侍と忍者の記憶を持ったまま転生した俺は、居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で無双し異世界で成り上がる!

空地大乃

文字の大きさ
上 下
115 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第114話 サムジャ、邪神の眷属を警戒する

しおりを挟む
 チョロリとした四つ目。そして体中から生えた無数の手と口。蝙蝠のような翼に捻じくれた角――そんなおぞましい造形をした像が突如動き出した。

「あはははは! やったぞ! あんな粗末な命でもたまには役立つものだな!」
 
 恐らくこの現象を引き起こした張本人であろうハデルが狂喜乱舞した。どうやらこのおぞましい化け物を動かすために神官のアグールの心臓を利用したようだな。

 奴は邪神の眷属のダエーワと言っていた。それが本当ならかなり厄介な相手ということになる。

 そしてこうも言っていた、本来は聖女の心臓が必要だと。つまりセイラはこいつを動かすために利用されようとしていたのか。

『グォォオォオ……』
「チッ、なんておぞましいやつだ!」

 マスカが語気を荒げる。般若の仮面で顔は隠れているが、動揺しているのは感じられた。

「さぁダエーワよ! 我ら邪天教に歯向かう愚か者共に天罰を――」

 その時だった――ダエーワから伸びた腕がハデルを捕らえ持ち上げていく。

「へ? だ、ダエーワよ! 私ではない! 奴らを罰して欲しいのです!」
『足りぬぅ――あんなものではとてもォ、足りぬのダァアァア』
「な!? ま、待ってくれ! 私は忠実なる信徒、ウワァアアァアアアァアアアアア!」

 そしてハデルはダエーワによって口に放り込まれ、そのままバリバリと食べられてしまった。咀嚼されている途中でも悲鳴は聞こえてきた。そう簡単に死ねなかったのだろう。

 自業自得だな。しかし、この様子だと、これから一体何をしでかすかわかったものでは――と言った側から腕がパピィに伸びた。

「ワンワン!」

 パピィは影を操作し、腕を切りつけ逃れようとするが、切っても切っても腕はすぐに再生する。

「居合忍法・抜刀影分身!」

 パピィに加勢する。パピィに迫る腕を俺の数珠丸が切り裂いていく。するとダエーワの大量の口から一斉に呻き声が聞こえてきた。

「あぁあぁあああ、なんだァ、ごれわぁああぁああああ、おぞましい! おぞましい力ダァアアァアァアアアア!」

 ダエーワが身を捩って暴れだす。苦しんでいるのか?

「おい! 暴れだしたぞ!」
「あぁ、これは一旦こっから出たほうが良さそうだ」

 伸びた腕がそこらを殴りつけ、口から吐き出された液体が周囲を溶解していく。匂いも酷いな。立ち込める煙も如何にも体に悪そうだ。

 これは瘴気の可能性が高い。俺は数珠丸のおかげで助かってるが、急いで皆に知らせたほうがいいだろう。

「急ぐぞ!」
「あぁ、パピィも!」
「アンッ!」

 そして俺たちは地下から出て教会の入り口まで急いで戻る。そこには何事かと集まった信徒達の姿も在った。良かった全員集まってそうだ。

「シノ! 大丈夫だったの?」
「な、何か凄くおぞましい声が聞こえてきたような?」

 ルンとセイラが不安そうに声を掛けてきた。

「そうだ。細かいことを話してる時間はない。お前たちも急いでこっから出ろ。とんでもないのが暴れだすぞ!」
「と、とんでもないのだって?」
「とにかく出ましょう!」

 そして全員で教会堂から出ると、天井を突き破り巨大化したダエーワが姿を見せた。

『足りぬぅうぅぅうう! もっと命をぉぉおぉぉおぉォォオオォオォオ!』

 叫んでるな。やれやれ、どうやらアグールとハデルじゃ足りなかったようだな。まぁあの二人じゃ下手したら腹を壊してもおかしくなさそうだが。

「うそ、ちょっと見てみたんだけど……」

 ルンが目を丸くさせていた。俺はルンが何を見たか聞いてみる。

「鑑定か? 見れたのかルン?」
「えっと、スキルはなんか理解できない文字の羅列だったんだけど、レベルがね、66って……」

 おいおい、レベル66とか流石に無理が過ぎるぞ。あのダクネイルでさえレベル42だ。それでも死にそうな目にあったのに。

「でもね、その横に25って出てるの。なんだろうこれ?」

 ルンが困惑した顔を見せる。レベルが66で、その横に25……あ!

「そうか! わかったぞ! あのダエーワの本来のレベルは66なのは間違いないのだろうが召喚が完全じゃないんだ!」

 ハデルはあの像にダエーワの魂か精神か、とにかく降ろすことで召喚を試みたのだろう。しかし、アグールの生贄では不完全にしかならず、ハデルを食べても完全には程遠いんだ。

「なるほど。レベル25なら何とかなりそうだな」
「あぁ、ただセイラだけはなんとしても奴の魔の手から守らないといけないな」
「え? 私ですか?」
「あぁ……ショックかもしれないがハデルは本来セイラを生贄にあれを召喚しようとしていたんだ。だが、それが間に合わずアグールで試してしまった。その結果があれだ。まぁ召喚したハデルも食われたけどな」
「そ、そんな――」

 セイラがわなわなと肩を揺らした。やっぱりショックは大きいか。

「とにかく、もしセイラが取り込まれると完全体になってしまうかもしれない。パピィ頼むセイラを守ってやってくれ」
「ワンワン!」

 パピィが任せてと言わんばかりに吠えた。さて、問題はアレをどう倒すかだな――
しおりを挟む
『砂魔法の建国者~砂属性なんて使えないと砂漠に追放されたから砂の城でのんびりスローライフ満喫してた筈なのにいつの間にか巨大国家に成長してた!~』という新作をはじめました。こちらも興味が湧きましたら宜しくお願い致しますm(__)m
感想 34

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...