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第二章 サムジャともふもふ編

第112話 サムジャ、調査許可をもらう

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 どうやら領主様が目覚めたのを、どこかの誰かが知ったのか。それともやぶれかぶれで命を狙ってきたのか……
 
 どっちかはわからないが、レッサーデーモンが襲撃してきたのは事実だ。

「レッサーデーモン! レベルは8だよ!」 

 ルンが教えてくれた。レベル8か。マスカは勿論だが、今の俺ならレベルも負けてない。

「ディアラーゼ!」

 するとセイラがレッサーデーモンに向けて魔法を行使した。

「え? それって回復魔法じゃ!?」
「問題ない。悪魔は回復魔法を受け付けんからな」

 驚くルンにマスカが言った。そうだった。悪魔系が相手の場合、神官が使うような回復魔法は逆にダメージに繋がるんだったな。魔法を受けたレッサーデーモンが苦しそうにしている。

「チャンスね!」

 ルンが魔法で出来た弓を使ってレッサーデーモンに攻撃する。

「あの悪魔は耐火持ちだから火は効きづらいわ!」
「助かる」

 ルンが教えてくれた。それなら火の忍法はなしか。改めて見たがレッサーデーモンは全部で五体いる。

 その内の一体が、穴から侵入し、俺に向けて口から炎を吐いてきた。

「シノ!」
「コレデ一匹、ムッ!」
「変わり身だ」

 残った丸太に驚いたようだが、これは俺にとって定番の手だ。

「居合忍法、を使うまでもないな」
「ガハッ!?」

 居合の一撃でレッサーデーモンの胴体がずれていく。上半身が床に落ち一体片付ける事ができた。

「仮面女、殺ス!」
「笑止!」
 
 爪に炎を纏わせレッサーデーモンがマスカを狙うも抜いた剣であっさり切り裂かれた。マスカは俺より強い。レッサーデーモンじゃ相手にならないだろう。

「パピィ、そっちの動きを鈍くしたよ!」
「ワンワン!」

 パピィがレッサーデーモンの一匹に噛み付いた。レッサーデーモンは確かに動きが遅くなっていたが、どうやらルンが鈍重の刻印を付与しておいたようだ。
 
 そしてパピィの天地落としからの旋風爪牙で絶命。ルンの矢でもセイラの魔法でダメージを受けていたレッサーデーモンが倒された。

「馬鹿ナ、我ラ悪魔ガ、コウモ簡単二――」
「少々舐めすぎていたようだな。居合忍法・抜刀鎌鼬!」
「ギャッ!」

 研ぎ澄まされた風の一撃で残ったレッサーデーモンも一刀両断にされた。

「これでレッサーデーモンは排除できたな」
「ふん。これをやったのは恐らく教会のハデルとかいう奴だろう」
「十中八九そうだろうな。パピィによると邪教の信徒で、何かしらの力を持ってるようだ。闇の天職を持ってる可能性が高いと思う」
「許せない! もう乗り込もうよ!」
「私も、大神官にしっかり話を聞きたいです!」

 セイラとルンが眉を怒らせる。ここまでの出来事で相当鬱憤も溜まっているのだろうな。

「領主様。病み上がりのところ申し訳ないんだが」
「わかっている。立ち入り調査の許可だな。誰か紙とペンを――」
「そうなると思い、ご用意しておきました」

 スッとメイシルが羽ペンとインク、そして羊皮紙を取り出した。流石優秀なメイドだけあって仕事が早いな。

 領主様はそれを受け取るとその場でスラスラと記入しサインもしてくれた。

「緊急事態なので簡単で悪いが、私のサインもしてある。十分効果は認められるはずだ」
「ありがとう。これでハデルを追い詰められる」
「ならばすぐに行くぞ。邪天教など百億害あって一利なしだ!」
「領主様これで失礼致します。お体にはお気をつけください!」
「あぁ、ありがとう。聖女様のこともしっかり覚えさせて頂くよ」
「皆様のご武運をお祈りしてます」
「どうか、この町をお守り下さい」

 俺たちは領主達三人にうなずき返し、そして教会に向かった。

「な、何だお前たちは!」
「て、聖女様までどうして!」

 教会の前には神官たちが立っていて、俺達に向けて厳しい視線を投げかけてきた。だがセイラの存在に気が付き戸惑いの色を浮かべる。

「どきなさい。大神官であるハデルに聞きたいことがあるのです!」

 すると神官達に強い口調でセイラが命じた。セイラも言うべき時はしっかり言う芯の強い女の子だ。怒らせたら怖いタイプでもあるかもしれない。

「い、いくら聖女様の頼みでも駄目です! 今ここでは大事な儀式が行われており誰も通すなと――」
 
 だが、神官たちはどけようとしない。ならばと俺は領主様から貰った立ち入り調査の許可証を見せてやる。

「領主のカイエル伯爵から貰った許可証だ」
「え? こ、これは領主様のサイン!」
「そうよ。これでもここを通さないと言うつもり?」
「領主様の許可でも通さないとお前らが意地を張るならそれでも構わんが、後からそれ相応の処罰が下ることも覚悟するのだな」
「ワンワン! グルルウウゥウウ」

 マスカが腕を組み言い放つ。パピィも唸り声を上げて神官を威嚇した。
 すると神官二人が小窓を開けて奥にいると思われる仲間に声を掛けた。

「お、おい大変だ!」
「何? ほ、本当かよ……」
「流石に領主様に逆らうのは不味いわ!」

 何やら話し合っているようだが、
「……ど、どうぞどうぞ!」
「好きにお通り下さい!」
と直後前を開けて、更に扉まで開けて招き入れてくれる。

 ふむ、流石に領主に逆らう気は起きなかったか。

 話が早くて助かる。俺たちは教会堂に足を踏み入れるが。

「何をしている! ここは誰一人通すなとハデル大神官が言っておられただろう!」

 声が響き見てみると困惑した顔でアグールが階段を降りてきた――
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