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第二章 サムジャともふもふ編
第73話 サムジャが信頼するパピィ
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ハデルとダミールの話をパピィが聞いていた。
それを影操作を駆使してパピィが教えてくれたが、その際にドクロのマークを表示していた。
これは毒としての意味合いもあるが、毒ではないとパピィが伝えてきた。だから呪いか? と聞くとコクコクと頷いていた。
これで想定されたのはあの二人が誰かに呪いをかけたという事実だ。何故大神官が呪いを? というよりそもそも呪いのスキルなんて覚えられるのか? という疑問はある。
だが、呪いは何もスキルだけに存在するわけでもない。中には呪いを付与できる道具もある。
とちらにせよ後はその対象が誰かだが、今のミレイユとメイシルの話を聞いてもしやと思い至った。
「あの、何故呪いだと?」
「実はさっきのハデルとダミールの話が終わった後、ここいるパピィに密かに尾けさせたんだ。その情報だ」
「……この可愛らしい子犬ちゃんが?」
「ワンッ!」
パピィが尻尾をパタパタさせながらミレイユとメイシルにアピールした。舌を出してハッハッハッハ、としている姿はただただ愛らしい。
「パピィは忍犬の天職持ちでな」
「ワンッ!」
「へぇ、凄いのねパピィちゃん」
ミレイユに頭を撫でられ気持ちよさそうに目を細めている。それを見ているルンがムズムズしているが領主の令嬢の前とあり遠慮しているのだろう。
そしてマスカの面もパピィの方を向いていた。やっぱり撫でたいのではなかろうか。
「マスカもいいんだぞ?」
「だ、だから……コホン。とにかくだ。その呪いの話には納得できるところがある」
取り繕うように咳払いし、マスカが呪いの話を持ち出してきた。
「そういえば今回の話がマスカとも関係していると言っていたな」
「うむ。実はこの町に邪天教団の刺客が潜入していると聞いてな。通り魔事件もその関係者だと踏んでいた。もっともそれはお前が倒したようだがな」
「ふむ、確かにそうだが、その邪天教団というのは?」
「ちょっと待て! 邪天教団って本当かよ! いや、だがそれならジャックの天職が闇の天職だったのにも納得が行くか……」
マスカの言葉に如実に反応したのはオルサだった。どうやら今出た教団に聞き覚えがあるようだ。
「パパ知ってるの?」
「あ、あぁ。邪天教団……前にシノが言っていた闇の天職持ちばかりを集めた邪教だ。邪神を崇めるな」
なるほど。闇の天職を与えているのは邪神だと言われている。ならば闇の天職持ちが邪神を崇めるというのはおかしな話でもないのか。
「えっと、その闇の天職というのは一体?」
「あ、あぁ。そういう犯罪に使われる天職持ちがいるんですよ。あまり一般的ではないのですがね」
「そ、そんなのが……」
メイシルの質問にオルサが答える。するとミレイユが口元を手で押さえ、まさか、といった顔を見せた。
オルサが前に言っていたが闇の天職についてはあまり公にされていないようだ。もっとも相手によっては特に隠すことなく教えるぐらいはするようだな。
「今の話で私にはなんとなくわかったぞ。そのダミールという男は邪教に何らかの形で関わっているのだろう。勿論ハデルもな」
「ですが、ダミールはともかくハデルは教会の大神官では?」
確かにそのとおりだ。教会にいる以上ステータスも教えていると思うのだがな。
「確かにそのようだが、邪天教団には様々な闇の天職持ちがいる。ステータスなどいくらでも偽装のしようがあるだろう」
腕を組んだままマスカが答えた。なるほどその手があったか。
「しかし偽装ならルンの鑑定で見破れないか?」
「あ、そうか!」
「何だ鑑定が使えたのか? しかし鑑定士には見えないが?」
「ルンは刻印術師だが、最近鑑定の刻印を手に入れたんだ」
疑問を口にするマスカにオルサが答える。
「ふむ……そういうことか。だが確実に鑑定できるとは言えぬし、むしろ出来ない可能性が高いかもな」
「え? どうしてよ?」
マスカが否定的な意見を口にするとルンが眉を顰めた。馬鹿にされていると思ったのだろうか。
「今、鑑定の刻印は最近手に入れたばかりと言っていただろう。どんなものでもそうだが、力を十全に使いこなすにはそれ相応の修練が必要だ。それにレベルのこともある。相手の方がレベルが上であるなら偽装は見破れない可能性が高い。鑑定とはそういうものだ」
「あ、そうか……経験で言えば向こうの方が上だもんね」
顔を伏せてガッカリするルン。パピィがルンの側に寄って前足でポンポンっと足のあたりを叩いていた。慰めているつもりなのだろう。
「パピィ、もう本当可愛い!」
「クゥ~ン」
どうやら我慢の限界が来たようだな。めちゃめちゃモフってるぞ。そしてその様子を仮面越しにじっと見ていそうなマスカだ。
とは言え、偽装を見破る上ではルンではまだステータス的に太刀打ちできない可能性がある。
俺に刻印を刻んでもらうという手もあるが、それでも確実にうまくいくとは限らないか。一度は試してみようと思うが。
「でもよく考えたらパピィのおかげで解決は早まったんじゃない? パピィが見たことを突きつけてやればいいのよ」
ルンがいいことを思いついたと言わんばかりにアイディアを口にする。
だが、ミレイユとメイシルは微妙な顔を見せた後、申し訳な下げに言った。
「ごめんなさい。折角のお話だけどそれは厳しいと思います」
「え? どうしてよ?」
「馬鹿者が。そんなこと当然だろう」
「ば、な、何よ! だからどうしてよ!」
ルンがマスカに向けてムキになって問いかける。
「なら聞くがハデルやダミールの前でどう説明するつもりだ?」
「だから呪いはあんたらが仕業だろうって」
「証拠はあるのか? と問われたらどうする?」
「だからパピィが見たって!」
「ワンッ!」
ルンが反論しパピィも自信満々に吠えたが、ふむ……
「はは、確かにそのパピィは優秀なのだろう。だがだとしても無駄だ。証拠が犬が見たからなど、一笑されて終わりだ。そもそも見た聞いたの類だけでは決定的な証拠にはならん」
マスカがいい切った。しかし、やはりそういうことか。中々難しいものだな――
それを影操作を駆使してパピィが教えてくれたが、その際にドクロのマークを表示していた。
これは毒としての意味合いもあるが、毒ではないとパピィが伝えてきた。だから呪いか? と聞くとコクコクと頷いていた。
これで想定されたのはあの二人が誰かに呪いをかけたという事実だ。何故大神官が呪いを? というよりそもそも呪いのスキルなんて覚えられるのか? という疑問はある。
だが、呪いは何もスキルだけに存在するわけでもない。中には呪いを付与できる道具もある。
とちらにせよ後はその対象が誰かだが、今のミレイユとメイシルの話を聞いてもしやと思い至った。
「あの、何故呪いだと?」
「実はさっきのハデルとダミールの話が終わった後、ここいるパピィに密かに尾けさせたんだ。その情報だ」
「……この可愛らしい子犬ちゃんが?」
「ワンッ!」
パピィが尻尾をパタパタさせながらミレイユとメイシルにアピールした。舌を出してハッハッハッハ、としている姿はただただ愛らしい。
「パピィは忍犬の天職持ちでな」
「ワンッ!」
「へぇ、凄いのねパピィちゃん」
ミレイユに頭を撫でられ気持ちよさそうに目を細めている。それを見ているルンがムズムズしているが領主の令嬢の前とあり遠慮しているのだろう。
そしてマスカの面もパピィの方を向いていた。やっぱり撫でたいのではなかろうか。
「マスカもいいんだぞ?」
「だ、だから……コホン。とにかくだ。その呪いの話には納得できるところがある」
取り繕うように咳払いし、マスカが呪いの話を持ち出してきた。
「そういえば今回の話がマスカとも関係していると言っていたな」
「うむ。実はこの町に邪天教団の刺客が潜入していると聞いてな。通り魔事件もその関係者だと踏んでいた。もっともそれはお前が倒したようだがな」
「ふむ、確かにそうだが、その邪天教団というのは?」
「ちょっと待て! 邪天教団って本当かよ! いや、だがそれならジャックの天職が闇の天職だったのにも納得が行くか……」
マスカの言葉に如実に反応したのはオルサだった。どうやら今出た教団に聞き覚えがあるようだ。
「パパ知ってるの?」
「あ、あぁ。邪天教団……前にシノが言っていた闇の天職持ちばかりを集めた邪教だ。邪神を崇めるな」
なるほど。闇の天職を与えているのは邪神だと言われている。ならば闇の天職持ちが邪神を崇めるというのはおかしな話でもないのか。
「えっと、その闇の天職というのは一体?」
「あ、あぁ。そういう犯罪に使われる天職持ちがいるんですよ。あまり一般的ではないのですがね」
「そ、そんなのが……」
メイシルの質問にオルサが答える。するとミレイユが口元を手で押さえ、まさか、といった顔を見せた。
オルサが前に言っていたが闇の天職についてはあまり公にされていないようだ。もっとも相手によっては特に隠すことなく教えるぐらいはするようだな。
「今の話で私にはなんとなくわかったぞ。そのダミールという男は邪教に何らかの形で関わっているのだろう。勿論ハデルもな」
「ですが、ダミールはともかくハデルは教会の大神官では?」
確かにそのとおりだ。教会にいる以上ステータスも教えていると思うのだがな。
「確かにそのようだが、邪天教団には様々な闇の天職持ちがいる。ステータスなどいくらでも偽装のしようがあるだろう」
腕を組んだままマスカが答えた。なるほどその手があったか。
「しかし偽装ならルンの鑑定で見破れないか?」
「あ、そうか!」
「何だ鑑定が使えたのか? しかし鑑定士には見えないが?」
「ルンは刻印術師だが、最近鑑定の刻印を手に入れたんだ」
疑問を口にするマスカにオルサが答える。
「ふむ……そういうことか。だが確実に鑑定できるとは言えぬし、むしろ出来ない可能性が高いかもな」
「え? どうしてよ?」
マスカが否定的な意見を口にするとルンが眉を顰めた。馬鹿にされていると思ったのだろうか。
「今、鑑定の刻印は最近手に入れたばかりと言っていただろう。どんなものでもそうだが、力を十全に使いこなすにはそれ相応の修練が必要だ。それにレベルのこともある。相手の方がレベルが上であるなら偽装は見破れない可能性が高い。鑑定とはそういうものだ」
「あ、そうか……経験で言えば向こうの方が上だもんね」
顔を伏せてガッカリするルン。パピィがルンの側に寄って前足でポンポンっと足のあたりを叩いていた。慰めているつもりなのだろう。
「パピィ、もう本当可愛い!」
「クゥ~ン」
どうやら我慢の限界が来たようだな。めちゃめちゃモフってるぞ。そしてその様子を仮面越しにじっと見ていそうなマスカだ。
とは言え、偽装を見破る上ではルンではまだステータス的に太刀打ちできない可能性がある。
俺に刻印を刻んでもらうという手もあるが、それでも確実にうまくいくとは限らないか。一度は試してみようと思うが。
「でもよく考えたらパピィのおかげで解決は早まったんじゃない? パピィが見たことを突きつけてやればいいのよ」
ルンがいいことを思いついたと言わんばかりにアイディアを口にする。
だが、ミレイユとメイシルは微妙な顔を見せた後、申し訳な下げに言った。
「ごめんなさい。折角のお話だけどそれは厳しいと思います」
「え? どうしてよ?」
「馬鹿者が。そんなこと当然だろう」
「ば、な、何よ! だからどうしてよ!」
ルンがマスカに向けてムキになって問いかける。
「なら聞くがハデルやダミールの前でどう説明するつもりだ?」
「だから呪いはあんたらが仕業だろうって」
「証拠はあるのか? と問われたらどうする?」
「だからパピィが見たって!」
「ワンッ!」
ルンが反論しパピィも自信満々に吠えたが、ふむ……
「はは、確かにそのパピィは優秀なのだろう。だがだとしても無駄だ。証拠が犬が見たからなど、一笑されて終わりだ。そもそも見た聞いたの類だけでは決定的な証拠にはならん」
マスカがいい切った。しかし、やはりそういうことか。中々難しいものだな――
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『砂魔法の建国者~砂属性なんて使えないと砂漠に追放されたから砂の城でのんびりスローライフ満喫してた筈なのにいつの間にか巨大国家に成長してた!~』という新作をはじめました。こちらも興味が湧きましたら宜しくお願い致しますm(__)m
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