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第二章 サムジャともふもふ編

第108話 サムジャと試練のダンジョン 其の六

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 牛若丸の記憶から手に入ったスキルは存外使える代物だった。これまで防御は忍法で壁を作るか、変わり身で凌ぐかだったが、それに虚影が加わったことで、防御の幅が広がった。

 一瞬攻撃がすり抜けるだけだが、魂力もそこまで消費しないしな。俺はタイミングを合わせるのは得意だから有効に扱える。

 おかげでここから先も随分と楽になった。もっとも楽と言っても余裕ってことは全くなかったがな。
 
 さて、ある程度進んだところで出てきたのは見栄えの良い骸骨だったわけだが。

「我はエルダーリッチなり!」
 
 うん。知性あるアンデッドなようだが、エルダーリッチか。死霊を操る事のできる骸骨で、魑魅魍魎が俺に向けて一斉に襲いかかってきた。

「居合忍法・抜刀雷鏈!」

 雷が連鎖し呼び出された魑魅魍魎を消し去っていく。エルダーリッチが随分と悔しがっていた。

「ならばこれだ! ボーンランチャー!」

 無数の骨の槍がエルダーリッチから発射され、襲い掛かってくる。それらを避けていくが何発かは躱しきれない位置にあった、が。

「虚影!」

 骨の槍が俺の体をすり抜けていった。何ぃ! と驚いたエルダーリッチの顎骨が外れそうになっていた。

 その隙に一気に距離を詰める。

「居合忍法・抜刀影分身!」
「ぐぉおぉおぉおぉお!」

 斬撃の雨を受けてエルダーリッチが消え去った。

 ふぅ、これでどれぐらいまで来たのか。残り時間は既に四十を切っていた。

 ここまでにそれなりに宝も手に入った。強化魔法薬なんかもあったが、実は今もそれを使用してエルダーリッチを倒している。

 攻略中、全くレベルが上がらないのが厄介だ。アンデッド系はレベルが上がらない?

 いや、そんな話は聞いたこと無いな。そもそも最初のダンジョンで倒したのがアンデッドだし。

 なにか特殊な事情があるのかもな。さて、宝箱を見つけた。これも影分身で開いてもらったがすると今度は如何にもニンジャと言った見た目の人物が姿を見せた。

『俺は加藤段蔵の記憶だ』
「またか……戦って実力を示せというのか?」
『戦う必要はない』

 すると加藤段蔵が四人に増えた。

『この中から本物の俺を見つけろ。ただし、チャンスは一度だ』

 戦わなくてもいいのか。どうやら知恵比べ的な試練なようだ。試練で来てるのに更に試練とはな。

『ちなみにこの四人で本当のことを言っているのは一人だ』
『それがヒントになる』
『では先ず俺から』
「本物はあんただ」
『は?』

 なにか色々言っていたが、すぐにわかったので答えた。

『……何故そう思う?』
「いや、魂を感じたのあんただけだし……」

 この四人で俺が指摘した奴だけから魂の力を感じた。ヒントを聞くまでもない。

『……見事だ』

 そして加藤段蔵は消え、スキルに加藤段蔵の記憶が追加された。更に手に入ったスキルは【幻魔眼・刹那の術】だった。

 どうやらこれは目を見た相手に幻覚を見せる忍法なようだ。俺が見た相手ではないが、目を見た相手は一瞬ではあるが確実に幻覚を見るらしい。

 ただ、この忍法はよく出るアンデッド相手だと効果が薄いようだ。折角覚えたのにどうも実感がわかないな。

『カカッ、此処まで来るとはな。だがここまでだ』
「おいおいこいつかよ」

 そして次の場所に現れたのはドラウグルだった。まさかここで相まみえるとはな。

 そしてドラウグル腐肉を膨張させて攻めてきた。
 こいつ、前に戦ったのよりは強いな。パワーもスピードも段違いだ。

『たかがレベル6でレベル20の俺様に勝てると思ったら大間違いだ!』

 こいつは鑑定が使えたんだったな。こっちのレベルはそれでバレたようだが、相手は自分のレベルもあっさり明かした。

 レベル20か……確かに手強いな。前戦った奴の四倍だ。

 だけど一度は戦った相手だ。それに負けるわけにもいかない。

「ちょこまかと!」
「居合忍法・抜刀幻魔眼・刹那の術!」

 ここで試しに新しく覚えた忍法を使ってみた。ドラウグルは知識があるから通じるかも知れない。俺と目があったその瞬間、ドラウグルの動きが止まった。幻覚に見舞われたのだろうが、その無防備なドラウグルに刃が食い込んだ。

「グヌゥゥウゥウウ!」

 苦しそうにドラウグルが呻く。しかし、これは思ったより使えるかも知れないな。

「居合忍法・抜刀爆撃燕返し!」

 そして怯んだドラウグルに更に追撃。肉体が二回弾けそのまま消え去った。
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