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第二章 サムジャともふもふ編
第96話 サムジャ、無事朝を迎える
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「は、はわわ! はわわ、ご、ごめんなさいぃいいい!」
朝になり、部屋に戻ると一人の美少女が下着姿で飛び出してきた上、俺に当たってそのまますっ転んだ。
しかもどういうことか、謝りながら立ち上がった拍子に足を捻り、そのまま足が縺れて壁に鼻を激突させ、身悶えたかと思えばまたまた転びぐるんっと一回転した後で大股開きであられもない格好を晒していた。
マスカだった――
「ちょ、マスカなんて格好!」
「し、シノさん見ないでください!」
「あ、あぁ……」
セイラに怒鳴られすぐに背中を向けた。
「クゥ~ン」
とことことパピィがやってきて俺の脚にすり寄ってきた。無事パピィも回復できたようで良かった。
パピィはまだ子犬だ。忍犬として優れているからついそんな基本的なことを忘れてしまう。今回パピィの意思を尊重させたが、やはり危険に見舞われた後は人恋しくなるのかも知れない。
だから出発前にたっぷりモフっておこう。
「アンッ! アンッ!」
尻尾を左右に振りパピィも嬉しそうで良かった。
「もう大丈夫よシノ」
ルンの声がして振り返ると今度はマスカが背中を向けていた。
「……どうやら色々世話になったようだな。そのことは感謝している」
ふむ。いつものマスカに戻ったか。しかしさっきのは何だったのか?
「……それと、さっきのは忘れてくれ」
「ん? さっきの?」
「だ、だからさっきのあれは! 本来の私ではないのだ! あれは違うのだぁああぁああ!」
膝から崩れ落ち、さめざめと泣き出してしまった。
「何だ何だ?」
「いいからシノは忘れて上げればいいのよ!」
「そういうことに触れないであげるのも優しさだと思うのです!」
「さっぱりわからん」
「クゥ~ン……」
「皆様。おはようございま――ごめんなさい」
メイシルも部屋から出てきて、今の状態を認めた後、黙ってパタンっと扉を締めてしまった。
「何か誤解されてないか?」
「待ってくださいメイシルさん! 違うのです!」
「修羅場とかじゃないから~」
ルンとセイラが慌ててメイシルに説明しにいった。やれやれ――
「端的に言えば、私は仮面をしていないとほんのちょっとだけ動揺してしまうのだ」
朝食を食べる時にマスカがそう説明してくれた。
要約すれば仮面を外している状態は天然具合がより一層増すということなのだろう。普段からわりとドジっ子なのに大変なことだ。
「よくわからねぇけどこれでも食って元気だしてくれ。昨晩シノが仕留めたワイバーン肉を使ったサンドイッチだ。豪快にガブッといってくんな」
宿の主人は早速約束を果たしてくれたようだ。朝からワイバーンとは奮発したものだな。
「て、ちょ! シノ! ワイバーンって何!?」
「あぁ。昨日トイレに目を覚ましたら外にワイバーンがいて驚いたよ。退治したけど」
「貴様! 外にワイバーンがいたら大騒ぎだろう! 何故私を起こさない!」
「流石に病み上がりで起こすわけにはいかんだろう」
「私なら戦えたのに!」
「悪いな。でも護衛の件もあるから部屋にはいてほしかったんだ」
まぁ実際には俺が勝手に気を遣ったんだが。
「クゥ~ン」
「大丈夫だ。大したことなかったしな。それよりワイバーンの肉美味しいぞ」
パピィに近づけるとくんくんっと嗅いでから俺の手からパクリと食べた。
「アンアン!」
「気に入ったようだな」
「はぁ、もういいわ。パピィ見てると可愛すぎてどうでもよくなったもの。でも、今度から一人でばかり動こうとしないで、その、仲間も頼ってね」
「怪我をしたら私も魔法で治療しますので!」
「あぁ。ありがとう」
しかしワイバーンの肉は美味いな。
「あの、もしかしてワイバーンというのは私のせいでしょうか?」
するとメイシルが問いかけてきた。眉を落とし申し訳無さそうでもある。
「だれかのせいってことはないさ。敢えて言えば狙ってくるやつが悪い」
「そのとおりだ。もぐもぐ、そもそもわれわれは、もぐ、護衛の依頼を受けて動いている。ワイバーンの件も、もぐ、依頼の内だ。必要な報酬はしっかり、もぐ、受け取るのだから、もぐ、気に病む必要もな、ブフォ!?」
「ちょ、大丈夫? 食べながら喋るからだってば」
「仮面をつけながらも止めたほうがいいような……」
仮面を外さず食べながらしゃべるという行為をしたものだから気管に入ったようだ。やっぱり元からちょっとドジだな。
「ところで朝食を食べたら早速行くのか?」
「はい。この証拠があればダミールの悪事も暴くことが可能でしょう。更にハデルの関与もはっきりするはずです」
そういうことだな。
「後はセイラの魔法で呪いが解けるかか」
「やれる限りのことはやるつもりです!」
セイラも張り切ってくれている。そして俺は数珠丸を見た。
そう言えばハデルはこの刀をやたらと気にしていて最終的には俺から奪うよう邪教の連中を仕向けてきた。
それは何故か、そう考えた時、領主に掛けられた呪いと関係あるのかも知れないと思い至った。
ただ、今の所これは持ち主の病や毒を受け付けなくするだけの筈だが――
うむ、とにかく今はセイラがいる。まずは彼女を領主の下へ向かわせるのが先決だろうな。
「よし、腹ごしらえも終わったしいくとするか」
「宜しくお願い致します」
「頑張れよ。陰ながら応援しているからな」
「これであのハデルをぎゃふんっと言わせることが出来るわね!」
「ワンッ!」
「よし、ならば急ぐぞ! こっちだ!」
「マスカさんこっちです!」
というわけで明後日の方に向かって走り出したマスカを是正しつつ、俺達は領主の屋敷に向かった――
朝になり、部屋に戻ると一人の美少女が下着姿で飛び出してきた上、俺に当たってそのまますっ転んだ。
しかもどういうことか、謝りながら立ち上がった拍子に足を捻り、そのまま足が縺れて壁に鼻を激突させ、身悶えたかと思えばまたまた転びぐるんっと一回転した後で大股開きであられもない格好を晒していた。
マスカだった――
「ちょ、マスカなんて格好!」
「し、シノさん見ないでください!」
「あ、あぁ……」
セイラに怒鳴られすぐに背中を向けた。
「クゥ~ン」
とことことパピィがやってきて俺の脚にすり寄ってきた。無事パピィも回復できたようで良かった。
パピィはまだ子犬だ。忍犬として優れているからついそんな基本的なことを忘れてしまう。今回パピィの意思を尊重させたが、やはり危険に見舞われた後は人恋しくなるのかも知れない。
だから出発前にたっぷりモフっておこう。
「アンッ! アンッ!」
尻尾を左右に振りパピィも嬉しそうで良かった。
「もう大丈夫よシノ」
ルンの声がして振り返ると今度はマスカが背中を向けていた。
「……どうやら色々世話になったようだな。そのことは感謝している」
ふむ。いつものマスカに戻ったか。しかしさっきのは何だったのか?
「……それと、さっきのは忘れてくれ」
「ん? さっきの?」
「だ、だからさっきのあれは! 本来の私ではないのだ! あれは違うのだぁああぁああ!」
膝から崩れ落ち、さめざめと泣き出してしまった。
「何だ何だ?」
「いいからシノは忘れて上げればいいのよ!」
「そういうことに触れないであげるのも優しさだと思うのです!」
「さっぱりわからん」
「クゥ~ン……」
「皆様。おはようございま――ごめんなさい」
メイシルも部屋から出てきて、今の状態を認めた後、黙ってパタンっと扉を締めてしまった。
「何か誤解されてないか?」
「待ってくださいメイシルさん! 違うのです!」
「修羅場とかじゃないから~」
ルンとセイラが慌ててメイシルに説明しにいった。やれやれ――
「端的に言えば、私は仮面をしていないとほんのちょっとだけ動揺してしまうのだ」
朝食を食べる時にマスカがそう説明してくれた。
要約すれば仮面を外している状態は天然具合がより一層増すということなのだろう。普段からわりとドジっ子なのに大変なことだ。
「よくわからねぇけどこれでも食って元気だしてくれ。昨晩シノが仕留めたワイバーン肉を使ったサンドイッチだ。豪快にガブッといってくんな」
宿の主人は早速約束を果たしてくれたようだ。朝からワイバーンとは奮発したものだな。
「て、ちょ! シノ! ワイバーンって何!?」
「あぁ。昨日トイレに目を覚ましたら外にワイバーンがいて驚いたよ。退治したけど」
「貴様! 外にワイバーンがいたら大騒ぎだろう! 何故私を起こさない!」
「流石に病み上がりで起こすわけにはいかんだろう」
「私なら戦えたのに!」
「悪いな。でも護衛の件もあるから部屋にはいてほしかったんだ」
まぁ実際には俺が勝手に気を遣ったんだが。
「クゥ~ン」
「大丈夫だ。大したことなかったしな。それよりワイバーンの肉美味しいぞ」
パピィに近づけるとくんくんっと嗅いでから俺の手からパクリと食べた。
「アンアン!」
「気に入ったようだな」
「はぁ、もういいわ。パピィ見てると可愛すぎてどうでもよくなったもの。でも、今度から一人でばかり動こうとしないで、その、仲間も頼ってね」
「怪我をしたら私も魔法で治療しますので!」
「あぁ。ありがとう」
しかしワイバーンの肉は美味いな。
「あの、もしかしてワイバーンというのは私のせいでしょうか?」
するとメイシルが問いかけてきた。眉を落とし申し訳無さそうでもある。
「だれかのせいってことはないさ。敢えて言えば狙ってくるやつが悪い」
「そのとおりだ。もぐもぐ、そもそもわれわれは、もぐ、護衛の依頼を受けて動いている。ワイバーンの件も、もぐ、依頼の内だ。必要な報酬はしっかり、もぐ、受け取るのだから、もぐ、気に病む必要もな、ブフォ!?」
「ちょ、大丈夫? 食べながら喋るからだってば」
「仮面をつけながらも止めたほうがいいような……」
仮面を外さず食べながらしゃべるという行為をしたものだから気管に入ったようだ。やっぱり元からちょっとドジだな。
「ところで朝食を食べたら早速行くのか?」
「はい。この証拠があればダミールの悪事も暴くことが可能でしょう。更にハデルの関与もはっきりするはずです」
そういうことだな。
「後はセイラの魔法で呪いが解けるかか」
「やれる限りのことはやるつもりです!」
セイラも張り切ってくれている。そして俺は数珠丸を見た。
そう言えばハデルはこの刀をやたらと気にしていて最終的には俺から奪うよう邪教の連中を仕向けてきた。
それは何故か、そう考えた時、領主に掛けられた呪いと関係あるのかも知れないと思い至った。
ただ、今の所これは持ち主の病や毒を受け付けなくするだけの筈だが――
うむ、とにかく今はセイラがいる。まずは彼女を領主の下へ向かわせるのが先決だろうな。
「よし、腹ごしらえも終わったしいくとするか」
「宜しくお願い致します」
「頑張れよ。陰ながら応援しているからな」
「これであのハデルをぎゃふんっと言わせることが出来るわね!」
「ワンッ!」
「よし、ならば急ぐぞ! こっちだ!」
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