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第19話 アルバトロン討伐後

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 アルバトロンを倒したことで、ヒットも安堵したが、途端に頭痛と目眩が激しくなってきたことに気づき、その場で蹲ってしまう。

「ヒット! 大丈夫?」
「あ、あぁ。少しスキルを使いすぎただけ。休めば大丈夫だと思う……」
「ねぇ、つらそうだけど魔力切れかい?」
「いや、精神力の方だ――」

 何せダロガからの連戦だったのでそれほど回復する暇もなかった。今思えばあの鳴き声でも精神力が若干削られていた気がする。

 魔物の鳴き声にはそういったマイナス効果が付随している場合も多いのである。

 改めてステータスを確認するが、精神力は30%を切っていた。

「ねえ、良かったらこれ飲んでおくれよ」
「これは、精神安定薬か?」
「そう。これで楽になると思う」
「助かる――」

 ヒットは好意に甘え、受け取った瓶の蓋を空け中身を一気に飲み干した。すると頭痛がすぅっと引いていき、目眩もしなくなる。

 見ると、精神力は80%近くまで回復していた。これはあるとないとでは大違いだなと考える。購入できるようなら今後は備えて置いたほうがいいかもしれない。

「そういえば、ステータスに変更があったかも……」
「はい、今の戦いで私も色々覚えることが出来ました」
「強敵だったからねぇ」
「そうだな」

 やはり格上の相手だっただけに全員何かしらの変化はあったようだ。

「ダロガ……やっぱり死んじゃったんだねぇ」
「そうだな――」
「……」

 その後は改めて4人はダロガの亡骸をみた。頭がなくなっている姿は凄惨なものがある。全員、首から上にはできるだけ目を向けないようにしていた。

「でも、仕方なかったかもな。ダロガは自業自得だよ。今度は私達だって見捨てようとしたし、あんたにも手を出した……」

 そしてネエとソウダナがヒットとメリッサに体を向け、深々と頭を下げた。

「色々と迷惑を掛けてしまってごめんなさい! 特にメリッサのことは謝って済む話じゃないと思うけど、本当に、悪かったと思っているわ。あの時はどうかしてた……」
「そうだな……俺も、もっと自分の意見を言うべきだった。本当に申し訳ない……」

 2人の謝罪に戸惑うメリッサ。だけどすぐに微笑みを浮かべ彼らに言葉を返した。

「もういいんです。謝罪の言葉を貰えただけで十分。それにそのおかげでヒットとも出会えたわけだし」

 そう、少し照れくさそうに言った。その様子にヒットも頬を掻いた。

「メリッサもこう言っているし、俺も気にしてない。それでいいかな?」
「そう言ってもらえるなら、ねぇ?」
「そうだな……ありがとう」

 それから今度はアルバトロンをどうするかの話になったが、とりあえずはヒットとソウダナで解体してみる。女性陣2人は解体は得意ではないようだが、羽も売れるということだったのでそれぐらいならと羽をむしってくれた。

「討伐証明に頭を持っていけるといいんだけど、ちょっと大きいな……」
「魔法の袋はもってないのか?」
「あるけど50kgまでなんだ」

 この頭は見たところ50kgは軽く超えている。100kgまではないと思うが……。

「そうだな、それならダロガのを使うといい。あいつのは100kgまで入るのだったしな」
「いいのか?」
「せめてものお詫びだ。中に入っているのも、あと必要なのがあったら持っていってくれて構わない」

 折角なのでヒットはダロガの死体から魔法の袋、あとはなにかに使えるかもと長剣をもらうことにした。

 長剣は鋼の剣より拳半個分程度長い。ただ性能は鋼の剣に劣るので投擲用だ。
 更に魔法の袋の中を見ると数本のナイフ、ポーション(50%)、毒消しの薬、昇天剣の指南書が入っていた。お金は全く持ってないが、どうやら薬草採取が上手くいかずカツカツだったらしい。

 この中で注目したのは指南書だ。これはダロガが使っていたフロー効果のある武技だ。当然これはヒットが読み、昇天剣を取得できた。一度読んだ指南書や魔導書はもう必要がない。

 町で売ってしまってもいいだろう。ナイフやポーションはありがたく使わせてもらうことにし、これらはヒットの魔法の袋に移し、ポーションはメリッサに渡した。

 そしてアルバトロンの頭はダロガの死体から手に入れた魔法の袋にしまう。ダロガのプレートは元仲間の2人がギルドに提出するという話になった。その時にダロガの行為も話すらしい。

 ただ、それでもこれまで一緒にやってきた仲間だ。このまま野ざらしにしておくのも忍びないということで穴を掘って簡易的ではあるが埋葬した。

 ネエが聖水をかけ天国に行けるとは思わないけどお達者で、と祈りを捧げた。なかなか正直なものである。ちなみに聖水をかけるのはアンデッド化を避けるためなようだ。

 死体は神官系のジョブの祈り系のスキルか聖水をかけておかないとアンデッドになる恐れがあるらしい。これはゲームにはなかった話だ。

「さて、このアルバトロンの報酬だけど山分けってことでいいかな?」
「え? いやいやとても貰えないよ。迷惑掛けたわけだし、ねぇ?」
「あぁ、そうだな」
「それとこれとは話が別だ。少なくともこのアルバトロンは全員で協力したからこそ倒せたわけだし」

 ヒットはこういうところはしっかりしていた。これはゲーム時代の経験によるところが大きい。
 
 ゲームでも取り分はしっかり分けておかないと、その場ではいいやという話になっても後々トラブルに繋がる事があった。

「それに、お詫びの分は魔法の袋などで十分だ」
「そ、そこまでいうなら。実はお金の面で困ってはいたんだよねぇ」
「そ、そうだな」

 やはり遠慮していただけだったか、と1人うなずくヒット。

 話が纏まったところで町に引き返すことになったが、その途中でメリッサと情報交換しステータスが確認しあったわけだが。

ネーム:ヒット
ジョブ:キャンセラー
生命力90%体力75%魔力100%精神力78%(+25%)
攻D防D敏D器D魔E護E 
武術
剣術(3)解体術(2)投擲術(1)
武技
挟双剣(2)爆砕剣(2)闘気剣(1)昇天剣(1)中断切り(1)
魔法

スキル
キャンセル(2)
称号
Bランクの壁
装備品
鋼の剣、革の胸当て、革の円盾、精神力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、魔法の袋(100kg)ポーション(小)、ナイフ(3)、長剣

ネーム:メリッサ
ジョブ:アナライザー
生命力100%体力70%魔力125%(+25&)精神力85%
攻F防G敏F器C魔D護D
武術
弓術(2)
武技
狙い撃ち(2)
魔法
アクアガン(1)クリーン(1)パワーショット(1)
スキル
鑑定(3)地形把握(1)
称号
鑑定士
装備品
丸木の弓、青葛のローブ、魔力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、ポーション(小)×2

素材(メリッサのを含む)
グラスホッパーの魔石×3、ぱっくんラビットの魔石×5、ホーンラビットの魔石×3、イジワルモグラの魔石×3、アルバトロンの魔石、ホーンラビットの角×3、ホーンラビットの毛皮×3、イジワルモグラの爪×3、アルバトロンの羽、アルバトロンの肉×51kg

 このような結果になった。ヒットは指南書で覚えた昇天剣は勿論、更に剣術の熟練度が上がったことで闘気剣を覚えた。

 更にキャンセルと剣術の合わせ技である武技、中断切りも覚えていた。この武技は攻撃した相手をキャンセル状態にし一瞬だけ動きを止めることが出来る。ならキャンセルを使えばいいという話でもあるが、例えば頑丈というスキル持ちは相手の攻撃を受けても一切怯まなかったりするが、この中断切りであれば当てれば動きが止まる。
 
 そしてこの中断切りの効果が出ている間、次の攻撃が必ずカウンターヒットするという利点もある。尤も熟練度1では効果は0.1秒程度ではあるが、使いようによっては役立つ武技だ。

 そしてメリッサは鑑定の熟練度が上がったことで派生スキルである地形把握を覚えていた。周囲の地形を把握出来るようでこれも今後いろいろな場所に行く機会が増えていくことを考えれば役立つスキルと言えるだろう。
 
 そしてそうこうしている間に一行は再びリバルトの町に戻ってくるのだった。
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