上 下
111 / 125
第二章 サムジャともふもふ編

第110話 サムジャ、試練を乗り越える

しおりを挟む
「まさか、本当に試練を突破してしまうとはな」
 
 ダンジョンをクリアーし、戻った俺を見て恒次は随分と驚いているようだった。

 確かに、ダンジョンの難易度は高かったと言えるか。何度か死にそうな目にあったし。魂なのに妙な話だが。

「これで合格なのか?」
「あぁ、それだけの力があるなら、我の力も引き出せることだろう。しっかり活用してやってくれ」
「わかった」
「では、そろそろ時間だな。さらばだ」

 うん? これでいいのか? と、思ったその時、俺の意識が覚醒されていった。

「シノ、ちょっと大丈夫?」

 目覚めると目の前にルンの顔があった。

「クゥ~ン……」

 パピィも俺の足元にすり寄って来ている。どうやら一瞬とは言え意識を失っていたからか心配させてしまったようだな。

「ちょっと刀と話していてな」
「刀?」
「ところで俺、どのぐらいおかしかった?」
「十秒ぐらいかと思いますが、急に頭を垂れて反応がなくなったのです」
「心配しました。治療魔法をかけようかと思ったぐらいで」

 どうやらセイラにも心配をかけたようだな。

 さて、意識が戻ったからわかる。妙に力が上がった気がするんだ。だからステータスを確認してみた。




ステータス
名前:シノ・ビローニン
レベル:12
天職:サムジャ
スキル
○サムライ補助・強化系
早熟晩成、刀縛り、活力増強、侍魂
○サムライ居合・抜刀系
居合、居合忍法、居合省略、抜刀増強、抜刀追忍、抜刀燕返し、抜刀三刃(New)、抜刀フェイント、円殺陣
○牛若丸の記憶(New)
虚影
○ニンジャ補助・強化系
忍体術、暗視、薬学の知識、手裏剣強化、チャクラ強化、チャクラ操作、苦無強化、気配遮断、気配察知、二重忍法(New)
○忍法・土系統
土錬金の術、土返しの術、土纏の術、堅牢石の術、鉄壁の術(New)、泥沼の術(New)
○忍法・風系統
鎌鼬の術、草刈の術、旋風の術、凩の術、風牙の術、烈風の術、竜巻の術(New)、風舞の術(New)
○忍法・火系統
火吹の術、烈火弾の術、爆撃の術、爆炎陣の術、烈火連弾の術、豪火弾の術(New)、火砕の術(New)
○忍法・水系統
浄水の術、水霧の術、水手裏剣の術、水柱の術、水脈探知の術(New)、降雨の術(New)
○忍法・氷系統
氷結弾の術、氷床の術、氷柱の術(New)、氷雨の術(New)
○忍法・雷系統
落雷の術、雷鏈の術、雷咆の術、雷獣の術(New)
○忍法・影系統
影走りの術、影縫いの術、影風呂敷の術、影鎖の術
○忍法・特殊系統
口寄せの術、変わり身の術、変化の術
加藤段蔵の記憶
幻魔眼・刹那の術(New)
装備
・数珠丸恒次
解放スキル
抜刀病魔断絶
・夜陰の黒衣


 ……まさかここまでとはな。レベルが6から12に上がった。おかげでスキルもかなり増えている。

 後で考察する必要はあるが、何よりこの中で一番重要なのは数珠丸恒次についた解放スキルというものだろう。

 とにかく隠すことでもないので俺は、今自分に起きたことを簡単に皆に説明した。

「魂だけ別の場所に……そんなことがあるのですね」
「ワンワン!」
「本当シノには驚かされるわね」

 俺の説明を聞いて疑うものはいなかったようで、素直に受け入れてくれた。

 そしてミレイユとメイシルは恐らく一番大事なことを俺に聞いてくる。

「それで、お父様の呪いは……」
「解けそうでしょうか?」

 やはり、そこが重要だからな。だけど、出来ると断言は出来ない。ただ、その為のスキルは手に入れた。

「試練を乗り越えてスキルは手に入った。これを試して見ようと思う」
「シノさん、はい! きっとシノさんなら出来ると思います!」
「ワンワン!」
「頑張ってシノ!」

 セイラも俺に任せるといった目で見てくれていた。ルンもパピィも応援してくれている。

 ただ、一応娘であるミレイユには断っておくことがある。

「呪いを断つにあたって、俺は領主様に向けて刀を抜く必要がある。直接当てるつもりは勿論ないが、呪いを切るのがこのスキルだからな」

 そう仮にも領主様に向けて刀を振るというのだから、勝手にやるわけにはいかない。

「勿論です。私が父に代わって許可いたします」
「旦那さまであれば、意識があったなら迷わずお願いしたと思います」
「わかった」

 許可も下りたので、眠り続け時折うなされているカイエル伯爵を前に居合の構えをとった。

 一旦瞑目し、意識を集中させる。呪いを感じ取りそれを断たなければいけない。

 見ている皆の緊張感が伝わってくる。だけど、それもすぐに消え去り、呪いにのみ意識がいった。

 目を瞑っていても今ならわかる。領主に纏わりついた呪いの感触が。それを俺が、断ち切る!

「――抜刀病魔断絶!」

 抜いたその瞬間――呪いのうめき声のような物が耳に届いた。そして切れたという手応えも。

 瞳を開ける。皆が固唾を呑んで見守っていた。

「……呪いは断ち切った。これで直に目が覚めると思うんだが」

 呪いは感じられなくなっていた。そして俺がそう答えると、見ていた皆が手を取り合って喜んでくれた。
 
 ふぅ、後は領主様が目覚めてくれるのを待つのみか――
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...