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第二章 サムジャともふもふ編
第76話 サムジャと邪天教団
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「あらあら、やっぱりいたのねぇ千面のマスカ。うふふ、情報通りかしら」
「おい、俺達の目的はメイシルってメイドの始末だぞ?」
「……命知らずな質問は止めておけ。ダクネイル様は本来はこんなところにいる御方ではない。それより――そこにいるのもリストにあるサムジャの男な可能性がある」
近づいてきたのは三人。二人は黒ローブに仮面を顔に装着している。
だがもう一人は姿を隠すつもりはまるでないのか随分と堂々としたものだった。
しかし、凄い際どい格好だな。闇に溶け込むようなドレス姿だが、胸は少しずれたら全て出てしまうんじゃないかって覆えるようなエグいカットが入ったものだ。
形が良いせいか闇夜に満月が二つぽっかりと浮かんでいるような錯覚に陥る。
「……シノ、どこ見ているのよ?」
「うん? あぁ、随分と大胆な格好だなと思って」
「う、うぅ。何かそこまではっきり言われると、逆に何も言えないわ!」
「何がだ?」
ルンが何を気にしたのかわからないが、しかし、あの格好は普通に考えれば戦闘に不向きだ。防御なんてまるで考えていなさそうですらある。
「あの女――暗黒姫ダクネイルか!」
すると千面のマスカが緊迫感のこもった声を上げた。般若の面の為か、表情は見えないが、知っている相手なのは確かだろう。
「一体誰なんだ?」
「――Sランクの賞金首、しかも賞金首の四天王と呼ばれる中の一人だ。お前らが相手できる相手じゃないとだけ言っておく」
Sランク賞金首? しかも四天王――肩書きからしてヤバそうな匂いがぷんぷんするな。
「う、うそ……」
そしてルンからも震えた声が聞こえてきた。確かルンは鑑定のルーンを使用しているはずだな。
「見えたのかルン?」
「仮面で顔を隠している二人は恐らく妨害しているわ。見えない。でも、マスカの話していたあいつは別――暗黒姫ダクネイル、天職は暗黒美将、レベルは42……」
……42か。マスカが言っていたが予想以上だな。今の俺のレベルは4だ。その差は絶望的と言っていい。
ルンにしても今のレベルは3だ。こういうのは合計しても仕方ないが、俺たち二人分を足しても7だ。パピィをいれても10でお話にならない。
「メイシルそれにあんた。逃げられそうか?」
「後ろに道がある。そっちから逃げれば――」
「ワンワン!」
筆跡鑑定師が逃げようとした方向に目を向けるが、パピィが警告するように吠えた。
「参ったな。どうやらそっちは手を打たれているようだ」
「嘘、いつの間に……」
三人以外に誰かいるのか? パピィに目で確認するが、どうやら特殊な事情がありそうだ。
仲間というよりはスキルが関係しているのかも知れない。
「チッ、逃走経路の確保が出来なかったか。失敗したな。メイシルと鑑定師はそっちの壁際に寄って大人しくしていてくれ」
マスカの指示に二人はおとなしく従った。二人に戦闘がこなせるとは思えない。俺たちはここでこいつらを打倒するか追い払う必要がある。
「一応聞くがマスカ、あんたのレベルは?」
「私は33だ。だがお前たちは言わなくていい。下手に知られても残りの二人に有利になるだけだ」
レベル33、強いな。Aランクとは言え俺の過去の記憶で見てもかなり高い。だが、それでもダクネイルと10以上の差がある。
「ダクネイルは私がなんとかする。後の二人はお前たちで意地でも何とかしろ」
「頑張るけど、もしそいつらのレベルもそれぐらいあったら……」
「それはない。あの女はイレギュラー中のイレギュラーだと思えばいい」
「うふふ、いい分析力ね。そうね、こっちの二人で言えば右隣のヴェムのレベルは8、逆側のマジルのレベルは7よ」
「な、テメェ何勝手に! ふざけるなよ!」
「やめろヴェム。気分屋としても有名なんだ。下手に刺激したなら仲間でも殺しかねない」
「チッ、それで、ダクネイル様はあのマスカを何とかしてくれるんだろうな?」
ヴェムというのもマジルも声からして男だろう。そいつがダクネイルに確認した。
俺たちがダクネイルを警戒しているように向こうからすればレベル33のマスカが脅威なのだろう。
この戦いは、ダクネイルかマスカ、どっちかが倒れるかによって大きく命運が変わるということだ。
「そうね。もともとこっちの賞金首が私の目的だもの」
そう言ってダクネイルが唇をぺろりと舐める。
「な、何言ってるのよアイツ。賞金首はあいつでしょ?」
「奴の言っているのは恐らく裏の賞金首だ。犯罪者側からみたって意味のな」
つまりマスカとダクネイル、互いに互いが賞金首になるってわけか。ややこしいことで。
「うふふ、早速狩りを始めようかしら――」
「そう簡単にやらせはしない!」
ダクネイルとマスカが同時に飛び出した。マスカは剣を抜いたが、あのダクネイルらしき女は特に武器を持っていない。
「暗黒刃掌――」
だが、マスカの振った剣をダクネイルは闇色に光った手刀で受け止めた。
「暗黒火掌――」
「チッ!」
更に続けてスキルが発動したようだ。暗紫色の炎が吹き出し思わずマスカが飛び退く。
あいつ、奇妙なスキルを――
「そっちばかりに気を取られている場合か馬鹿が! 長蛇咬!」
仮面の男の一人ヴェムが袖を俺に向けると蛇が飛び出してきて俺の首を狙った。
「シノ!」
「ワン!」
「はは、噛み付いたぜ。俺の毒蛇はひと噛みでオーガだって殺す!」
「だが当たらなければ意味がない」
「な! 丸太!?」
仮面の男の驚愕の声が聞こえた。変わり身で初手は避けた。後はがら空きの背中に――ッ!
だが、俺は攻撃をやめて飛び退いた。刹那背中から大量の蛇が飛び出してくる。
「チッ、惜しいな」
こいつ、そう簡単ではないか――
「おい、俺達の目的はメイシルってメイドの始末だぞ?」
「……命知らずな質問は止めておけ。ダクネイル様は本来はこんなところにいる御方ではない。それより――そこにいるのもリストにあるサムジャの男な可能性がある」
近づいてきたのは三人。二人は黒ローブに仮面を顔に装着している。
だがもう一人は姿を隠すつもりはまるでないのか随分と堂々としたものだった。
しかし、凄い際どい格好だな。闇に溶け込むようなドレス姿だが、胸は少しずれたら全て出てしまうんじゃないかって覆えるようなエグいカットが入ったものだ。
形が良いせいか闇夜に満月が二つぽっかりと浮かんでいるような錯覚に陥る。
「……シノ、どこ見ているのよ?」
「うん? あぁ、随分と大胆な格好だなと思って」
「う、うぅ。何かそこまではっきり言われると、逆に何も言えないわ!」
「何がだ?」
ルンが何を気にしたのかわからないが、しかし、あの格好は普通に考えれば戦闘に不向きだ。防御なんてまるで考えていなさそうですらある。
「あの女――暗黒姫ダクネイルか!」
すると千面のマスカが緊迫感のこもった声を上げた。般若の面の為か、表情は見えないが、知っている相手なのは確かだろう。
「一体誰なんだ?」
「――Sランクの賞金首、しかも賞金首の四天王と呼ばれる中の一人だ。お前らが相手できる相手じゃないとだけ言っておく」
Sランク賞金首? しかも四天王――肩書きからしてヤバそうな匂いがぷんぷんするな。
「う、うそ……」
そしてルンからも震えた声が聞こえてきた。確かルンは鑑定のルーンを使用しているはずだな。
「見えたのかルン?」
「仮面で顔を隠している二人は恐らく妨害しているわ。見えない。でも、マスカの話していたあいつは別――暗黒姫ダクネイル、天職は暗黒美将、レベルは42……」
……42か。マスカが言っていたが予想以上だな。今の俺のレベルは4だ。その差は絶望的と言っていい。
ルンにしても今のレベルは3だ。こういうのは合計しても仕方ないが、俺たち二人分を足しても7だ。パピィをいれても10でお話にならない。
「メイシルそれにあんた。逃げられそうか?」
「後ろに道がある。そっちから逃げれば――」
「ワンワン!」
筆跡鑑定師が逃げようとした方向に目を向けるが、パピィが警告するように吠えた。
「参ったな。どうやらそっちは手を打たれているようだ」
「嘘、いつの間に……」
三人以外に誰かいるのか? パピィに目で確認するが、どうやら特殊な事情がありそうだ。
仲間というよりはスキルが関係しているのかも知れない。
「チッ、逃走経路の確保が出来なかったか。失敗したな。メイシルと鑑定師はそっちの壁際に寄って大人しくしていてくれ」
マスカの指示に二人はおとなしく従った。二人に戦闘がこなせるとは思えない。俺たちはここでこいつらを打倒するか追い払う必要がある。
「一応聞くがマスカ、あんたのレベルは?」
「私は33だ。だがお前たちは言わなくていい。下手に知られても残りの二人に有利になるだけだ」
レベル33、強いな。Aランクとは言え俺の過去の記憶で見てもかなり高い。だが、それでもダクネイルと10以上の差がある。
「ダクネイルは私がなんとかする。後の二人はお前たちで意地でも何とかしろ」
「頑張るけど、もしそいつらのレベルもそれぐらいあったら……」
「それはない。あの女はイレギュラー中のイレギュラーだと思えばいい」
「うふふ、いい分析力ね。そうね、こっちの二人で言えば右隣のヴェムのレベルは8、逆側のマジルのレベルは7よ」
「な、テメェ何勝手に! ふざけるなよ!」
「やめろヴェム。気分屋としても有名なんだ。下手に刺激したなら仲間でも殺しかねない」
「チッ、それで、ダクネイル様はあのマスカを何とかしてくれるんだろうな?」
ヴェムというのもマジルも声からして男だろう。そいつがダクネイルに確認した。
俺たちがダクネイルを警戒しているように向こうからすればレベル33のマスカが脅威なのだろう。
この戦いは、ダクネイルかマスカ、どっちかが倒れるかによって大きく命運が変わるということだ。
「そうね。もともとこっちの賞金首が私の目的だもの」
そう言ってダクネイルが唇をぺろりと舐める。
「な、何言ってるのよアイツ。賞金首はあいつでしょ?」
「奴の言っているのは恐らく裏の賞金首だ。犯罪者側からみたって意味のな」
つまりマスカとダクネイル、互いに互いが賞金首になるってわけか。ややこしいことで。
「うふふ、早速狩りを始めようかしら――」
「そう簡単にやらせはしない!」
ダクネイルとマスカが同時に飛び出した。マスカは剣を抜いたが、あのダクネイルらしき女は特に武器を持っていない。
「暗黒刃掌――」
だが、マスカの振った剣をダクネイルは闇色に光った手刀で受け止めた。
「暗黒火掌――」
「チッ!」
更に続けてスキルが発動したようだ。暗紫色の炎が吹き出し思わずマスカが飛び退く。
あいつ、奇妙なスキルを――
「そっちばかりに気を取られている場合か馬鹿が! 長蛇咬!」
仮面の男の一人ヴェムが袖を俺に向けると蛇が飛び出してきて俺の首を狙った。
「シノ!」
「ワン!」
「はは、噛み付いたぜ。俺の毒蛇はひと噛みでオーガだって殺す!」
「だが当たらなければ意味がない」
「な! 丸太!?」
仮面の男の驚愕の声が聞こえた。変わり身で初手は避けた。後はがら空きの背中に――ッ!
だが、俺は攻撃をやめて飛び退いた。刹那背中から大量の蛇が飛び出してくる。
「チッ、惜しいな」
こいつ、そう簡単ではないか――
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