヒットの口に含ませてくれた。なんとな飲み込み、すると傷が回復していき、動けるまでに回復した。
改めてポーションというのは凄いなと思う。その後は自分のポーションと精神安定薬を飲み更に回復しておいた。
ネーム:ヒット
ジョブ:キャンセラー
生命力100%体力55%魔力100%精神力80%(+25%)
攻C+防C敏C器C魔E護E
武術
剣術(3)解体術(2)投擲術(2)
武技
挟双剣(3)爆砕剣(3)闘気剣(2)昇天剣(1)中断切り(1)曲投(1)
魔法
スキル
キャンセル(3)設置キャンセル(1)
称号
Bランクの壁
装備品
鋼の剣、革の胸当て、革の円盾、精神力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、魔法の袋(100kg)、着火器、松明×2、寝袋×2
ステータスを確認するとキャンセルの熟練度が3に上がり、派生スキルとして設置キャンセルを覚えていた。
これによりヒットは特定の位置にキャンセルが設置出来るようになった。この設置キャンセルは特定の位置にキャンセルを設置しておくことでそれに触れた物がキャンセルされる。ちなみに設置できる数は熟練度に準ずる。
そして熟練度が3になったことで仲間の行動もキャンセルが出来るようになりその上これまでキャンセル出来なかった遠距離攻撃系の魔法にもキャンセルが出来るようになったのだ。
これでまたキャンセルの幅が拡がったわけだが――ガサゴソという音が耳に届き。
「……これは、どういうことだ?」
「なぜ、月光美人の周りに人がいる?」
「この辺りはワーウルフが多く出るように仕掛けて置いたはずだが――」
そんなことを口にしながら黒いローブを纏った3人組がヒットとメリッサの前に姿を見せたのだった……。
ベースが一緒といってもステータスだけでなくスキルさえも変化するので正直ほぼ別物とみて良いだろう。
今姿を見せたユニーク種のワーウルフも本来の茶色い毛並みのとことなりその毛並みは青い。体格などは変わらないが妙な威圧感がある。
『ウオォオオオォオオォオオオン!』
ワーウルフが吠えた。遠吠えか! とヒットは周囲から別のワーウルフが現れないか警戒する。だが、何かが違った。
「闘吠えです! 自らの戦闘力を上げるユニークのスキルです!」
緊迫した声をメリッサが発した。どうやら遠吠えとはスキルそのものが違うようだ。
ユニークのワーウルフが距離を詰め、その爪を振った。この距離なら躱せると、ヒットは大きく飛び退く。
だが、ワーウルフの振るった爪の一撃は空間を裂くように伸び、ヒットの体を抉った。革の胸当てごと肉が削げる。
「ぐっ!」
「ヒット!」
苦痛に顔が歪んだ。メリッサの悲痛な叫び。
ここにきて、初めてダメージらしいダメージを受けたと言えるか。ステータスを確認すると生命力が70%まで減っていった。一撃で20%も減ったのだ。
「今ポーションを!」
「それなら俺も持ってるから大丈夫だ。それに見た目ほど大したことはない! それよりメリッサは出来るだけ下がって射程ギリギリから援護を頼む」
「は、はい! ならこれを!」
メリッサが折りたたんだ紙をヒットに投げてよこした。キャッチしたヒットが広げて見ると、メリッサが鑑定した結果が書かれていた。
ワーウルフ
ネーム:ワールフ
生命力100%体力100%魔力100%精神力100%
攻B+防C敏B++器C++魔E護D
武術
戦狼術(4)
武技
狼爪牙拳(4)狂狼裂爪(3)月光天破(1)
スキル
闘吠え(2)月下自癒(3)月ノ狂狼(4)
称号
月下の狩人、一匹狼
「マジかよ……」
思わず口に出た。ユニークだけに名前までついているが、それ以上に能力が元のワーウルフと違いすぎた。それぞれのランクがC以上になると+がつくことがあり、当然+がつくと通常の値よりも強く+は最大2つまでつく。
この+も1つつくごとに一段階上だと思った方が良い。つまり攻撃にしても動きの速さにしてもただのワーウルフとは格が違う。青いくせに3倍ぐらい差があるかもしれない。
その上、ワーウルフにあった銀に怯える狼が消え、代わりに一匹狼が増えていた。前者がない為、銀という弱点がなくなり、更に一匹狼の効果で単体の戦闘力は更に向上している。
武技も新しいのが増えている上、自然治癒力の増す月下自癒と月光の下で強化される月ノ狂狼も熟練度が上がっている。眼の前の相手は最悪な敵に近かった。
(だが、やるしかない!)
覚悟を決める他なかった。それにヒットとてワーウルフとの戦いでステータスは変化している。
だが――
「速い!」
ワールフが疾駆した瞬間、ヒットの視界から姿が消えた。いや、目で追うことが出来なかった。それほどまでに速い。
「ヒット後ろ!」
メリッサが叫ぶが反応する暇も与えず、ワールフの爪と牙が高速でヒットの身をズタボロにした。キャンセルすることも叶わずヒットが吹っ飛ぶ。ゴロゴロと転がりながらもなんとかステータスの確認とポーションの取り出しを同時に行った。
攻撃を喰らった後、生命力は20%まで減っていた。ポーションを飲んで70%まで回復するが、次の攻撃を喰らえばまた一気に生命力を持っていかれるだろう。
「くそ!」
急いで立ち上がる。ワールフとの距離が離れたことで多少は視界に収めやすくなった。魔法の袋からナイフや投擲用に取っておいた長剣を取り出し、相手の動線を妨げるように投げる。だがどれもその爪で破壊されていった。とは言え曲投も駆使したことで1つは命中したが、刺さった1本も破壊され、傷はすぐに塞がった。
治癒力が高すぎる。生半可なダメージでは回復されるだけだ。メリッサが弓を引いているのが見えたが、動きが早すぎて捉えきれていない。
唯一の救いは敵の意識がヒットに向いていることだ。下がってもらっておいて良かったようだ。とはいえキャンセルは相手をしっかり捉えられないと意味がない。
だがこの動きを捉えるのは至難の業だ。ワールフが迫り、更に攻撃が続く。少しでもダメージを軽減するため、盾を正面に構え後ろに下がりながらやり過ごすヒットだがふと背中に固いものを感じた。
木の幹だった。後ろに下がりすぎていつの間にか幹を背にしてしまっていたのだ。完全に追い詰められた状態。ワールフの長い口が歪んだ気がした。
トドメと言わんばかりにその爪が振り上げられたが。
「掛かったな、キャンセル!」
「――!?」
ワールフの表情に変化が見られた。ここにきて初めての焦り。ヒットは追いつめられたのではなかった。敢えて幹を背にしたのだ。
ヒットにとって厄介だったのはワールフが素早すぎて視界に捉えきれないことだった。だが、何かを背にした状態なら自然と敵の行動は正面に限定される。そうすれば相手をしっかり視ることが出来て、キャンセルが使える!
一瞬でも動きが止められたならそれで良かった。寧ろそこに全てをそそぐ必要があった。中途半端なダメージでは意味がない。ここで決めねば。
ヒットの剣がワールフの身に斜めの線を刻む。その顔が苦悶に歪んだ。だが、それで終わらない。今の一撃は中断切りによるものだった。
これで更に0.1秒相手の動きが止まる。続けざまに挟双剣を決めた。中断切りの効果でカウンターヒットが確定し思わず相手が仰け反った。
「今だキャンセル!」
だが、重要なのはここからであった。そうカウンターヒットが決まった直後にキャンセルを決める。これは元のゲームでもヒットだけが見つけることが出来た裏技。
カウンターヒットが決まった直後にキャンセルを合わせるとカウンターヒットが決まったという判定もキャンセルされる。
するとどうなるか――ヒットの挟双剣が再び降り注ぎ、カウンターヒットによってワールフが仰け反った。
「キャンセル」
「――!?」
ワールフにとっては意味がわからないことだろう。何せ全く自分のターンが回ってこないのだ。
「挟双剣!」
「――ウォオオォオオオン!」
ワールフの鳴き声が森に響く。悔しさと怒りのこもった叫びだった。
このまま永久にヒットのターンが続くのであれば、これで勝利は確定だ。だが、残念ながらキャンセルも際限なく使えるわけではない。
残りの精神力が限界に近かった。だからコンボの締めにヒットは昇天剣を決めてワールフを満月に向けて打ち上げた。カウンターヒットでより高くその身が浮かび上がる。
「メリッサ!」
そこで満を持してメリッサが空中漂うワールフを狙い撃ち、そこから今度は新しく覚えが連射を決める。
ワールフの目から光が消えたように思えた。これだけ決めればいくら自然治癒力が上がっていても耐えられない。
ワールフがそのまま地面に落下する、そう思えた時。
「ヒット気をつけて! 残り5%」
メリッサが警告するのと、カッ! と目を見開きくるりと回転して地面に着地し、ヒットに向けワールフが飛びかかってきた。
その右手には集束する光。ヒットが反応するより早く、目の前まで迫ったワールフが手に集まった光を地面に叩きつけ、かと思えばヒットの足下から天に向けて光が突き抜け、ヒットの体も大きく浮かび上がった。
「そんな、ヒット! だめぇええええ!」
涙を流しながら叫ぶメリッサ。ヒットのダメージは大きい。今度は逆にヒットの目から光が失われつつあった。
そして、ワールフのターゲットがメリッサに変わった。かなりのダメージを受けていたワールフだが、スキルによる回復で立ち直りつつある。
そして、ワールフが地面を蹴るが。
「きゃ、キャンセル!」
途端にワールフの動きが止まりバランスが崩れた。そうメリッサに意識が向いた為、ヒットにまだ意識が残っていたことに気が付かなかった。
そして落下中のヒットからはワールフの動きがよく見えた。だからキャンセルし――
「メリッサ、う、打て!」
「は、はい!」
風を切り、メリッサの連射で放たれた2本の矢がワールフの急所を捉えた。
『ウォオオォオオォオオォオオン!』
断末魔の悲鳴が夜空にこだました。ヒットが地面に落下するのと、ワールフが地面に倒れたのはほぼ同時だった。
「……ワールフ、生命力0%、勝った、勝ったよヒット!」
メリッサがヒットに駆け寄る。だがヒットは力なく笑うのが精一杯だった。残り生命力が3%しかない。本当にギリギリだった。最後にワールフが見せたのが月光天破だったのだろう。
しかし熟練度1でこの威力だ。あと1つでも上だったら間違いなく死んでいたことだろう。
メリッサが自分のポーションを取り出しヒットの口に含ませてくれた。なんとな飲み込み、すると傷が回復していき、動けるまでに回復した。
改めてポーションというのは凄いなと思う。その後は自分のポーションと精神安定薬を飲み更に回復しておいた。
ネーム:ヒット
ジョブ:キャンセラー
生命力100%体力55%魔力100%精神力80%(+25%)
攻C+防C敏C器C魔E護E
武術
剣術(3)解体術(2)投擲術(2)
武技
挟双剣(3)爆砕剣(3)闘気剣(2)昇天剣(1)中断切り(1)曲投(1)
魔法
スキル
キャンセル(3)設置キャンセル(1)
称号
Bランクの壁
装備品
鋼の剣、革の胸当て、革の円盾、精神力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、魔法の袋(100kg)、着火器、松明×2、寝袋×2
ステータスを確認するとキャンセルの熟練度が3に上がり、派生スキルとして設置キャンセルを覚えていた。
これによりヒットは特定の位置にキャンセルが設置出来るようになった。この設置キャンセルは特定の位置にキャンセルを設置しておくことでそれに触れた物がキャンセルされる。ちなみに設置できる数は熟練度に準ずる。
そして熟練度が3になったことで仲間の行動もキャンセルが出来るようになりその上これまでキャンセル出来なかった遠距離攻撃系の魔法にもキャンセルが出来るようになったのだ。
これでまたキャンセルの幅が拡がったわけだが――ガサゴソという音が耳に届き。
「……これは、どういうことだ?」
「なぜ、月光美人の周りに人がいる?」
「この辺りはワーウルフが多く出るように仕掛けて置いたはずだが――」
そんなことを口にしながら黒いローブを纏った3人組がヒットとメリッサの前に姿を見せたのだった……。
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