上 下
19 / 68

第19話 アルバトロン討伐後

しおりを挟む
 アルバトロンを倒したことで、ヒットも安堵したが、途端に頭痛と目眩が激しくなってきたことに気づき、その場で蹲ってしまう。

「ヒット! 大丈夫?」
「あ、あぁ。少しスキルを使いすぎただけ。休めば大丈夫だと思う……」
「ねぇ、つらそうだけど魔力切れかい?」
「いや、精神力の方だ――」

 何せダロガからの連戦だったのでそれほど回復する暇もなかった。今思えばあの鳴き声でも精神力が若干削られていた気がする。

 魔物の鳴き声にはそういったマイナス効果が付随している場合も多いのである。

 改めてステータスを確認するが、精神力は30%を切っていた。

「ねえ、良かったらこれ飲んでおくれよ」
「これは、精神安定薬か?」
「そう。これで楽になると思う」
「助かる――」

 ヒットは好意に甘え、受け取った瓶の蓋を空け中身を一気に飲み干した。すると頭痛がすぅっと引いていき、目眩もしなくなる。

 見ると、精神力は80%近くまで回復していた。これはあるとないとでは大違いだなと考える。購入できるようなら今後は備えて置いたほうがいいかもしれない。

「そういえば、ステータスに変更があったかも……」
「はい、今の戦いで私も色々覚えることが出来ました」
「強敵だったからねぇ」
「そうだな」

 やはり格上の相手だっただけに全員何かしらの変化はあったようだ。

「ダロガ……やっぱり死んじゃったんだねぇ」
「そうだな――」
「……」

 その後は改めて4人はダロガの亡骸をみた。頭がなくなっている姿は凄惨なものがある。全員、首から上にはできるだけ目を向けないようにしていた。

「でも、仕方なかったかもな。ダロガは自業自得だよ。今度は私達だって見捨てようとしたし、あんたにも手を出した……」

 そしてネエとソウダナがヒットとメリッサに体を向け、深々と頭を下げた。

「色々と迷惑を掛けてしまってごめんなさい! 特にメリッサのことは謝って済む話じゃないと思うけど、本当に、悪かったと思っているわ。あの時はどうかしてた……」
「そうだな……俺も、もっと自分の意見を言うべきだった。本当に申し訳ない……」

 2人の謝罪に戸惑うメリッサ。だけどすぐに微笑みを浮かべ彼らに言葉を返した。

「もういいんです。謝罪の言葉を貰えただけで十分。それにそのおかげでヒットとも出会えたわけだし」

 そう、少し照れくさそうに言った。その様子にヒットも頬を掻いた。

「メリッサもこう言っているし、俺も気にしてない。それでいいかな?」
「そう言ってもらえるなら、ねぇ?」
「そうだな……ありがとう」

 それから今度はアルバトロンをどうするかの話になったが、とりあえずはヒットとソウダナで解体してみる。女性陣2人は解体は得意ではないようだが、羽も売れるということだったのでそれぐらいならと羽をむしってくれた。

「討伐証明に頭を持っていけるといいんだけど、ちょっと大きいな……」
「魔法の袋はもってないのか?」
「あるけど50kgまでなんだ」

 この頭は見たところ50kgは軽く超えている。100kgまではないと思うが……。

「そうだな、それならダロガのを使うといい。あいつのは100kgまで入るのだったしな」
「いいのか?」
「せめてものお詫びだ。中に入っているのも、あと必要なのがあったら持っていってくれて構わない」

 折角なのでヒットはダロガの死体から魔法の袋、あとはなにかに使えるかもと長剣をもらうことにした。

 長剣は鋼の剣より拳半個分程度長い。ただ性能は鋼の剣に劣るので投擲用だ。
 更に魔法の袋の中を見ると数本のナイフ、ポーション(50%)、毒消しの薬、昇天剣の指南書が入っていた。お金は全く持ってないが、どうやら薬草採取が上手くいかずカツカツだったらしい。

 この中で注目したのは指南書だ。これはダロガが使っていたフロー効果のある武技だ。当然これはヒットが読み、昇天剣を取得できた。一度読んだ指南書や魔導書はもう必要がない。

 町で売ってしまってもいいだろう。ナイフやポーションはありがたく使わせてもらうことにし、これらはヒットの魔法の袋に移し、ポーションはメリッサに渡した。

 そしてアルバトロンの頭はダロガの死体から手に入れた魔法の袋にしまう。ダロガのプレートは元仲間の2人がギルドに提出するという話になった。その時にダロガの行為も話すらしい。

 ただ、それでもこれまで一緒にやってきた仲間だ。このまま野ざらしにしておくのも忍びないということで穴を掘って簡易的ではあるが埋葬した。

 ネエが聖水をかけ天国に行けるとは思わないけどお達者で、と祈りを捧げた。なかなか正直なものである。ちなみに聖水をかけるのはアンデッド化を避けるためなようだ。

 死体は神官系のジョブの祈り系のスキルか聖水をかけておかないとアンデッドになる恐れがあるらしい。これはゲームにはなかった話だ。

「さて、このアルバトロンの報酬だけど山分けってことでいいかな?」
「え? いやいやとても貰えないよ。迷惑掛けたわけだし、ねぇ?」
「あぁ、そうだな」
「それとこれとは話が別だ。少なくともこのアルバトロンは全員で協力したからこそ倒せたわけだし」

 ヒットはこういうところはしっかりしていた。これはゲーム時代の経験によるところが大きい。
 
 ゲームでも取り分はしっかり分けておかないと、その場ではいいやという話になっても後々トラブルに繋がる事があった。

「それに、お詫びの分は魔法の袋などで十分だ」
「そ、そこまでいうなら。実はお金の面で困ってはいたんだよねぇ」
「そ、そうだな」

 やはり遠慮していただけだったか、と1人うなずくヒット。

 話が纏まったところで町に引き返すことになったが、その途中でメリッサと情報交換しステータスが確認しあったわけだが。

ネーム:ヒット
ジョブ:キャンセラー
生命力90%体力75%魔力100%精神力78%(+25%)
攻D防D敏D器D魔E護E 
武術
剣術(3)解体術(2)投擲術(1)
武技
挟双剣(2)爆砕剣(2)闘気剣(1)昇天剣(1)中断切り(1)
魔法

スキル
キャンセル(2)
称号
Bランクの壁
装備品
鋼の剣、革の胸当て、革の円盾、精神力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、魔法の袋(100kg)ポーション(小)、ナイフ(3)、長剣

ネーム:メリッサ
ジョブ:アナライザー
生命力100%体力70%魔力125%(+25&)精神力85%
攻F防G敏F器C魔D護D
武術
弓術(2)
武技
狙い撃ち(2)
魔法
アクアガン(1)クリーン(1)パワーショット(1)
スキル
鑑定(3)地形把握(1)
称号
鑑定士
装備品
丸木の弓、青葛のローブ、魔力強化の指輪(+25%)
道具
魔法の袋(50kg)、ポーション(小)×2

素材(メリッサのを含む)
グラスホッパーの魔石×3、ぱっくんラビットの魔石×5、ホーンラビットの魔石×3、イジワルモグラの魔石×3、アルバトロンの魔石、ホーンラビットの角×3、ホーンラビットの毛皮×3、イジワルモグラの爪×3、アルバトロンの羽、アルバトロンの肉×51kg

 このような結果になった。ヒットは指南書で覚えた昇天剣は勿論、更に剣術の熟練度が上がったことで闘気剣を覚えた。

 更にキャンセルと剣術の合わせ技である武技、中断切りも覚えていた。この武技は攻撃した相手をキャンセル状態にし一瞬だけ動きを止めることが出来る。ならキャンセルを使えばいいという話でもあるが、例えば頑丈というスキル持ちは相手の攻撃を受けても一切怯まなかったりするが、この中断切りであれば当てれば動きが止まる。
 
 そしてこの中断切りの効果が出ている間、次の攻撃が必ずカウンターヒットするという利点もある。尤も熟練度1では効果は0.1秒程度ではあるが、使いようによっては役立つ武技だ。

 そしてメリッサは鑑定の熟練度が上がったことで派生スキルである地形把握を覚えていた。周囲の地形を把握出来るようでこれも今後いろいろな場所に行く機会が増えていくことを考えれば役立つスキルと言えるだろう。
 
 そしてそうこうしている間に一行は再びリバルトの町に戻ってくるのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...